交野山 獅子窟寺  平成14年4月29日 天陰
 
獅子窟寺
 
京阪交野線河内森駅から交野山山中に40分ほど登ると、古刹の獅子窟寺がある。「獅子窟」の名前は境内にある岩が獅子の吼える口に似ていることに因る。普見山獅子窟寺は、開基を役小角と伝えられ、僧行基が堂塔を建て金剛般若窟と称した。空海もこの山で修行したという。国宝の本尊薬師如来座像は、榧材一本造りで弘仁期の作である。境内には、災い転じて福となす言い伝えられる「天福岩(大黒石)」がある。岩を両手でしっかりと抱いて願いを一つだけ三回唱えると所願成就すると伝える。
 
天田神社付近から山を望む
 
京阪私市駅の近くの駐車場(駐車料700円)から河内森駅まで、閑静な住宅街と畑の道を歩く。畝をつくった苺畑に赤い実が鈴なり。貸し畑で一家総出で畑仕事する家族が多く見られた。ガーデニングではなく、作物を作るという様子は日本的な風景かもしれない。好もしく見えた。河内森駅から少し上ると、天田神社。このあたりは豊かな野という意味で古くは「甘野」と称されていた。古墳時代には、交野地方は「肩野物部氏」の所領であった。物部氏はこの地を御食炊屋姫尊(後の推古天皇)に献上して「私市部」なった。平安時代になると宮廷貴族の狩猟の地となり、彼らは和歌を盛んに詠んだ。七夕伝説に因んで「天田」「天の川」と表記するようになった。天田神社を拝する。住宅が途絶え水道局の大水槽を過ぎると山道となる。孟宗竹の林をわたる風音を聞く。路傍に点在する地蔵尊を拝しながら歩く。息が上がる頃に、木立に阻まれて展望のきかない展望台、少し行けば仁王門跡に至る。鬱蒼とした雑木林に囲まれて静寂。すぐに獅子窟寺。寂漠として落ち着いた尊い雰囲気である。
 
山中の巨石群
 
獅子窟寺の横手から薄暗い小道に上がっていく。寺名の由来となった大石をはじめ巨石がひしめく。落ち葉を踏み、仰ぐと新緑が天を覆っている。道の脇には石仏が並らぶ。尾根づたいに行くと展望の利く大岩があった。すでに家族連れが陣取っていたので遠慮した。ここは、くろんど園地広場方面と月の輪滝方面との分岐である。月の輪滝への道を下る。すぐにまた大岩があったので、岩の上でサンドイッチの昼食。烏が騒ぐ。向かいの山の斜面に咲く藤の花が見事。あまり歩く人のいない道のようで、道跡がはっきりしない。急な斜面を下っていく。鬱蒼とした林。巨石群が待っていた。滑りそうになりながら用心深く降りていく。神々の集う場所のようで神秘的である。沢を渡るところに、初老の夫婦が昼食中。岩くぐりをしてきたのかと尋ねられた。月の輪滝へは山を越えねばならないらしいので、沢を下って帰ることにした。谷川沿いに歩く。ここにも大岩がごろごろしている。砂防ダムを過ぎてしばらく下ると、住宅街に至る。私市駅まえで苺を売る老女がいた。試食すると美味しい。一山300円。おまけでたくさん入れてくれた。ほどよい疲労感に酸味のある苺はうまい。こうして約2時間の小山歩きを終えた。