大和路 葛城古道 高鴨神社 平成15年睦月5日 晴
風の森から葛城山系金剛山
金剛山の南麓を吹き抜ける風は、木々を揺らし音を立てる。故に、この地を風の森と言う。蒼い葛城山地を仰ぎ見ながら棚田の中の道をゆるりゆるりと上っていく。枯れ草色の小径。案内標識に導かれて高鴨神社の鳥居の前に至る。身の引き締まる緊張に似た感覚が襲う。金剛山颪の寒風のためばかりではない。神の鎮まる神域のかもす不可思議な雰囲気。鳥居から視線は、一直線に伸びた参道を抜けて、両脇に生えた古杉の巨木の幹間を透かし通して、拝殿にくっきりと届く。清々しい。鳥居をくぐれば、数段の石の階段を下りた左脇に、知らず識らずに犯した罪や穢れを祓い除け給う神を祀る祓戸神社がある。拝礼。白い玉砂利をさくさくと歩いていく。杉の巨木の高い位置に、新藁の太いしめ縄が張られ、真っ白い幣が下がる。左手下には放生池。数羽の鴨が静かな池面に波紋を立てる。時に甲高く鳴く。そしてたちまちに元の静かさに戻る。石段を上ると拝殿。柏手を打って拝礼。
高鴨神社
高鴨神社は、古代の豪族の鴨族が発祥の地に奉斎した神社である。全国各地の加茂社の総本宮にあたる明神大社。御祭神は、阿治須岐高日子根命(迦毛之大御神)、阿治須岐速雄命、事代主命、下照姫命、天稚彦命。本殿は室町時代の再建。深閑とした境内を一巡して、西の宮、東の宮、祭られた数多の摂社の神々に拝礼。檜皮葺きのためであろうか、皮を削がれた赤茶色の幹が、ほの暗いなかに際立って見えた。招福餅をもとめる。甘酒の振るまいをいただく。通りかかられた宮司さんが、「オメデトーゴザイマス。ヨーコソオマイリ。」と声を掛けてくださった。神官姿であった。古代の葛城王朝のことに思いをめぐらしながら鳥居を抜けた。ふと背中にヤタガラスの羽音を聞いたような気がした。