しなければならないことの目録

ジャン・パウルは、さまざまな記事を書き抜いたノートを縫いあわせ、『抜書き帳』を作っていた。作業は、1778年以来、1823年に到るまで続き、30ページから、多いときは360ページにもなる「本」が、全部で110巻残されている。(Vgl. Jean Pauls Exzerpte, hg. v. Götz Müller, Würzburg 1988, S. 322)

これほど大量の情報をどうやって処理したのだろうか。執筆の資料として使うにしても、110巻すべてを座右の書にするわけにはいかない。コンピュータで全文検索ができない時代、「目録」は、情報圧縮の有力な手段であったにちがいない。それにしても、ジャン・パウルの目録に対する情熱は、そのような合理性をはるかに超越している。


Register dessen was ich zu thun habe

1
Dieses Register iezt zu machen.

2
Aus der Geschichte ein Register.

3
Aus den "Gedanken" eines.

4
Das erste durchzulesen und

5
Das andere.

6
Das Wörterbuch vermehren.

7
Es lesen.

8
Die Geschichte lesen.

9
Die "Gedanken" lesen.

10
Register aus den Thorheiten machen.

11
Eines aus der "Wizsamlung".

12
Diese lesen.

13
Die Ironien lesen.

14
Ein Register daraus machen

15
Die Anleitung zum Wize lesen.

16
Die zur Tugend lesen.

17
An dem deutschen Lexikon arbeiten.

18
Lesen der Anekdoten.

19
Ein Register für das Register aus der Geschichte machen.

20
Am 1. Tage die Übungen in Stilen, 2. in Vorbereitung, 3. im Buchmachen.

21
Mein Tagebuch machen.

22
Auf die Menschen Achtung geben.

23
Meine Urtheile über die besten Autoren.

24
Ich mus mich im gemeinen Leben nach Stof zu Gleichnissen umsehen.

[...]

(B. II 6, 551f.)


しなければならないことの目録

1 今この目録を作ること。

2 歴史ノートから目録を作ること。

3 思想ノートからもう一つ作ること。

4 歴史ノートの方を通読し、

5 もう一つの思想ノートも通読すること。

6 自家用辞書の語彙を増やすこと。

7 それを読むこと。

8 歴史ノートを読むこと。

9 思想ノートを読むこと。

10 馬鹿げたことのノートから目録を作ること。

11 「機知集」からもう一つつくること。

12 「機知集」を読むこと。

13 イロニーのノートを読むこと。

14 そこから目録を作ること。

15 機知ノートの手引きを読むこと。

16 徳ノートの手引きを読むこと。

17 ドイツ事典にとりくむこと。

18 アネクドートを読む。

19 歴史ノートの目録の目録を作ること。

[...]

全部で99項目ある。

成立年は不明。1787年とも1792年とも言われている。(B. II 6A. 43)ジャン・パウルが生まれたのは1763年だから、20代後半のメモということになる。1790年前後は、精神的にも経済的にも危機的な状況にあった。

ジャン・パウルは、ほとんど超人的な日課を作り、それをまた厳格に守りつづけた。
偉い! しかし、本人が真剣であるだけに、こちらは笑ってしまう。

それにしても、これは一体なんのための目録なのか?

70番には、「毎日、ある馬鹿げたことについて徹底的に考えること」ともある。
おかしいのは、本来、情報処理の手段にすぎないはずの「目録」がほとんど目的と化しているかのようにみえるからである。

あるいは