第50回大阪教育大学国語教育学会

大会テーマ
子どもの語彙力を伸ばす
― 国語科の役割と可能性 ―

 平成16年2月文化審議会は、「これからの時代に求められる国語力について」の答申をまとめました。そこに挙げられた「国語教育についての基本的な認識」の一部として、以下のような文言があります。
<情緒力・論理的思考力・語彙力の育成を>
 今後の国際化社会の中では,論理的思考力(考える力)が重要であり,自分の考えや意見を論理的に述べて問題を解決していく力が求められる。しかし,論理的な思考を適切に展開していくときに,その基盤として大きくかかわるのは,その人の情緒力であると考えられる。したがって,論理的思考力を育成するだけでは十分でなく,情緒力の育成も同時に考えていくことが必要である。
 これに加えて,漢字・漢語を含め国語の語句・語彙力の育成が重要である。人間の思考は言葉を用いる以上,その人間の所有する語彙の範囲を超えられるものではない。情緒力と論理的思考力を根底で支えるのが語彙力である。
(文化審議会「これからの時代に求められる国語力について」12頁 平成16年2月)

 この答申では、語彙力が現代社会を生き抜く上で必要な情緒力や論理的思考力などの根幹をなすと明言しています。また、現行の学習指導要領においても言語活動の充実が重要視され、国語科はその中心を担うことが求められています。近年、改めて注目されている語彙の力ではありますが、人間が言語によって思考する限り、この力を高めることは普遍的な課題でもあります。
 語彙習得によって子どもがどのように変化するかを浜本純逸は「生徒は、語彙を豊かにしていくことを通して認識世界を広げ、外界に働きかけ、感情を細やかにし、思考を深めて、より人間らしい人間へと成長していく。」(浜本純逸編『授業への挑戦60 中学校語彙指導の活性化』7頁 平成2年2月)と述べています。

 子どもが語彙を習得する場として、基盤となるのは家庭です。しかし、家庭だけで完結するものではなく、子どもを取り巻く環境のすべてが関わっています。その中でも学校は他の生活の場とは一線を画しています。語彙習得における学校の役割について浜本純逸は以下のように述べています。

 学校は、子どもたちに物を触れさせ、集団生活を経験させ、すぐれた文化遺産を継承させて、人間としての成長を意図的に促す場である。その教育の営みは、ことばを通してなされる場合が多く、また、そこでの体験や学習は言葉によって整理され構造化されて知識となっていく。  
(浜本純逸編『授業への挑戦60 中学校語彙指導の活性化』7頁 平成2年2月)

 学校教育では、それぞれの家庭で習得した生活語彙を考慮し、それらを拡げ深め、体系化することが課題となります。さらに、論理言語や文学言語といった学校でこそ指導されるべき学習語彙を身に付けさせることも必要不可欠です。これらの指導を通して、自ら使用する言語に意識を向けることのできる、自覚的な言語主体を育てることが可能となります。
 今年は前述の答申から10年目に当たりますが、未だに国語教育系雑誌において語彙指導に関する特集が組まれるなど、語彙指導への関心は高く、その重要性は明らかです。しかし、裏を返せば、教育現場において実践方法が十分に確立されていない現状があるともいえます。多くの教師はどのような語彙をいかなる方法で教えていくべきか不安に思っていることでしょう。教師自身の不安を取り除くため、そして何より自らの思考を体系化できる語彙の力を子どもにつけるため、本大会ではこれまで行われてきた実践を共有・検討し、国語教育における語彙指導の可能性を探っていきたいと考えております。


【日程】

日時8月2日(土) 10:00 〜  16:30
会場大阪教育大学柏原キャンパス A棟314号教室

【時程】

10:0010:3011:3012:0013:3015:0015:3016:3017:00
受付自由研究発表総会昼食課題研究発表休憩研究協議閉会懇親会

 懇親会を、17時より同キャンパス内生協レストランにて行います。会費は一人約3500円です。多数のご参加、お願い申し上げます。
※ 各種事情により、時間には若干の変更がある場合もございます。

[研究発表]

○ 【午前の部】自由研究発表(10:30〜11:30)        司会  成實朋子 (大阪教育大学)

『綴方教室』と豊田正子―〈綴方少女〉形成の軌跡
  来田千尋(尼崎市立大成中学校)

メディアを活用した国語科教育の研究
   ―"Doing Ads"(EMS, 2008)における広告教材化の観点を中心に その2―
  羽田潤(兵庫教育大学)

○ 【午後の部】課題研究発表(13:30〜15:00)        司会  住田勝 (大阪教育大学)

《大会テーマ》 子どもの語彙力を伸ばす―国語科の役割と可能性―
基調提案
  大阪教育大学国語教育学会事務局
詩「きまりことば」(坂田寛夫)の音読実践
―生活経験とことばをつなぐ指導の試み―
  南野陽子(松原市立松原南小学校)
「語彙」を「語彙力」に変える授業実践〜頭の中の国語辞典を開こう〜
岩崎千佳(大阪教育大学附属平野小学校)
読解力と表現力とをつなぐ語彙の活用
井上博文(大阪教育大学)

研究協議(15:00〜16:30)          司会  井上博文(大阪教育大学)

学生のみなさんへ

当事務局では、学会への学生の積極的な参加を呼びかけています。学会当日は、国語教育講座所属の学生に対して出席をとる予定です。なお欠席される場合は、必ず事前に住田先生まで連絡をしてください。断りなく欠席された場合、1回生・2回生はゼミ選択の際不都合が生じることもありますので、よろしくお願いいたします。


会場案内

以上
大阪教育大学国語教育学会事務局
〒582-8582 大阪府柏原市旭が丘4-695-1
Tel:0729−78−3529(住田研究室)
E-mail: sumidam@cc.osaka-kyoiku.ac.jp