2000年度国語学概論課題
描写の練習「男と女の出逢い」


男と女の出逢い  992253

 一枚の葉書が届いた。
 通り一遍の時候の挨拶で始まり、通り一遍の言葉で結ばれていた。
 黒一色。いかにも事務的で、そのままテーブルの上に放置されるかと思われたその葉書は、なぜか彼女のポケットに収まった。
「君の発表はすばらしかった」この一行がはさまっていたために……

 数日後、彼は葉書を受け取った。
 形式的な挨拶文にはさまれ、内容は「ありがとうございます」のただ一語。
 丁寧に書かれたその文字を、彼はじっと見つめていた。
 


男と女の出会い  002474

ふと目が覚めた。
瞼を開けてもすぐには何も見えない。
夜なのだ、と思った。
体の節々が痛い。背中が強張ってしまっている。
ここは何処だ。ここは……
私は逃げてきたのだ。行くあてはなかった。
やがて日も暮れかけて
そこに都合よく神社が現われたのだ。
そうだ、ここは社の中だ。首をめぐらせれば格子窓の外に、ここよりも深い闇が見える。
「…………」
声、が。
ぶつぶつと何やら呟くような声が。
ざくざく、という音も間断なく聞こえてくる。
私は音を立てぬよう、ゆっくりと身を起こした。
そっと格子の間から外を覗く。
女が、いた。
白い着物を着ている。髪は黒々として長い。きちんと梳かせばさぞ美しいのだろう。しかし今はバサバサに乱れていた。
着物から覗く腕が夜目にも白い。月はない。だが、月の光に照らされているかのように、女はかすかに白く輝いていた。
腕の先へと視線を移す。手には木片のようなものを持っていた。その手を大きく振りかざす。
女は穴を掘っていた。一心不乱に手を振り下ろしていた。その度にざくざくと音がする。
穴を掘りながら女の唇はかすかに動いている。ぶつぶつと何かを呟いている。
突然女がこちらを向いた。
「ぁ…………」
女と目が合ってしまった。
光を映さない、のっぺりとした、目……
私は何も出来ずに女を見つめていた。

それが、私と女との最初の出会いだったのである。

男と女の出会い  992249

キキ― ! ドオオン!…あっ……。そこで僕の意識は途切れた。
目を開けると見たことのない 風景が僕を襲った。白い壁。白いカーテン。ここはどこだ?僕は不安になって目だけギョロギョロ動かして、何とか状況を把握しようと焦った。その時だった。つんざくような悲鳴とも歓声ともいえる声が聞こえたのは。
「目が覚めたのね!」
25,6歳ぐらいだろうか?、可哀相なくらいやつれた女が僕に抱きついて泣きはじめた。
「意識がもどったんですね。よかったですね、オクサン!」   
「はい!ありがとうございます、先生。」
白衣を着た男、(彼はおそらく医者なのだろう)と「オクサン」と呼ばれた女がとびっきりの笑顔で話しをしている。ここは病院なのか……。でもどうして……?
彼女達が微笑めば微笑むほど、僕は不安が増してきた。
「覚えていますか?あなたは、大きな事故に遭われたんですよ。」
「ひどい怪我だったんだから!死んじゃったらどうしようって一生分の涙ながしちゃったわ。」
そう言うと女はポロポロとまた泣き始めてしまった。
「オクサン。笑顔をみせてあげなきゃ。ゴシュジンは半月ぶりなんだから。」
男はそう言って笑った。
でも僕は笑うことができない。オクサン……ゴシュジン……。それはなんだ?
真っ赤になった目で女が僕を覗き込む。きれいな唇だなあ。
「あなた、明日は私たちの初めての結婚記念日よ。…ねえ、何か言ってちょうだい。」
結婚記念日だって……?
女が優しく微笑む。だが……この女はだれだ?僕は君を全く知らないんだ。ゴシュジン……「御主人」!? じゃあ君は僕の………「奥さん」?
「ねえったら!」
君は、僕の君に対する一言を待っている。でもね僕にはこの言葉しか思い浮かばないんだ。
喜びで蒸気した頬。涙で潤んだ真っ黒な瞳。ああ、ごめんよ。本当は言いたくないんだ。でも
「あなた……?」
「はっ・」
「えっなあに?」
「……はじめまして」

男と女の出会い  994351

寒い日だった。駅には見知らぬ人ばかり。彼女が待つ人物はまだ来ていないようだった。日曜日の夕方でカップルや子供連れの家族も少なくない。最近はこの時間帯になるとめっきり冷え込み始める。彼女はうでで自分の体を抱きしめるようにして、寒さに対して身構えた。風が心までも冷やす。彼女が待つ人は時間と場所を間違えているのかも知れない。カチッ。聞こえるはずのない腕時計の針の音がきこえそうなぐらい彼女はじっと腕時計を見つめた。針は6時半をさしていた。約束の時間は6時。彼女はかばんの中から携帯電話を取り出した。連絡は入っていないようだった。携帯電話を彼女はじっとみつめる。彼女は電話をかばんの中にしまうと、ふと顔を上げた。彼女の視線が向かいのホ−ムの自動販売機の前でとまる。彼がそこにいたようなきがした。彼女は呼ぼうとしたが、彼のいるホームに電車が入ってきて彼を隠してしまった。電車が発車した後のホ−ムに彼はいなかった。彼女は階段を駆け登り、向かいのホームに向かった。あたりを見回す。電車がでていったばかりのホームは、さっきまで彼女がいたホームより随分静かだ。誰かが近寄ってくる気配に彼女が振り向く。彼女は彼であることを期待した。彼ではないいかつい男が近づいてきた。男は彼女が今朝彼にきせた上着をもっていた。それが目印。彼女は身の代金の入ったかばんを男にわたした。男は人込みのなかへきえていった。どこからか声がきこえた。「おかあさんっ。」彼女は走ってくる彼をちからいっぱい抱きしめた。「無事だったのね!」彼女はいつしか寒さを忘れていた。


男と女の出会い  002102

小学4年生の時、僕は県外へ引っ越した。同じ時期にクラスの女の子もまた、僕とは別の県外に引っ越した。
特別仲が良かった訳ではない。ただ、一緒の時期に引っ越すということで妙な親近感はあった。

月日は流れた。こっちに来るのが早かったからだろう、田舎の方言はすっかり消え、生活にも慣れた。 
今は、高校受験を終えたときだった。
中学校とは違って、知らない顔ぶればかりである。不安と期待の入り交じる中で、
「あれっ?」
「……!」
2人はすれ違った。ただそれだけだった。

曇っていた空からいく筋もの、春先の暖かい光が射しこんできた。





男と女の出会い  板野誉夫

4月も始まり、新しい学年のスタート。男は掲示板の周りの人の固まりのほうへ足を運んだ。もみくちゃになりながら男は自分の名前を探していた。キャーキャー騒ぐ奴、あーあというため息がそこら中から聞こえてきたが、男にはそんなことはどうでもよっかった。ただ自分の名前と、その上に書いてある数字さえ分かればよかったのだ。男は人波の中をかきわけ、ようやく自分の名前と数字を見つけることが出来た。男がその紙から目を離そうとしたとき、一本の白い指が自分の名前を指したのが見えた。その指の主は隣にいる友人に何かを尋ねているようだ。よく聞いてみると、どうやら自分のことを聞いているようだ。男は何だか不快に想い、少し低い声で女に話し掛けた。
「それ俺やねんけど」
女は驚いてこっちへ振り向いた。しかし女は男の目を見ることができなかっつた。そして顔を真っ赤にして、
「すみません、ごめんなさい、ホントごめんなさい」
男はあまりの謝りかたに、何か悪いことでも言われていたのかと想い、そのまま何も言わず女に背を向け去って行った。
女はまだ顔を上げることができなかった。その目には泪さえ浮かんでいた。
春のさわやかな風の中で二人はなんとも感じの悪い出会いをしたのだった。
その後の二人の行く末を知ることもなく…

男と女の出会い  994356

8:42 この日もこの電車に乗るためかばんを抱え走っていた。
コンビニ袋をさげた男がだんだん大きく見える。
すれ違うのはいつもの歩道橋。
呼吸を整える女。
変わらない毎日だけどこの瞬間だけは違う。
<時間よ止まれ!>

後ろ姿が小さくなる。
8:43
男の背中を追いかける女が今日もいた。


男と女の出会い  992231

 ある日の昼下がり、取引先との会議に遅れそうな僕はコートを手に持って、
新宿の地下街を時々前から歩いてくる人とぶつかりながら全速力で走っていた。
そして地上へと階段をかけ上がった瞬間、左側から誰かがぶつかってきた。 
僕のカバンも相手のカバンも宙を舞い、中身はバラバラに散らばった。
相手の女はすみませんの言葉もそこそこに自分の荷物を拾い上げ、走り去っていった。
僕は何も言えずただぼんやりと彼女の後ろ姿を見送っていたが自分も急いでいることを思い出すと
中身を拾い上げ無機質なビル街の谷間をまた走り出した。

 新宿〇〇ビル。何とか間に合ってエレベーターにかけ込み24階に降り立った。
と、同時にいつものメロディーが胸ポケットから鳴り出した。
会社からか、と思いながら取り出した見慣れた携帯にはあるテレビ番組特製の赤…………いストラップ。
なぜだ、と不審に思いながら僕は出てみた。

 「もしもし」
 「すみません、先程ぶつかったものですが……」
どういうことだ、と思うがなおも彼女は話し続ける。
 「携帯を間違って拾ったみたいなんです。今私は新宿〇〇ビルにいるのですが……」
えっ、と思って顔を上げると、同じ携帯に色違いの青のストラップをつけた僕の携帯で必死に話している女が見えた。

僕の持つ携帯からは彼女の声。

エレベーターホールの窓からは暖かい日差しが差し込んでいた。


男と女の出会い  002414

 その日、私は秋風の通る庭でひとり、遊んでいた。
 強い風にあおられて園の門が壊れるような音を響かせた。錆びた門の枠が傾き、ちょうつがいがとれかかっている。門の横の樹から一枚の枯れた葉があっさりと落ちた。
 門の向こうに人影を見つけ、目をこらした。二人のうち背の高い人は園長先生。もうひとりは……
 小さな男の子だった。私よりも少しだけ小さい。大きな目を潤ませて、今にも泣きそうな顔をしていた。
 二人が門をくぐった。名前を聞こうとも思わなかった。私は男の子に近づき、持っていた泥だらけのボールを差し出し、言った。
「…あとで一緒に遊ぼう!」
 小さな男の子はその目を一回、大きくした。その後、潤んだ目のまま笑って、
「……うん!」
 大きくうなずいた。その笑顔はとてもかわいくて、印象的だった。
 病葉の散る午後。
 私に「守るべき人」が初めてできた瞬間だった。

男と女の出会い  992216

 俺はもうずっと一人でグラウンドに向かって立っていた。
 運動場をもう何周も走らされて、少女が汗だくなっている。スパイクシューズに包まれた彼女の足は、「解散」の声と同時に、自然と水道の方へ向いた。もう秋も中頃だというのに、太陽は真夏のような強い日差しで彼女を照り付けている。蛇口をひねると飛び出す涼しげな水音がやけに心地よい。
 彼女はさっと顔を洗った。俺には全く気づいていない。彼女の額の雫が、太陽を反射してキラキラしている。俺は水道のすぐそばの木陰から、じっとそれを見つめている。顔を洗い終わった彼女は、小さなため息をつき、こっちを向いた。と、途端に俺と目が合う。
  気づかれた!!
俺は逃げ腰になる。長いしっぽもピンとたった。彼女は少し微笑んでしゃがみ込み、両手を差し出した。
「おいで。」
三角の耳もピンとたった。俺はまるで、イタズラがバレた子供のようにバツの悪い心持ちで後ずさりし、彼女に背を向けると一目散に草の茂みに飛び込んだ。
 少女は寂しそうにまた立ち上がる。
 俺は草むらをどんどん走って、小さな水たまりの前で立ち止まった。どこまでも青い空と、黄色い太陽と、それから、一匹の猫の姿をそこに映して、小さな水たまりは静かに波打った。
 俺は……映らない少女の微笑みを、そっとそこへ思い浮かべていた。

男と女の出会い  002485

 私は見ていた。

――いやっ!!──
愛らしい顔を、悲しみでゆがませて泣きじゃくる少女。
そんな少女の肩を、守るように抱く少年。
──必ずまた、めぐり会えるよ。いつか、きっと……泣かないで…──

 時は流れ、人も、景色も移り変わる。
あの時からずっと、私は同じ場所に立っている。
この地に根を下ろし、私は待っている。
 そして、見る。
ベンチに座って本を読んでいる少女と、
犬をつれて散歩をしている少年を。
突然、犬が少女にじゃれついていく。
少年は驚き、あわてて犬をたしなめ、謝る。
少女は、かまわない、と笑顔で返す。
 そんな、ありふれた出会い。

姿形は変わっても、記憶はなくても、
その魂は、まぎれもなくあの時の彼ら。
彼らは再び出会ったのだ、今度こそ、幸せになるために…


男と女の出会い  002464

 秋空は高く、落ち葉が風に舞う秋のある一日だった。
 いつもなら子供達が遊んでいるはずだが、今日は公園にも誰もいない。
 女は二年前の約束どうり、一本の木の下で待っていた。
 彼は覚えているだろうか、来るだろうか、不安は絶えず消えない。
 もう、二時間も経っている。やはり、一度別れると、約束なんてどうでもいい物
 となってしまうのか……。あと、十分待って来なかったら帰ろう。
 
 十分経った。まだ来ない。…もうすぐ来るかもしれない。あと五分……。
 「女々しいな……」
 くるっと回って、帰ろうとした、丁度その時、
 「ごめん!……!」
 男は走って来たのだ。女は涙でぼやけた視界の中で男を見た。
 彼らは、二年ぶりの再会を果たしたのだ。 
 

男と女の出会い  002450

 小さな手が、白く愛らしい手が、私の人差し指をきゅぅっと握り締めた時、その小さな温もりに、電撃のようなものがからだを突き抜け、同時に少女に対する愛しさが胸に広がって…………少女は私の「娘」になった…………。
  
 (子どもがいるぅっ!?)
 男はあまりの驚きに声を失ってしまっていた。
 イタリアンカフェを意識したお洒落な喫茶店、そこに二人は向かい合わせで座っていた。
 ここ一ヶ月、なかなか決心がつかず、やっと女を誘い出し、必死の思いで告げた男のプロポーズに対する答えがそれだった。
 唖然と女を凝視する男に、彼を魅了して止まない微笑を浮かべ、自分と子どもを愛せないなら結婚はできない、ととどめを刺した…………。
 女が去った後も、暫く呆然としていた男だったが、結局、女を諦められず、子どもと会ってみることにしたのだった…………。

 トントンと肩を叩かれて、男は、はっと我に返った。
 振り替えると、愛しい女が微笑んで、子どもは大きな瞳を一杯に見開いて、男を見上げていた。
 男は慌てて少女と向き合うと、言った。
「こ……こんにちは…………」
 笑顔は引きつり、声はかすれ、しかも上ずっていた。
「こにちは!」
 舌ったらずな、けれども元気一杯な挨拶と母親譲りの笑顔、ちょこんとあたまを下げる様子は誰が見ても微笑ましく、愛らしい。
 男も自然と肩から力が抜け、少女に笑いかけていた。
 男の表情ガ皮っらのを見て、ぱぁっと顔をほころばせると、弾丸のようにしゃべりだした。
 と、その時、三人の前を、父親と手を繋いで楽しそうにはしゃいぐ少年とすれ違った。
 少女はぴたりと静かになって、憧れと哀しみをない交ぜにした表情でそれを見送った。
 男は無意識に少女の目の前に手を差し出していた。
 ぱっと男を見上げると、嬉しそうに、でも少し恥ずかしそうに、男の人差し指を少女が握り締めた…………。

 この日、三人は「家族に」なった…………。

 


男と女の出会い  001512

 大教に入学したばかりの頃は、日本語がスランプに陥っていたところであた。日々勉強に励んでいるとともに、積極的に日本の人々と接しているのに、目で見たことや言いたいことなどをなかなかうまく書けないと悩みこんでいた。自分ながらも情けない。
ある日、宿題で野浪先生の掲示板に入った、ついに王という留学生の作品も目にした。読めば読むほど、感動させるようになった。私も王さんと同じような経験があった、私も日本人に中国語をおしえている、なぜ私はそう思わなかったか、なぜ私は王さんのように書けなかったか、と私は落ち込んだ。もちろん野浪先生の指導も大事だが、王さん自身の努力も私には見習うべきであろうか。そして、いつか王さんと話し合おうという念も生じた。他の留学生に聞いてみて、王さんはもう国に帰った。ショックだった。
そのからしばらくして、王さんにまけないように日々の学校生活を送っていた。そう、あれは六月のある日、休講でメールでも送ろうと思って、留学生センターにいた、いつも混んでいるセンターにと一人しかいなかった。男性だった。挨拶しようと迷っているところ、相手は「こんにちは」と挨拶してくれた。「ええ、どこかで会ったことがあるかなあ、あの顔、あの目…………」と私は思い浮かんだ。もしかして王さんじゃないでしょうか?私は挨拶せずに「王海航さんですか?」と聞いて、「そうです」と答えてくれた。その瞬間のうれしさを言葉にならなかった、やっと王さんと出会った。

男と女の出会い  002110

 彼女はこれから始まる生活にたくさんの夢を抱いていた。校長先生や来賓の人々の話のたびに、起立して礼をすることにさすがに疲れてはいたが、これからの生活を想像して胸を躍らせていた。
 何度目かの起立の声が響き渡った。彼女は現実に引き戻されたかのように立ち上がり、礼をした。そしてほっとしたようにスカートを正して座ろうとした。前かがみになった瞬間、鈍い音と共に額が弾き飛ばされたような感覚がして、思わずしりもちをつくようにして椅子に座ってしまった。一瞬頭が真っ白になった。
「ごめんなさい!」とっさに口をついて飛び出した。
「あ、いや……」彼は少し恥ずかしそうにぶつかった後頭部をさすりながらつぶやくように言った。
 恥ずかしさと後悔が重なって彼女はうつむく事しか出来なかった。それまで抱いていた夢が音を立てて崩れてしまったような気がした。
 それから半年後、彼女は崩れた夢とは違う夢を見てすごしている。彼女は彼と同じ道を登校し、同じ道を下校している。

男と女の出会い  002104

……出会いというのは、偶発なのだるうか?それとも、必然なのだろうか?
その日、男はいつもの様に彼女と会い、いつもの様に喧嘩をして帰ってきた。最近こんなことの繰り返しでまともに会っている気がしない。
「なんで……こうなるんだろう。」と、彼はつぶやく。いつもの様に。
彼は彼女のことが嫌いではない。おそらく彼女もそうだろう。しかし、「嫌いではない」という言葉は、「好き」という意味ではないのだ。
「そういや、もう4年か……。」と、彼はつぶやく。いつもの様に。
ここのところ生活に変化は生じていない。惰性で生きている、という感じである。人は変化のない生活に耐えられる程強くない。そんな状態で彼と彼女の関係が続くはずもない。
……街が雪で銀色になった日、二人は別れた。

2年後、彼と彼女はまた出会う。以前と変わらない二人になる。いつもの様に会っては喧嘩をする。しかし、以前とは違い、二人の間には変化が生じ続ける。
「会うと喧嘩ばっかりだよ。でも好きなんだよな……。」と、彼はつぶやく。
………出会いは必然なのかもしれない。いや、そんな抽象的なことはどうでもいいのだろう。具体的なイマがあれば……


男と女の出会い  992251

「はじめまして」
男の冷ややかな目がある男を思い出させ、少女を凍らせたのだった。
長身で整った顔。そして何よりも、氷のような目。
何もかも同じだった。
五年前、お母さんを殴って姿を消したあいつと同じだ。
運ばれたジュースはいつも以上に氷が多く浮かび、冷えすぎていた。
母が少女と男とを何とか近づけようと努力していることは分かったが、
少女は口を開こうとはしなかった。
お母さんは懲りていない。

しばらくの沈黙の後、意外にも男が料理を落とした。
よく見ると男のネクタイはそれまでにこぼしたワインで染みができている。
笑いながらネクタイの染みをふき取る母に、
男は子供のように頬を赤く染めた。
あたたかな目。
あいつとは違う。
「お母さんを幸せにできる?」
男はまたネクタイに染みを作った。
それは真っ赤な頬をつたい、流れ落ちた涙だった。
少女は再びジュースを手に取る。
氷はいつの間にか全て溶け、そこには3人の笑顔が浮かんでいた。


男と女の出会い  002443

いつもと変わらぬ朝。
いつもと同じバスに乗る。
それは通勤・通学でギュウギュウ詰めの満員バスで、
いつものように乗客全員うんざり顔だ。

『シャカシャカシャカシャカ♪』
女は今日もイライラしている。
原因は、すぐ隣の男のヘッドホンステレオ。
周りの人の迷惑を考えろ!!と
女は毎日心の中で叫んでいた。

男と女は同じ時刻に同じ停留所で乗車する。
その為、嫌でも接近して乗らなければならないのだ。
女にとっては苦痛の時間であった。

「…腹立つ!!」
今日の女は特別イライラしていた。
最近、仕事でうまくいってないのが原因だ。
女は思いっきり男を睨みつけてやった。
男はそれを感じ取り、理由も分かっていたが反応しなかった。
女はそれ以上行動する気もなく、あきらめてしまった。

いつもと変わらぬ朝。
男と女は今日も隣同士。
「あ!……結構いい奴じゃない…。」
隣から不愉快な音がきこえないことに女は気付き、思わず男に向かって微笑する。
男はそれに気がつき、理由も分かった。
男も照れくさそうに笑う。

―――――
出会いは、いつ・どこで・どんな形であるかわからないものである。


男と女の出会い  002413

そう、あれは夏休み。

八月なのに妙に肌寒い夕立の中、僕は彼女がそこに居ることに、ただただ驚いているだけだった。その日の朝は、きれいな青空が広がっていたにもかかわらず、天気予報は午後から雨。めざましTVのケイちゃんも「カサを忘れずに出かけましょう」と言っていた。そして、予報どうり、時間が経つにつれ、空は次第に暗くなり、つい今しがた雨が降ってきた。それは、まるでその後三ヶ月の悪夢の日々を暗示しているかのようだった。

彼女は、俗に言う”真面目な”女の子ではなかった。クラブの先輩で、僕にっとては高嶺の花。どう考えても僕みたいな子どもになびくはずがなかったし、第一、とても背が高く、スポーツ万能で、何よりカッコイイ彼氏がいた。だから、僕はこのまま後輩の一人として話せるだけでいいと思っていたんだ。ところが、そのカッコイイ彼氏が、ある日を境にパッタリ学校にこなくなった。理由は、今はわかる。なにせ、この僕も同じ目にあったのだから…。

でも、その時の僕がそんなことを知るはずもない。別れたらしい、と言う噂を聞いて完全に舞い上がり、ある言葉が頭の中をグルグル回っていた。そう、”もしかしたら…”と。

それからと言うもの、若かった僕は露骨にアピールし始めた。周りの友達は、その彼氏のことを噂で聞いていたらしく、「あの人だけはやめておけ」「他にもいい娘はいっぱいいるじゃないか」と言ってくれていた。でも僕はもう止まらない。猪突猛進。視野狭窄。…どうしようもなく、真っ直ぐに突き進んでいった。

当然、彼女には軽くあしらわれ、はぐらかされる日々が続いた。そして夏休み。ほとんどあきらめかけていたところに彼女は現れた。カサもささず、背中まである長居神をしっとりと濡れさせながら。それからは、完全に“ロト6”の世界。僕は神様に感謝し続けた。確かにあの時は幸せだった。それはそれは、それまでの人生でなかったほどに。

今は大丈夫。空も青く広がり、町のざわめきさえ心地よく聞こえる。ご飯も食べれるようになったし、財布の中身もある。でも、一つだけ困ったことがあるんだ。背が高くて、髪が長い女の人の前では、体が言うことを聞かなくなってしまった。トラウマってやつさ。ははは………。


男と女の出会い  992233

その日は雨だった。薄暗い空の下、授業終了のチャイムが鳴り響く。みんな教室から出ては傘をさした。残ったのは僕一人。僕はかばんの中にゆっくりと荷物をつめて電気を消してから教室を出た。ドアを閉めてふと顔を上げると女の子が一人立っていた。彼女が同じ授業を受けているのは知っていた。が、僕は一度も話したことはない。僕は雨を見ながら傘をかざした。何をしてるんだろう?とは思ったが話しかける勇気が出ない。ゆっくり無駄な動きをいれながら、ついに傘を開いた。ちらっと彼女を見たが、やっぱりやめたと思った。僕は行くことにした。気まずい空気のなか歩を前に進めた。いや、話しかけよう。そう思ったとき、僕は振り返ることもせず、じっと立ったままでぽつりとつぶやいていた。
「傘、……はいる?」
しばらく沈黙があった。
「………うん」
彼女はひょこっと傘にはいった。僕らは再び歩き出した。

男と女の出会い  k002101

その日は特にお客さんが多かった日だった。環節期だったから、風邪にひいたお客が多かったからだろう.彼が病院に入ってきた時、私は周囲が見えなくなった.彼が抱いている可愛い女の子に目がいった時私はなぜか安堵の息をついた。私が知っている誰より優しかった女性に似ているあの子は大勢のお客でいちだたしくなっていた私の気分を完全に変えてしまった。
 その話しは私が19歳の時の事で、今から27年前のことだ。今の世代の若者は考えも見なかったことだろう.二年前から始まった戦争で私は19の時、自ら願って戦争の場に看護婦としていった。戦争中の医者や、看護婦は本当に人として生きていられない存在だった.私もいつ顔を洗ったかさえ忘れて仕事をするくらい仕事に追われていた.そんなところで彼は敵の人として逮捕されていた人だった。中傷までではなかったが、結構ひどい傷で苦しそうに座っていた彼は私達看護婦には怖い人で有名だった.治療してあげようとしても拒否しつつ結局誰もカもその人を治療することを諦めていた時であった。そのような日が過ぎて、私のところに新しい看護婦がやってきた.彼女はそこにいた看護婦のひとりだった.
彼女がきって三日後彼女は彼を見、彼によっていった。
 −こんにちは。ちょっと傷を診てもいいですかー
 と聞く彼女に彼はなにもいわなっかた。自分を無視する彼を彼女は黙って彼の傷を診て,痛そうなところを押した.周りのひとはみんなびっくりしたが誰も何を言ったらいいかか分からなくて黙って見ていた.彼は自分の傷を押している彼女を押しのけた。そのおような彼を見て,彼女は笑いながらこう言った.
 -痛いでしょう.このまま放置しておくともっと痛い目に会うよ.私の弟もそうだったよ。ー

 悲しげな声でいっている彼女の真心が通じたのか彼は黙って治療をもらった.


男と女の出会い  002423

それは、梅雨の時期にもかかわらずきれいな青空が広がった6月の土曜日だった。
お昼までの授業を終え、午後からクラブ活動をはじめる彼女たちは机を寄せ合って昼食をとっている。
笑い声が絶えずながれている時間。
そこへ、一人の女子生徒がニュースを持って走りこんできた。
「体育館で男バレが試合やってるって!!」
きれいに寄せられた机は、次々と出て行く人の波でぐちゃぐちゃになる。
彼女はゆっくりと立ち上がってみんなのあとを歩いていった。

体育館はうわさを聞きつけた女子生徒の歓声とチームメイトの応援であふれていた。
永遠に続きそうな死闘が繰り広げられる。
それでも試合が終わるたび、人はころころと入れ替わっていく。
喜びと悲しみが混在する場所。
しかし、だれもが生き生きとしていた。
彼女はそんな光景をただひとり静かにながめている。

そのとき、彼女はふと誰かと視線がぶつかった。
「あっ」
「おう」
一年ぶりとは思えないほど、彼は爽やかな笑顔を見せていた。
宇宙まで抜けるような青い空の下で、二人は再び未来へと歩き始める。


男と女の出会い  004207

よく晴れた昼下がり、私は何気なく公園へ行く事にした。
シートを広げて座りおいしそうにおにぎりをほうばる家族、
砂場でままごとをする女の子達。ゆるやかに時はすぎる。
その時、「ぶーぶー。ぶーぶーあげゆ。」とおぼつかない足取りで
おもちゃの車をもって小さな男の子がやってきた。
「ありがとう、、、。」
心地よい風がふき、私はどこか穏やかな気分でこの公園を去った。

男と女の出会い  002405

ガタン、ゴトン。電車がゆっくり走り出した。
空は、雲がいっぱいでどんよりしていた。
女は、ため息をついた。
後一駅……。
駅に着いたら、男は待っているだろう。
二ヶ月前、女が会わないと決心したはずだった男が…。
女が電話に出てしまったのはなぜだろうか。
ただ、誰かに支えてほしかった。甘えたかった。
誰でもよかったのかもしれない……。
ガタン、ゴットン。
駅に着いた。
女は、平静を装いながら、改札へ向かう。
いた。
男がうれしさと不安の入り混じった顔をして、立っていた。
男は女を見つけ、ゆっくり近づいてくる。
女も覚悟を決めたのか、男の方に歩いていく。
二人の距離がだんだん短くなる。
20メートル、10メートル、5メートル、1メートル……。
……と、女は男の目をまっすぐにみつめた。
「ごめんなさい。」
女は男に背を向けた。
「待てよ。」
男は女の手を握ろうとした。
女はその手を振りきって走り出した。
女の顔は笑顔になっていた。
雲だらけの空から光が少しさしこみ始めた……。

男と女の出会い  002458

ユウキは打ちこんだ。
「僕たち、一度会おうよ。」
「いいわよ。」
人々はユウキに目もくれず、忙しく行き交う。

そんな……ユウキは思った。
目の前の人物も立ち尽くしている。
ユウキの肩越しに赤い観覧車がゆっくりと回転していた。
デニムのジャケットに黒いリュック。
あの日会話した約束どおりだ。
やはり、この人がヒカルなのだ。
間違いない。
ヒカルに向かって、ユウキは初めて口を開いた。
「ヒカルさん……ですね。」
鳩が一斉に飛び立つ。
「ユウキさん……女性だったんですか。」
初めて聞くユウキの声は、甘く澄んでいた。
そして、初めて聞くヒカルの声は、低く落ち着いていた。
救急車のサイレンが、どこからともなく近づいてくる。


男と女の出会い  真木 大地002465

雨がしんしんと降り続ける中、女は、雨宿りをしていた。
そこで、雨音にかきけされそうな声で男が言った。
「車で送りましょうか」
女の顔に緊張ととまどいがうかぶ。雨音が激しくなる。二人の間に重い沈黙がながれた。女はそれをかきけすかのように一言うなずいた。
「ええ、おねがいします。」

男と女の出会い  992241

気持ちよく晴れた日だった。
町の公園には、日の光を体いっぱいに受けたつつじが咲き誇り、白くかわいらしい蝶々が一匹
ひらひらとその周りを飛び交っていた。公園の上の方にある砂場では、子供たちが手に手に
シャベルを持って、キャッキャッとはしゃぎまわり、お昼ご飯の用意をするにはまだ時間のある
お母さんたちは、ホホホッと談笑を重ねていた。公園の橋にあるベンチにぼんやりと座っていた秋彦は、半年前まで毎週のように見ていたこの光景を前に、この地に残していった様々な思い出を一つ一つ確かめていた。
秋彦が家の事情で神戸から静岡に引越して半年がたっていた。その引越しは秋彦から、十六年間住みなれた土地を奪い、十六年間隣に住んでいた夕子との別れを余儀なくした。秋彦はこの半年間、静岡の夜を何度呪い、神戸の夜を何度思ったことであろうか。
秋彦は今、さんさんと輝く太陽の下、日の光を受けてきらきら光る自分の腕時計を見て、遅すぎた約束の時間を、期待と不安を胸に待ち続けていた。秋彦が砂場の子供たちから、ふと目をそらし、左の方を見ると、遠くからこちらに向かってゆっくりと歩いてくる少女の姿が見えた。夕子だった。夕子はそのままゆっくりと、恥ずかしそうにしながら秋彦のところまで来、立ち止まった。秋彦は照れた表情を浮かべながらぎこちなく立ち上がり、夕子の少しうつむいた顔に向かって、半年ぶりに口を利いた。
「元気やった?」
「……うん。」
夕子は少しうつむいたまま、きまり悪そうに答えた。
つつじの周りにいた蝶々は、いつのまにか、夕子の後ろの地面をひらひらと飛んでいた。

男と女の出会い  992229

高校を出て一人暮らしを始めて一ヶ月、バイト以外に何をするでもなく家に閉じこもっていた。
その日は、外がすごく騒がしかった。何か暴動でも起きているようだった。と、そんな中、外から場違いなきれいな声が
「すみません、私ここのアパートの管理人なんですが。」
こんな声の人が管理人だったけと思いつつドアを開けた。
真っ赤なセーターを着た若い女性がそこに立っていた。
今思えば、本当に赤いセーターだった。

男と女の出会い  992219

最近何もいいことなんてない。
大学生といえば、大人の人は「若くていいわね」とか「今が一番楽しいときやね」と言う。
今が一番楽しいときと言うなら、これからの私の人生はどんなにつまらないものなのだろうか。

ふと、鏡を見るといつのまにか伸びきってしまった髪が目に映った。
髪切りに行こう。そう思った。

いつもの美容師さんに予約を入れ、美容院に向かう。
髪を切るのはいつもここなので、スタッフの方とも、顔見知りだ。

美容院の前まで来て、「ここに入れば私のなにかを変えてもらえるはず」そう思いながら、ドアを開ける。
「いらっしゃいませ」の声が耳に響く。
あいにく、指名した美容師さんはまだ接客中。
ちょっとムっとしながらも、なにかにつけ、タイミングの悪い自分に情けなさを感じつつ、待合い場のソファーに腰掛ける。

そこに「先にシャンプーさせてもらいます」と一人の男性が現れた。
顔を上げた瞬間、なにかが脈を打ち始めた。
見慣れないその人。どうやら、新人のアシスタントのようだ。
放心状態になりながらも、その人の後ろを追い、シャンプー台に進む。

光に満ちた世界につながるトンネルをようやく抜けられるような気がした。


男と女の出会い  992213

私は土から生まれました。本当です。その前は何だったかというとよく分かりません。暗かったり明るかったりする所にいて、薄くなったり浮かんだり、同じ所をぐるぐる回ったり…もうずっとそんなことを繰り返していたように思います。でも確かに私は存在していました。ある時私の傍で何かが弾けました。ホウセンカの種が弾けるように。
「起きて!ねえ起きてよ!お願いだよ、僕の…。」
私を呼んでいます。怒っているような泣いているような不思議な声です。それにしても、僕の…なんて、勝手に自分のものにしないで欲しいわ。ちとムッとしました。眉間にしわがよった瞬間、ぱかっと瞼が開かれました。あらでも、私に瞼や眉間なんかあったかしら?
「おはよう、僕のイヴ!!」
まず目に飛び込んだのは強烈な光でした。目が眩みました。次に目に映ったのは青空と、太陽。初めて見たはずなのに、それが何だかを知っていました。それから、変な生き物が私を覗き込んでいました。私の手(手なんかあったっけ)を力一杯握って、目を潤ませてる変な生き物が。しかも背に青空と太陽をしょっちゃってます。
「うわ〜うれしいなあ。僕はアダム。君はイヴ。今日からずっと一緒だよ。ず〜っと君を待ってたんだから…ううっ。」
笑っていたかと思ったら、泣き出しました。本能的にキモっと思ってしまいました。完全に独りの世界に入っています。ああでもこいつ、大きな瞳は青空と、髪の毛は太陽と同じ色をしています。思わず見とれてしまいました。
……ともかくも、私は風や樹や水に触れることの出来る身体と、イヴという名前を得ました。アダムは何かと私の近くにいて色んな話をしました。この世界やアダムを創ったのは神様で、アダムは長いこと独りだったこと、独りで色々な生き物に名前を付けて過ごしたこと。そして私が生まれてきてくれてうれしい、と何度も何度も繰り返しました。少々オ〜バ〜リアクションでうっとうしい奴ですが、言われて悪い気はしませんでした。
二人で森を歩きました。「あの白くてまあるいのは何?」
「あれは猫です。」
「ネコ、私もあれが良かったわ。白くてきれいだモノ。」
アダムはこの世の終わりみたいな表情をして、「に、人間はいや?」
こういうアホ〜な問答をしばらく続けていくのでしょう。
それも悪くはないかな、と私は思います。

男と女の出会い  992212

春。新しい制服。新しい教科書。新しい友達。新しい教室。
今日から私も高校生。クラス分けの掲示で自分の名前を確認する。
知ってる名前よりも知らない名前の方が多い。どきどきしながら
教室へ向かう。出席番号順に振り分けられた座席表から自分の席を
見つけた。窓際の席からは満開の桜が見える。新入生の抱く希望を
象徴するかのように咲き誇る桜。そこに不意に、後ろから声を
かけられた。
「あ、君、同じ塾だったよね?良かった。このクラス、知ってる
やつがいなくてさ。」
振り返ると、さわやかな笑顔がそこにあった。うちの中学では
かっこいいと評判だった彼。
「仲良くしようね。」
春。新しい制服。新しい教科書。新しい友達。新しい友達。
そして……新しい恋!

男と女の出会い  994352

新入生オリエンテーション
はしゃぐ新入生の中で女は少し退屈していた。同回生がひどく子どもに見えた。大学に訳も無く期待を抱き、ただ浮かれている。
「あ、あのー。家庭教師の登録してもらえませんか?」
不意に声をかけられ、女はすばやく振り向いた。
「え、いやー。あの……」
自分の返答に恥じらい意を感じて女はよそ見を下が、嫌な感じはしなかった。
男は少し無精ひげを伸ばし、だらしない感じたが、ひとなつっこそうに話しかけてくる。少しクールに構えながらも他の新入生のようにはしゃいでいた。

男と女の出会い  992234

真夏の夜の夢

今年の最高気温を記録する日だった。
じっとしていても汗が吹き出してくる。おれは裸だった。肌がじりじりと熱い。皮膚の下でメラニン色素が焦げついていくのがよくわかる。耐えきれず、水の方へかけだした。
海は、海面が上昇するかと思うほど人で溢れかえっていた。子供と遊ぶお母さん。女と戯れる金髪の男。水しぶきが激しくあがっている。
おれの目的はただ一つ。そう、この夏を、いや今日の夜を共に過ごしてくれる女の子をつかまえる。おれの目は海水にしみ、血走っていたかもしれない。
しばらくして、おれは背中を海面から出して泳ぐ、やつを見つけた。つるっと光るきれいな肌だ。なんと、そいつの方から近づいてくるではないか。ついに顔をおがむことができた。しかし、それもほんの一瞬のことだった。
これが、おれとそいつとの最初で最後の出会いとなった。こうして、おれはこの夏、そいつに食われた。

男と女の出会い  002473

男はたたずんでいた。雨に打たれながら。それでも男はたたずんでいた。今し方去っていった人の姿がそこにいるかのように一方向を見つめていた。男の心は寂しさに震えていた。
その時だった。男の頭上の雨が突然止んだ。男はふと上を見た。そこにあったのは真っ赤な傘だった。さしてくれていたのは見知らぬ女だった。
「どうしたんですか?風邪をひきますよ。この傘を使ってください」女が言った。
「あっ……。」男は言葉を失った。女は傘を男に渡して走って行った。それが彼女との最初の出会いだった。

男と女の出会い  992245

男は成田空港行きの飛行機に乗っていた。
この春、ようやく3年間の海外赴任生活を終え、妻と娘の待つ東京へ帰る途中である。
これまでも、何度か日本には帰っていた。
家族と会うのは、今年のお正月以来である。
でも、今回は今までとは違う。
今度は、もう戻らなくでもいい。
ずっと妻と娘と一緒なのだ。
男は、飛行機の窓から見える雲を見ながら、家族の顔を思い出していた。

日本へ帰ってきた。
妻と娘が待つ東京へ帰ってきた。
妻が手を振っているのが見えた。
娘が走ってくるのが見えた。
男も思わず駆け出した。
「お帰りなさい、お父さん。」
「…ただいま。」


男と女の出会い  992215

肌寒さを感じ始めていた十月のある日、いつも通り学校から帰ると思いがけず彼女はいた。
彼女が来ることを知らされていなかった男は驚きと戸惑いで一瞬体の動きを止めた。
しかし、次の瞬間、男は持っていた荷物を投げ捨てるように置き、彼女の元へ駆け寄った。
すやすやと彼女は眠っていた。男はその寝顔を嬉しそうに覗き込んでいる。
三人兄弟の末っ子であるこの男が小さい頃から願いつつも叶わないものだと諦めていた願いを思いがけず七歳年上の姉が叶えてくれた。
「妹」という形では叶わなかったが「姪(めい)」という形で、男は兄としてではなく叔父として願い続けていた出会いを果たした。
若くして叔父となったその男は小さな彼女の横に寝転び、彼女が目を覚まし叔父である自分との本当の意味での出会いを果たす瞬間を今か今かと嬉しさを隠し切れない様子で待っている。

男と女の出会い  002486

彼と初めて出会ったのは真夏の暑い日だった
Tシャツを脱いだ彼の上半身には、バスケットで鍛えられた筋肉が惜しみなく
ついていた

かっこよかった

  あ……名前聞くの忘れちゃった……

次は名前を聞きに彼に会いに行こう……


男と女の出会い  002478

彼に出会って彼女はかわった。
彼女の目に映るものすべてが、初めて鮮やかな色をもった。

彼と彼女との出会いは、本当にありふれたもの。
ただ、そのありふれたものが、彼女にとっては特別だった。

彼に出会うまで、彼女の世界は小さく、小さく閉ざされていた。
外界の光なんて、一切うけつけはしなかった。
彼女は、それでいいと思っていた。
どうせ、楽しいことなんて何もない……。

彼女の世界を、彼は変えた。
何も特別なことなんてしていない。
ただ、気が付けばいつもそばにいた。
そのことが、彼女を癒してくれた。
それだけで、もう十分だった。

彼に出会って彼女はかわった。


男と女の出会い  002482

目が覚めると男はベッドの上で寝ていた。
(ここはどこだろう?)
そう思っていると静かにドアが開き一人の女が入ってきた。
女は男の方をじっと見ていたが男が目覚めた事に気がつくと
近寄って来た。
「あなたは誰ですか?」
男が尋ねると女はゆっくりと静かに話しだした。
「あなたは三日前に私をかばって事故に遭ったんです。
 それでこの病院に。でもよかった意識が戻って……」
そう言うと涙を流して喜んだ。
男がまわりを見渡すと窓辺の花瓶に花がかざってあった。

男と女の出会い 1  松島容子 992242

何も変わりばえのしない朝だった。
いつも台所で1人だけ忙しそうに働いている人の、
その姿が見えないことを除いては。
女は自分でトーストを焼き、コーヒーをいれていた。
いつものおいしいコーヒーをいれる気はしなかったのでインスタントにした。
食事を始めたときに男が新聞を持って食卓に現れた。
男のスリッパの音は重々しく、その音が聞こえるだけで女は憂鬱になった。
椅子に座り、新聞を広げる男を尻目に女はトーストをかじる。
静かな朝の時間がまとわりつくようで女は嫌だった。
コーヒーをのもうとしたと瞬間、男が口を開いた。
「ママにもお前にもすまないことをしたと思っている。」
女は謝罪の言葉に顔を上げた。
視線の先に初めて見る寂しげ男の顔があった。
その表情に20数年見てきた姿とは別の、
男の真実の姿に出会えたような錯覚を覚えた。
女は、予想外の出来事にざわつく胸を落ち着けるように、
コーヒーを口に含んだ。
女の中に、いつもとちがうコーヒーの香りが膨らんだ。

男と女の出会いの場面  001503

少女、6歳の冬……。

外はちらちらと雪の舞い散る白銀の世界。
中は消毒液の匂いのする真っ白な床、扉、壁、天井。

大きな扉の前。
私の横にはお父さんが座っている。
私の手を握り、じっと目をつむり、身じろぎもせず座っている。
まるで祈るかのように……。
私は、ワクワク、ドキドキ、胸を躍らせながら……。

1時間ほど前。
突然、お母さんはお腹をおさえて苦しみ出した。
「痛い、痛い。」と言いながら。
お父さんはあわててお母さんを車に乗せようとした。
でも……外は真っ白。
お父さんは家にとってかえし、電話する。
「1・1・9」
ピ−ポ−、ピ−ポ−……
お母さんを乗せ、お父さんと私を乗せ、救急車は病院に到着した。

「ンギャ−。ホンギャ−。」
扉の向こうから泣き声が……。
お父さんはパッと立ち上がった。
それと同時に目の前の扉が開いた。
看護婦さんが中へ導く。
ベッドに横たわるお母さんの傍らには赤ちゃんを抱いた看護婦さんがたっていた。
「元気な女の子ですよ。」
お父さんは満面の笑みをたたえて私の妹を見下ろした。


男どき女どき  994352

向田邦子の随筆は、とても読みやすい。
会話分が少なく、描写や出来事の記述で淡々と進んでいくからだ。……というと、
淡白な作品であるかのように聞こえるかもしれないが、こいう記述でありつつ奥が
深い。というのがこの作品の持ち味なのだろう。また、情景描写が感傷的にならず
に描かれている所も1つの特徴言えよう。特に読みたい本は見つからないが、何か
本を読みたい時や、随筆の書き方を学びたい時、この本がおすすめだと思う。

男女の出会い  002427

 少年は今小学5年生。同じクラスの女の子のことが好きだった。でももうすぐ引っ越さないといけないからもう会えなくなる。
 そして、引っ越しの日がやってきた。あの子にはバイバイも言えないまま離ればなれになった。
 時は流れ、彼は現在23歳。福岡に転校したなだったが、大阪で就職した。毎日営業で街を歩き回った。
 ある日、ある会社へ行ったとき、相手をしてくれた女性がいた。初対面のはずなのにそうじゃない気がした。
 「もしかして……大田さん?」「もしかして……橋本くん?」
 その彼女は小学校の時に思いを寄せていたあの彼女だった。
 2人はそれから付き合うようになり、3年後結婚した。
 

男女の出会い  992211

12月だというのにその日は暖かい日だった。やわらかな日ざしに誘われるように僕は家の近くの公園へやってきた。そして、誰もいない木かげのベンチに腰をおろした。最近、僕は何に対しても無気力だ。もう全てがどうでもいいと思ってしまう。別にこれといった理由はないのだが何かモヤモヤした得体の知れないものが僕をそういった感情にさせていた。もういっそう死んでしまえば楽なのかなとさえ思っていた。ちょうどその日もそんなことをぼんやりとベンチに座りながら考えていた。暖かな日ざしに包まれながら僕は死ぬことを考えていたんだ。
そんな時、目の前に少女が突然あらわれた。すると、その少女はすっと自分の右手を僕の前に差し出してこう言った。
「あなた、命いらないんならあたしにちょうだい。」
僕はびっくりして自分の耳を疑った。
「聞こえなかった?あなた、命いらないんでしょ?顔にかいてあるわ。いらないんなら、あたし
 にちょうだい。あたし、もうすぐ死ぬんだって。ママとお医者さまが話してるのを聞いたの。
 だから、あたしがあなたの分まで生きてあげる……」と手を差し伸べたまままた言った。
僕が返事に困ってるのを悟った彼女は
「なーんてね。そんなことできればいいのにね……。」
と悲しげな笑みを浮かべた。そして、
「突然、変なこと言ってごめんなさい。あなた、今にも死んじゃいそうだったから思わず言っちゃったの。でも、あなたは生きれるんだからいっぱい生きて。あたしもたとえすくなくてもいっぱい生きるから。じゃあね。」
そう言って少女は去って行った。その後ろ姿を見送りながら、僕の中で何かが確かに変わろうとしていた。
 ある冬の1コマ。こんな軽い出会いが僕にとっては運命的なものになったんだ。
 ……これが僕と彼女との出会いだったんだ。全てはここから始まったんだ。……
                      

男女の出会い  992244

ぼくには親がいない。ものごころついた時からいなかった。だから、小さい時からさみしい思いはたくさんした。しかし、「親はなくても子は育つ」と言うが、そのとおりである。性格は保証できないが、ぼくも大人になることができた。3年前知り合った女性(もう妻である)とのあいだに、子供もできた。
「オギャーオギャー」。妻のあの苦しそうな顔をみるだけでぼくは我慢できず、部屋の前で待つことにした。不安で一杯だった。親のいない自分に子供ができることや、妻と子供の体のことなど頭がパニックであった。しかし、その不安もすぐに消えることになった。産声が聞こえたのである。いても立ってもいられず部屋に飛び込んだ。目の前に看護婦さんが小さな女の子を抱えていた。(女の子と言うのは前から病院から聞いて知っていた)看護婦さんから子供をだかせてもらった。熱いものが頬をつたった。「さみしい思いはさせないからな」とぼくは女の子にいった。女の子はぼくに「うぱー」といった。

男女の出会い  004203

よく晴れた春の日のことだった。笑い声のするその方向を見ると、笑顔で話す人がいた。それは私が今までに見たことがないような、まぶしい笑顔だった。こんなに気持ちの良い笑い方をする人がいるんだ……その笑顔は、まわりの人を幸せにするような、そんな力があった。その人は初めて会う人なのに、ずっと前から知り合いだったような感じさえもした。
「はじめまして。新入生?俺もやねん、よろしくな。」
「よろしく。」
人見知りの激しい私なのに、なぜか普通に話せた。
あれから4年、その日のことは昨日のように思い出せる。そして、はなればなれになった今でも、その笑顔もその人も、私のかけがえのないものとなっている。 

男女の出会い  002442

夏休みが終わって、久しぶりに学校の帰り道にあるコンビニに入った。いつものように少し雑誌を立ち読みして、肉まんを2つ買って店内を出た。財布から学生証を落としたことには気付かないままで……。わたしがそのことに気付いたのは、その日の晩だった。明日の授業の予習をしていると、インターホンがなった。ドアを開けると見知らぬ男の子が立っていた。歳は17,8歳だろうか。わたしが少し驚いた様子を見せると、彼は礼儀正しく事情を説明してくれた。どうやら彼はこの近くに住んでいたため、拾った学生証をわざわざ届けてくれたらしい。彼はそのまま帰ろうとしたので、わたしは思わず彼の腕をつかんだ。彼は驚いて私を見た。「ありがとうって言ってなかったから……。」
私はまた偶然このコンビニで彼と再会した。

男女の出会い  002434

前からあの人が近づいてくる。
深呼吸する。
おはよう!
こう言い合うのが朝の日課になっていた。すれ違う瞬間、それが一日のうちでも最高の時間。
今日も一日が始まる。

ジョギングしながらあいさつしてくれるあの笑顔が、終日頭から離れない。
朝が待ち遠しい。

今日もあの人が近づいてくる。白い息を吐きながら。
……そして私の前でとまる……!!!
「おはよう。いつも会うね。」
「………はいっ!」
すぐに言葉が出てこなかった。しかしこの上ない笑顔で答えた。

私の心はこの雲一つない空のように澄みきっていた。
今日も一日が始まる。


男女の出会い  992217

1994年、日本の海岸に1人の青年が流れ着いた。
彼の胸には3発の銃弾が今も残っている。
右腕は痺れたままで動かすことが出来ない。

彼は1944年、南国の島でメリケンの兵士に撃たれて死んだ。
御国の為に死ぬのではなく、貴女の為に必ず生きて還ってきますと誓った
恋人への想いが強過ぎて、この世を離れられなかった日本兵の亡霊なのだ。

飛び散る血飛沫。燃え落ちていく太陽。
そして、太陽よりもゆっくりと倒れる若い日本兵。
彼は遠退いていく意識の中で故郷の恋人の手を握り、
涙を流す彼女を見つめてつぶやいた。

 貴女を幸福にしてあげたかったのに。
 必ず貴女を幸福にしてあげたかったのに。
 今度生まれ変わったら、来世ではきっと……!!

青年は2000年の今夜も恋人を探して街を彷徨い歩く。

そして……やっと見つけた。

彼女は真っ赤なドレスを着て、
腰まである髪の隙間から香水の香る背中を覗かせながら、
道行く男たちに声を掛けていた。

 こんな所にいたんだね。
 僕はどんなに貴女を探したか知れない。
 さあ、行こう。


男女の出会い  002107

6月になった。桜の木もピンクから緑にすっかり変えた。
入学式からあわただしく過ごしていた新入生たちもようやく学校生活に慣れてきたようである。
今は放課後、クラブの練習が始まっていた。グラウンドには新しい顔が混じっている。
もう少しもすれば、あの中に完全に溶け込むのだろう。
少女はそんな事を考えていた風で、じっとグラウンドの方を見つめていた。
彼女はクラブに入っていなかった。クラブ勧誘の際まごまごしていて機会を失ってしまったのである。そのまま入らずに1年が過ぎた。何かを始めたい、そういう気持ちは十分にあるのだが、時期外れのこの時に、しかももう2年生なのに、と思い切りがつかなかった。
今日もグラウンドと体育館をのぞいてそのまま何事もなく帰るつもりだった。
教室からでようとすると白衣を着た教師が少女を呼び止めた。知らない先生だが理科の先生には間違いない。
「先生、何かごようですか?」
「ああ君、化学部に入ってみる気はありませんか?」
少女は先生の言葉にあっけにとられ言葉が出なかった、わけがわからない。
先生の話によると、現在化学部は3年生だけが4名、このままでは来年には廃部になってしまう。
そこで誰か入部させられるものはいないかと探したところ、彼女に白羽の矢が立ったのだそうだ。少女は何かやりたいとは思っていたけどまさか化学部なんて……と思ったが、また、
でもこれはチャンスなのかもしれないとも思った。
この先生との出会いに感謝すべき……なのかもしれない。

(一部事実あり)


男女の出会い  002490


誰もいなくなった放課後の教室の窓から、今日も私は友達と二人でグラウンドを眺めていた。気になっている先輩を見つけた友達は、頬を赤くしながらはしゃいでいた。その横で、私はいつもぼんやりと外の景色を見ていた。
その時である。
懸命にサッカーボールを追う一人の男の子と目が合った。一瞬の出来事だった。何が起きたのか分からなかった。本当に目が合ったのかさえも分からなかった。
でも、そんな気がしたのだ。
次の日から、無邪気にはしゃぐ友達の隣で少し頬を染めながら窓の外を見つめる私がいた。

男女の出会い  002404

 ある秋の日のことでした。白いセーターを着た女性が白いベンチに座って読書をしていまた。そばには大きなイチョウの木があって、時折の柔らかなそよ風にその黄色の葉っぱをはらはらと散らせていました。そのせいでそこらじゅうがイチョウの葉で覆われ、まるで金色のじゅうたんを敷いたみたいでした。
 ふと、彼女のほほを涙が一筋伝いました。読んでいた本に感動したのでしょうか。今度はもう片方のほほを涙が伝っていきました。「だいじょうぶ?」そのこえにおどろいて彼女が顔を上げると、青いセーターを着た男の子が心配そうな顔をして、ハンカチを差し出していました。彼女は微笑んで、それからハンカチを受け取り涙をぬぐって、「ありがとう。」と言って男の子に返しました。男の子は安心したのか、にっこりと笑って受け取りました。それは白くてやわらかいハンカチでした。

男女の出会い  992205

 ぼくは、もうすぐ初めて君に会う。なんだか変な気分だな。会いたいな、でも、ちょっと、さみしいな。
 外の寒さのせいか、気持ちの高ぶりのせいか、彼のほおは紅潮していた。
 年に二度ほどしか会えない祖母が、隣にいる。
 いつも、ぼくたちが遊びに行く側なのに。
 彼は、田舎にいない祖母をみるのも、手ぬぐいのかわりにネックレスをかけた祖母をみるのもはじめてだった。
 ああ、まだかな。でも、本当に人間なのかな。お母さんと、あの赤ずきんのおおかみは同じ?本当は、どっかから買ってきて、それで、お母さんは、「食べた」のかな。でも、ぼくはお母さんがそんなことしてるの見たことないし、あれ、じゃあ、ぼくも、食べられたの?でも、お母さんが食べるのは、ご飯ややきそばやホットケーキや……。
 「−−−−−」
 その時かれの耳にきこえた、声でない、初めての声。今まで何度もまわりから言われた言葉を、声に出してつぶやいた。
 「おにいちゃん。」
 そして、君に会いに行く。 

男女の出会い  992202

 夏も終わり、ちらほら黄色く染まった葉が見え始めた縁側に、老人が一人座っている。時折吹く冷たい風にも動じず、ただぼんやりと庭を見つめていた。10年前に奥さんを亡くして以来生きがいを失った老人は、毎日のように縁側に座り庭を見つめ、フッと何かを思い出したかと思うと、またじっと庭を見つめるばかりだ。
 「今日はいいことがあったんですか、おじいさん。」
息子の嫁が、洗濯物を抱えて廊下を通り過ぎていった。老人の顔は、いつもの生気のない表情とは違い、とても幸せそうな笑顔だったのである。
   一瞬目の前が光り、眩しくて目が開けられない老人の耳に聞こえたのは…
   「あなた…」
   そっと目を開けると若い女性が立っていた。それは懐かしいあの日の顔。あの出会った日の君。
   若い女性に手を引かれ、青年は空のあちらえ消えていった。
 「おじいさん、そんなところで寝たら風邪ひきますよ。微笑みながら寝るなんて…いい夢でも見てるのかしら。」
      

男女の出会い  992204

 男の妻が病院に運ばれてからもう十数時間が経とうとしていた。
男は病院の廊下を行ったり来たりし、とても落ち着いて座ってはいられなかった。
ガラス窓から差す真夏の真っ赤な夕焼けが緊張と不安の入り混じった男の横顔を照らしている。
(一体いつまで待てば良いのか。)と考えていた時だった。
大きな産声が病院に響き渡った。
男ははっとし、分娩室から出てくる妻に駆け寄った。
妻はうっすらと涙を浮かべて優しく微笑んでいた。
その横には看護婦に抱かれた赤ちゃんがいた。
看護婦から女児であることを聞かされた男は娘にそっと触れた。
その赤ちゃんは「ふぎゃぁ」と泣き出した。
その泣き声に男は命を感じていた。
そして「産まれてきてくれて、ありがとう。」とだけ言った。
男の頬をつたって流れる涙は赤く煌めいていた。

男女の出会い  002415

……着いた。約束の〜〜港に……。
まだ冬の寒さが残る中、寒がりのくせに知子は車から出、地平線をじっと見つめた。
海にはまだ何の影も見えてない。一面、青……。

……ちょっと早く来すぎたカナ……。どんな風になってるのカナ……。一年振りだも
ん、変わってるヨね。……でも、変わっててほしくないな……。

そう、ちょうど一年前、この港で知子たちは別れた。その頃の知子はまだまだ幼か
った。どれだけ、その人が大切か分かってなかった。それに、その時は片道2時間
が遠かったのだ。
でも、別れて気付いた……。
どれだけその人が大切か。
物理的な距離より何より、心の距離が広がっちゃう事が、どんなに辛いか、どんな
に悲しいか……。

……この一年間、すごく苦しくってどうしようもない時もあったけど、私、あなたに
誇れる自分になれるように頑張ってきたヨ。
ちょっとは奇麗になれたカナ。ちょっとはいい女になれたカナ。
……今思うと、この一年、アッという間だった気もするな……。

 不安……期待……期待……不安……

……あっ……。

地平線の彼方に船が見えた。真っ赤に染まった海の上を、ゆっくりゆっくり近づいて
くる。一年前は遠去かって行った船が、今は近づいてきている。

胸が高鳴る。それ迄、色々考えていたのが嘘のように、知子の心は真っ白になってい
た。

船が着いた。夕日が眩しい。

そして、
光の中に、黒い影が見えてきた。

……変わってない……!!

知子の目には涙が溢れそうになっていたが、必死で止めた。


男女の出会い  002471

(茶髪にパーマ、いかにも軽薄そうな口角。
しかも尊敬する清先生の授業もほとんど寝てる。
たしかに男前かしらんけど、あたしはこういうう奴、大っ嫌い。)

女は席替えで当たった席にいったとき、後ろに座っている男を見ながら
そう思った。

あまり見たくないので、後ろは極力向かないようにして
席に座った時、男は人には聞かれないようにこういった。

「自分…チャックあいてるで?」

「!!!!」
女は驚愕した。セーラーの脇のチャックが全開だったのだ。
「…あ、ありがとう…」

女の男への第一印象が逆恨みとは言え、最低になったことは言うまでもない。


男女の出会い  001508

「おじいちゃん、おっはよ〜!!!」
少女はいつものように、学校への道すがら、田んぼの中にいる近所のおじいちゃんに声をかけた。おじいちゃんは、毎日朝早くから田んぼに出かけ、稲の世話をしている。
「おう!おはよう。今日もおてんとうさんが気持ちよかねえ。学校、しっかり頑張ってくんだべ〜。」
「は〜い!!」
これは、少女とおじいちゃんの毎朝の日課である。
あきの空が高く、おてんとうさんが二人をそっと見守っている。

男女の出会い  矢野敬介

「お世話になりました。」男は看守に深く頭を下げた。塀の外はほっとするような小春日和だった。男は娑婆の空気を思い切り吸い込み、そしてゆっくりと吐いた。ふと男は近くに誰か立っているような気がした。やはり、そこには女が立っていた。
女の髪にはもう白いものが混じっていた。女は目にうっすらと涙を浮かべながら言った。「おかえりなさい。」 女は男の胸に飛び込み、泣いた。男はそっと女の肩を包みこんだ。二人の長い空白はゆっくりと消えていった。

男女の出会い  992226

「ごめん。待った?」
 聞き慣れた声に顔を上げると、見慣れた晋吾の笑顔があった。笑うと、両頬にくっきり皺ができる。
 晋吾に初めて会ったのも、このドーナツ屋だった。

 時計に目を遣ると、約束の時間の10分前。辺りを見回しても、それらしき男はいない。紺色のパーカーを着た男は。
 店内には、女の人ばかりだ。明るいおしゃべりの声とドーナツの甘い香りとが、この空間を満たしていた。
 温かい室内に対して、窓の外はかなり寒そうだ。通行人はみな、下を向き、逃げるかのように足早に歩いていた。
 何杯目かのコーヒーを飲みながら、こんな所へひょこひょこやって来たことに、私は後悔をした。メールの言葉につられて来てしまった。
「会ってみませんか?」
 ばかげている。なんでこんなにも早くから待っているのだろう?誘われた方が先に来てどうするのよ。からかわれているだけかもしれないのに。メールで知り合った男なんて。
「あのー。愛子さん?」
 突然声をかけられ、驚いて顔を上げると、背の高い男が立っていた。紺色のパーカーだ。
「よかった。女の人がいっぱいで、ピンクのセーターを着ている人探すの、大変だった。もしかして、かなり待った?」
 その男は私が何も言わないうちから、ペラペラとしゃべり、呆然と見上げている私に笑顔を見せた。両頬にはくっきり皺ができていた。

 気がつくと、ドーナツを買い終えた晋吾が席につこうとしていた。トレイには、ドーナツ2つとコーヒーがのっている。
「おまえ、なにぼーっとしてんの?」
 また、2月が来た。初めて出会った月。 


男女の出会い  002483

「学校、遠いなぁ」
いつものように、学校までの長い道程を、延々と揺られながら電車にのっていた。
毎朝、同じ電車で同じコース、うんざりする日々。
一人、うとうとしながら横の席を見ると……
同じように、毎日に退屈しているような彼がいた。
私の下車駅を通り過ぎ、彼が降りる駅まで来てしまった。
……どうしよう……
「……どこの学校に通ってるの?」
と、消えかかった声で勇気を出してみた。
「……えっ、XXだけど……俺、知ってたよ。
  いつも、同じ電車に乗ってるよね。」

これから、同じ繰り返しだった毎日が楽しくなりそう。

男女の出会い  992239

「久しぶり。」
「お、久しぶり。」
そんなに親しかったわけでもないのに、声をかけてくれた。
中学校の頃の同級生。
かなり偶然。たまたま乗った電車の真向かいに座っていた。
変わってないなぁ。相変わらずまつげが長い。
ちょっとどきどきした30分間。
また会えるといいなぁ。

男女の出会い  992207

「雪……」
そう一人でつぶやいて見上げた空から、シュガーパウダーのような雪が舞い降りてきた。
この地方で雪が降るなんて、一体何年ぶりのことなんだろう。
学校へ行って、バイトをして……そんな単調で退屈な毎日を過ごし、いつのまにか二十歳を超えて、「大人」と呼ばれるようになってしまった。
中身はまだまだ子供のままなのにな……。
マフラーを鼻まであげて、マンションの階段を一段ずつ慣れないヒールで昇っていく。
自分の足音じゃないみたい。
背伸びをして、素直になれない。
今空を舞うこの雪のように、真っ白になれたら……。
コツンコツンコツンコツン……。
「随分帰ってくるのがおそいねえ。」
どこかで聞き覚えのある声。
ふと顔をあげると、見たことのない男の人がうちの家の前に立っている。
年のコロは24、5というところ。
その人はキョトンとしたままの私の方へ歩み寄ってニコっと微笑んだ。
似てる……。
そう、その人の笑顔は死んだおじいちゃんにそっくりだった。

男女の出会い  002103

あの日初めて2人は出会った。

今まで同じ街に住んでいながら決して出会うことのなかった2人。
あの日あの時までお互いの存在さえ知らなかった。

僕は1番ホームに立ち自分の足元を見つめていた。
何となく視線を上げたとき、すべての時間が止まった。

向かい側のホームから僕を見つめる彼女。
穏やかな日差しが僕たちだけを包み込む。

僕はその時確かに感じた。
止めることのできない何かが動き出していたことを。
そして2人は永遠だということを。

2人の間を電車が通っていった。
2人の視線は離れることはない。

幸せだった。
彼女と出会えたことが。
そう。
あの日初めて2人は出会うことができたのだから。


男女の出会い  992248

あるアイフルでの出来事。
澄み渡る空、白い雲。
「当店ではお客様のお立場にたって考えております。」
「親御さんのように、恋人のように、、、」
「恋人のようにですか?」
「えっ、、、」

話せるアコ〜ム♪


男女の出会い  992206

ある高校の入学式。誰も皆、期待に満ちた顔をしている。
そんな中で、一人場違いな暗い顔をしている少女が歩いている。
何浮かれた顔してるのよ、ばかみたい。
そもそも、少女はこの学校への入学なぞ希望していなかったのだ。
しかし、突然の両親の離婚。大好きだった父は、少女が捧げた愛情に応えず家を去って行った。
心弱い母は、父のいなくなった家で少女とたった二人きりで都心に住むことが耐えられず、
少女の中学卒業を機についに実家に帰ってきてしまったのだ。
父が最後に告げた言葉がまとわりつく。私は強くなんかない。お父さんの代わりにお母さんを
守るなんてできない。友達や母の前ではいつも強がっていたが、本当は誰かに守って欲しい。
大好きな桜が咲き乱れる季節。いつも心躍らせて見ていたのに、もう見れない。
世界は少女にとって、色の無いものとなっていた。少女は灰色の世界で生きていた。
突然少女にハンカチが差し出された。驚いて横を見ると、少し大きめの制服をきた少年が
立っていた。
「何ですか?」困惑しながら、少女が聞いた。
「何だか、泣いてるように見えたから…。大丈夫?」
もちろん少女は泣いてなどいなかった。完璧に気持ちを押さえていたつもりだった。
少女に泣くことは許されなかった。少女に求められたのは、泣いてばかりの母親を支える役割
だったのだ。でも…、本当はずっと泣きたかったのだ。
少年の瞳が心配げに揺れる。その顔が歪んで見えなくなっていった。
少女は、声をあげて泣いた。そんな少女の傍に少年は何も聞かずただじっと立っていた。
少女は、安心して泣き続けた。そこにいるのは、母を守ろうと一生懸命肩を張っていた気の強い少女ではなく、傷つきやすい女の子だった。
やっと少女が泣き止み、少年を見上げると少年はにっこり微笑んだ。
その時、新入生を呼ぶアナウンスが流れた。
「行こうか。」少年はそう言って少女に手を差し出した。少女は戸惑いながらその手をとった。
突然風が吹き、桜の花びらが一面に無い散る。振り向いた少女の目には、ピンク色した花びらが
風の中を踊ってる様が確かに映った。少女はにっこり微笑むと、少年としっかり手をつなぎ
希望に満ちた顔の新入生の輪の中に駆けていった。

  P.S書き出すと止まらなくなり、かなり長くなりました。すみません。


男女の出会い  002408

ある雪が降りつつ゛ける日の夕方。普段より少し帰りが遅くなり、彼は積もった雪に足をとられないように気遣いながら家路をいそいでいた。20分ほど歩いたころ、前方から助けを求める声が聞こえてきた。驚いて声のする方に行ってみると道からはずれた所で女性が雪に埋まっていた。彼はすぐにその女性を引き上げ、助けた。「ありがとうございますー。近道をしたら雪に埋まってしまって……。」これが彼とこの女性との出会いとなった。

男女の出会い  994353

この人いい感じ
ざわざわしている春の教室で
あんたはあの時周りの全ての女に声をかけてた
いい人だ
友達になろう

この人無邪気
私の部屋で
あんたはちょっとずうずうしい
かわいい人だ
彼女になろう


男女の出会い  992227

たった独りの教室の中、葉に降り掛かる水の音だけが響いている。
充分に水を含んだ土を確認して、わたしはじょうろを置いた。
 何気なく置かれた教室の植木鉢。誰にも目を止められないまま少しづつ元気を
無くしていくような葉っぱが気になって、放課後に水をやり続けてる。
まるでわたしみたいなんだ。綺麗な花を咲かせるわけじゃない、だからって
誰かに迷惑かけてるわけでもない。周りから気にも止められず、ただそこにいるだけ。
 静かな教室。まるで誰もいないみたいに……。

 急に。

ガラッって音と一緒にドアが開いた。
「まだ残っていたのか。…おっ。」
先生は手に持っていたじょうろと、わたしの足下のそれを見比べた。
「先越されたな。」
そう言って、濡れた葉っぱを覗き込む。……先生はこの植木鉢に気づいていたの?
「これ、柊に似てるよな。」
「わたしに……?」
驚いて、顔を上げた。先生は笑って私を見ている。
「おとなしくて、ひっそりしてて。でも何でだか見てると和むんだよな。
こいつに水やってるのもそうだけど、友達の怪我の手当てしたり、学級の本直して
くれたり、本当に優しい子だと思っていたよ。」
わたしは、今初めて出会ったような気分で先生を見上げた。何故だか涙が溢れてくる。
 わたしの気づかない所で、わたしに出会ってくれている人がいることを、
今初めて知った。

 そうして先生は、いつまでも涙の止まらないわたしの頭を優しく撫でてくれていた。


男女の出会い  002457

つまらない毎日……
同じことの繰り返し……
私は今日も、電車に乗って学校に行って、授業を受けて家に帰ってきた。
いつものようにテレビを見ていると、プルルルル……とメールを知らせる
携帯の着信メロディーが鳴り響いた。
「元気??」
知らない番号からだ。
いつもなら無視しているが、なんだか無償に胸が騒いだ。
「間違ってますよ。」
私は、こうメールした。
「ごめんなさい。1つ押し間違えてた。」
これから2人は輝かしい毎日を送ることになる

男女の出会い  002475

ぼくは、おばあちゃんに手をひかれ、病院のろうかをあるく。
なんだか、今日の病院は、いつもぼくがしんどくて行くときと様子がちがう。
ろうかとか、看護婦さんの制服が、すごくまぶしくて光ってみえる。
おにいちゃん、か…。うん、わるくないひびきだ。
おばあちゃんの歩みがとまる。
さあ、ご対面だあ!...ん?
あれ、ぶちゃいくだなあ。人間じゃないみたい。
あは、でも..ちょっとかわいいかも〜!
「おーい、おにいちゃんだぞう。」ぼくは小さな声で言ってみた。

                                                      


男女の出会い  吉原直子

もう今年で63歳になる。都会へでて働き、結婚して子供も二人いる。もうすぐ孫もできそうな勢いだ。
しめっぽい風が私の顔をなでた。そう、夏だ。
夏がくると必ず思い出す。1945年8月15日。終戦。
戦争が終わった時、私の村は新しい空気に包まれた。しかし、アメリカのゼロ戦が残った爆弾を村に落としていった。それが私の小学校に直撃したのだった。
その時のことが気がかりで仕方なかった。今でも…… 大好きだった先生のこと、友達のこと。緑の森のなかにある古い学校、そこには誰もいるはずはなかった。でも、いってみよう…
 やはり誰もいなかった。何もなかった。そこには爽やかな風がふいていた。校舎のあたりで目をつぶる。
 ノースリーブに半ズボンの子、シャツにスカートの子……。そしてもんぺの先生……。
「なんだみんないるじゃないか。」死んだはずの仲間が「元気でやってるか?」「頑張れよ!俺の分まで生きろよ!」「元気でね!」という。先生は「君はみんなの分しっかりいきるのよ。」とやさしく言った。 みんなおかしいことを言うなあ……。
 セミの声で目が覚め、大好きだった先生にみんなに再会したようなきがした。都会で生きてる私は生きる喜びを忘れかけていた。先生が、みんなが教えてくれた。
ありがとう。

男女の出会い  992224

カチッ、カチッ。
時を刻む秒針の音だけが僕の耳に入ってくる。
どれくらい僕はこの椅子で待っているだろう。

不安、、、、、期待。

期待、、、、、不安。

ガチャッ

目の前の扉が開いた。
「元気な女の子です。」

僕の娘だ。涙がこぼれた。


男女の出会い  002448

キーンコーンカーンコーン……。
今日は席替えの日だ。『めんどくさいなあ。8番席はどこよお。ああっ、教卓の前〜。』
新学期そうそうついてない。私は、1番後ろの席から1番前の席へ、重い足を引きずりながらしぶしぶ移動した。
隣の席には誰かがもう座っている。
「おっ、隣になるの初めてだな。よろしく。」
少し日にすけた頭がふりむいた。
――ドキン。『こいつこんなにカッコ良かったっけ。』
「――よろしく……。」
少し緊張気味の私をよそに、彼は無邪気な笑顔を私に見せ、男の子達の群がるグランドへかけていった。
『星占いでもみよっかな。』
嬉しい気持ちを隠しきれず、足早本屋へ向かう彼女がいるのだった。

男女の出会い  992230

コンパの席でヘビースモーカーの男は周りに全く気を使わずプカプカと輪っかをつくっている。不幸にもその正面にはタバコを嫌う女がいる。誰の目から見てもこの女からのタバコ男に対する印象は最悪である。まるで害虫を見る目である。しかし不幸にもこの女はイイ女である。男の方もまあわるい男ではない。あくまで見た目の話であるが…。駅での待ち合わせの時それぞれ第一印象はよかったと仲間に漏らしている。しかし今は男の煙が漂っている。男が急に切り出す。「あのー……」即座に女「いやだ」と一言。男はわけのわからない風な顔をしてやはりタバコに火をつける。初対面の時はマナーが肝心。

男女の出会い  972405

バイトも終わり、家に帰ってきた。
別段何もすることもなく、パソコンの前にすわり、
インターネットに繋ぐ。ブラウザが立ち上がり、
慣れた動作でメールソフトを立ち上げるも、
画面上で悲しくひかるのは「受信メールなし」の文字。
まぁ来ていたとしてDMかmag2なのだが。
「何か面白いサイトとかないかなぁ」
そう思って検索を始めようと思ったときだった。

"incoming CHAT request"という声と共に、
画面の右下がひかりだした。

そういえばこないだ先輩に勧められて
ICQというソフトを入れたんだった。けれど、今までは
その先輩とデータのやりとりでしか使われることはなかった。
"Do you want to CHAT with HK girl?"
もちろん僕はそのリクエストの「受諾」をクリックした。


男女の出会い  992235

押入れを整理していたら、昔の写真がいっぱい出てきた。
そのなかに軍服を着た立派な兵隊さんの写真が一枚挟んであった。
母に聞いたところ、それは私の祖父の若き日の写真であることがわかった。
祖父はとても熱心な人で、
事業を開き成功を収めたのだが、戦争により何もかもをなくしてしまい、
挙句の果てには、戦争へかりだされてしまったのだ。
生きて帰れる保証のない戦争。
自分が死ぬことも考え、祖母のおなかにいる子供に自分が生きていた証を残したいと、
写真をとったらしい。
私は、祖父を知らない。母も会ったことがない。
しかしこの写真と、目に涙を浮かべながらもいとおしそうに祖父のことを話す祖母の姿からして、祖父はとても立派な男だったに違いない。
 
この日私は初めて祖父に出会った気がする。

男女の出会い  002440

高校に入学して初めての音楽の授業を終えて、彼女は芸術館から出ようとしていた。すると、二階からピアノの音が聞こえてきた。それは、たいしてピアノが得意ではない彼女にもわかるほど素晴らしい演奏で、彼女は誰が弾いているのか少し見てみたくなった。
足音をたてないように階段をのぼる。目の前にあるグランドピアノで演奏していたのは、彼女のクラスの男子だった。お互いに相手の存在を知っていたが、まだ話したことはなかった。彼の演奏も終わりに近づき、彼の力強い指の動きにピアノが揺れる……曲が終わった時、彼女は少しでも自分の感動を伝えたくて必死に拍手をした。
彼は驚いた顔で彼女を見た。そして、演奏していた時の緊張した表情は緩み、彼は恥かしそうに微笑んだ。
彼が彼女のためだけにピアノを弾く日がくることをその時の二人はまだ知らない……

男女の出会い  992218

高層ビルが立ち並び、空も狭く、春だというのに桜さえ無い。通勤ラッシュにもまれ、時間と格闘し、何一つ変わることの無い日々をただ繰り返す。晴れなのか、曇りなのか、天気すらどうでもいい。この道をまっすぐ行けば。また、いつもの会社、いつもの生活だ。交差点など、とうに捨ててしまった。こんな道でも、人は行き交う。色々な顔が目に入る。どれも無気力だ。だが、この季節に現れる新入社員は違う。希望にあふれ、全身で光りをあび、自らも輝こうとする。男は立ち止まる。前方には、新入社員。(アッキレイナヒトダナー)この感情までも、一年というサイクルの中に組み込まれたものとも気づかずに、また、男は繰り返す。ぐるぐる、グルグル、GURUGURUと

男女の出会い  992203

今日も朝からくだらない音楽ばかり聴いている、、、
いくらこれが仕事だといえども、こう毎日では飽きるのも仕方ない。
一日に聞くテープやCDの数はどの位になるのだろうか。
おそらく普通の人が一年かけて聞く音楽の絶対量を僕は一ヶ月で聞かざるを得ない。
僕の仕事はそんな仕事だ、、、

いまこの手の中にある二本のテープ、
片方は男性の声もう片方は女性の声。

女性のほうのテープはつい最近うちの会社に送られてきたもので、
うちに送られてくるにはあまりにも素晴らしすぎるものだった。
聞いただけでその人の顔が浮かび、何よりも強い目が浮かんだ。
繊細で、しなやかで、それでいて壊れそうなくらいに強い目、、、
その声にひかれるままに僕は一本のテープを作った。
うちの会社にある妙な機械を使って、
男性の声の一本のテープを作った。
現実には存在しないであろうその声、、、
手の中にある二本のテープにはそんな背景があった。

その二つのテープをミックスさせることは、
僕にとって何でもないことだったが僕はそうすることができなかった。
何よりも聞きたい。
そしてその二人の目を見たいと思ったのだが、やめておいた。

いま僕は朝からくだらない音楽を聴きつづけている。
その二つの声が出会うのを待ちながら。


男女の出会い  992250

昨日15歳の誕生日に母が私に本当の事を教えてくれた。父は私が幼いころに亡くなったと聞いていた。しかし、私の父は実はまだ生きているのだという。私が父に会いたいと言うと母は困った顔をしてお父さんには会わないでという。なぜかと理由を聞いたら、父には奥さんも子供もいるし、私の事は知らないからだと言う。私は今から約16年前、父と母が大学生のころに出会って出来た子だという。父は母の親友の恋人だった。私が母のお腹にいるとわかったとき、母はそのことを親友にも父にも知らせず、黙って身を引くことにした。そして、大学は一年休学して一人で私を産んで育ててくれた。今では父とその親友は結婚して家庭を築いているという。だから、その家庭を壊したくないので父には会わないでくれ。どんな時だっていつも気丈だった母が私を抱きしめて泣きながら懇願した。「それじゃあ私たちの家庭やお母さんの幸せはどうなるの?」私も母を強く抱き返し、泣きながら聞いた。母は黙って首を振って泣き続けるだけだった。
 翌日、私は部活をさぼって電車に乗り父たちの家の前へやって来た。住所は毎年母宛てに2人から届く年賀状をひきだしから探し出して調べた。私が家の前に立ちすくしていると、小学校高学年くらいの女の子が、塾へ行くためか玄関から出てきて、そのまま走って行ってしまった。その子はどことなく自分に似ていた。私は思い切ってインターホンを押した。「はい、どちら?」しばらくして太い男性の声が聞こえた。私は感激に震えながらも黙っていた。程なくしてバタバタとスリッパの音がして玄関がガチャと開き、一人の男性が出てきた。「何かご用ですか?」男性は訝しげにこちらを見た。奥二重の瞼、通った鼻筋、薄い唇どれをとっても自分とそっくりだった。私は泣き出しそうになるのをこらえ、黙ってじっと父の顔を見つめ続けた。「何なんですか。用がないなら戻りますよ。」父は不機嫌そうに言うと、そのまま家の中へ戻ってしまった。本当は「あなたの娘です。」と言いたかった。でも、母が死ぬほどの苦労をして守って来たこの家庭の幸せを私が壊したくなかった。母のためにも。だから私は、もう会いに来ることもないであろう一生に一度の父の姿を、ただこの目にしっかりと焼き付けておきたかった。父が去ったあとの玄関のドアを見つめながら、私は声を押し殺して泣いた。

男女の出会い  松村綾

桜が満開の4月。まだ少し風がつめたいが、優しいこもれびが桜の木のすき間から差し込んでくる。今日は入学式。初めての人達との出会い。そんな出会いに期待と不安を抱き、校門をくぐる。中庭には赤いチューリップが咲きみだれ、私たちの入学を祝ってくれているようだ。そして、1歩ずつ歩いていくごとに、学校の雰囲気にのまれていった。玄関先には何やらたくさんの人々がむらがっている。私もその群れにすいこまれるように近づいていくと、そこにはクラス分け発表の掲示板があった。1組から順番に自分名前を探す。周囲では、私よりも先に自分の名前を見つけた人達の「あった、あったよ」と叫ぶ声が飛び交っていた。2組のところに目をやっていくと、自分の名前が……。その時、「あった!」2つの声が響いた。私と同時に隣の男の子もそう叫んでいた。するとその男の子はにっこり微笑み私にいった。「はじめまして、よろしく」私は何も言えず、ただただ真っ赤になっていた。まるで、中庭に咲いてるチューリップ」のように……。

男女の出会い  002487

人通りの多い都会の雑踏の中、私は肩にかすかなぬくもりを感じた。
……?
「お弁当落としましたよ」
「ありがとう!命の恩人だわ。これがなかったら生きていけなかったもの……」
お弁当を受け取った手が触れ合った。
キャー!!
かすかに震えていた彼の手、暖かかった。
そして二人は、この街の雑踏の中に吸い込まれていった。

男女の出会い  002109

正に一瞬だった。                                   
すれ違う、その数秒間の眼差しの掛け合いで、二人の気持ちは互いに揺れ動いた。
目が合っては視線をそらし、また合う。                         刹那の出来事に戸惑いながらも、互いの顔が脳裏に刻み込まれた。
しかし、男は振り向きもせずにまた本に目を落として歩き出し、、女は何事も無かったかの様にま
た友人と話をしだした。
(また、会えるかな)
雑踏の中に、二つの心が埋もれていった。


男女の出会い  992220

大学一回の秋。新しい友達、新しい環境にも慣れ始め、全てが楽しい、そんな時に私は彼と出会った。とても気が合い、一緒にいると勝手に顔がにやけてきてしまうほど楽しくて、私は彼に当然のように魅かれていった。でも私には高校の時から付き合っている人がいたし、彼もそのことをもちろん知っていた。それでも、彼も私を大切に想ってくれた。お互いに大切な人、そう感じている。ただの友達とは違うけれど、恋人になるのもまた違っている。でも特別で大切な彼、この出会いを私はとても大切にしていきたい。

男女の出会い  992208

男はいつも一人で電車に乗っていた。同じ電車、同じ時間、同じ車両。どんなに寒い朝でも、
どんなに天気が悪い日でも、男はいつも同じ場所で電車を待っていた。
いつごろだろう?男の顔を覚えたのは。満員電車とは言えないが、それほど空いているわけでも
ない。電車に乗っている人たちは皆一様に眠そうな顔をしている。誰が乗っていようが、乗って
いなかろうが気づくはずもない。しかし、その男だけは違った。席に座るや否や、本当に幸せ
そうな顔で眠るのだ。いつも降りる駅までほとんど目を開けることもなく、ただ大きく口を開けて寝ているのだ。
窓に頭をもたせかけ、口を大きく開けている姿は少し滑稽であった。しかし、私は最近どうしようもない衝動にかられるのだ。『大きく開いた口に何かを投げ込んでみたい……』そんなこと
をして喉でもつまらせたら、取り返しのつかないことになるのはわかっている。だが、その衝動は日に日に募る一方であった。
ついにその日がきた。今日私は友人から飴をもらったのだ。思わず男の姿を探す。もちろん今日も同じ場所で男は待っていた。
しかし、今まで毎日寝ていた男は、今日に限って一睡もしないのだ。なぜなのか。いろいろ考えを巡らしている間にもう、男がいつも下りる駅まで来てしまった。そして私の隣を通った瞬間、こう囁いた。「飴なんか投げたら危ないよ……」その一言が私と男との間に初めて流れた言葉だった。


男女の出会い  002446

彼は視線を感じて、顔を上げた。
朝のラッシュで、電車内はとても混雑していた。幸運にも座ることの出来た彼は、ここぞとばかりに足りない睡眠を補っていた。しかしそんなに深く眠ることもできず、睡眠と覚醒の間を漂っていたところだった。
彼は車内を見回した。そしてすぐに、彼女を見つけた。
半年前よりもわずかに髪が短くなっていること以外、彼女はどこも変わっていなかった。思わず呼びなれた名前を呼びそうになって、慌てて彼は口を噤んだ。声を掛けたとしても、何を話せばいいのか分からなかった。あれから、友達にも戻れなかった二人だから。
しばらく二人は見つめあったが、言葉を交わすこともないまま、彼女は次の駅で降りてしまった。
…もう、会うことはないだろうな。
ドアが閉まり、彼は目を閉じた。

男女の出会い  992209

文化祭のうちあげで、酎ハイ1杯で吐いている、ある背の小さな女の子がいる。彼女は居酒屋の駐車場でへこたれていた。僕はそんな彼女を見て、いてもたってもいられなくなり、自動販売機で水を買ってきてあげた。「早く家に電話せなお父さんに怒られるねん。」彼女は上目使いでそう言って少し涙ぐんだ。その彼女のしぐさに少し胸が締め付けられる思いになった。「大丈夫やって。」そういって僕は彼女を公衆電話に向かわせ、電話をかけさせた。彼女を自転車で家まで送り、その別れ際「ありがとう。」そういってエレベ−タ−にのっていく彼女の顔が微笑んでいるような気がした。

男女の出会い  002460

朦朧とする。
わたしは夢と現実の狭間にいる。

雨の音が耳の中で膨張する。
濡れた床の上。転がるすごい数の睡眠薬。
冷蔵庫の音。ビデオのデジタルの光。
窓にうがぶいくつもの水滴。出しっぱなしの洗濯物。

頬が冷たい。ううう、とうなってみる。
声にならない。それからすこし、泣いてみる。

目の前に蚊がとまる。白いほこりが落ちてくる。
それから電話の無機質な音が鳴る。それに続く留守番電話の機械の声。

足が冷たい。手が冷たい。体中が冷たい。そして重い。
ものすごく、重い。
目を閉じる。30秒間数えてみる。記憶と今この瞬間を行き来する。

どれくらいたっただろう。
遠くで誰かの声がする。声が近づいてくる。耳元で声が響く。
それからひどく揺すぶられる。
わたしはぼんやり目を開ける。

こいつはいったい誰だ。
ひどくあわてている。だけどまっすぐな目でわたしを見ている。
今自分にあるすべての視力と聴力を集中させる。
「なに、やってるんだ、あんたは。こんなにたくさんの睡眠薬……。
 馬鹿か。そんなに簡単に死ぬな。」
だれだおまえ、みずしらずのあんたになにがわかる、言いかけたが言葉にならない。
それからそいつは二言三言わたしに話しかけた。
言い返そうとしたが口が回らない。そのうちどうでもよくなって
なんだか、ほっとした気持ちになってしまった。
そいつが病院に電話している間わたしはその声に抱かれ穏やかな気持ちになった。

雨はいつのまにかやんでいて、床も乾き、窓の水滴がそいつの後ろ姿を
映し出していた。


男女の出会い(ちょっと違うかもしれない……)  992225

悪の組織シャッカーの基地に単身乗り込んだお面ライダーは、集会場とおぼしき広い空間にたどり着いた。
広場に人の姿はない。だがその奥の一段高いところには、凶凶しい雰囲気を放つ女がライダーを見下ろしている。
「ふふふ。よくここまで来たわねお面ライダー。まずは誉めてあげるわ」
「貴様がシャッカーの首領か!」
その通り、といわんばかりに女は口元に邪悪な笑みを浮かべた。
――この女の為に何人もの人間が死んだ。
   この女の為に俺はこんな体になった。
お面ライダーの眼に暗い炎が灯る。
「俺は貴様を許さない。絶対に倒す!!」
「ふん、ここがあなたの墓場よ。やりなさい、お前達!」
その言葉を合図に、突然物陰から何体もの怪人が現れた。
ライダーを嘲笑うかのように、イーッという奇声が広場に響く。
危うし、お面ライダー!

男女の出会いの場面  992221

「あなたのことが好きです」朝の満員電車の中、窓の外をぼんやり眺める彼女の後ろから声が聞こえた。2人の出会いは彼のその一言から始まった。もうきっと好きな人なんてできない。そう思っていた彼女の耳に、その時の彼の言葉は自然と入っていった。今まで忘れていた世界が彼女の前に現れた。朝の日差しの眩しさ、青空に浮かぶ雲の白、ランドセル姿の子供たち。今まで無意識に眺めていた景色が、彼女の中ですべて一瞬にして変わった。窓の外から目線を外した彼女が言った。「あなたのことが好きになりそうです。」

男女の別れ  992246

グランドを元気よく走る彼女。
きらめく君の汗ががまぶしくて、いつも僕は見とれていた。
みんなで遊んだ帰り道。
二人きりで揺られる電車の中で、僕は君に告白をした。
誰もいない冬の海。
夕日を見ながら、凍える体を二人寄せ合った。
どこまでも続く桜並木。
舞い散る花びらが僕の頬を伝う涙に貼りついた。

僕は君なしでは生きてゆけない。
いつでも君のそばにいてあげたい。
待ってて今すぐ飛んでゆくから。

…次の日の朝刊には、小さく悲報が告げられていた。


男女の別れ  994353

私がすきを言い過ぎたみたいで
あの人は離れていきました。
ずっと一緒やって心の底から信じてたのに。
「実は気になる人できた。」
「じゃあわかれるん?」
「……。」
「……。」
二人して、涙と鼻水いっぱい流した。
あの人まで泣くなんて……。
また一緒に居れる気がしました。
つきあい始めてちょうど一年たった頃でした。

男女の別れ  002439

夕焼け空の赤さと、東の空の暗さが心地よく交じり合う。
太陽は西へ傾き、東には月が陰る。
艶やかな月はその細長い
冷ややかな顔をはっきりとあげてこう言った。
「あなたは何故に逃げるのか?」
頬を真っ赤に染めた太陽は怒号する。
「逃げているのはあなたの方だ!」
故に、
今宵も夜は更けてゆく。

群青色の夜の中、
少し猫背の若者が
煙草の煙を吐き出しながら、
今日も別れを見ておった。


男女の別れの場面  002445

昔好きだった人と今会っている。今は友達で、普通に遊んだりできるけど、大学は、別々のところに進学し、去年までのようには会うことができない。とは言っても、いつでも気軽に電話したり、遊ぶ約束をしようと思ったらできるのだが、もうすぐバイバイしなければならないと思うと、なぜか焦ってくるものを感じる。本当にもうこの人のことを好きではないのかな、今日このまま別れてしまっていいのかな、絶対に次ぎ会うことがあるという保証もないのに。と、思いながらも時間がくる。私は心の中の焦りなどは絶対みせないように、次会った時も純粋に楽しく遊べるようにという願いを込めて、「またね」と言って帰り道の方向に歩き出した。