なぞかけについての研究

目次 1.テーマ決定までの経緯 2.なぞかけについて 3.研究方法 4.研究結果 5.まとめと今後の課題

文章表現ゼミナール 082108 古市佳奈子 082442 芝田真希 082472 藤田能 082481 村上雄太 082482 森本啓太 指導教員 野浪正隆

1.テーマ決定までの経緯

　私たちは今回の共同研究発表で「なぞかけ」を考察した。このテーマを研究するに至った経緯を以下に述べていく。
　まず、私たちは文章表現ゼミナールの所属であるため、何らかの「表現」について調べるという軸があった。そこでその軸に沿って、まず大きなテーマから考えていった。ここで、私たちが興味をもったのは、「どういうものをおもしろいと感じるのかの理由を調べる」というものだった。そこで、私たちは普段どのような表現におもしろさを感じているのかということを考えた。そこで挙がったのが、漫才、落語である。しかし、漫才や落語は、言葉と動作が関係しておもしろさを感じるため、調査に適していないと考えた。そこで、文章表現としておもしろいものを探したときに「なぞかけ」という案が出てきた。「なぞかけ」は、今年大ブレークしたので、興味も持ちやすいのではないかと思った。
　以上の経緯から、私たちは今回の研究対象を「なぞかけ」とし、どんななぞかけを上手いと感じるのか、おもしろいと感じるのか、その理由を探っていくことにした。

2.なぞかけについて

　上記のような経緯を経て、私たち表現ゼミナールはなぞかけの研究を始めた。まず、なぞかけとは何かを述べていく。

2-1.なぞかけとは……

　「なぞかけ(謎掛)」とは日本国語大辞典によると、「なぞをかけること。なぞをいいかけること。なぞなぞ(謎々)に同じ。」とあり、「なぞなぞ(謎々)」には、「ことばの中に他の物事を秘めて、その意を当てさせる遊び。」とある。
　世間一般で言われる「謎掛け」とは、学問の場では「三段なぞ」と呼ばれており、「○○とかけて、××ととく。その心は△△です。」という形式である。私たちは、「○○」の部分を「カケ」、「××」の部分を「トキ」、「△△」を「心」と命名した。

2-2.なぞかけの作り方

　「カケ」の部分が与えられている謎掛けをつくるときには、そこから連想される言葉をたくさん挙げる方法が一般的である。連想される言葉の中から、
「発音は同じで、違う別の言葉があるか」
「2つの違う意味を持つ言葉はあるか」
を考えていく。

1. 　例えば、「大阪教育大学」というお題が与えられた場合。この部分がカケとなる。
   
2. 「大阪教育大学」から連想される言葉をできる限り挙げる。
   
3. すると、「国立」「猫が多い」「長尾学長」「山頂」「山の上」「少し奈良」……などの言葉が連想される。この部分が心となる。
4. この中で、「少し奈良」という言葉を取り上げ、考えていく。この「少し奈良」は「少しなら」に置き換えることができるので、今度は、「少しなら」で連想できるものを考える。
5. ここで出来るものがトキとなる。
6. その結果、次のようななぞかけを作ることができる。

(完成例)「大阪教育大学」とかけて「大好きなお菓子を友達に少し頂戴といわれた」ととく、
そのこころは、「少しなら(少し奈良)」
　以上が、基本的ななぞかけの作り方である。つまり、「カケ→心→トキ」の順番に考えるということである。

2-3.なぞかけの種類

　私たちは、なぞかけを次の3種類に分類した。

• 「同音異義語なぞかけ」……同音異義語でオチをつける形のなぞかけ
  
  3-�A「水戸黄門」とかけて「制球力のある投手」とときます。その心は、「インローが決め手です」
• 「同音異義文なぞかけ」……同音異義文でオチをつける形のなぞかけ(�@)。
  つまり、「AはBした。」のように「心」が文章の形になっているもの。今回は、同音異義語が2つ以上ある場合(�A)も、ここに分類した。
  　また、並列の関係にあるなぞかけも、同音意義文とすることにした。言葉を補わなければ意味がとれないときは、補って同音異義文に分類した(�B)。意味を取るために、心に助詞などを補って文としたり。心の部分をよりわかりやすくするために、文とした方がよいと判断した場合である。
  
  (�@)5-�A「田んぼ」とかけて「三角関係」と、ときます。その心は、「アイガモ連れてきました【愛がもつれてきました】」
  (�A)8-�A「試験」とかけて「居酒屋のメニュー」と、ときます。その心は、「鮟肝【暗記も】一夜漬もあります」
  (�B)1-�A「大阪府」とかけて「地球上から海が消えた!」とときます。その心は、「世界陸上」
  　*別紙のなぞかけ一覧表にある「同音異義語vs文」とは、「心」の一方が語、もう一方が文になっているものを指す。 「AはBした。」のように「心」が文章の形になっているもの
• 「意味系なぞかけ」……取り立てて、同音の部分がなく、それぞれのものの性質が述べられていることが多い。
  1-�D「ローカル線」とかけて「30代女性の縁談」とときます。その心は、「一つ逃すと次がなかなかきません」
  5-�D「たんぽぽ」とかけて「おやじの頭」と、ときます。その心は、「白くなって抜けていくでしょう」

3.研究方法

　なぞかけを研究するにあたり、私たちはできるだけ多くのなぞかけを集め、分析していくことが必要だと感じた。次に、なぞかけの収集方法・分析方法を述べていく。

3-1.なぞかけの収集

　私たちは、ラジオ、ことば遊び辞典、メルマガ、2ちゃんねるの4つの媒体からなぞかけを収集することにした。それぞれの説明は次の通りである。

• ラジオ……NHKラジオ第一「つながるラジオ」内のコーナー「ラジオなぞかけ問答」で2010年6月1日〜9月30日に採用された分と2005年1月〜2010年5月の月間賞に選ばれたなぞかけ。約500個。
• ことば遊び辞典……鈴木棠三『ことば遊び辞典 新版』(東京堂出版 1981年)に掲載されているなぞかけの中から、現代でも意味の通じるものを抜粋。約130個。
• メルマガ……なぞかけ脳トレーナー&川柳作家・安楽庵えのでん「笑いながら脳を鍛える・なぞかけブログ」で発行されているメールマガジンで紹介されたなぞかけ。2005年〜2010年分のメルマガから約1000個。
• 2ちゃんねる……掲示板2ちゃんねるで作られたなぞかけ。約580個。

3-2.なぞかけの分析

　先の4つの媒体から収集したなぞかけを私たちは次の観点で分析した。

• なぞかけの種類(「同音異義語なぞかけ」「同音異義文なぞかけ」「意味系なぞかけ」)
• (意味系以外の場合は)「心」の部分の品詞(掛かっている言葉の品詞がどのようになっているかを分析したもの。品詞を分解することで、後に紹介する切れ目違いのなぞかけがあるということに気付くことができた。)
• 「カケ」の部分のジャンル→�@場所・交通・土地、�A芸能(エンターテインメント)、�B人、�C恋愛(下ネタ)、�D自然、�E社会、�Fスポーツ、�G行事・時・イベント、�H料理(食べ物)の9ジャンルに分類 *各ジャンル名の番号は、別紙のグループ番号と対応。つまり、グループ番号1番のなぞかけの「カケ」の部分は、ジャンル番号1番の「場所・交通・土地」を指す言葉になっている
  (グループとは:分類したジャンルごとに、表現ゼミのメンバーが面白いと感じるもの、上手い感じるものを5つずつ選び、同ジャンルの4〜5個をまとめたものである。)

3-3.仮説

　これまでの分析から、私たちは、なぞかけの「おもしろさ」や「うまさ」に対して、以下のような仮説を立てた。

仮説�@

「複数の語句が掛かっているなぞかけ」は、うまいと感じる人が多い。
言葉の数が多ければ多いほど、「心」の部分が長くなり、「心」全体を矛盾なく表現するのが難しくなる。よって、掛かっている言葉の多さに感心する人が多いだろうと考えたことから、出てきた仮説である。

仮説�A

「切れ目違いのなぞかけ」は、うまいと感じる人が多い。
「切れ目違い」とは、3-2.なぞかけの分析で述べた「心の部分の品詞」が異なっているものである。例としては、5-�A「田んぼ」とかけて「三角関係」と、ときます。その心は、「アイガモ連れてきました【愛がもつれてきました】」が挙げられる。このタイプのなぞかけは、言葉の組み合わせや、助詞などの使い方が難しいため、「うまい」と感じる人が多いと考えた。

仮説�B

「下ネタ」は男性の支持が集まりやすい。
下ネタは、公の場で発言できないという秘密を有する用語である。下ネタは好む人にはおもしろい話となるが、好まない人にとっては不快な思いをさせるものである。また、この下ネタを好むのは大半が、男性という傾向があるといえるため、下ネタを使用した「なぞかけ」も男性の支持を得うると考えた。

　これら、3つの仮説は、「なぞかけ」収集・分析の段階でのゼミ内での話し合いを仮説へと転換したものである。分析するなかで、ゼミ内で注目を集めた「なぞかけ」を見ると、上記の仮説を考えることができたので、アンケートを用いて、これらの仮説を証明することを試みた。

3-4.アンケート調査

　今回の研究目的は、「どんななぞかけを上手いと感じるのか、おもしろいを感じるのか」を調べることであった。上手いやおもしろいは、人の感性によるものなので、多くの人の意見を聞くことができるアンケート調査を実施し、調べることにした。

3-4-1.アンケート概要

　今回のアンケートは、無料でアンケートが作れるサービスの「アンケートツクレール」を使用した。対象は大学生で携帯電話やパソコンでアンケートに答えて頂いた。実施期間は、2010年11月4日~11月18日、調査項目は、以下の通りである。

設問→その意図

• 性別→性別による回答の差異をみるため
• 大学名・学籍番号→一人が複数回回答するのを避けるため
• グループ内で一番面白いものと一番上手いもの
• 9つのグループのなぞかけの内で、最もうまいと感じるもの、おもしろいと感じるもののうちから一つ選択

3-4-2.アンケート結果

　178人から回答を得ることができた。それぞれのなぞかけの得票数や割合、順位は、別紙の通りである。また、(http://enq-maker.com/result/d8lb1L4)でもご覧いただけます。

4.研究結果

　アンケートの結果見えてきたことは以下の通り。

4-1.「うまいなぞかけ」と「おもしろいなぞかけ」の考察

　まずは、「うまいなぞかけ」と「おもしろいなぞかけ」には、どんな特徴があるのかを述べていく。それぞれの特徴は、各設問の一位を集めたベスト集、最下位を集めたワースト集を分析し、見えてきた特徴である。

4-1-1.うまいなぞかけ

(1)評価が高いものの特徴
�@)きれいなもの

• 言葉の全体が整っているもの
  　1-�D「ローカル線」とかけて「30代女性の縁談」とときます。その心は、「一つ逃すと次がなかなかきません」(意味系)
  　2-�B「ジャズ」とかけて「パソコンの裏の配線」とときます。その心は、「コードが複雑に絡み合っています」(同音異義文)
  ○この特徴は、ワースト集と比べたときに、特に顕著に見られた。
  
• 想像したときに浮かぶイメージがきれいなもの
  　5-�C「山の景色」とかけて「オーケストラ」とときます。その心は、「シキによって、ずいぶん 変わります」(同音異義語)

�A)複数の言葉がかかっているもの(「同音異義文」なぞかけの定義の2つ目「心」の部分に2つ以上の言葉が掛かっているもののこと)

○作る上で難しいことが想像できるので、アンケート回答者の高い評価を得たのではないかと私たちは考えた。

(2)評価が低いものの特徴
�@)同音でないもの

○同音でないものとは、なぞかけを「同音異義語なぞかけ」「同音異義文なぞかけ」「意味系なぞかけ」に分類する際、同音に入れざるを得ないため入れているが、心をひらがな表記をしたときに使われる文字が違うので、同音とは言い難い、同音ではないという意味。なぞかけ一覧にある?のついているものがこれに該当する。高評価の特徴であった、言葉の全体が整っているものとは逆に、言葉の全体が整っていなければ、「うまい」という評価を受けにくいということが分かった。

4-1-2.おもしろいなぞかけ

(1)評価が高いものの特徴
�@)それぞれのものの性質を述べているもの

○それぞれの性質を的確に捉えており、なぞかけをみたアンケート回答者の共感を得ることができたため、高評価を受けたと考えることができる。

�A)皮肉になっているもの

○辞書をみると、「皮肉」とは、「相手の欠点や弱点などを、逆にほめたりして、遠回しにからかうこと」とありますが、「おやじ」や「おじいちゃん」、「ダイエー」という社会的に地位が認められているものをからかうことで、おもしろさと感じているのではないかと考えた。

�B)想像したときに浮かぶイメージがおもしろいもの
(2)評価が低いものの特徴
�@)知識が要求されるもの

○1-�Aでは、2007年に大阪府で世界陸上が開催されたという背景を知っていないと、「大阪府」から「世界陸上」を連想することが難しく、なぞかけを理解することが困難となる。また、例の2つ目は、秋には「おはぎ」と呼ばれる食べ物が、春には「ぼたもち」という呼び名になることを知らないとなぞかけの理解が難しくなる。このように、なぞかけを理解する上で、何らかの知識が必要となるものは、おもしろさよりも分かりにくさを先に感じてしまうため、多くの人の支持を得にくいと考えられる。

�A)同音でないもの

4-1-3.全体を通しての考察

　各設問の一位を集めたベスト集で重複しているのは1-�Dのみだが、最下位を集めたワースト集では10個中6個までが重複している。ここから、結論として、「うまい」と「おもしろい」は違う傾向にあり、「うまくない」と「おもしろくない」は同じ傾向にあるといえる。そして、うまいなぞかけは、回答が一つのものに集まることが多いが、おもしろいなぞかけは、回答が割れることが多いことから、「うまい」と思うなぞかけは、多くの人の評価の基準が同じになっているのではないか、また、「おもしろい」と思うなぞかけは人によって評価の基準が異なっているのではないかということが考えられる。
　以上が、アンケート結果からみえてきた「うまいなぞかけ」と「おもしろいなぞかけ」についての考察である。

4-2.観点別分析

　次に私たちは、

• ダジャレ(苦しくない)
• ダジャレ(苦しい)
• 切れ目違い
• 複合なぞ
• 下ネタ

の5つの観点が、「なぞかけ」を、うまい・おもしろいと判断する要素となるかについて、考えることにした。
　今回観点別分析をするにあたっては、個人別に調査することにした。それぞれの要素を持つなぞかけを、複数解答しているかどうかで、その要素は、うまい・おもしろいを判断する基準となるかを調べる。また、今回は、ある要素の「なぞかけ」をすべて選んでいる人がいる場合に、うまい・おもしろいを判断する要素となることにした。
　個人のなぞかけを選ぶ基準に着目することで、人の基準の違いに始まる、個性の偏りや特性を見出そうとしたためである。調査のポイントとしては、それぞれの観点をすべて選んでいる人がいるかどうかというところに注目することにした。すべて選んでいるということは、その人の、基準になり得ていると考えたからである。

4-2-1.「苦しくないダジャレなぞかけ」(「おもしろい」への回答で集計)

　苦しくないダジャレなぞかけ…心の同音異義語のみで、促音、長音で音が一致していないもの
「苦しくないダジャレなぞかけ」は5個あり、グループの中に2個重複している問いは1問。つまり、「苦しくないダジャレなぞかけ」をすべて選択した場合は4個になる。

個数	女性	男性
4個	1	0
3個	6	7
2個	17	21
1個	35	35
0個	29	27

特徴と考察

　男女差はほとんどなく、大半は0〜1個を選んだ人であった。ここから、「苦しくないダジャレなぞかけ」は、支持されにくいが、4個選んだ人がいることから、「おもしろさ」を形作る基準といえる。特に男女に差は見られないが、4つの「苦しくないダジャレ謎かけ」を選んでいる人は、1人と少ないながら、存在することから、「苦しくないダジャレ謎かけ」はおもしろさを選ぶ基準となりうるということがいえる。

4-2-2.「苦しいダジャレなぞかけ」(「おもしろい」への回答で集計)

苦しいダジャレなぞかけ…心をひらがな表記したときに、使われる文字が違うもの
「苦しいダジャレなぞかけ」は3個。グループの中に2個重複している問いはなし。つまり、「苦しいダジャレなぞかけ」をすべて選択した場合は3個になる。

	女性	男性
3個	1	0
2個	3	1
1個	14	17
0個	68	74

特徴と考察

　男女差はほとんどなく、0個選んだ人、つまり、一つも選んでない人が約80パーセントの割合を占める。しかし、すべて、選んだ人が一人いることから、「おもしろさ」を選ぶ基準になっているということがいえる。

4-2-3.「切れ目違いのなぞかけ」(「うまい」への回答で集計)

「切れ目違いのなぞかけ」は全部で8個。グループの中に2個重複している問いが2問あるので、全部選んだ場合は6個になる。

	女性	男性
4個	2	5
3個	12	15
2個	27	24
1個	30	38
0個	15	11

特徴と考察

　切れ目違い謎かけは、6個あるが、グラフに反映されていないのは、5〜6個選んだ人がいないため、省略した。「切れ目違いなぞかけ」をすべて選んでいる人はいないことは、切れ目違いなぞかけ観点別調査の大きな特徴といえるが、切れ目違いを選んでいない人の割合も、14パーセントと低いことが見て取れる。
　つまり、切れ目違いがなぞかけを選ぶ基準とは、なりにくいが、しかし、うまくないとまでは、かんがえられていないということがいえる

4-2-4.「複合なぞかけ」(「うまい」への回答で集計)

　「複合なぞかけ」は全部で6個。グループの中に2個重複している問いは1問なので、全部選んだ場合は5個になる。

	女性	男性
5個	0	3
4個	8	2
3個	21	25
2個	37	29
1個	13	25
0個	8	8

特徴と考察

　男女差に大きな特徴は見られないが、全く「複合なぞ」を選んでいない人が、10%未満ということからも、大きな選ぶ基準になっていると言える。

4-2-5.「下ネタなぞかけ」(「おもしろい」への回答で集計)

　「下ネタなぞかけ」は3個。グループの中に2個重複している問いはなし。つまり、すべて選んだ場合は3個になる。

個数	女性	男性
3個	0	6
2個	6	16
1個	8	34
0個	72	36

特徴と考察

　男女差に大きな特徴があり、男性の支持が大半を占めている。また、3個全て選んでいる人も男性が6人と多く、男性にとっては「おもしろいなぞかけ」を選ぶ基準になっている。

4-2-6.全体を通しての考察

　以上のように、下ネタの女性以外、上記の5つの観点はうまい・おもしろいなぞかけの要素になっていると言える。特に、「複合なぞ」は2個以上選んだ人が、70%を超えており、なぞかけをうまいと感じる要素に強く影響しているといえる。
　さらに、下ネタは、男女差が顕著に現れたことで、観点によっては男女の性差が関連してくることが言える。
　これらのように、観点別にみることで、個人の感性には統一性があることがうかがえ、「なぞかけ」のなかにあるなんらかの観点が影響して、うまい・おもしろいを判断する要素として機能していることが分かった。

4-3.仮説の検証

　ここからは、私たちが立てた仮説とアンケート結果を比べながら、仮説を検証していく。

4-3-1.仮説�@「複数の語句が掛かっているなぞかけ」は、うまいと感じる人が多い。

　4-1-1で述べたように、「複数の語句が掛かっているなぞかけ」は、うまいと評価されていた。私たちは立てた仮説の通り、「複数の語句が掛かっているなぞかけ」はうまいと感じやすいことが、今回のアンケートでは実証された。また、4-2-4で、「複合なぞかけ」をうまいと感じている人が多くいたことを述べたが、ここからも「複数の語句が掛かっているなぞかけ」は、「うまい」を作る要素であることが分かった。

4-3-2.仮説�A「切れ目違いのなぞかけ」は、うまいと感じる人が多い。

　私たちは、「切れ目違いのなぞかけ」がうまいという評価を受けるという仮説を立てていたが、ベスト集には入っておらず、考えていたよりも、評価が高くなかった。では、「切れ目違いのなぞかけ」は「うまい」を作る要素ではないのか。4-2-3から分かるように、「切れ目違いのなぞかけ」を選んでいない人は少数派である。つまり、「うまい」を作る要素ではあるが、グループ内の他の選択肢との兼ね合いなどから、ベスト集に入ることはなく、「うまさ」を形作る第一の要素にはなりにくいと、今回のアンケート結果から考えられる。

4-3-3.仮説�B下ネタは男性の支持が集まりやすい。

　これは、私たちの仮説通り、下ネタのなぞかけへの支持は男性からが圧倒的であった。しかし、男性でも、下ネタのなぞかけを一つも選んでいない人がいた。これには、今回のアンケート方法が関係していると考えられる。今回のアンケートは、個人が判別できたため、アンケート解答者の羞恥心が影響したのではないだろうか。そのため、個人が判断ができないアンケートであるならば、男女とも、票は伸びるのではないかと考えた。

5.まとめと今後の課題

　以上のように、今回の研究においては、「どんななぞかけを上手いと感じるのか、おもしろいと感じるのか」を研究してきた。また、多くの人の感性を判断の基準としたかったため、アンケート調査も行った。このアンケート結果により、「おもしろい」と評価されるなぞかけの特徴、「うまい」と評価されるなぞかけの特徴が分かった。また、観点別分析では、男女の性差と「おもしろい」と感じるなぞかけの種類に関連があることが分かった。もう一度、結果をまとめておく。

1. 「うまい」と「おもしろい」は違う。
   →「うまい」と評価されるなぞかけ、「おもしろい」と評価されるなぞかけは違う傾向にあり、「うまくない」「おもしろくない」と評価されるなぞかけは同じ傾向にある。
   →「うまい」と思う感性は同じになりやすいのに対し、「おもしろい」と思う感性は幅広い。
2. 個人によって「うまさ」「おもしろさ」を判断する基準が違う。
   →「複合なぞかけ」は「うまさ」を判断する基準になっている。
   →「切れ目違いのなぞかけ」は、0個選んでいる人から4個選んでいる人まで幅広くいることから、人による好みの差があることが分かった。
3. 男女の性差と「おもしろい」と感じるなぞかけの種類の関連
   →全員ではないが、下ネタのなぞかけをおもしろいと感じている男性が多かった。反対に女性で、下ネタを選択している人は少ない。このことにより、「おもしろい」と感じるなぞかけには性差があることがわかった。

　最後に、課題として考えられることを2点述べておく。
　まず1点は、「カケ」のジャンルは「おもしろい」や「うまい」を判断する基準になり得るかという点である。今回はジャンルごとにグループを作ったため、「カケ」のジャンルで判断することはできなかった。今回の研究では、「おもしろい」や「うまい」を判断する基準として、「心」の部分に重きを置き、分析したが、なぞかけ全体として捉えたときに、「おもしろい」「うまい」はどうなるかということを考えていくときには、調査していかなければならないだろう。
　2点目は、調査方法による違いがあるのではないかという点である。今回は、文字を見て答えてもらうという調査方法をとったためか、おもしろいなぞかけのベスト集には見るだけでおもしろさがわかる意味系なぞかけが大半を占め、口頭表現でおもしろさが伝わりやすいダジャレなぞかけは、高評価を受けにくかった。これが、音声を聞かせるなどの調査方法をとった場合に、どのようになるかを研究することで、より確実な研究結果が得られるのではないかと考えられる。

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