大阪教育大学 国語教育講座 野浪研究室 ←戻る counter
平成23年度  卒業論文

スポーツコラムにおける表現特性のバリエーション

大阪教育大学 教育学部
小学校教員養成課程 国語専攻
国語表現ゼミナール
082481  村上雄太
指導教官 野浪正隆先生

目次

序章 はじめに
 第一節 研究動機
 第二節 課題解明方法
 第三節 対象とするテキスト

第二章 表現形式の分析
 第一節 内容構成
  第一項 主張の展開
  第二項 前後の文章のつながり
  第三項 筆者の立場
 第二節 盛り込まれる情報量
  第一項 一文の文字数

第三章 語彙表現の分析
 第一節 表現の特徴
  第一項 文末表現
  第二項 冒頭表現、結末部表現
 第二節 隠語について
  第一項 専門職の強い語
  第二項 各スポーツにおける暗黙のルール

第四章 まとめ
 第一節 分析に対する考察
 第二節 新聞記事、コラムとの比較
  第一項 スポーツ新聞記事
  第二項 天声人語
  第三項 新聞記事、天声人語とスポーツコラムの比較結果
 第三節 結論

第五章 今回の研究を活かすためには作文教育活動
 第一節 興味を引く文章を書くには
  第一項 主張の書き方
  第二項 書き出しの書き方について
  第三項 立場について

第六章今後の課題

序章 はじめに

一節、研究動機

 今回取り上げた「スポーツコラム」とは、雑誌「Number」を主に取り上げたものである。私自身も日ごろ「Number」の愛読家のひとりであるが、この文章を読むたびに、まるでスポーツを実際みているような気持ちやスポーツ観戦に行きたくなるような感覚に襲われる。もちろん、スポーツとは、自ら競技者として行うこともできる。さらには、観客として見て楽しむものでもある。しかし、このスポーツコラムは、スポーツのもう一つの楽しみ方として読んで楽しむという観点を与えているものであると考える。読み手にスポーツのおもしろさを読み物として伝えるためにはどのような書き方がなされているのか疑問に思ったのがこのテーマを研究しようと思った第一の理由であるといえる。また、この書き方を参考に、人を引きつける文章とはどのようなものか作文を書くという視点も交えながら考察していければと考える。

二節、課題解明方法

 今回は、「表現特性のバリエーション」という題目ということもありさまざまな観点から、スポーツコラムを捉えようと考えた。 また、今回はスポーツコラムのタイトルの記載を、テニス1のように省略表現であらわすこととする。いかに、扱うスポーツコラムの例を載せる。

テニス1 「いい形でシーズンを終えることができてうれしいよ。2011年もまた素晴らしい年になるだろう」  世界ランキング上位8人だけが出場できる'10年のシーズン最終戦、ATPワールドツアー・ファイナルズを制したロジャー・フェデラー(スイス)は、笑顔で1年を振り返った。 この大会、決勝では世界ランク1位のラファエル・ナダル(スペイン)を倒した。 全豪オープン以来のビッグタイトルは、フェデラー健在をアピールするものだった。  昨年は苦しいシーズン、だったと思う。 春先に肺の感染症でツアーを離脱。 全仏は準々決勝でロビン・セーデリング(スウェーデン)に敗れ、四大大会でのベスト4進出の連続記録が23でストップした。 大会後に発表されたランキングでは2位に転落。 そして、ウィンブルドン、全米でも決勝進出を逃してしまう。  常勝を誇っていたフェデラーだが、30位、40位台に対する取りこぼしも増えた。 位負けしてくれていた選手たちが、オレにも可能性がある、と挑んでくるから、一戦一戦、気が抜けない。 そのうちに元王者の気力が萎え、ぷっつりと気持ちが切れてしまう――そんな最悪のシナリオも描けないことはなかった。 だが、最終戦の優勝で彼は踏みとどまった。  少し意外だったが、フェデラー自身は「いいシーズンだった」と話している。 「確かにつらい敗戦もあった。 でも、出場する大会ですべて優勝できるわけじゃない。 毎シーズン、(年間で4敗しかしなかった)'05年のような成績を残すことは非現実的だよ」というのだ。  彼はおそらく“今の自分”を受け入れようとしているのだ。 最終戦での会見では、こんな話もしている。 「引退に向けての計画なんて何もないよ。あと何年か、やれたらいいね。最高の選手たちと戦うことを、そして、練習で自分自身に挑戦することを僕は楽しんでいるんだ」  最悪のシナリオは回避されるだろう。 我々は、この生ける伝説のプレーを「あと何年か」楽しむことができるはずだ。 となれば、期待はナダルとの2強対決。 このところ四大大会の優勝をほぼ独占している両者だが、決勝での対戦は'09年全豪以降、実現していない。 今度の全豪で二人の頂上対決が実現すればいいのだが。


@「内容」…『主張』『事実』の2要素に分ける。 『主張』…筆者が自らの考えや、思いを述べていると思われる文。主観的な文。また、スポーツコラムにおいては、「」における発言も主張を構成する一部になることが多いため、「」の発言も主張に含む。 『事実』…実際に起きた出来事を述べている文。客観的な文。または、専門的な用語を説明したと思われる文 このように、分けることで筆者がどれくらいの割合で、自らの主張を述べているかを調べる。

例モータースポーツ1(14文〜16文)
14 G ルノー入りした徳永は、
その後F1界にある革命を起こした。
主張、事実
15H 最初の革命はローンチシステム。事実
16スタート時の発進システムである。事実(説明)

A「主張の段階」…筆者の主張を、段階に分け、大主張、主張1、主張2、のように分類し、筆者の主張がどのような段階を踏んで構成されているかを考察する。
B「専門単語」…各スポーツ独特の単語を抜き出し、比較し各スポーツの特徴を考察する。今回は、専門単語の分類として、「チーム」「大会」「人物」「単語」という4つのパターンに分けることにした。また、今回の選択した単語は、本文に記載されている記述そのままを載せることとした。特に、『人物』や『大会』においては、略した記載が多くみられたが、そのままの形で分析をすることにする。

『チーム』…チームとは、チーム名のことである。個人でおこなわれる種目は、団体戦というものがチームという枠組みに入ると考えられるが、今回調査したコラムの中には団体戦についての記載がみられなかったため、チームで争うスポーツのみに該当する項目となっている。

モータースポーツ3マクラーレンブリヂストン    
野球1日本ハム阪神早実智弁学園駒大苫小牧早慶

『人物』…人物とは、コラムに登場する人名のことである。人物については、フルーネームで述べられたもの、愛称で述べられたもの両方含むこととした。 例
ゴルフ3松山英樹池田勇太藤田寛之ジャック・ニクラウスフィル・ ミケルソンタイガー・ウッズ
 遼くん岡部大将    
サッカー1ザッケローニ監督伊野波雅彦岩政大樹中澤佑二田中マルクス
闘莉王栗原勇蔵

『大会』…大会とは、大会名のことである。今回の大会の定義は「優勝がないもの、一年通して行うものを除く」というところにした。今回この定義に当てはまるのが、オープン戦、プロ野球、Jリーグが考えられ除くこととした。

ゴルフ3マスターズ日本オープンアジア・アマ選手権  
サッカー1アジアカップ    
テニス1ATPワールドツアー・ファイナル全豪オープン全仏ウィンブルドン全米

『単語』…単語とは、『チーム』『人物』『大会』の枠組みに当てはまらなかったその他の専門的な単語であると考えられるものをあてはめる。たとえば、技術や、道具または、それぞれのスポーツの特有の言葉がこの項にあたる。

モータースポーツ1テクニカル・ディレクターローチンシステムトランクションコントロールECU(電子制御ユニット)トルクKERS
 サイドポンツーンR31    
テニス2サーブフォアハンド球足が速いコートグラウンドストローク  
ゴルフ2オーガスタバックナイン3パット4パットダブルボギーバーディ


C「段落の連接関係」…今回は、「現代作文講座作文の過程」明治書院のなかに含まれている、市川孝氏の分析方法に添って段落分析を進める。

「文脈における思考方式の全過程をとらえようとすれば、接続語句の有無にかかわらず、前後の文の連接のあり方を広く問題にする必要がある。文と文との論理的関係そのものを、「文の連接関係」と呼ぶ。文の連接関係としては、「順接型」「逆接型」「添加型」「対比型」「同列型」「補足型」「連鎖型」「転換型」等の基本的類型が区別される。」(市川孝「現代作文講座作文の過程」明治書院p97l11~l14)


上記の記載は、文についての記載であるが、段落について、下記のように記載されているためそのまま準用すると考えた。

「文脈における思考方式の全過程をとらえようとすれば、接続語句の有無にかかわらず、前後の文の連接のあり方を広く問題にする必要がある。文と文との論理的関係そのものを、「文の連接関係」と呼ぶ。文の連接関係としては、「順接型」「逆接型」「添加型」「対比型」「同列型」「補足型」「連鎖型」「転換型」等の基本的類型が区別される。」(市川孝「現代作文講座作文の過程」明治書院p97l11~l14)


この市川氏の考察をもとに以下のように分析を進める。
例 段落の連接関係を以下の8通りに分類し、関係を考察する。
順接型前文の内容を条件とするその結果を後文に述べる型。
逆接型前文の内容に反する内容を後文に述べる型。
添加型前文の内容に付け加わる内容を後文に述べる型。
対比型前文の内容に対して対比的な内容を後文に述べる型。
同列型前文の内容と同等の内容を後文に重ねて述べる型。
補足型前文の内容を補足する内容を後文に述べる型。
連鎖型前文の内容に直接結びつく内容を後文に述べる型。(接続語句は普通用いられない)
転換型前文の内容から転じて、別個の内容を後文に述べる型。

D「文章末分類」…文末を『…する。』『…なる。』『…である。』『…がある。』の四つに分類した。また、分析をわかりやすくするために、『…する。』=S『…なる。』=N『…である。』=D『…がある。』=Gというアルファベットで略することとした。文章末を分類するため今回は前後の文のつながりの連接関係を調べることとした。連節関係を調べるために、まず、どのような関係、個数があるのかを調べるため表とした。この表をもとに、特徴ある個所をクラメール指数で導き出し、考察していくこととした。
ゴルフ1文章末連接関係
前の文
 DNS
先の文D1706
N001
S6111

F「文字数」…文ごとの文字数を調べることにより、文字量から筆者がどの部分に重点を置くかを考察することを目的とした。今回の調査方法は、それぞれに偏差を導き出し、偏差が−を示す文字数の文を「short」、偏差が+を示す文字数の文を「long」とした。 この、「short」「long」を用いて、「short」から「long」へと移るパターンを、「S-L型」「long」から「short」へと移るパターンを「L-S型」、「short」から「short」へと移るパターンを「S-S型」、「long」から「long」へと移るパターンを「L-L型」とし、考察することとした。

三節、対象とするテキスト

 今回対象とするテキストは、2011年3月〜5月までの雑誌『Number』のコラム欄にある、「プロ野球」、「サッカー」、「ゴルフ」、「モータースポーツ」、「格闘技」、「テニス」を選んだ。各スポーツ2〜3の文章を分析していく。なお、これらのスポーツを選んだ理由は、団体競技、個人競技、球技、など様々なジャンルによる違いを分析するためである。さらに、各スポーツの中ではなく、他のジャンルのスポーツと比較したいという思いから、それぞれのスポーツの作者は同じ人を選んでいる。 また、スポーツコラムと比較するために用いた「天声人語」と「新聞スポーツ記事」は朝日新聞から引用した。

第二章表現形式の分析

節内容構成

主張の展開

 ここでは、主張の展開がどのように構成されているのかを考察していきたい。 まず、各文の主張の組み立てられ方を考察していく。

野球1第一文で、最終的な「斉藤は、持っていない」という主張が述べられていて、47文においても同じ文章「斉藤は、もっていない」という主張が使われているのが特徴的である. また、文章全体を通して斉藤が持っていないという話が、「プロ野球」「高校」「大学」という展開により構成されている。段落数で分けると「高校」が20文、「大学」が16文、「プロ野球」が6文で、展開されている。 わかりやすく、大きく三つの段落に分けられているのが特徴で、斉藤は持っているという世論とは対照的な視点を持っているところに、読者の興味を引く視点が感じられる。さらに、48以降の段落では、斉藤が持っていないが、「くじけない心を持っている」という風に新たな視点を持ち込み、斉藤の活躍に期待する読者への寄り添いが見受けられる。
野球2分析的なコラムではなく、筆者が体験したことをもとに話を進めるタイプである。東北の地震によるプロ野球の開幕の時期をどうするか筆者の考えを述べた文である。最終主張「こんなときだからこそ、野球には野球にしかできないことがあるはずだ」が述べられている。結論は、最終段落にしか述べられておらず、それまでは「関西の様子」「世論」「筆者の考察」という意味段落構成で、主張が構成されている。プロ野球の開幕時期を被災地の視点を出るために、関西があまり変化のないことを軸に踏まえながら、話を進めることで、日本全体をふまえることができているため、最終主張を効果的に展開できている。
野球3 1文と31文において、「オープン戦におけるプロは、似て非なるもの」、「ただ、繰り返しになるが、オープン戦は所詮オープン戦に過ぎない。」という主張が繰り返されているのが特徴的である。「小池秀朗の意見」、「プロ野球のマートン」、「中堅の選手の話題」を出しながら、ルーキーのオープン戦での成績は、シーズンが始まってからとは違うということを述べている。特に、最終33文目において、「それを本当の意味で判断するには、開幕まで待つ以外に方法はない。」という、判断保留の主張を述べている。分析や評価ではなく、プロ野球を楽しむための一つの視点を読者に与えているところが特徴である。
テニス1 対象となる人物(フェデラー)のコメントから文章が始まるのが大きな特徴である。大主張としては、フェデラーとナダルの対決を期待するということになっている。全体を通して、フェデラーの2011年度の成績についての評価や比較が述べられている。導入の部分(1文〜4文)でフェデラーの今季の最終戦の成績を述べ、5文〜12文でフェデラーの主張を述べるに至っている。その後、フェデラーの復調を筆者なりに解釈し、大主張へと論を展開して行っている。また、フェデラー自身のコメントを文章を筆者の主張の間に挟むことにより、筆者の解釈をよりはっきり主張できているといえる。
テニス2 一文目に「クルム伊達公子が好例だが、自分のやるべきことが分かっていて、それをそのままコートで実践できる選手は強い」という文の主張が述べられている。土居美咲を中心とした文章展開になっているのに、クルム伊達の内容を冒頭にもてくるところが特徴である。メディアにあまり登場しない、土居美咲の良さを引き立たせるために、クルム伊達が引き立て役とて登場していることも特徴である。また、5文目にテニス界の通説を述べることによって、土居美咲の選手としての良さを分かりやすく述べることができている。また土居美咲の背景を紹介するなど、過去の話を中心に組み立てていることも併せて、土居美咲という人物をよりはっきり映し出しているといえる。
テニス3 中村藍子に焦点をあて、最終22文で「ノーランキングからの再スタートにエールを送りたい。」と述べているように、中村藍子に視点を置いた文章になっている。本人のコメントと筆者の意見や考えを交えながら、中村藍子の精神的な部分を評価していることが、読者の中村藍子を応援する気持ちを引き立てているコラムとなっている。
モータースポーツ1 冒頭で「FIAの会見にでる」という、徳永の活躍を提示する。そして、 「なぜ、徳永が会見に呼ばれたのか。」という、疑問文を挿入することにより、はっきりと徳永の活躍を述べよとしているのが特徴的である。その後、「ローチンシステムという革命」「マシン開発方法」という、話題に広がる。また時間軸を現在、過去、未来という順番で並べることで主張が構成されている。そうすることにより、今後、徳永の行動が期待を含めて述べることができている。さらに、あまり聞きなれない言葉が多いが、具体的な技術や戦術を記すことによって、徳永のすごさが伝わるようなコラムになっている。
モータースポーツ2 3文目で「それはレッドブルの速さと脆さだ。」という大主張を最初に述べているのが特徴的である。速さについては、4文〜16文で述べている。また、脆さについては、17文〜38文で述べている。速さについては周知の事実であるのとは、反対に脆さという視点がこのコラムの中心文となっていて、文の量からも読み取れる。しかし、最終意味段落で判断保留の主張を述べていることから、F1を新しい視点で見るためのコラムであるといえる。
モータースポーツ3 時間軸に沿わせて、映像を見るような具体的な描写を含んだコラムになっている。レースの細かい人物の様子を描写することにより、具体的なコラムとなっている。また、F1の楽しみ方を文章で表現したようなコラムである。一文一文が短いためテンポよく読み進めることができるのが特徴である。
格闘技1 冒頭で、筆者の主張の文章が述べられているのが特徴的である。大会の結果を踏まえて、鈴木選手に立場で語られる物語のような構成になっている。構成は、鈴木選手の過去、変化、現在、未来に期待する筆者の思いというような形になっている。また、大会を挟むたびに鈴木のコメントを挟むことにより、筆者の主張を明確なものにしているといえる。さらに、鈴木に期待する文が、冒頭「4年ぶり4度目の優勝は、これまでのどの勝利よりも格別のものだったに違いない。」と結末部「 その心とともに、昨年、初戦負けの屈辱を喫した世界選手権のリベンジをパリで果たすことができたとき、ロンドンへの道ははっきり見えてくるはずだ。」にはっきり見られるのがこのコラムの特徴であるといえる。
格闘技2 冒頭一文目で、「やはり強かった」という筆者の感想がはっきり述べられているのが特徴的である。いくつかのコラム(テニス1、格闘技1)に見られる低迷期の紹介は述べられていないのは吉田選手の特徴をとらえてのコラムということがいえる。選手の努力を引き立てるために、一般的な選手が崩れてしまう流れを提示し、それを乗り越えて活躍する吉田選手のすごさを引き立てることができている。また、20文で「なぜモチベーションを保ち続けられるのか。」と疑問文をもちこむことで、筆者の主張展開に持ち込んでいることが特徴としてうかがえる。
格闘技3 冒頭一文目で、「スポーツでは、好敵手、ライバルの存在の大きさがしばしば語られる。」が、コラムの視点確定、主張が述べられている重要な一文となっている。全日本体重別選手権の試合結果をもとに、女子48s級がどのような混戦状態であるかが述べられている。コラムを締めくくるために、五輪三連覇をした野村忠宏の言葉を引用して締めくくっているのが印象的である。
サッカー1 二文目で、伊野波、岩政という名前を述べることで、視点が確定させている。内容の構成としては、「日本代表の最終ライン」「伊野波、岩政の鹿島アントラーズの開幕戦」「伊野波、岩政のサッカーへの姿勢」というような構成となっている。最終文で「言うまでもない」と締めくくることで、作者の二人の選手への期待がうかがえるとともに、読者も同様に、二人の選手に期待するような構成になっている。また、サッカーの試合解説を含むコラムとなっているので、筆者の分析が具体性を伴っているともいえる。
サッカー2 このコラムにおいては、物語風に語られている部分と、説明文のように語られている部分がはっきりと分かれている。その区切りの部分として、12文に「さて」と接続語が使われていることがあげられる。物語の部分では、チャリティーマッチの開催に対することが述べられている。また、後半部分ではチャリティーマッチの試合分析、そして、今後の日本代表の戦術について筆者の考察が述べられているのが特徴である。さらに、34文で「〜かどうかわからない」という判断保留の主張が使われているので、今後どうなるか読者自身が体験者となるような述べられ方がされているのも特徴であるといえる。今回は、「さて」という話題転換の接続詞が使用されているが、本文の本筋はチャリティーマッチの紹介であるといえる。
ゴルフ1 本コラムの中心主張は、ゴルフ界の30代の活躍の期待であるが、特に、19文〜40文まで片山晋吾について述べられていることから期待が多く寄せられている文といえる。展開としては、「近年のゴルフ状況」「30代の成績」「片山晋吾」についてである。そして、よくみられる判断保留主張で終わっているため、今後のゴルフ界の30代に対して読者が筆者と同様の視点を持ち視聴するということを促す文となっている。
ゴルフ2 一文目と二文目に風景描写があるのが特徴的である。風景描写を活かして「新時代の風」という言葉がこのコラムの中核を担っているといえる。展開としては、「マキロイ」「マナセロ」「ジェイソン・デイ」「石川遼」ら世界の若手に焦点をあてている。文末33文で、判断保留の主張が使用されており、石川遼の今後に期待する筆者の想いが述べられている。石川遼ではなく、他の10代の選手のことが多く述べられているが、主張としては石川選手の応援、期待となっているのが本コラムの特徴的な点であるといえる。また、冒頭と同様に文末にも比喩表現が使用されている。比喩を使用することにより、主張が読者により受け入れやすく述べることができると考えられる。
ゴルフ3 松山英樹に視点を当てた文章である。「マスターズやその他の結果」「性格」「技術」「大会への背景」の順で内容が構成されている。筆者の主張が少なく(図参照)、松山英樹を紹介するための、事実文で大半が占められているのが特徴的である。コラムに多く見られる、期待や今後への抱負などはなく、最終28文目も事実文で終わっている。

上記の表は、主張の構成のされ方を意味段落別に分けたものである。ここで、大主張を構成する意味段落について、述べたい。意味段落には基本的に3つの効果があると考えられる。まず、一つ目は主張を述べるための意味段落である。ここで、本分析においての大主張が述べられるのである。次に、大主張を支える副主張として役割を果たす意味段落である。この副主張があるからこそ、大主張を述べることができるといえる。また、副主張のなかには、コラムでピックアップされている人物の発言も含まれる。本人の発言を含むことで筆者の大主張により具体性がもたらされている。そして、3つ目の意味段落の役割は、事実紹介である。コラムは主張を述べるだけでは読者に感動を与えることができない。場面設定や試合結果を述べる意味段落がこの事実紹介の意味段落に当たる。これらのように、コラムにおける意味段落は、3つの役割があると考えられる。 しかし、意味段落の中には、副主張と事実紹介とが混ざって述べられている箇所も多くはっきりは分けられないこともある。この場合、副主張と事実紹介が同じ効果、働きを持っているといえる。たとえば、筆者の主張ではなく、「〜に勝った。」や、「日本代表に選ばれる。」という事実は、大主張に大きく影響する。このように、副主張と場面説明は分別難しいところもある。また、例外を除いては、大主張が最終意味段落に来ていることがわかる。ここで、下の表で例外を紹介したい。

例外1「大主張が冒頭のみにある」
 ゴルフ3における文章。
例外2「大主張と思われる文章が存在しない。」
モータースポーツ1
 人物紹介としての文章モータースポーツ1は、文全体としては期待の形をとっているものの、副主張を二つ並べることで、人物のすごさを表すにとどまっている。しいて大主張を挙げるのであるとすれば、

第六文「 かつてホンダやトヨタ、スーパーアグリなどの日本チーム、あるいはブリヂストンなど日本企業が参戦していたころは、日本人が何度か会見に出たことはあるが、外国のチームに所属する日本人がFIAの会見に選出されたという記憶は、ない。」

が、あげられるが、大主張と呼ぶには他の意味段落とのつながりが弱いと感じられる。つまり、「徳永直紀の実績」「徳永直紀の未来」の意味段落が合い重なって大主張を構成しているといえる。

では以下に、意味段落の構成の表を載せる。大主張=◎、副主張=○、事実紹介=□とする。また、今回は意味段落の冒頭部と結末部の内容にも着目した。これは、意味段落の冒頭部と結末部どちらかに筆者の主張が置かれている可能性が高いと考えたためである。
意味段落の冒頭部と結末部の主張と事実の関係
A型主張−主張型C型事実−主張型
B型主張−事実型D型事実−事実型
I型主張文一文のみで意味段落を構成している。

スポーツ名意味段落内容 スポーツ名意味段落内容 
ゴルフ1一般論 I型格闘技1まとめI型
ゴルフ1近年のゴルフ界における若者の台頭A型格闘技1ある大会の記録D型
ゴルフ130代の選手B型格闘技1鈴木選手の過去(低迷期)B型
ゴルフ1三十代の選手の近年の成績D型格闘技1鈴木選手の変化A型
ゴルフ130代の復調B型格闘技1鈴木選手の現在B型
ゴルフ1片山晋吾についてB型格闘技1筆者の思いA型
ゴルフ130代が活躍する難しさA型格闘技2感想I型
ゴルフ1筆者の期待A型格闘技2吉田選手の実績D型
ゴルフ2風景描写+心理描写A型格闘技2実力だけではない吉田選手の凄さC型
ゴルフ2マキロイの失速C型格闘技2筆者の期待C型
ゴルフ2マキロイの復調A型格闘技3筆者の意見I型
ゴルフ2マナセロについてC型格闘技3全日本体重別選手権の講評B型
ゴルフ2世界の若き世代と石川遼C型格闘技348`級の混戦C型
ゴルフ3マスターズの結果A型格闘技3山岸選手の背景D型
ゴルフ3今までのマスターズのアマチュアの結果C型格闘技3福見選手の背景D型
ゴルフ3性格D型格闘技3浅見選手の背景C型
ゴルフ3技術的視点D型格闘技3三者で争う熾烈なオリンピック代表争いB型
ゴルフ3当日のコンディションD型格闘技3どうすれば選ばれるかの筆者の主張A型
ゴルフ3精神的背景D型テニス1導入C型
サッカー1サッカー日本代表のアジアカップに向けての動きC型テニス1フェデラーの低迷期A型
サッカー1日本代表の最終ラインについてA型テニス1フェデラーの筆者の解釈A型
サッカー1鹿島アントラーズの開幕戦の様子C型テニス1今後のフェデラーへの期待A型
サッカー1二人の選手のサッカーへの姿勢D型テニス2導入I型
サッカー1二人の選手に対する筆者の期待C型テニス2土居美咲のテニスB型
サッカー2導入I型テニス2テニス界の通説B型
サッカー2チャリティーマッチの印象的なシーンD型テニス2チャレンジのテニスをしたC型
サッカー2筆者のチャリティーマッチに対する思い(否定)A型テニス2勝ちに行くテニスをしたA型
サッカー2筆者のチャリティーマッチに対する思い(肯定)B型テニス2土居美咲のバックグラウンドC型
サッカー2チャリティーマッチでの、3−4−3の布陣の評価C型テニス2試合結果C型
サッカー2今後の、3−4−3の布陣への不安A型テニス3導入I型
サッカー2筆者の感想I型テニス3中村藍子のジャパンオープンの結果D型
モータースポーツ1FIAの公式会見に出るすごさと日本人という特異性C型テニス3怪我で苦しんだ中村藍子D型
モータースポーツ1徳永直紀の人物紹介B型テニス3スポーツ界の通説D型
モータースポーツ1徳永直紀の実績A型テニス3中村選手のよさI型
モータースポーツ1徳永直紀の未来D型テニス3筆者の期待A型
モータースポーツ2導入のための問題提起C型野球1導入A型
モータースポーツ2ポールポジションの重要性C型野球1現在の状態I型
モータースポーツ2ベッテルの強さの秘密A型野球1高校時代の監督の話D型
モータースポーツ2レッドブルの不安点A型野球1高校時代の斉藤のはなしC型
モータースポーツ2新記録更新とレッドブルのKERS解決策の未来への期待D型野球1斉藤との比較(田中との)C型
モータースポーツ3レース前の攻防D型野球1大学時代の持っていない回想D型
モータースポーツ3マクラーレンの作戦B型野球1プロでの持っていない回想C型
モータースポーツ3レース展開C型野球1結論主張A型
モータースポーツ3筆者の感想C型野球2東北地方太平洋沖地震についてB型
    野球2西日本の状況A型
    野球2プロ野球をいつ開幕するかについてA型
    野球2筆者の開幕時期についての考えC型
    野球2野球会の対応についてB型
    野球2筆者の主張C型
    野球3筆者の主張A型
    野球3小池秀郎についてC型
    野球3オープン戦での二代ルーキーについてA型
    野球3オープン戦での考え方C型
    野球3中堅とルーキーの経験の差A型
    野球3ルーキーへの筆者の期待A型


 

第二項 前後の文章のつながり

ここでは、段落の連接関係に基づき、前後の文のつながりを考察していきたい。ここでは、市川孝氏の分析方法に添って段落分析を進める。段落の連接関係を以下の8通りに分類し、関係を考察する。

順接型前文の内容を条件とするその結果を後文に述べる型。
逆接型前文の内容に反する内容を後文に述べる型。
添加型前文の内容に付け加わる内容を後文に述べる型。
対比型前文の内容に対して対比的な内容を後文に述べる型。
同列型前文の内容と同等の内容を後文に重ねて述べる型。
補足型前文の内容を補足する内容を後文に述べる型。
連鎖型前文の内容に直接結びつく内容を後文に述べる型。(接続語句は普通用いられない)
転換型前文の内容から転じて、別個の内容を後文に述べる型。

まず、各スポーツコラムの形式段落の連接関係を表にする。
段落数格闘技1格闘技2格闘技3段落数ゴルフ1ゴルフ2ゴルフ3
1補足添加同列1逆接転換補足
2転換添加添加2順接逆説補足
3同列添加補足3補足逆説添加
4添加逆接同列4添加添加補足
5添加転換対比5逆接添加添加
6逆接添加連鎖6補足順接添加
7逆接 同列7添加添加添加
8添加 順接8同列補足 
9  添加9添加逆接 
10  添加10添加補足 
11  添加11添加順接 
12  添加12連鎖順接 
13  添加13逆接同列 
14  対立14補足同列 
15  添加15添加添加 
16  順接16順接逆接 
17  添加17逆接  
18  同列18順接  
19  逆接19添加  
20  同列20添加  
21  転換21添加  
22  対比22補足  
23  順接23逆接  
24   24順接  


段落数サッカー1サッカー2段落数野球1野球2野球3
1添加添加1逆接補足同列
2添加転換2添加順接補足
3添加逆接3逆接添加転換
4添加添加4添加逆接補足
5同列転換5補足添加添加
6転換添加6対比逆接同列
7添加補足7逆接転換順接
8補足添加8添加順接同列
9添加添加9逆接添加添加
10添加順接10逆接逆接同列
11添加添加11同列順接逆接
12順接 12逆接添加同列
13添加 13逆接対比 
14添加 14同列同列 
15添加 15逆接添加 
16順接 16順接順接 
17添加 17 補足 
18添加 18 順接 
19順接 19 添加 
20  20 転換 
21  21 添加 


段落数テニス1テニス2テニス3段落数モータースポーツ1モータースポーツ2モータースポーツ3
1転換転換転換1連鎖補足補足
2添加添加添加2補足逆接添加
3逆接添加添加3転換添加添加
4同列添加同列4添加添加順接
5順接  5転換転換順接
6   6添加連鎖補足
7   7添加転換順接
8   8連鎖添加対比
9   9添加逆接添加
10   10転換転換添加
11   11逆接逆接補足
12   12順接同列添加
13   13補足順接添加
14   14補足順接添加
15   15補足逆接同列
16   16同列順接順接
17   17同列添加 
18   18 逆接 
19   19 逆接 
20   20 補足 
21   21 逆接 
22   22 添加 
23   23 添加 
24   24 添加 


次に、使用頻度を表にする。
使用頻度使用頻度
1174添加548同列
270逆接638転換
360順接712対比
454補足810連鎖



以上の表からわかることは、まずはじめに、「添加」が群を抜いて多く使われているということである。「添加」をもちいることで、筆者が自らの主張を明確にするためであると考えられる。 次に、冒頭の連接関係に着目する。冒頭の連接関係で、着目すべき点はまず、使用頻度が、7位の「転換」が四か所に使われているという点である。このパターンは冒頭に筆者の主張が置かれている場合が多くその切れ目として、「転換」が使われていると考えられる。ほかにも、「同列」も全体の使用頻度が6位と低いながらも、2か所に使われている。この「同列」が冒頭にくる二つの文章をみるとどちらも第一段落が一般論(通説)から始まっており、「たとえば〜がある」のようにつながるパターンとなっている。(たとえばは同列に含まれる接続語)  また、反対に結末部では「順接」が目立っている。これは、筆者が結論を述べた後、「だから、〜である」といったような具体的な文にしていることがあげられる。抽象的な文で終わるのでなく、結論から読者に対してさらに具体的な見解を示しているといえる。これが、コラムの読みやすさにつながっているのではないだろうか。

 

第三項 筆者の立場

この項では、筆者の立場について表を見ていく。

スポーツ名筆者の立場
野球1パターン1−1「人物紹介(新視点)」
サッカー1パターン1−2「人物紹介(期待)」
テニス1パターン1−2「人物紹介(期待)」
モータースポーツ1パターン1−2「人物紹介(期待)」
格闘技1パターン1−3「人物紹介(応援)」
格闘技2パターン1−3「人物紹介(応援)」
ゴルフ2パターン1−3「人物紹介(応援)」
テニス2パターン1−3「人物紹介(応援)」
テニス3パターン1−3「人物紹介(応援)」
ゴルフ3パターン1−4「人物紹介」
野球2パターン2「体験談」
格闘技3パターン3「説明文(新視点)」
ゴルフ1パターン3「説明文(新視点)」
モータースポーツ2パターン3「説明文(新視点)」
野球3パターン3「説明文(新視点)」
モータースポーツ3パターン4−1「試合解説(時間軸にそって)」
サッカー2パターン4−2「試合解説(全体を通して)」

用語説明
人物紹介(期待) 対象の人物の活躍に期待するという立場をとるもの。
人物紹介(応援) 対象の人物の精神的努力を評価し、応援するという立場をとるもの
体験談 筆者の体験談をもとに話しを進めるもの。
説明文(新視点) 新視点は、読者に一般的な捉え方ではなく、筆者がそのスポーツや選手に対して、角度の違った捉え方を説明するような形で述べているもの。
試合解説
(時間軸にそって) 時間軸にそって、試合解説中心の内容を展開しているもの。
試合解説(全体を通して) 試合解説を中心に内容が展開しているもの。

筆者の立場の表を見ると、パターン1の人物紹介が10個である。続いてパターン3の説明文(新視点)が4個、そして、パターン4の試合解説が2個、パターン2の体験談が1個となっている。ここから、スポーツコラムの筆者の書く立場としては、選手、各種スポーツ界事情、試合、体験談の4点にわけることができる。 しかし、ここで注意したいのは筆者の立場ではないから、人物のことが全く記載されていないわけではなく、大主張が筆者の立場となり、それを構成するために多くの要素が取り入れられているということである。多くの要素というのは、パターン1であっても、試合解説のような文で、論を根拠づけたり、パターン1の要素のみで文が構成されていないということである。 今回は、筆者の立場として、4パターンに分けることができたが、スポーツコラム以外の通常のコラムでは筆者はどのような立場をとっているのかは、「第四章第二節新聞記事、コラムとの比較」で述べたい。

第二節 盛り込まれる情報量

第一項 一文の文字数

この項では、一文の文字数を考察していく。今回の考察のやり方として、偏差を利用し、文字の長さを、「short」「long」にわけ、関係を調べることにする。いくつか、特徴ある文を紹介していきたい。
@S−L型
発言の前に来る短い文にこのパターンが使用される場合がある。 また、追加説明としてS-L型が用いられたり、Sを使用することにより、内容を強調するために用いられたりする、使用方法が見られる。

スポーツ名モータースポーツ1格闘技2格闘技2
パターン追加説明強調発言
1文目 F1史に残る逆転勝利劇。並大抵の努力ではない。尋ねると、吉田は苦笑した。
2文目それを演出したのは、グリッドに着けないかもしれないという絶望の淵からハミルトンを救出したメカニックたちと、レースを見据えた戦略を予選から実行させた今井をはじめとしたエンジニアたち、そして、いかなる状況に陥っても動じなかったハミルトンの冷静さだった。それだけのエネルギーを注いだ末、オリンピックで目標を達成したなら、競技生活を継続するモチベーションに苦労することはよくある。「毎年勝ち続けるのが夢ですし、負けたくないという気持ちがありますから」 なぜそう聞くのか不思議だとでも言いたげな表情だった。


AL−S型
話の転換部に気やすいことが言える。ほかにも傾向としてあげられるのは要約や解釈、主張のように著者の考えが入りやすいということである。また、Lの文で伏線をはり、その後のSの文で述べるという後ろ強調の形もとる場合がある。しかし、今回のコラムでは後ろ強調の形をとるものは、ゴルフ1のみに見られるだけであった。

スポーツ名ゴルフ1格闘技2テニス2野球2
パターン強調要約転換部主張
1文目 彼らだけでなく、矢野東や星野英正といった選手も復調の兆しを見せつつあり、加えて、王者と呼べる38歳がお目覚めの気配を漂わせているのも心強い。だから、結果を残しても残せなくても、オリンピックを契機に引退する選手は少なくないし、続行しても調子を落としたり、あるいは一時的に競技を離れて休養する選手も珍しくない。2年ぶりに出場した全日本選手権では2回戦で第1シードの土居美咲に敗れたが、試合を重ねるごとにひざの違和感は薄れ、今では「次はもっといいプレーができる予感がある」という。「久々に心にゆとりのある人と話をしてホッとしたわ。もう、このへんの人は、みんな自分のことでいっぱいいっぱいだから」 いまいちばん怖いのは、被災にあっていない西日本の人々までもが必要以上に深刻になり、自粛ムードの波にのまれてしまうことなのだ。
2文目永久シードを保持する片山晋呉である。アスリートも人間である。 彼女にとっては、荒波にもまれ続けた数年間だった。それでは共倒れになってしまう。


BS−S型
S-S型に見られる主な特徴としては、1文を2文に拡大しているパターンが挙げられる。また、1文から2文に拡大するというような特徴がみられないものの、S-S型は強調している部分として取り上げることができる。特に、野球1の冒頭部に見られるS-S型は、強調を意識させている部分であるといえる。

スポーツ名ゴルフ1野球1ゴルフ3
パターン1文→2文冒頭、強調リズム
1文目今年の片山は本当に違うかもしれない。斎藤佑樹は、持ってない。普段着のゴルフを貫いて、この日のスコアは68。
2文目そう思わせる最終日の粘りだった。私もそう思った。オーガスタを60台で回った9人目の日本人となった。

CL−L型
L-L型に見られる特徴としては、筆者の主張が連続で述べられているということが考えられる。特に野球3においては、Lが三つ続く箇所が現れる。読み手にとって、この連続Lがどのような作用を与えるのか、より詳しく考察していきたい。

スポーツ名ゴルフ3テニス2野球1
パターン追加説明連続長文発言
1文目その活躍ぶりは、予選落ちした池田勇太や藤田寛之といった他の日本人プロはもちろん、メジャー自己最高位の20位に入った同学年の石川遼をも遥かに凌ぐ鮮烈な印象を残した。どこまでできるか分からないが、あわよくば一人でも二人でも上位選手を倒してやろう、というのが前者で、ある程度結果を期待して出場するのが後者だ。「本当に持ってたら、斎藤も1年生のときから甲子園に出てるでしょう。本当に持ってるっていうのは荒木(大輔)みたいのを言うんだよ」 荒木はご存じの通り、早実時代、1年夏から5季連続で甲子園に出場し「大ちゃんフィーバー」を巻き起こした、元祖「早実のアイドル」である。
2文目 マスターズのベストアマは、ジャック・ニクラウス('60年)、フィル・ミケルソン('91年)、タイガー・ウッズ('95年)ら、そうそうたる面々が獲得してきたタイトルだ。 この春、「海外でやっていたほうが強くなる」と欧州遠征に旅立った土居は、全仏オープンで予選を突破し、四大大会に初出場した。 私は「持っている」という曖昧な表現自体、抵抗を感じるのだが、もっとはっきり「運命を持っている」という意味で言えば、真っ先に思うのは、斎藤の同級生である楽天の田中将大の方だ。


第三章 語彙表現の分析

第一節 表現の特徴

第一項 文末表現

文末を『…する。』『…なる。』『…である。』『…がある。』の四つに分類した。また、分析をわかりやすくするために、『…する。』=S『…なる。』=N『…である。』=D『…がある。』=Gというアルファベットで略することとした。文章末を分類するため今回は前後の文のつながりの連接関係を調べることとした。  そして、今回は調査方法として、クラメール指数が3.6以上の値を示した4作品にしぼり、考察していくことにした。

スポーツ名クラメール指数
サッカー1√クラメールの関連指数 = 0.40
テニス3√クラメールの関連指数 = 0.36
ゴルフ2√クラメールの関連指数 = 0.38


まず、サッカー1とテニス3での特徴として見られたのが、N-G型である。  N-G型の特徴としてあげられるのが両方とも、N-G型を段落の切れ目に使用しているということである。両者とも、怪我とチャンスを活かせないという、マイナス要素から、+要素への転換となっている。つまり、N-G型は、逆説の展開になりやすいといえる。  さらに、今回このN-G型はすべてのスポーツコラムをみても二か所しか使用されておらず、非常に限られた文末の連接関係であることがわかる。
N-G型N-G型
テニス3サッカー1
復帰戦は「緊張でガチガチ」だったが、2戦目のHPオープンでの白星は自信を取り戻すきっかけになっただろう。そのうえ、攻撃陣が決定的なチャンスをことごとく活かせなかったこともあり、ストレスの溜まる展開が長く続くことになった。
 スポーツ界には、ケガをした選手が復帰後、より大きな成功を収めた例がいくつもある。 こうなるとズルズルと負の連鎖に陥るパターンになってもおかしくないが、踏ん張ることができたのは2人のセンターバックの奮闘があったからだ。


 次に、ゴルフ2の特徴として見られたのが、D-D型である。内容を見てみると、連続したDが多いことが読み取れる。また、Dだけでなく、Sも連続している。つまり、このゴルフ2のコラムは、動作や行動の文で根拠が作られて、最後に筆者の主張が一気に来ていることがわかる。これは客観的な事実をもとに構成されたといえるコラムとなっているといえる。連続したDで終わる筆者の判断となる文は、読み手が読みにくくなる可能性もあるが、動作を表すSを客観的根拠として述べている。ここから、連続Dの終わり方をしてもおもしろく、読みやすいスポーツコラムになっていると考えられる。

ゴルフ2 文末分析
1S10G19S28S
2S11D20N29 
3S12D21S30S
4S13D22S31S
5S14S23 32D
6D15S24N33D
7S16S25S34D
8 17S26S35D
9S18N27 36D
*空いている箇所は「」のみの所。

第二項冒頭表現、結末部表現

ここでは、冒頭一文と、結末部一文を抜き出し、どのようなパターンに分かれているか考察する。 まず、冒頭部は5パターンに分けられた。以下の表に紹介する。

用語説明
断定型筆者の主張が述べられているもの
一般論型通説だと考えられる内容が含まれているもの
大会報告型大会が終わったことが述べられているもの
動作進行型状況が描写されているもの
判断保留型筆者の主張が述べられていて、「かどうかわからない」のような文の形で終わっているもの
希望型筆者の願いがのべられているもの
発言型人物の発言を記述しているもの


 格闘技2ゴルフ1ゴルフ2テニス1モータースポーツ1
冒頭パターン断定型一般論型大会報告発言型動作進行型
冒頭やはり強かった。ゴルフは技術と経験がモノをいうスポーツ、と考えられてきた。アゼリアの花と美しい緑に包まれた年1回の宴は終わった。「いい形でシーズンを終えることができてうれしいよ。2011年もまた素晴らしい年になるだろう」一人の日本人エンジニアが、第3戦中国GPで開かれたFIA(国際自動車連盟)の公式記者会見に出席した。

次に、結末部の紹介をする。
格闘技2ゴルフ1テニス2テニス3
結末パターン断定型判断保留型動作進行型希望型
文末その先に控えるロンドン五輪へ、吉田に一切の迷いはない。 “谷間”を埋めるような彼らの活躍があれば、ツアーの風景はより鮮やかになるはずである。ここでも、彼女は、やるべきことを貫いた。ノーランキングからの再スタートにエールを送りたい。

では、ここで冒頭パターン、結末部パターンの紹介をする。
 格闘技1格闘技2格闘技3ゴルフ1ゴルフ2 
冒頭パターン断定型断定型一般論型一般論型大会報告 
冒頭4年ぶり4度目の優勝は、これまでのどの勝利よりも格別のものだったに違いない。やはり強かった。スポーツでは、好敵手、ライバルの存在の大きさがしばしば語られる。ゴルフは技術と経験がモノをいうスポーツ、と考えられてきた。アゼリアの花と美しい緑に包まれた年1回の宴は終わった。 
 ゴルフ3サッカー1サッカー2テニス1テニス2テニス3
冒頭パターン判断保留型動作進行型動作進行型発言型一般論型断定型
冒頭10日に閉幕した今年のマスターズは、日本のファンにとって松山英樹(東北福祉大)の名前とともに記憶される大会になったのではないだろうか。Jリーグの開幕に合わせてイタリアから来日した日本代表のザッケローニ監督は、カシマスタジアムで行なわれた鹿島アントラーズ対大宮アルディージャ戦に足を運んだ。3月30日寒風が吹きすさぶなか、大観衆で埋め尽くされた大阪長居スタジアムは試合が終わっても被災者に向けられた“ニッポン・コール”が続いていた。「いい形でシーズンを終えることができてうれしいよ。2011年もまた素晴らしい年になるだろう」クルム伊達公子が好例だが、自分のやるべきことが分かっていて、それをそのままコートで実践できる選手は強い。左ひざのケガで長くツアーを離れていた中村藍子が、完全復活に向けて力強く歩み出した。
 モータースポーツ1モータースポーツ2モータースポーツ3野球1野球2野球3
冒頭パターン動作進行型大会報告動作進行型断定型断定型一般論型
冒頭一人の日本人エンジニアが、第3戦中国GPで開かれたFIA(国際自動車連盟)の公式記者会見に出席した。アジア・オセアニアラウンドを終えた2011年のF1世界選手権。 “1 minute to go!! 1 minute to go!! 59 seconds, 58 seconds……” スターティンググリッド上で華やかなセレモニーが繰り広げられているころ、そのグリッドに着くことができないドライバーがいた。斎藤佑樹は、持ってない。衝撃的な光景だった。オープン戦におけるプロは、似て非なるもの。
 格闘技1格闘技2格闘技3ゴルフ1ゴルフ2ゴルフ3
冒頭パターン判断保留型断定型断定型判断保留型〜なはずである。判断保留型動作進行型
結末部 その心とともに、昨年、初戦負けの屈辱を喫した世界選手権のリベンジをパリで果たすことができたとき、ロンドンへの道ははっきり見えてくるはずだ。その先に控えるロンドン五輪へ、吉田に一切の迷いはない。その気持ちを日々、保つことができた選手が、ロンドン五輪代表をつかむのだ。 “谷間”を埋めるような彼らの活躍があれば、ツアーの風景はより鮮やかになるはずである。あとは彼らよりも深く成長のアクセルを踏み込めるかどうかである。「おなかすいたぞー!」とオーガスタの夕空に向かって思い切り背伸びした。
 サッカー1サッカー2テニス1テニス2テニス3 
結末パターン断定型断定型希望型動作進行型希望型 
結末部3失点したこの開幕戦の結果が、2人のモチベーションをさらに高めていくことは言うまでもない。しかしザッケローニのチームづくりが次のステップに進んだことは言うまでもない。今度の全豪で二人の頂上対決が実現すればいいのだが。ここでも、彼女は、やるべきことを貫いた。ノーランキングからの再スタートにエールを送りたい。 
 モータースポーツ1モータースポーツ2モータースポーツ3野球1野球2野球3
結末パターン動作進行型動作進行型動作進行型断定型判断保留型断定型
結末部そして、そこから生まれた'11年のルノーの新車が、サイドポンツーン前方に排気管の出口を配する革新的なR31だった。2011年のF1の第2幕が切って落とされようとしている。それを演出したのは、グリッドに着けないかもしれないという絶望の淵からハミルトンを救出したメカニックたちと、レースを見据えた戦略を予選から実行させた今井をはじめとしたエンジニアたち、そして、いかなる状況に陥っても動じなかったハミルトンの冷静さだった。 これから先、斎藤が何度失敗しても心配はいらない。こんなときだからこそ、野球には野球にしかできないことがきっとあるはずだ。それを本当の意味で判断するには、開幕まで待つ以外に方法はない。


上記の表から、スポーツコラムにおいては冒頭と結末部に特徴があるといえると考える。  まず、「断定型」であるが、冒頭、結末部どちらにも存在することがわかる。これは、コラムが筆者の主張により構成されているからであるといえる。他にも、断定とまで強い語調ではないが、「判断保留型」という形をとることで読者にやさしく主張しているということが言える。また、「希望型」もスポーツコラムの特徴といえる。スポーツというものの特長を活かし、筆者が応援や期待するという立場で述べているかがはっきりわかるようになっている。また、冒頭にある「発言型」も、筆者の主張であると考える。「発言型」はテニス1のみに存在するパターンであるが、冒頭の発言を使用し、筆者の期待を語っていると読みとれるためである。また、冒頭にある「断定型」「判断保留型」「発言型」は、一文目から筆者の主張を述べることとなり、読み手を引きつける効果もあると考えられる。  このような筆者の主張をどのように伝えるかによる変化によって見られた「断定型」「判断保留型」「希望型」「発言」とは違い、主張を述べようとしない「動作進行型」がある。冒頭での「動作進行型」は、状況説明に用いられている。特に、モータースポーツ3の時間軸に沿ったコラムにおいては、まさに今始まろうとする臨場感が伝わってくる書き方となっている。モータースポーツ3だけでなく、冒頭に「動作進行型」が使われているパターンのコラム(サッカー1・2、モータスポーツ1)は、「〜している」という進行形を使うことにより、実際の雰囲気が伝わるようになっている。この「動作進行型」と似ているのが、「大会報告型」(ゴルフ2、モータースポーツ2)である。このパターンはどちらも「終」という語が使われている。つまり、大会が終わったことにより変化したことを述べようとしている。  そして、今回一番興味深かったのが、結末部の「動作進行型」(ゴルフ3、テニス2、モータースポーツ1・2・3)である。コラムは、筆者の主張を述べるものであるが、結末部が「動作進行型」となる場合、筆者の主張はどこにあるのかということである。今回の場合、結末の一文のみを抜き出したので、テニス2、モータースポーツ1・2では、最終意味段落に、筆者の主張を見ることができた。しかし、ゴルフ3、モータースポーツ3においては、はっきりとした主張を見出すことは出来なかった。つまり、これらのコラムは筆者の主観を、紹介するのみのコラムであるということだ。この場合、新しい視点を導き出すということは考えにくいの、コラムの内容自体が読み手の興味を引くものだと考えられる.

第二節隠語について

第一項専門職の強い語

では、専門職の強い単語を考察する。専門職の強い語というのは、一般的にそのスポーツでしか通じないような語のことである。今回は、専門単語の分類として、「チーム」「大会」「人物」「単語」という4つのパターンに分けることにした。
@チーム

サッカー1鹿島アントラーズ大宮アルディージャ    
サッカー2ウディネーゼ     
モータースポーツ1フェラーリマクラーレンホンダトヨタスーパーアグリブリヂストン
 ルノーベネトン    
モータースポーツ2レッドブルマクラーレンウイリアムズBMWザウバー  
モータースポーツ3マクラーレンブリヂストン    
野球1日本ハム阪神早実智弁学園駒大苫小牧早慶
 西武千葉ロッテ楽天   
野球2セ・リーグパ・リーグ    
野球3近鉄ロッテ西武日本ハム巨人韓国ハンファ
 阪神     

A人物
格闘技1高橋和彦上川大樹穴井隆将鈴木桂治七戸龍篠原信一
格闘技2吉田沙保里     
格闘技3森下純平西田優香上野順恵福見友子浅見八瑠奈山岸絵美
 近藤香伊部尚子    
ゴルフ1片山晋吾矢野東石川池田勇太兼本貴司宮本勝昌
 藤田寛之谷口徹高山忠洋遼くん近藤共弘星野英正
ゴルフ2ローリー・マキロイマテオ・マナセロジェイソン・デイリッキー・ファウラー  
ゴルフ3松山英樹池田勇太藤田寛之ジャック・ニクラウスフィル・ミケルソンタイガー・ウッズ
 遼くん岡部大将    
サッカー1ザッケローニ監督伊野波雅彦岩政大樹中澤佑二田中マルクス闘莉王栗原勇蔵
 駒野友一キム・ヨングォンイ・チョンスアレックスマルキーニョスフェリペ・ガブリエル
サッカー2アルベルト・ザッケローニ内田篤人長友佑都本田岡崎 
テニス1ロジャー・フェデラーラファエル・ナダルロビン・セーデリング   
テニス2クルム伊達公子土居美咲原田夏希コーチ   
テニス3中村藍子土居美咲    
モータースポーツ1徳永直紀アルド・コスタパディ・ロウ   
モータースポーツ2ベッテルアロンソセナハミルトンシューマッハウェバー
モータースポーツ3ハミルトンフィル・プルウピレリベッテルバトン今井弘
野球1斉藤和泉荒木田中(マー君)大石(西武) 
野球2ダルビッシュ有     
野球3小池秀朗秋山幸二清原和博野茂秀雄吉井理人赤堀元之
 斉藤祐樹澤村拓一マートン中田翔浅村栄斗 

B大会
格闘技1世界選手権無差別級100k級100k超級全日本柔道選手権アテネ五輪
 北京五輪ロンドン五輪講道館杯   
格闘技2全日本選手権世界選手権アテネ五輪北京五輪アジア大会 
格闘技3全日本体重別選手権アジア選手権66kg級52kg級63kg級48kg級
 ワールドマスターズグランドスラムパリ大会グランプリのデュッセルドルフ大会ロンドン五輪 
ゴルフ1マスターズつるやオープン日本オープン中日クラウンズ  
ゴルフ2マスターズメインバンク・マレーシア・オープン全英アマ   
ゴルフ3マスターズ日本オープンアジア・アマ選手権   
サッカー1アジアカップ     
テニス1ATPワールドツアー・ファイナル全豪オープン全仏ウィンブルドン全米四大大会
テニス2全仏オープン四大大会全日本選手権ダンロップワールドチャレンジ  
テニス3楽天ジャパンオープンHPオープンウィンブルドン予選全日本選手権全豪四大大会
モータースポーツ1中国GP     
モータースポーツ2ヨーロッパGPハンガリーGP日本GPオーストラリアGPマレーシアGPトルコGP
モータースポーツ3マレーシアGP     

C単語
格闘技1大外刈大外返し    
格闘技2女子55s級     
格闘技3一本勝ち旗判定    
ゴルフ1永久シードオーガスタボギー   
ゴルフ2オーガスタバックナイン3パット4パットダブルボギーバーディ
ゴルフ3グリーンジャケットセレモニーキャディーオーバーパーボギーホールインワンカットライン
 グリーンオーガスタ    
サッカー1Jリーグカシマスタジアムセンターバックロングフィードフィードシュート
 セカンドボールレフェエリングプレスコーナーキックセットプレー 
サッカー2大阪長居スタジアム3バックボランチDFMFFW
 ディフェンスライン   
テニス2サーブフォアハンド球足が速いコートグラウンドストローク  
テニス3攻撃なショット     
モータースポーツ1テクニカル・ディレクターローチンシステムトランクションコントロールECU(電子制御ユニット
トルクKERS(運動エネルギー回生システム)
 サイドポンツーンR31    
モータースポーツ2ポールポジションRB7KERS(運動エネルギー回生システム)バートパーク・サーキットDRS(可変リアウイング) 
モータースポーツ3グリッドカウルレギュレーションテレメトリー上海インターナショナルサーキットソフトタイヤ
 ハードタイヤピットインピットウォール   
野球18回一死ノーヒットピッチングリリーフエース5回1失点五回3失点 
野球3ホームランバックスクリーンシンカー   

では、専門単語スポーツ別個数を紹介する。
 格闘 技1格闘技2格闘技3ゴルフ1ゴルフ2ゴルフ3
大会9511433
チーム000000
人物6191248
単語212368
 サッカー1サッカー2テニス1テニス2テニス3 
大会10646
チーム21000
人物125342
単語119041
 モータースポーツ1モータースポーツ2モータースポーツ3野球1野球2野球3
大会161000
チーム842927
人物3665111
単語859503

 上記の表からわかることは、まずチームの専門単語に見られる特徴としてあげられるのが、団体戦のないゴルフ、テニス、格闘技にはチームの単語はないということである。これは、調査した時期にも置けるのかもしれないが、個人種目におけるチームの登場は、少ないといえる。また、同様に大会の項目も野球とサッカー2には見ることができない。この場合、チームとは違いスポーツの特性が現れていると考えることができる。スポーツの特性というのは、個人で戦うスポーツか、団体で戦うスポーツかということである。また、野球やサッカーは、テニスやゴルフとは違い、リーグ戦を行うスポーツであるから、サッカーと野球には大会の項目が見ることがほとんどできなかったと考える。 また今回、専門的と私が考える単語を抜き出したが、ほとんどの場合その単語の説明していないということである。これは、本コラム「Number」がある一定の読者を対象としているからであるといえる。特に、人物の項目における「遼くん」という登場の仕方は特徴があるといえる。これはゴルフの「石川」選手の知名度があってこそできることであると考えられる。また、人物と同様に、チームの項目においても同様の略語が見られる。これも人物の項目と同様の理由として、大衆の知名度により略語として登場しているといえる。しかし、チームの場合その他に、リズム良くするということも考えられる。例えば、野球1の「早実」である。「早実」を、略さずに書くと「早稲田実業」となる。漢字五字が、漢字二字となっている。このように、単語における略語は、知名度やリズムを考えられながら筆者は述べて居るのではないだろうか。  では、次に専門単語スポーツ別個数を見ていく。野球2に着目する。他のコラム群と比較しても圧倒的に、専門単語が使われている回数が少ないことがわかる。この野球2の文は、筆者が関東大震災によるプロ野球の開催時期についてかかれたコラムである。展開のさせ方としては、筆者が関西を歩き体験したことをもとに、主張を述べている。 この、コラムの専門単語は、ダルビッシュ有、セ・リーグ、パ・リーグの三個である。特に、ダルビッシュ有の登場の仕方は野球会を代表した発言という扱われ方をしている。また、他に野球選手の名前が出てこないことにより、野球選手を代表して発言しているという重みが出ている。このことは、ダルビッシュという選手が野球というスポーツの代表選手の一人であるから、このような扱い方ができると考えられる。また、同様に格闘技2においても、人物が一人しか出てこないことが、その対象選手により着目するようになっている。これらのように、人物の登場人数だけでなく、誰が人物として登場するのかということで、内容は大きく変わるといえる。

第二項各スポーツにおける暗黙のルール

 ここでは、第一項の資料を参考にスポーツの暗黙のルールについて考える。まず、着目したいのは、有名人の発言の利用である。これは、筆者が自らの主張を述べるとき、自分の主張だけでなく、他者の発言を利用して主張を根拠付けているということである。 例えば、テニス2のクルム伊達、格闘技3の野村忠宏、などである。その種目の一線で活躍した選手の言葉は、筆者の主張以上に重くなる可能性がある。  次に、大会の重要性について考えていきたい。この大会の重要性で顕著に現れているのが、格闘技のオリンピックという大会の扱いである。格闘技の3つのコラム全てに五輪という文字が登場する。他にもいろいろな大会が記載されているのであるが、五輪に対する扱いが特別であるような述べられ方がなされていることが読み取れる。他にも、同様にテニスの四大大会、ゴルフのマスターズなどへの扱いが挙げられる。  これらのように、スポーツごとには重みのある人物や大会がそれぞれ存在すると考えられる。それは、言いかえるとスポーツに興味のない人やルールを知らない人は読んでもわからない可能性を含むということになる。これは、スポーツコラムがすべての人対象に書かれているのではないといえる。つまり、ある程度スポーツの知識がある人たちに読んでもらうために書かれた読み物であるということができる。

第四章まとめ

第一節 分析に対する考察

今回、スポーツコラムを研究するにあたり「スポーツのおもしろさを伝える書き方」というものを、さまざまな表現のパターンから読み取るという作業してきた。特に、様々なスポーツを選ぶことで、どのような違いがみられるのかというところが私の初めの目標としてきたところではあったが、研究を進めるにつれ、書かれ方の違いはスポーツの違いではなく、筆者の立場の違いにあると推測した。以下に示すのは、いままでの考察を基にした筆者の立場による書かれ方の違いである。

筆者の立場スポーツ名主張構成冒頭表現文末表現
パターン1−1「人物紹介(新視点)」野球1冒頭+結末断定型断定型
パターン1−2「人物紹介(期待)」サッカー1結末のみ動作進行型断定型
パターン1−2「人物紹介(期待)」テニス1結末のみ発言型希望型
パターン1−2「人物紹介(期待)」モーター
スポーツ1存在しない動作進行型動作進行型
パターン1−3「人物紹介(応援)」ゴルフ2結末のみ大会報告判断保留型
パターン1−3「人物紹介(応援)」テニス2結末のみ一般論型動作進行型
パターン1−3「人物紹介(応援)」テニス3結末のみ主張型希望型
パターン1−3「人物紹介(応援)」格闘 技1結末のみ断定型判断保留型
パターン1−3「人物紹介(応援)」格闘技2結末のみ断定型断定型
パターン1−4「人物紹介」ゴルフ3冒頭のみ主張型動作進行型


パターン1「人物紹介」
 パターン1の人物紹介は上記の表からもすべてのスポーツでとられている筆者の立場である。また、書かれ方も冒頭表現と文末表現を見る限り、すべての要素が含まれているといえる。ここから、人物紹介というのは、スポーツコラムにおいてもっともオーソドックスなコラムの形といえる。スポーツコラムという名前であるからと言って、スポーツの戦術やルールや戦いが面白いのではなく、スポーツを行う人物を知り、期待や応援することこそスポーツコラムの魅力である。特に、スポーツコラムにおいて人物が中心に書かれたとき、対象とされた人物はまるで偉人伝のように努力家であったり、運があったり、才能があったりする書かれ方をすることが見られる。そうすることで、読み手の興味を引きやすいという効果が考えられる。また、このように興味ある人物をはっきりと応援する姿勢を筆者がとることで、読みやすさにもつながっているのではないか。このように、努力している人を紹介し応援するという筆者の立場を作り、文章にすることこそスポーツコラムのおもしろさといえると考える。
筆者の立場 スポーツ名主張冒頭表現文末表現
パターン2「体験談」野球2結末のみ主張型判断保留型
パターン3「説明文(新視点)」ゴルフ1結末のみ一般論型判断保留型
パターン3「説明文(新視点)」モータースポーツ2結末のみ大会報告動作進行型
パターン3「説明文(新視点)」格闘技3結末のみ一般論型断定型
パターン3「説明文(新視点)」野球3冒頭+結末一般論型断定型
パターン4−1「試合解説(時間軸にそって)」モータースポーツ3結末のみ動作進行型動作進行型
パターン4−2「試合解説(全体を通して)」サッカー2結末のみ動作進行型断定型


上記の表をみて、まず、人物紹介と比べてわかることは、パターン2やパターン3、4はすべてのコラムになっていない少数派であるということである。少数派ということで、パターン3や、パターン4は文章の書き方に偏りを見ることができる。パターン3の説明文(新視点)型の冒頭は4つ中3つが、一般論型で始まっていることがわかる。これは、新視点を読者に提示するにあたり、一般論を提示しそこから新しい視点を展開していく文構成が読み取れる。唯一一般論型で始まっていないモータースポーツ2の場合、レッドブルが群を抜いて強いという客観的事実をもとに、論を展開しているため、説明文(新視点)型になりえたと考えられる。  次に、パターン4の試合解説型であるが、動作進行型で始まる傾向が見られる。これは、動作進行型で始めることにより、試合の雰囲気を出しつつ、試合解説をしていくという書き方になっている。特に、モータースポーツ3では、時間軸に内容を沿わせることにより、レースの雰囲気を出しながら、解説を行っているのが特徴的である。つまり、試合結果や内容から解説するのでなく、試合の雰囲気を再現しつつ試合解説を行うことが、スポーツコラムで試合解説を行う場合での特徴といえると考えられる。

 

第二節 新聞記事、コラムとの比較

 ここでは、スポーツ新聞記事とコラム(天声人語)についてスポーツコラムと同様の調査を行い、比較することにする。

第一項 スポーツ新聞記事

 スポーツ記事は、朝日新聞のテニスの記事を抜きとることとした。

日本人対決を制した森田は「コートに入る前からプレッシャーがあった」と苦笑い。 世界ランクでは20歳の森田が95位。 19歳の土居は166位だから格下だ。 そのとおり、第一セットは5−1とリード。 だが、そこから5ゲームを連取された。 強打が決まる一方、ミスをする悪い展開。 どうにかタイブレークで競り勝ったが、「あと1ゲームでセットがとれると思い、力が入った」と反省した。 10日は初の決勝に挑む。


新聞1は、スポーツコラムと似たようなタイプである。特に、主張を、冒頭と結末部の両方に持ってくるという方法は、スポーツコラムに近い内容であったといえる。また、意味段落もはっきり分けられているので、筆者の主張が順を持って構成されているといえる。  新聞2は、試合結果を伝えるだけの内容である。三段落構成ではあるが、書き手の主張はなく、試合結果だけを述べている。特徴としては、三段落構成という短い文章であるが、人物が8人も出てきている。これは、多くの情報を含もうとしたためであると考えられる。 新聞3は、筆者の主張はないものの、対象の人物の「発言」や過去の成績を内容に含むことで、試合の雰囲気が臨場感をもって伝わってくる文章になっているといえる。臨場感は、試合展開を細かく述べることで読み取ることができるのであると考えられる。  以上の、3つの新聞記事と比較する中で、わかったことは、スポーツという題材を文字にする場合、過去の成績や「発言」、試合の展開を記載することで、その試合がどんな試合であったかということを、読者にわかりやすく伝えることができることである。新聞のスポーツ記事であるから、新聞2のようにいろいろな選手の試合結果を述べるだけでも、スポーツ記事として成り立つが、やはり、新聞であっても読み手を意識してそのスポーツの試合結果だけでなく、試合の雰囲気や選手の状態を伝えることも新聞のスポーツ記事には必要なことであると考える。これらのことから、スポーツ記事は試合結果を中心として、人物の心情や試合の雰囲気を述べられていて、スポーツコラムは、人物の心情や試合の雰囲気を中心に、試合結果などの内容が述べられているということが出来ると考える。

第二項 天声人語

受験シーズンに合わせたように、原発のストレステスト(耐性評価)で初の判定が出た。 関西電力の大飯(おおい)3、4号機について、原子力安全・保安院の吟味はどうやら「合格」らしい。 首相や地元が決断すれば、運転再開となる▼ ただ、電力各社の「答案」には緩さも目立つ。 大飯の再稼働に反対する人々は経産省の専門家会合に押しかけ、激しく傍聴を求めた。 「甘い採点」への根深い不信ゆえだろう▼ 国内の原発54基のうち49が点検や事故で止まっている。 残りも春までに検査に入り、とうとう全基が停止する。 再稼働がないまま猛暑を迎えたら、関西あたりはひどい電力不足だと、業界は思案顔だ▼ 東京電力が発表した企業向けの大幅値上げも、原発が止まるとこんなにコストが上がる、との「意見広告」にみえる。 政府は家庭用の値上げも認めるようで、こちらは10%の攻防だとか。停電と値上げで脅されている気になる▼原則40年で廃炉とする法案は、20年までの延長を例外的に認めるそうだ。これが「原則60年」になっては困る。 老朽旅客機の低空飛行にも似て、めでたい長寿ではない。 落ちたら終わりだから、会社にしてもこれ以上の経営リスクはあるまい▼原発事故の災いは、核反応のごとく連鎖する。 汚染された砕石は新築マンションに化けて出た。 放射線が嫌われ、がれきの処理もはかどらない。 そんな日本で生き続ける幼い顔を思えば、10年でも長いのだ。 いささかの不便は甘受しても、原発との腐れ縁を絶ちたい。


 天声人語は、3つとも同様な書かれ方がなされていた。まず、形式段落が、どの作品も6つに分かれていた。さらに、大主張が結末部に集中しており、天声人語2では、主張が冒頭と結末部に来る形をとっている。ほかにも似ている部分として意味段落の構成に、事実を並べたものが多い。いろいろな主張と関係のある事実を並列に並べることにより、大主張に客観性が生まれ、主張の根拠づけが行われていると考えられる。また、事実文が並列に並んでいるため、段落の連接関係についても、「添加」が多く見られる。  しかし、文字数などをみると、たしかに、長短を使い分けているが、鍵カッコを使った発言などはなく、事実文を並べるだけになってしまうので、どうしても文体がかたくなり読みにくくなっていると考えられる。スポーツコラムの読みやすさというのは、筆者の言葉だけでなく、他者の発言のような話し言葉に近い文体で書かれるところもあるのが要因の一つになっていると考えられる。

第三項 新聞記事、天声人語とスポーツコラムの比較結果

 主張筆者の立場冒頭表現文末表現
天声人語1結末部事実否定、反対型結果型主張
天声人語2冒頭+結末部パターン3「説明文(新視点)」主張主張
天声人語3結末部パターン3「説明文(新視点)」一般論型主張
新聞1結末部パターン1−2「人物紹介(期待)」動作進行型主張
新聞2なしなし動作進行型動作進行型
新聞3なしパターン1−2「人物紹介(期待)」動作進行型動作進行型


この表をみて、まず言えることは、筆者の立場において、天声人語1の「事実否定、反対型」は、スポーツコラムには見られなかった。これは、スポーツの特性上、ルールの上で競い合うということがあるからだと考える。天声人語1は原発の問題に言及していたが、スポーツにおいてルール自体を疑問にするという事象がおこることは珍しい。多くの資料を探せばあるのかもしれないが、今回の調査では見つけることが出来なかった。  また、天声人語2,3はパターン3「説明文(新視点)」であった。天声人語2は、「ひらがな」について、天声人語3は「寒さ」についても筆者の主張を述べる文となっていた。これは、格闘技3やゴルフ1でみられたものと同様の立場であると考える。つまり、普段見ている見方とは一味違ったものの見方を読み手に提供しているという文章であり、格闘技3やゴルフ1は天声人語のような一般的なコラムに近いスポーツコラムであるといえると考える。  さらに、新聞1,3はパターン1−2「人物紹介(期待)」に当てはまると考える。ここで、冒頭表現、文末表現をみると、新聞1の文末表現以外動作進行型になっていることがわかる。これは、スポーツコラムのモータースポーツ2にも同様の結果となっている。つまり、ここからモータースポーツ2は新聞スポーツ記事型のスポーツコラムであるといえると考える。  上記のように、天声人語に似ているコラム、新聞スポーツ記事に似ているコラムがスポーツコラムの中にも含まれていることがわかった。では、スポーツコラムのオリジナリティと何であろうか。それは、パターン1−3「人物紹介(応援)」であるといえる。応援は期待するという言葉より、さらに精神的な意味が込められているということで私は使用している。そこには筆者が見てきた対象人物を、失敗しても良いから頑張れというようなやさしさのあるものとなっている。このような人間の温かさを読み手に伝えられる読み物であるということこそ、スポーツコラムのオリジナリティではないだろうかと私は考える。

第三節 結論

 今回、スポーツコラムを研究するということで、様々なスポーツを対象として研究を進めてきた。まず、スポーツコラムを書くためには、内容(何を書くか)が必要となってくる。これは、スポーツによって変わる。また、作者によっても変わる。このように、日々変化する社会のように、スポーツの結果も変化し、コラムに書くべき内容は無限に存在するといえる。そして、主張の述べ方もまた、多様であるといえる。主張の述べ方一つにしても、冒頭に置くか、結末部に置くか、または、冒頭と結末部双方に置くか、さらに言えば、はっきりとした主張を述べない文まであった。つまり、主張の構成もまた多様に存在することがわかった。  しかし、語調の変化をはっきりつけるという統一性は持っていたといえる。短い文の後に長い文や長い文の後に短い文がくるといったような、語調の変化のさせ方はほとんどすべてのスポーツコラムにおいて見られた。これは書き言葉だからといって、内容だけを伝えるのではなく、読み手がどうすれば、読みやすく読めるかという語のリズムを意識し、述べていくことが、スポーツコラムには必要ということである。また、このリズムというものは書き手の個性が生きてくるところではないだろうか。興味を引くコラムには、読みやすさを秘めたリズムのある文章を書くことが必要となる。さらに、天声人語と比較すると、普通のコラムと違って、スポーツコラムは選手のコメントを引用することが非常に多いといえる。これはリズムだけでなく、話し言葉を用いるという文体の読みやすさというものにもつながっていると考える。  そして、一番のスポーツコラムの特徴は、必ず人間にスポットが当たるということである。題材がスポーツであるから、人間に焦点が当たることは必然なのであるが、この必然である人間が中心となっているコラムだからこそ、スポーツコラムというコラムが存在する価値になっているのではないかと私は考える。

第五章 今回の研究を活かすためには作文教育活動

第一節興味を引く文章を書くには

   

第一項主張の書き方

 今回、主張の書かれ方としては、4パターンがスポーツコラムに存在した。1、冒頭型、2、結末部型、3、冒頭+結末部型、4、主張なし(はっきり明言しない)というパターンである。この中で、一番分かりやすいといえるのは、冒頭と結末部の二か所で主張を述べている冒頭+結末型である。また、わかりやすいというだけでなく、冒頭に主張を置くことで、冒頭部から読者を引きつける効果があるので、冒頭から主張を述べるということは、作文を書くにあたって非常に重要であると考えられる。  そして、一番大切なのは客観性を持たせることであると考える。それは、いくら主張がすばらしくても主観的な見解だけでは、読み手に伝わりにくい作文になりやすい。今回の調査したコラムにおいては、筆者の主張を客観的に述べるため、他者の発言を引用したり、試合結果をもとに主張に結び付けたりしている。さらに、他者の発言を引用することは、文体の変化につながりリズムが生まれる。  以上のように、主張は客観性を持たせるということと同時に、書かれ方として興味を引くものであれば、読み手にとって読みやすく伝わりやすい作文となりえると考えられる。

第二項 書き出しの描き方について

 今回のスポーツコラムの書き出し方のパターンとしては、「断定型」「一般論型」「動作進行型」「主張型」「大会報告型」の5パターンであった。この中で、作文によく見られる書き方は、「大会報告型」のような、まず、なにがあったのかを紹介し、そこで何を思ったのかを書いていくというような書き方である。しかし、「大会報告型」は、その大会の持つ内容に左右されやすく、だれもが興味のもてる内容になるとは言い難い。だからこそ、面白い作文を書くためには、通常の書き方と似ている「大会報告型」を用いるのではなく、他の4パターンを自分の書きたい内容に合わせて書いていくことが良いのではないだろうか。たとえば、「主張型」で文を書きだす時、もっとも手をつけやすいのは、「発言」を冒頭に持ってくることである。作文の冒頭を、発言で始めることで冒頭から読み手を引き付ける作文になるのではないだろうか。ほかにも、「一般論型」で大人が言っていたことを一般論として扱い、作文を書き始めるのもおもしろい。これらのように、書きだし方は幾通りにも考えられる。その書き出し方を、子ども自身に考えさせることも大切であるが、教師がヒントをうまく与えて、子どもから引き出すということも、子どもの作文のバリエーションを増やすための作文教育活動であるのではないだろうか。しかし、最終的には子ども自身が、自分の書いた作品をおもしろいと思うような作文になればよいと私は考える。

第三項 立場について

 今回の調査で、筆者の立場は、4パターン「人物紹介(応援)、(期待)」「体験談」「説明文(新視点)」「試合解説」に分けることが出来た。この中で、子どもたちによく見られる立場は、パターン2「体験談」やパターン3「説明文(新視点)」、パターン4「試合解説」では、ないだろうか。自分の体験したことを、自分の感情やその時の状況をふまえながら、述べていくという作文が一番書きやすく、オーソドックスであると考える。それは、自分で体験し、考えたことであるから、書きやすいということが考えられる。これらのことは、書き手にとって、過去に起こったことを述べているにすぎない。  そこで、今回のスポーツコラム分析を活かした作文の書き方の立場として、スポーツコラムでは、定番となっている、パターン1「人物紹介(応援)、(期待)」の書き方を進めることを提案する。これは、書き手の過去にもとづいたものではなく、これからどうなるのかを予想し、未来を想像する書き方となる。しかし、他人の分析を進めるのは、客観性も必要で少し難しいと考えられるので、例えば、遊びや勉強などのことで自分を分析し今後自分がどのようなところを頑張っていくのかというような作文が考えられる。このような作文をきっかけに、未来に対する考えを書くことができれば、スポーツコラムのような読み手にとっても書いた本人にとっても、おもしろいと思える作文が出来るのではないだろうかと私は考える。

第六章今後の課題

 今回の研究は、多くをスポーツコラムのみを取り上げ調査した。しかし、スポーツコラムの特徴をより導き出すためには、他のコラムとの比較がもっと重要であったように思う。今回の研究で言うと、天声人語やスポーツ記事との比較をもっと積極的に行えばよかったと思う。  また、作文の書き方についても、コラムの書き方をそのまま行えばよい作文ができるとは限らない、よい作文とはどのようなものかをしっかり考え今後の自分自身の教育活動につなげていきたいと思う。  また、この論文を制作するために、指導教官である野浪正隆氏には大変お世話になった。ほかにも、ゼミの仲間や学科の仲間にも助けられこの論文が完成したと思っている。

参考文献

市川孝「現代作文講座作文の過程」明治書院

資料

『Number web』

   サッカー
作者 二宮寿朗
3月11日@ザッケローニにアピールできたか!?
伊野波と岩政がJで見せつけた闘志。
http://number.bunshun.jp/articles/-/94601
3/30A鳴り響く“ニッポン・コール”の中、
日本代表が見せた新たなステップ。
http://number.bunshun.jp/articles/-/106343   ゴルフ
作者 雨宮圭吾
2011年
5月15日@石川世代の独走にストップをかけろ!
片山晋呉ら“谷間世代”の逆襲。
http://number.bunshun.jp/articles/-/122687   
4月30日A欧米に次々現れる同世代の天才たち。
石川遼はライバルに追いつけるか?
http://number.bunshun.jp/articles/-/117712   
4月25日B松山英樹がオーガスタで 見せた「200%の自分」。
〜ベストアマ受賞の裏側〜
http://number.bunshun.jp/articles/-/107371  

野球
作者 中村計
2011年
4/11@実は斎藤佑樹は「持っていない」!? 蹉跌からの本領発揮を期待する理由。 
http://number.bunshun.jp/articles/-/111154   
3/26Aせめて西日本の人たちだけでも……。 プロ野球開幕を想い、被災地を歩く。 http://number.bunshun.jp/articles/-/98798
3/14Bオープン戦で活躍するのは半人前!? 2大新人、澤村&斎藤は通用するか。 http://number.bunshun.jp/articles/-/94708

格闘技
作者 松原孝臣
5/20@絶望の淵から生還した 鈴木桂治の「執念」。 〜全日本選手権優勝の意味〜 http://number.bunshun.jp/articles/-/122888
5/19A絶対女王・吉田沙保里の 驚異のモチベーション。 〜金メダル獲得の向こう側へ〜
http://number.bunshun.jp/articles/-/122860
4/13B五輪候補がひしめく柔道女子48kg級。
福見、浅見を山岸絵美が猛追する!
http://number.bunshun.jp/articles/-/112285

モータースポーツ
作者 尾張正博
5/21@F1界に革命を起こす日本人が登場。
ルノーの技術部門を支える徳永直紀。 
http://number.bunshun.jp/articles/-/124770
5/6A連続PP記録を狙うベッテルに暗雲が。
レッドブルのアキレス腱「KERS」。
http://number.bunshun.jp/articles/-/120200
4/20B合言葉はストップ・ベッテル!!
ハミルトンのミラクル勝利の裏側。
http://number.bunshun.jp/articles/-/115271

『朝日新聞』 「天声人語」 2012/01/20〜2012/01/22 
       「テニススポーツ記事」 日時不明