平成25年度 卒業論文

 

子どもを対象とした新聞記事の表現特性について

〜朝日小学生新聞を対象に〜

 

 


大阪教育大学 教育学部

学校教員養成課程 国語専攻 小学校コース

国語表現ゼミナール

学籍番号102123 畑中理緒

指導教官 野浪正隆先生

 

 

 

 

 

 

 

 

卒業論文 目次

学校教員養成課程 国語教育専攻小学校コース 102123番 畑中理緒

 

 

1.研究テーマ

 

子どもを対象とした新聞記事の表現特性について ―朝日小学生新聞を対象に―

 

2.目次予定                         

               

序章  はじめに

第一節 研究動機

第二節 研究目的

 

章 課題究明方法

第一節 研究対象

第二節 新聞記事について

 第一項 新聞記事の書かれ方

 第二項 新聞記事の種類

第三節 研究方法について

 第一項 使用語彙の分析

 第二項 表現形式の特徴

 

第二章 使用語彙の分析

第一節 品詞分析

 

第三章 表現形式の特徴

第一節 朝日小学生新聞記事の段落構成

第二節 省略される記事の傾向

第三節 加筆される記事の傾向   

 

第四章 まとめと今後の課題

 

第五章 研究対象・参考文献

 

序章 はじめに

 

第一節 研究動機

 

現在学習指導要領では「思考力・判断力・表現力の育成」と「言語活動の充実」を強調しており、それに適した学習活動の例として新聞を挙げる等、新聞を教材として扱うことを推奨している。また各都道府県では教育界と新聞界が協力し合い、NIE推進組織を設けて進めており、これに賛同する協力校は2011年度で542校に増加している。

これらの事実を踏まえると今後も教育現場に新聞が活用されていくことは確実である。そこで私は教材として扱う前に新聞を今一度よく知りたいと考え、教育の主体である子どもを対象とし、また自身も幼少期に愛読した子供向けの新聞を研究対象として選択した。

尚、新聞は社会化教育において現在最も活用されているが、本研究では国語学的観点から、表現に着目した分析を行う。

 

第二節 研究目的

 

子どもを対象とする新聞は大人を対象とした新聞に比べ、よりわかりやすいように構成・表現共に差別化が図られていると仮定し、文章の省略・加筆を最終課題として両者を比較していくことで、子ども向け新聞の表現特徴を見いだしたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

章 課題究明の方法

 

第一節 研究対象

 

現在全国紙は朝日・産経・毎日・読売・日本経済新聞の5紙あり、中でも一般紙である4社からは次のような子ども向けの新聞がつくられている。

 

新聞社名

子ども新聞名

発行形態・頻度

歴史

発行部数(2011年度)

朝日新聞社

朝日小学生新聞

8ページ・毎日(月1日休刊)

1967

11万部

産経新聞社

おやこ新聞

産経新聞1コーナー・毎週日曜

不明

単独での部数なし

毎日新聞社

毎日小学生新聞

8ページ・毎日(月1日休刊)

1936

15万部

読売新聞社

読売KODOMO新聞

20ページ・毎週木曜

2011

18万部

 

いずれも対象は小学生となっており、読み始めた年代の調査では次のような結果である。

 

就学前

1年生

2年生

3年生

4年生

5年生

6年生

その他

5.5

16.0

11.0

22.0

23.0

14.0

80

8.5

              小学生新聞読み比べ http://kodomoshinbun.suppa.jp/ 2013115

 

これらの子ども向けの新聞から、今回は一つの新聞社に限定して選択し、研究対象とする。先述したとおり今回は、同テーマを扱った子どもを対象とした新聞記事と大人を対象とした新聞記事を比較することで課題の究明にあたる。そこで究明方法の性質上、大人を対象とした新聞記事が採集しやすい社の子ども向け新聞を採択する。

大阪教育大学付属図書館のサービスに朝日新聞「聞蔵U」がある。これは館内利用者に限り、朝日新聞の過去から現在に至る1300万件の記事・広告が検索できる新聞記事データサービスである。今回はこのサービスを利用して、比較対象である大人向けの新聞記事を採集するため、それに合わせて子どもを対象とする新聞も朝日新聞社の「朝日小学生新聞」を選択する。

尚、扱う記事は私が収集出来た20133月から201311月までの計236部に掲載されているものである。朝日小学生新聞は全8ページあり、1ページ目にニュース記事、2ページ以降に漫画を用いた企画や投稿、進学情報等が掲載されている。多く載る漫画は朝日小学生新聞特有といえる。しかし今回は文章の表現特徴の研究に対象を絞るため、毎日34記事掲載される「ニュースあれこれ」のコーナー記事のみを研究対象として扱う。

第二節 新聞記事について

 

第一項 新聞記事の書かれ方

 

 この項では新聞記事の書かれ方の基本である「5W1H」「3C」、そして「逆ピラミッ

ド型構造」について引用を用いながら説明する。

 

  5W1Hとは、新聞をつくる際の基本的な条件であり、小学校、中学校、高校で学校・学級新聞を作製する際に教師から指導を受ける。

(中略)

  新聞記事の必要条件として次のことがあげられる。

 

いつ(When日時

どこで(Where

だれが(Who

なにを(What目的、行為

なぜ(Why原因、理由

どのように(How手段、状態、方法、様子

 

新聞教育ルネサンスへ NIEで子どもが変わる、学校が変わる』石寛著 白泉社

2012315日発刊P146 1行目〜P147 18行目

 

上記のことからわかるように、新聞記事の大きな特徴の一つとして「5W1H」を含んでいるという点が挙げられる。これらの要点をおさえることで、読者が知りたい情報を記事にして提供できる。ただしニュースの種類によってはこの6要素のうちいずれかに重点が置かれ、他の要素が省略される場合も存在する。特に朝日小学生新聞の「ニュースあれこれ」ではほとんどの場合16文字×14行のうちに記事をおさめるため、省略傾向が強い。次に「3C」について説明を加える。

 

新聞記事は日々、最も多くの人々に、最も読まれている文章である。専門書と違い、広く義務教育を終えた人を対象としているので、わかりやすく、よみやすくなければならない。早く、正確に伝える必要もある。そのためにCorrect(正確),Concise(簡潔),Clear(明快)の3Cが必須となる。

 はじめて学ぶ 学校教育と新聞活用 考え方から実践方法までの基礎知識』小原友行著

2013330日発行 ミネルヴァ書房   P156

 

以上のことにより、新聞記事は3Cが必須の条件となっていることが分かる。「広く義務教育を終えた人」を対象とすることが分かりやすさの確保理由であれば、子どもを対象とした小学生新聞は、更なるわかりやすさへの配慮がなされていることが想定できる。

最後に「逆ピラミッド型構造」について説明を加える。

 

  新聞記事の特徴には、わかりやすい文章に加えて、「逆ピラミッド型」あるいは「逆三角形型」といわれる構成がある。

  作文技法の基本は「序論→本論→結論」あるいは「起承転結」といわれる構成がある。「起」で提起し、「承」で受け、「転」で転換し、「結」で結果、結末を示すという構成だが、これでは最後まで読まなければ結論はわからない。新聞記事は手早く情報を伝えるために、真っ先に最も重要なこと・結論を書き、続いて、より重要なことから補足するように書いていく。ピラミッドを逆さにした形は、重要なことを上(前)にすることをイメージしている。

 

 

                本文は最初に結論を書き、続いて重要なことから書いていく。

 
 

 

 

 

 

 

 

 


はじめて学ぶ 学校教育と新聞活用 考え方から実践方法までの基礎知識』小原友行著

2013330日発行 ミネルヴァ書房   P156〜P157

 

 「逆ピラミッド構造」は朝日小学生新聞の記事でも用いられており、「ニュースあれこれ」内の記事は全て逆三角形型構造であった。しかしその他については、後半につれ情報のの重要度が上がる記事が見受けられる。この「逆ピラミッド構造」については次のような記述もある。

 

文体としてこの形式がとられるのは、ヤマが初めに出てくるから読者にとって読みやすく、わかりやすいからである。さらには、短時間に編集を必要とする新聞だけに、大組がしやすい。また見出しもつけやすい、といった利点があるからである。

現代マスコミ文章論 赤井直恭著 有峰書店 昭和45620日発行 p8 79行目

 

これにより新聞記事の「逆ピラミッド構造」は、わかりやすさという読者側の利点だけではなく、短時間で編集しなければならない記者側の利点もある構造であると言える。それ故、短時間での編集が必要とされる日ごとの新しいニュースを伝える「ニュースあれこれ」内の記事は主に「逆ピラミッド型」構造をとり、一方専門家に取材を行ったり現地取材に行ったりして、一つの物事を掘り下げて伝えるその他の一面記事は異なると考えられる。

 

第二項 新聞記事の種類

 

前項で挙げた「短時間での編集が必要とされる日ごとの新しいニュース」と一つの物事を掘り下げて伝える記事」の区別を以下の引用にて説明する。

 

(1)ストレートニュース

ストレートニュースは、国際、政治、経済、社会などさまざまな分野で今、起こっている事を伝える。本書の「新聞記事の構成・文章」(156157頁)で説明する「51H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)」のニュースの6要素を、記者が個人的な考えや意見を排除して取材するので、基本的には新聞社や取材者が異なっても、同じ記事になるはずである。(中略)

このように、ストレートニュースでは、日刊紙の朝刊は主に前日に起こったことを、夕刊はその日の昼までに起こったことや新たに判明したことなどを伝える。原則として、昨日、今日といった直近に起こった事象を伝えるので、「日付もの」と呼ばれることもある。

 

(2)フィーチャー記事

フィーチャー(特集)記事は、一定期間の流れの中で、傾向を振り返ったり、理由・原因を探ったり、今後の展開を予測したり、方策を模索したりする。(中略)

複雑化する社会や世界の動きは、直近のストレートニュースだけでは伝えきれないこともある。物事を整理したり、深く掘り下げて考えたりするのに、フィーチャー記事は適している。

 

(3)解説・論評

ストレートニュースでは、原則として同じことは繰り返して書かない。同じテーマのニュースを報じる場合は、既報の事実を読者が知っていることを前提にして書く。このため、既報の記事を読み、事象の流れを知らないことには、ストレートニュース二書かれている内容を理解できないケースも出てくる。(中略)

そこで、事象をわかりやすく説明して、読者の理解を助ける解説記事の出番になる。

はじめて学ぶ 学校教育と新聞活用 考え方から実践方法までの基礎知識』小原友行著

2013330日発行 ミネルヴァ書房   P148〜P149

 

1)ストレートニュースは、主に事実のみが書かれ、事実の切り取り方によって書き手の意図が現れることがあるが、基本的に記者の意見は書かれない記事である。報道記事が例としてあげられる。(2)フィーチャー記事は今までのストレートニュースをわかりやすく写真やグラフを用いてまとめなおしている記事である。一方で(3)解説・論評記事は事実と筆者の意見が同じ記事内に混在する。社説などはこれにあてはまり、事実と意見を見分ける能力が必要とされる記事である。朝日小学生新聞の紙面では【図1】のようになる。小学生新聞に社説はないが、解説・論表記事は一面に掲載される。

 

四角形吹き出し: フィーチャー記事もしくは解説記事四角形吹き出し: ストレートニュース

【図1】朝日小学生新聞の紙面

 

朝日小学生新聞では、一面記事が(2)フィーチャー記事、(3)解説・論評記事であり、「ニュースあれこれ」内の記事が(1)ストレートニュースとなっている。最後に、それぞれの例として朝日小学生新聞の記事本文を掲載する。

 

【例1】ストレートニュース

中国地方で28日、記録的な大雨が降りました。山口県萩市で1時間に138.5ミリ、島根県津和野町で91.5ミリの観測史上最多の雨量を記録し、1人が死亡、2人が行方不明になりました。暖かく湿った空気が流れ込み、大気が不安定になった影響です。気象庁は「これまでに経験のないような大雨」として注意を呼びかけました。

              朝日小学生新聞7月30日 

【例2】フィーチャー記事

軍が大統領をつかまえ、国内が二分エジプトでクーデターが発生って?

ジャン  エジプトでクーデターが起きたと聞いたけど。

貫洞記者 軍がムルシ大統領をつかまえて「もはや大統領ではない」と宣言したんだ。

ポン ムルシさんは何か悪いことしたの?

貫洞記者 エジプトでは2年前、民主化を求める大きなデモが起きて、30年続いた

独裁政権がたおれた。去年6月に大統領選挙をして選ばれたのがムハンマ

ド・ムルシ氏だ。でも、失敗続きで批判の声が高まって、就任1周年の6

月30日に大きなデモが起きたんだ。

ケン   選挙で選ばれた大統領を軍がつかまえるのって変じゃない?

  エジプトは今、真っ二つに割れているんだ。多くの人々が、今回の軍の

行動を「ひどい政治にあえぐ民衆の求めで、軍が動いてくれた。第2の革命だ」と喜んでいる。一方ムルシ氏を支持してきた人々は「軍のやり方は違法。ムルシ氏こそが正当な大統領だ」とデモを続けている。

《中略》

   エジプトではムバラク政権が倒れるまで50年以上、軍人が大統領になって きた。軍に多くの予算がつぎこまれ、武器を作ることから、軍用の技術を生かして家庭用冷蔵庫を作ることまで、軍関係のさまざまな産業が広がっていた。

そこに初の「民間人大統領」のムルシ氏が登場し、権限をうばおうとしていると感じた、という見方さ。軍はエリート集団。貧しい人の支持を集めるムスリム同胞団とは、ずっと仲が悪かったんだ。

ポン これからどうなるの?

   ムルシ派の人々はデモを続けるつもりだ。もしかすると、暴力的な対決になるかもしれないし、今は軍の行動を支持している人たちも、暫定政権がうまくいかなければ、再び「政権打倒」とデモするかもしれない。しばらくは目が離せないね。             朝日小学生新聞 7月24日

【例3】解説・論表記事

きょう21日は、参議院議院選挙の投票と開票が行われます。選挙結果をとともに注目を集めるのが投票結果です。参院選では、選挙権を持つ大人たちの5人に2人が投票に行かないという状態が続いているのです。慶應義塾大学教授の小林良彰さんに、低い投票率の問題点などを聞きました。朝小リポーターから寄せられた「投票率を上げるアイデア」も紹介します。

 少ない有権者の意見しか反映されない

参院選の投票率は1995年の44.52%がもっとも低く、以降は毎回、60%弱となっています。=グラフ参照

「今回の結果がどうなるかわかりませんが、投票率の低さは、少ない有権者の意見しか国会に反映されないことに一番の問題点がある」と小林さんは言います。

投票率を左右することのひとつとして、小林さんが挙げるのは「争点」です。

《中略》

朝小リポーターはこう考えた 子どもに模擬投票公約を具体的に投票率をあげる方法について、朝小リポーターに聞いてみました。

選挙権のない子どものころから政治や選挙に関心を持つような取り組みが必要ではないかという意見が多く寄せられました。「クラスではなぜこの人に投票するのかを話し合い、実際に選挙絵をしてみる。そうすれば20歳になったときも選挙を身近に考えられます」と大塚水葉さん(北海道・五年)。宮本侑昴くん(兵庫県・6年)は「選挙について調べ学習をしたり、話し合いをしたりして、模擬投票を行ってみては」というアイデアを出してくれました。

投票所にいったことのある鈴木康峰くん(静岡県・3年)。「子どものころから親といつもいっしょに投票所に行くと、大人になっても選挙に行くのは当たり前だと思うようになります」

政治家や政党に対する注文も。「各党が実現できそうな政策を、もっと具体的に公約に書くようにする」と清水佑香さん(佐賀県・5年)。佐藤由季子さん(東京都・6年)は「若い世代の投票率が低いので、若い人に向けた政策を発信して」と考えます。

また投票場所について、「コンビニや駅などいろいろな場所で投票できるようにする」(壹岐碧斗くん・岩手県・6年)という意見もありました。

最後に選挙に行かない大人に朝小リポーターから一言。「子どもは大人を見本にしています。日本が良くなることは自分たちの幸せではありませんか。一票を大切にしてください」(永島幸樹くん・東京都・6年)                           

朝日小学生新聞 7月 21日

 

 

 

第三節 研究方法

 

以上の新聞・新聞記事の特徴を踏まえた上で、実際に小学生新聞の分析にはいる。分析するにあたって、複数の分析観点を決定し、それに従って「朝日小学生新聞」内の記事の表現特性や傾向を明らかにする。この節では、立てた分析観点と研究方法について説明を加える。

 

第一項 使用語彙の分析

 

第一に、使用される語彙の品詞の偏りによって表現特性を明らかにするため、品詞分析の項目を設ける。

例えば、朝日小学生新聞の816日『デモ強制排除で死者278人エジプト、非常事態宣言』の記事では、朝日新聞での「強制排除した」の文言を「無理やり排除しました」とする変更がみられる。この場合朝日小学生新聞は「無理やり」という副詞が付されているため、両記事の品詞数に違いが現れる。よって品詞数の偏りを見ることは、表現特性を調べる上で効果が期待されると考えた。

研究方法としては、朝日小学生新聞の「ニュースあれこれ」内の記事100個と同テーマを扱った朝日新聞の記事100個を対象に、記事内の全単語数における品詞ごとの割合を分析する。そのため、それぞれの記事をデータ化した後形態素解析フリーソフトである『Win Cha 2000』(以下茶筅)に全てかけ、出た結果をExcelに打ち込み、数と割合を調査していく。

 尚、未知語と判定された語(例)オバマ・プーチン・アベノミクス等については、茶筅の品詞体系に基づいて独自に分類した。

 

第二項 表現形式の特徴

 

ここでは記事の内容に注目し、記事の段落構成・加筆される記事の傾向・省略される記事の傾向について研究する。

朝日小学生新聞の記事内容を中心に分析するにあたり、次の3つの分類項目をたて段落分けをおこなう。分類項目1については、逆ピラミッド型構造に準拠し、三つに分類する。分類の詳細は以下のとおりである。ただし、本研究では見出しについては考慮しない。

 

分類1

詳細

 

見出し

記事のタイトル・リード文

 

前文

事件のおおまかな内容

 

 

本文

事件の詳細部分

前文

記事の冒頭、事件の概要(分類2の1.概要に当てはまる)

 

 更に内容による文章構成の分析を行うべく、以下の【表2】のような分類項目を立て尚、例として挙げ文章はいずれも朝日小学生新聞の記事から一部引用したものである。

 

項目2

詳細

1.概要

日時・場所・人・出来事などが一文で要約された文。

(例)国際連合の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次報告書が27日、まとまりました。

2.内容

事件・研究の内容について解説されている文。

(例)決議では、化学兵器禁止機関(OPCW)が決定した化学兵器廃棄に向けた実行計画に従うよう、シリアに求めています。

3.対象

事件の対象となる人物・研究対象解説

(例) 「ウルトラマン」は1966年放送開始。ギネスワールドレコーズによると、派生したテレビ番組(単発を除く)は計27作。「ウルトラセブン」、アニメ「ザ★ウルトラマン」、怪獣が主役の「ウルトラギャラクシー大怪獣バトル」、今年7月に放送が始まった最新作「ウルトラマンギンガ」などがある。

4.原因

事件の背景・原因の詳細

(例)議会で与党と野党が対立し、10月からの国のお金の使い方を決める予算が成立しなかったためです。

5.目的

調査・研究・事業等の目的・研究の目的の詳細

(例)英語などの外国力のほか、課題を見つけて解決する能力や歴史・文化など幅広い教養を身につけた生徒を育てるのがねらいです。

6.結果

事件や研究の結果の詳細

(例)女性は亡くなり、男性は重傷を負いました。

7.反響

事件に対する周囲の反響・周囲への影響・結果を受けての周囲の対応

() しかし、国民の税負担が増えるため、買い物をする人が少なくなり不景気になる心配もあります。

8.課題

出来事に対する問題点・課題の指摘

(例)課題として、人間関係が広がらない懸念や、他の分野に関心が芽生えた時の児童生徒への対応をあげた。そのため、他の学校からの編入学もとりいれる。

9.語句解説

語句についての詳しい説明

(例)大阪都構想は、政令指定都市の大阪市と堺市をなくして特別区にする構想です。

10.添加・関連情報

関連情報・別の観点からの情報

(例)一方で、世界遺産の一部として認められた三保松原(静岡市)には7、8月の週末に去年の2倍以上の1日平均約400人が訪れるなど、富士山周辺の観光地はにぎわいました。

11.様子

現場の様子・当事者の様子

(例)授賞式では、マウスの姿で登場した共同研究者らがオペラを歌う隣でスピーチをして、会場を沸かせた。

12.当事者

の発言

当事者の言葉

(例)キプサング選手は「もっと速く走れる可能性はある」と話しています。

13.専門家・第三者の意見

専門家・第三者の意見

(例)「今回の結果がどうなるかわかりませんが、投票率の低さは、少ない有権者の意見しか国会に反映されないことに一番の問題点がある」と小林さんは言います。

14.比較

 

過去や別のものを引き合いに出し、事件の重大性を示す

(例)動物がたがいの鳴き声を覚えて使う例はほとんど知られていません。

(例)ロシア提案についてアサド氏自身が態度を表明するのは今回が初めて。

15.既知の事実

事件の以前から分かっていた事実について

(例)シリアでは、過去に政府側と反体制側の双方が化学兵器を使ったとの疑惑が出ていて、国連調査団が18日からダマスカス入りしている。

16.展望

今後の見通し・予定・未来のことについて

(例)4号機も15日に止まり、日本で動いている原発はなくなりますが、今回の見方が示されたことで、再稼働への審査に入れる見通しです。

17.記者の意見

記者の主観が見て取れる文、また予測が述べられている文。

(例)橋下さんは今後の都構想の進め方などの見直しをせまられそうです。

【表1】分類項目2 分類基準

 

また項目3では、文章内容の詳細を小見出しとして書き加えた。以下の表【図2】が、朝日新聞記事・朝日小学生新聞の両方をこれら三つの項目を元に分類したものの例である。尚、最も右に書かれるのが朝日小学生新聞の記事、その左隣が同内容を扱った朝日新聞の記事である。

 

【図2】 新聞記事の分類表 例

上記の【図2】のように、朝日小学生新聞「ニュースあれこれ」内の記事100記事と、同内容を扱った朝日新聞100記事の内容を照らし合わせながらExcelにまとめる。手順としては内容量の多い朝日新聞の記事を三つの分類項目を元に段落分けした後、内容の対応する段落の横のセルに朝日小学生新聞の記事を分類していく。

 尚【図2】上部の灰色に網掛けされた個所は、対応させた中心内容は異なるものの同一の情報が含まれていることを意味するものである。具体的にいえば、朝日小学生新聞2段落目の中心内容は「25日にブラジルで表彰式」という展望であるが、「今回17人選ばれた」という柔道の殿堂についての内容もかかれている。この内容は朝日新聞最後の段落と書かれる情報が重複するので、両セルを網掛けで示している。

こうして収集したデータを元に、「構成」「省略傾向」「加筆傾向」の3つの観点により分析し、表現特徴を見いだす。

 

  構成

 

「構成」の研究方法について説明を加える。ここでは、分類項目2の観点に着目して朝日小学生新聞の分析を行う。以下の【図3】に分類項目2と小学生新聞の記事のみ取りだした例を掲載する。

【図3】からこの記事では、概要→語句解説→当事者の発言→添加・関連情報という順で情報が書かれていることがわかる。「構成」の研究ではこの情報の書かれる順序を調査し、傾向を分析する。

 

【図3】分類項目2と朝日小学生新聞記事とを抜き出した表 例

 

省略される記事の傾向

 

 省略される記事の傾向をみるにあたって、以下のような100記事全ての省略された意味段落の個数をあらわした表を作成した。ただし下の図は20件分に略した図である。

 

テーマの分類17項目を元に、上記の朝日新聞100記事の省略された段落をテーマごとに分類し、その中で特異な数値が出たものを取り上げて詳しい説明を加え、省略と記事のテーマとの相関性を考察する。尚、テーマの分類は以下の【表2】を作成し、それに従って行った。

 

A.健康・安全

健康や安全に関する内容ついて扱った記事

(例)『気をつけて歩こう通学路』『海水浴の事故 防ぐには』

 B.暮らし

日々の暮らしについての注意喚起や知恵が書かれた記事

(例)『節電無理せず続けよう』『命に責任もって飼おう』

C.教育・学校

学校での出来事や勉学に関する記事・学習活動

(例)『変わる みんなの図書館』『発表の達人になろう』

D.人物

人物にスポットをあて、インタビューを行ったり功績をまとめたりする記事 

(例)『やなせさんありがとう』『明るく生きて115歳』

E.都市

都市の紹介や取り組みを扱う記事

(例)『』

F.文化

日本・海外の文化を扱った記事

(例)『富士山 世界文化遺産へ』『卑弥呼の墓?謎を追う』

G.スポーツ

スポーツ・スポーツ選手を扱った記事

(例)『WBC侍ジャパンinアメリカ』『楽天底力で初の日本一』

H.災害関連

災害にあった地域の模様を伝える記事

(例)『福島の漁業少しずつ再開』『関東大震災から90年』

I.技術

物理・技術革新について書かれた記事

(例)『ロボットと笑顔で会話』『最新技術で記録を残そう』

J.生物

生物・植物について書かれた記事

(例)『見て!独自の生き方』『不思議なアサガオ』

K.天文・地学

宇宙・地学・気象に関する記事

(例)『ヒントがいっぱい ロシアの隕石』

L.政治

政治に関して書かれた記事

(例)『投票率低いって問題?』『安倍政権に国民の審判』

M.経済

経済について書かれた記事

(例)『消費税なぜあげるの?』『経済学んでかしこく暮らそう』

N.社会

社会でおきたニュースで上記のものに当てはまらない記事

(例)『不発弾、戦争の傷跡』『ノーベル賞 今年は誰に』

O.国際

国際関係のテーマを扱う記事

(例)『世界が協力、話し合う 国連総会』

P.シリーズ特集

連載記事である『いのちの授業』のみを分類した

【表2】朝日小学生新聞 一面記事のテーマ分類表

 

●加筆される記事の傾向

 

加筆される記事の傾向を見る上で、下のような表を作成した、

 

 

 

 上の表のように、加筆されている朝日小学生新聞の記事を抜き出し、あわせて元の記事の扱うテーマと、抜き出した記事がp10〜p11の分類表のどれに当てはまるかを記入しておく。この表を元に加筆される記事の傾向を研究する。

 

第二章 使用語彙の分析

 

第三章では、朝日小学生新聞の記事で使用される語彙に着目した品詞分析・テーマ別文末分析についての研究内容を順に記す。

 

第一節 品詞分析

 

朝日小学生新聞内のストレートニュースである「ニュースあれこれ」100記事内に使用される語彙を品詞別に数えた所、次のような結果が得られた。

 

 

 合計11828語のうち、名詞が最も多く5048語で全体の42.6%を占めた。次いで助詞が多く2849語で24.0%、記号が1389語で11.7%となった。

 一方で感動詞が1語で最も少なく、それに接続詞の7語、連体詞の26語、副詞の49語、形容詞の72語が続く。以上のことをまとめたものが下記の【グラフ1】である。

 

【グラフ1】朝日小学生新聞100記事の品詞内訳

 

また、使用数が少ない感動詞、接続詞、連体詞に分類された語は以下の通りになった。

品詞

語句

感動詞

あっかんべー(1

接続詞

一方(4)・しかし(2)・また(2)・そして(1

連体詞

この(13)・そんな(2)同じ(6)・大きな(2)・ちょっとした(2)・そんな(2)その(2)・いろんな(1

一方、朝日小学生新聞と同内容を扱った、朝日新聞に掲載された100記事の品詞内訳は次のようになった。

 

 

合計39231語のうち、名詞が最も多く17618語で全体の44.6%を占めた。次いで助詞が多く9531語で24.2%、次に記号が5058語で12.9%となった。

一方で感動詞が3語で最も少なく、それに接続詞の84語、連体詞の93語、副詞の218語、形容詞の289語が続く。以上のことをまとめたものが下記の【グラフ2】である。

 

 

【グラフ2】朝日新聞 100記事の品詞内訳

 

また、使用数が少ない感動詞、接続詞、連体詞に分類された語は以下の通りになった。

感動詞

ありがとう(2)あっかんべー(1

接続詞

一方(18)・ただ(15)・また(12)・しかし(8)・だが(7)・そのうえで(3)・例えば(3)・そして(3)・または(3)・ところが(2)・それでも(2)・それでは(1)・そこで(1)・なのに(1)・逆に(1)・実は(1)・けど(1)・及び(1)・まずは(1

連体詞

この(36)・その(20)・同じ(11)・大きな(10)・そんな(2)・さらなる(2)・小さな(2)・ある(2)・ちょっとした(1)・あらゆる(1)・こうした(1)・何らかの(1)・どんな(1)・いろんな(1)・あの(1)・どの(1

 

朝日小学生新聞と朝日新聞それぞれの記事の品詞数の割合を比較すると、どちらも1位、2位、3位に名詞・助詞・記号と続くことが分かる。またどちらも感動詞、次いで接続詞、連体詞の順に割合が少なく、1位から11位まで全ての品詞における順位は同じ結果となった。朝日小学生新聞と朝日新聞との間に、品詞の割合の大きな違いはみられないという結果になった。

 また、下位3つの品詞の異なり語数を見ると、朝日小学生新聞が感動詞1語、接続詞4語、連体詞8語である。一方朝日新聞は感動詞2語、接続詞19語、連体詞16語であった。

割合は類似しているが、異なり語数で見ると朝日新聞が多く、下位3品詞の中では、特に接続詞の種類において違いがあった。

 

●小学校教材との比較

2003年国語表現ゼミナールによって発表されたデータによると、小学校教材の各学年の接続詞出現率は以下のとおりである。

 

出現率

1

0.40%

2

0.45%

3

0.61%

4

0.45%

5

0.60%

6

0.61%

 

朝日小学生新聞の全文字数は19384文字であり、接続詞の出現率は0.03%。朝日新聞の全文字数は80563文字であり、接続詞の出現率は0.38%であった。小学校教材のどの学年と比べても、朝日小学生新聞記事と朝日新聞記事の接続詞の出現率は低いことが分かる。

新聞記事は字数が限られているため、接続詞は省略される傾向にある故このような結果が出たと考えられる。

 

 

 

第三章 表現形式の特徴

 

第四章では記事の内容に注目し、記事の段落構成・加筆される記事の傾向・省略される記事の傾向について研究した内容を順に述べていく。

 

第一節 朝日小学生新聞記事の段落構成

 

朝日小学生新聞内のストレートニュースである「ニュースあれこれ」100記事における意味段落の構成をみた所、次のような結果が得られた。

 

構成

2段落構成

3段落構成

4段落構成

5段落構成

6段落構成

記事数

8

32

43

16

1

 

4段落構成が最も多く43件、続いて3段落構成の32件、5段落構成の16件となった。6段落構成は1件と最も少なかった。6段落構成となった記事は以下のとおりである。

 

 

希少動植物の取引、罰金高く 最高1億円

概要

絶滅のおそれがある野生動植物を違法に捕獲、採取、取引することに対して、環境省は罰則を大幅に強めることを決めました。

原因

高い金額で売買されるのに罰則が軽く、悪質な違法取引が後を絶たないためです。

内容1

法人への罰則金額の最高額は今の100万円から1億円に、個人は100万円から500万円に引き上げます。

内容2

希少種を売るためにインターネットや雑誌などで広告することも禁じます。

対象

規制対象となる国内の希少種は90種。

展望

2020年までに390種に増やすとしています。

 

この記事は希少動物取引の厳罰化についてかかれた、201346日朝日小学生新聞掲載の記事である。環境省の改訂内容が主に2つあるため、段落数が多くなったとみられる。

 

続いて2段構成の記事の検証を行う。2段落構成の記事の例を以下に掲載する。

 

亀田3兄弟そろって王者に ボクシング、世界初

概要

国際ボクシング連盟(IBF)スーパーフライ級王座決定戦が香川県高松市であり、同級3位の亀田大樹選手がメキシコのロドリゴ・ゲロ選手を3−0の判定で破り、新チャンピオンになりました。

結果

長男の興毅選手、三男の知毅選手とともに、世界で初めて3兄弟同時の世界王者です。

 

 

 

前頁の記事は、亀田大樹選手の試合結果を伝えた2013719朝日小学生新聞に掲載された記事である。概要以外に、3兄弟同時世界王者に初めてなったという大樹選手が試合に勝った結果が書かれている。その他の2段落構成の記事でも、初めは全て概要で始まっており、対象と続くものが2件、反響と続くものも2件、内容・原因・様子と続くものが1件ずつという結果になった。

 

次に3段構成の記事について説明を加える。以下はその記事の例である。

 

国が汚染水対策に470億円 福島第一原発

概要

東京電力福島第一原子力発電所(原発)のタンクから高い濃度の放射能の汚染水が漏れている対策のために、安倍晋政権は国のお金470億円を使うことを決めました。

内容

320億円を原発施設周りの土をこおらせて、地下水が流れ込むのを防ぐ壁を造ります。 

展望

最初の計画よりも1年早めで、2014年土中に完成させる予定ですが、どれぐらいの効果があるのかははっきりしません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上記の記事は201391日掲載の、国の福島汚染水対策に関する費用に関する記事である。概要の他に、470億円の内訳にあたる内容と、今後の予定である展望が描かれている。

他の3段落構成の記事をみると、概要の次に続く中段落での内容は、下記の【表1】のとおりになった。

 

専門家・第三者の意見

1

展望

1

添加・関連情報

1

当事者の発言

1

結果

2

比較

4

原因

6

対象

7

内容

8

 

【表1】 3段落構成記事の中段落の内容別件数

 

 

3段構成の記事で、最も多いのは概要→内容と続く記事で8件。続いて概要→対象型が7件、概要→原因型が6個、概要→比較型が4件となった。

 

また、3段構成の末段にくる内容は、次の【表2】の通りになった。

 

添加・関連情報

1

比較

1

目的

1

既知の事実

2

反響

2

結果

2

原因

2

対象

2

展望

2

当事者の発言

6

内容

11

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【表2】 3段落構成記事の末段の内容別件数

 

3段落構成では末段に内容がくることが11件と最も多い。続いて当事者の発言の6件、他はあまり差異がみられない結果となった。

更に、3段落全体の内容の推移をみると次の【表3】のような結果が得られた。尚、2件未満のものは省略する。

 

概要→対象→当事者の発言

4

概要→内容→内容

3

概要→内容→結果

2

概要→原因→内容

2

概要→比較→内容

2

【表33段落構成記事の全体の内容推移

 

 最も多かったものは、概要→対象→当事者の発言で4件である。以下に例を掲載する。

 

 

伝説の教師、橋本武さん死去 灘中・高の元先生

概要

灘中学・高校(兵庫県神戸市)の国語の元先生で、教科書を使わず作家・中勘助の小説「銀の匙」を3年かけて読ませる独特の授業法で知られた橋本武さんが11日に亡くなりました。101歳でした。

対象

21歳から71歳まで教壇に立った「伝説の国語教師」。教え子に作家の故・遠藤周作らがいます。

当事者の発言

 2011年6月29日付の朝小で「人から教えてもらった答えを受け入れるだけでなく、自分なりに考えて」と話していました。

 

この記事では、概要で橋本武さんの訃報を伝え、対象で橋本武さんの功績についての解説を加え最後に生前の発言がかかれている。その他の同じ型の記事も同じように概要に出てきた人物の功績や地位を概要の次に書き、最後にその人物の発言を掲載する形をとっている。

 

次に4段落構成の記事の検証を行う。4段落構成の記事の例は以下のとおりである。

 

運動会をつむじかぜがおそった 茨城、6人けが

概要

茨城県古河市の下辺身小学校の校庭で8日午後1時35分ごろ、運動会の最中に渦巻き状の突風が発生しました。

結果

テント2張りを巻き上げて倒し、下にいた4,5年生の6人が頭や腕を打って軽いけがをしました。

専門家・第三者の意見

水戸地方気象台は「突風はつむじ風と推定される」と発表しました。

語句解説

つむじ風は、地上のちょっとした温度差や地形の影響で発生する局地的な突風です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上記の記事はつむじかぜの発生を伝える記事である。概要以外全て別の要素で構成されている。このように全て別の要素で構成される記事は、4段落構成全43記事中28記事で過半数であった。また、概要に続く2段落目の内容を調べると、以下の【表4】のとおりになった。

課題

1

既知の事実

1

語句解説

1

展望

1

様子

1

原因

2

当事者の発言

2

目的

2

比較

2

反響

3

結果

4

対象

6

内容

17

【表4】4段落構成記事の2段落目の内容別件数

 

4段構成の記事で、最も多いのは概要→内容と続く記事で17記事。続いて概要→対象型が6記事、概要→結果型が4記事となった。3段構成の記事における中段落の結果と合わせてみても、概要の後に内容がくることが多いことが分かる。また対象についても概要と合わせて書かれる傾向にある。

 

次に3段落目の傾向を調べると、次の【表5】ようになった。

 

反響

1

比較

1

既知の事実

2

語句解説

2

専門家・第三者の意見

2

添加・関連情報

2

展望

2

結果

3

当事者の発言

3

原因

4

目的

5

内容

7

対象

9

【表5】4段落構成記事の3段落目の内容別件数

 

4段構成の3段落目では、対象が9件と最も多く、次に内容の7件、目的の5件と続いた。【表4】と比較すると、3段落目の方が数の偏りがなく、ばらつきがあるといえる。最後に4段落構成の末段を調査すると、【表6】の結果が得られた。

 

課題

1

結果

2

語句解説

2

当事者の発言

2

反響

2

目的

2

既知の事実

3

対象

3

添加・関連情報

3

比較

3

原因

5

内容

6

展望

9

【表6】4段落構成記事の末段の内容別件数

 

 他段落と比較すると展望の件数が多いことが分かる。展望は未来の予想されることや将来的な計画についてかかれたものであるため、最後の段落につけたされることが多かった。4段落を通して同じ構成のものは概要→内容→展開→原因の型のみで、記事数も2件しかなかった。段落が多いほど、情報の順序も様々になるようだ。

 

11月2日 大学入試、得点以外の評価も 再生会議が提言

概要

政府の教育再生実行会議は10月31日、大学の入試改革の提言を安倍首相に渡しました。

内容1

基礎と発展の2種類からなる「達成度テスト」を始めることなど提案。

内容2

今の大学入試センター試験のような1点刻みではなく、何段階かのランクに分けて成績を示すことや、面接などで受験生のやる気や能力をみる選び方にするよう、大学側に求めました。

内容3

一発勝負の試験ではなく、複数回受験できるようにする考えも盛り込みました。

展望

文部科学省は5〜6年後に始められるよう検討します。

 

最後に5段落構成の記事を検証する。5段落構成の記事の例は以下のとおりである。

 

上記を見て分かるように、5段落構成の記事は6段落構成の記事と同じく、内容を表す段落が複数ある。このように同じ役割を果たす段落が複数ある記事は、5段落構成全16件中、10件で過半数であった。4段落構成の記事が全て別の役割を果たす段落が多かったのに対し、5段落構成では一つの物事の中身を詳しく述べる傾向があるといえる。

5段落構成の記事は、他の構成記事と同様全て概要から始まる記事であった。概要に続く段落の役割は以下の【表6】のとおりになった。

 

語句解説

1

対象

1

結果

2

比較

3

内容

9

【表6】5段落構成記事の概要に続く段落の内容別件数

 

内容が最も多く、9件となった。次に比較の3件と続くが、他は大きな差がみられない。2段落構成、3段落構成、4段落構成、そして5段落構成の全てが概要→内容の件数が多くなっており、朝日小学生新聞では概要の後に内容を提示する傾向があることがわかる。また、次に続く段落は以下のとおりとなった。

 

 

 

語句解説

1

当事者の発言

1

原因

2

展望

2

比較

2

対象

3

内容

5

【表7】5段落構成記事の3段落目の内容別件数

 

内容が5件、続いて対象の3件と続く結果となった。【表6】と比較すると、役割の種類も多く、数もややばらつきがあるといえる。

 

次に5段落構成の4段落目について述べる。結果は以下の【表8】とおりとなった。

 

既知の事実

1

原因

1

展望

1

添加・関連情報

1

比較

1

様子

1

専門家・第三者の意見

2

内容

2

対象

3

反響

3

【表8】5段落構成記事の4段落目の内容別件数

 

反響が3件、対象が3件。それに内容、専門家・第三者の意見の2件が続く。最上位でも3件であり、3段落目よりも役割の種類が増え、数のばらつきも増していると言える。

 

最後に5段落構成最後の段落について説明する。以下の【表9】がその結果である。

 

課題

1

結果

1

語句解説

1

専門家・第三者の意見

1

添加・関連情報

1

当事者の発言

1

反響

1

既知の事実

1

原因

2

展望

2

内容

2

様子

2

【表9】5段落構成記事の末段の内容別件数

 

4段落と比較すると、種類は2種増え12種類、また数の偏りは更にばらつきがでる結果となった。他の段落構成でみられたような末段に多く現れるものも特に無い。

5段落構成全体のつながりを見ても同じ構成の記事は無く、2段落構成・3段落構成・4段落構成と比較すると、5段落構成は特筆すべき傾向が見られなかった。

これらのことから、段落数が少ないほど構成の共通点が多く、段落数が多いほど、そして段落が末段に近づくほど、段落内容の種類も提示する順序も決まった型がないことがわかる。

 

第二節 省略される記事の傾向

 

 朝日小学生新聞内のストレートニュースである「ニュースあれこれ」100記事と、同テーマを扱った朝日新聞内の記事100記事を比較し、朝日新聞の記事からどのような情報が省略されるかの傾向をみた。

朝日新聞の記事100件中の、概要・内容・対象・原因・目的・結果・反響・課題・語句・添加関連情報・様子・当事者の発言・専門家第三者の見解・比較・既知の事実・展望・記者の意見の17種のそれぞれの総数は次の【表1】ようになり、また同17種の100記事中の省略数は【表2】のとおりとなった。【表2】をみると、内容が107個と最も多く、次いで当事者の発言で59個、専門家・第三者の意見が49個と続いた。一方で最も数が少ないものは、概要で0個、次いで記者の意見の4個、目的の6個と続いた。

 

【表1】朝日新聞100記事17種別総数

【表2】 朝日新聞100記事 17種別省略された個数

 

以上の2つを比較すると、概要を表わす意味段落全く省略されることがなく、また記者の意見を表す段落は全て省略されることがわかる。このように二つの表から、それぞれ17種の省略率を調べたものが次の【表3】である。

 

 

【表317種別省略率

上記の【表3】より、概要は全く省略されない一方で記者の意見は全て省略されることがわかる。添加・関連情報と専門家・第三者の意見、様子はどれも80%超え、省略されやすい傾向にあると考えられる。一方で目的、結果、比較、対象はどれも60%以下であり、省略されにくい傾向にあることがわかった。

また全体の省略率は省略前段落数803個、省略された段落数478個より59.5%となった。

次に朝日新聞100記事を、テーマごとに分けて加筆傾向を調べた。その結果について順次説明を加える。

 

以下の表は学校・教育がテーマの新聞記事9件について、省略された段落内容の数を調べた結果である。

 

【表4】学校・教育がテーマの新聞記事 省略された段落内容の数

 

省略された段落は合計で57個。1件当たり平均5.7個省略されており、全体の平均である4.8個よりやや多い。さらに記事番号93においては、省略された段落が16個と平均よりかなり多くなっていることが分かる。

段落内容の各項目については、内容が最も多く省略されており合計で18個、それに専門家・第三者の意見の13個が続く形となっている。

個別に記事をみると、省略される段落の役割のほとんどが0個から2個の範囲で各項目に分散していることがわかる。しかしその中でも、記事番号1の内容における省略数が8個と逸脱している。

 

記事番号1や、記事番号93の記事のように、他とは違う形がみられた記事については詳細をみる。次頁の【表5】【表6】は記事番号1と記事番号93のそれぞれの記事である。

 

記事番号1の記事は、朝日新聞とベネッセが行った保護者意識調査の調査結果について書かれている。朝日新聞では、調査内容が「週6日制の是非」「教育格差」「保護者の学歴」「経済状況」「学外教育」と多く、また複数回にわたって内容を詳しく述べているので、内容の項目が多くなっている。しかし小学生新聞では「週6日制の是非」に関する記述しかなされないので、内容の省略段落が多くなったと言える。

 

 記事番号93の記事は、桜宮高校の体罰問題に関する最終報告書がまとめられことについて書かれている。最終報告書の中心内容は「教育委員会の責任追及」であり、朝日小学生新聞にも同様の内容が記載されている。しかし朝日新聞は後に専門家・第三者の意見を5個、当事者の発言を1個と、関係者の声を多く掲載している。朝日小学生新聞ではそれらを省略する傾向が強いため、省略数が多くなったと考えられる。

またほかの教育系の記事は教育制度を伝えるものであったのに対し、記事番号1と93は調査や報告書の結果を伝える記事であった。

【表5】記事番号1 朝日新聞と朝日小学生新聞との比較

【表6】記事番号93  朝日新聞と朝日小学生新聞との比較

 

 

 以下の【表7】は技術がテーマの新聞記事8件について、省略された段落内容の数を調べた結果である。

 

【表7】技術がテーマの新聞記事 省略された段落内容の数

 

省略された段落は合計で30個。1件当たり平均2.5個省略されており、全体の平均である4.8個より少ない。しかし記事番号41においては、省略された段落が11個と平均より多くなっていることが分かる。

段落内容の各項目については、内容が最も多く省略されており合計で9個、それに展望の5個が続く形となっている。

個別に記事をみると、省略される段落のほとんどが0個から2個の範囲で各項目に分散していることがわかる。しかしその中でも、記事番号41の内容における省略数が5個とやや多い。

記事番号41の記事のように、他とは違う形がみられた記事については詳細をみる。次頁の【表8】は記事番号41の朝日新聞記事と朝日小学生新聞記事との比較である。

【表8】の記事は、福島第一原子力発電所から汚染水が漏れ出ていたことを報告する記事である。朝日新聞では前文でおおまかに出来事を伝えて、本文でさらにそれらの情報を掘り下げる。この記事からは、朝日小学生新聞は朝日新聞の前文に書かれる内容を記載し、本文に書かれる内容は省略する傾向にあることが分かる。

他の技術分野の記事でも記事番号41と同様のことがいえ、記事番号41は傾向としては特異なものはみられなかった。記事の長さが長いと、どうしても他の記事より個数が多くなるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

【表8】記事番号41  朝日新聞と朝日小学生新聞との比較

 

 

以下の【表9】は経済がテーマの新聞記事13件について、省略された段落内容の数を調べた結果である。

 

【表9】経済がテーマの新聞記事 省略された段落内容の数

 

省略された段落は合計で55個。1件当たり平均4.2個省略されており、全体の平均である4.8個より少ない。ただし記事番号89においては、省略された段落が14個と平均より多くなっていることが分かる。

段落内容の各項目については、内容が最も多く省略されており合計で12個、それに原因の8個が続く形となっている。

個別に記事をみると、省略される段落のほとんどが0個から2個の範囲で各項目に分散していることがわかる。

記事番号89が特異になったのはやり記事自体の長さがながいためであり、1頁に収まらなかったのでここでは割愛する。記事番号89の合計段落数は20個であり、省略数は14個であることから省略率は70%とむしろ全体の平均より高かった。

 

次に以下の【表10】は健康・安全がテーマの新聞記事6件について、省略された段落内容の数を調べた結果である。

 

【表10】健康・安全がテーマの新聞記事 省略された段落内容の数

 

省略された段落は合計で22個。1件当たり平均3.6個省略されており、全体の平均である4.8個よりやや少ない。しかし記事番号38においては、省略された段落が8個と平均より多くなっていることが分かる。

段落内容の各項目については、内容が最も多く省略されており合計で4個、それに様子の3個が続く形となっている。朝日新聞の健康・安全をテーマにした記事では、健康被害が出た事故やそれの調査についてかかれたものが多く、被害に遭った現場の様子についてかかれた段落が書かれるが、小学生新聞では省略された。

個別に記事をみると、省略される段落の役割の全てが0個から2個の範囲で各項目に分散していることがわかる。

 

次に以下の【表11】は国際がテーマの新聞記事9件について、省略された段落内容の数を調べた結果である。

 

【表11】国際がテーマの新聞記事 省略された段落内容の数

 

省略された段落は合計で49個。1件当たり平均5.4個省略されており、全体の平均である4.8個よりやや多い。特に記事番号49においては、省略された段落が11個と平均より多くなっていることが分かる。

段落内容の各項目については、当事者の発言が最も多く省略されており合計で13個、それに内容の5個が続く形となっている。朝日新聞の国際をテーマにした記事では、幾つかの国がかかわる事件や会談についてかかれたものが多く、国々の主要人物の発言が書かれることが多かったが、小学生新聞ではそこが省略された。

個別に記事をみると、省略される段落の役割の多くが0個から2個の範囲で各項目に分散しているが、当事者の発言の項には3個、5個という結果が出た記事もあった。

下記の【表12】は、この当事者の発言よりも内容が多く省略された記事番号49の記事である。中国と韓国の会談についての記事であり、朝日小学生新聞では経済の結びつきを示す内容の部分が全て省略されたため、内容の省略数が多くなったと考えられる。

 

【表12】記事番号49  朝日新聞と朝日小学生新聞との比較

 

以下の【表13】は災害がテーマの新聞記事2件について、省略された段落内容の数を調べた結果である。

 

【表13】災害がテーマの新聞記事 省略された段落内容の数

 

省略された段落は合計で3個。1件当たり平均1.5個省略されており、全体の平均である4.8個より少ない。しかし記事の件数が少ないため、傾向として扱えるかはわからない。

段落内容の各項目については、添加・関連情報が最も多く省略されており合計2個であった。

 

以下の【表14】は社会がテーマの新聞記事件について、省略された段落内容の数を調べた結果である。

【表14】社会がテーマの新聞記事 省略された段落内容の数

 

省略された段落は合計で68個。1件当たり平均5.6個省略されており、全体の平均である4.8個よりやや多い。特に記事番号76においては、省略された段落が12個と平均より多くなっていることが分かる。

段落内容の各項目については、内容が最も多く省略されており合計で18個、それに対象の8個、当事者の発言の8個が続く形となっている。朝日新聞の社会をテーマにした記事では、裁判に関する記事が多く、法廷に立つ人々に対しての説明を加えることが多いため、対象の段落が多くなった。一方で小学生新聞は字数の限りがあるため、対象が省略される形となった。また裁判に立つ人の発言を載せる傾向も朝日新聞にあるため、当事者の発言の項目も多くなったと考えられる。個別に記事をみると、省略される段落の役割の多くが0個から3個の範囲で各項目に分散している。

以下の【表15】は人物がテーマの新聞記事6件について、省略された段落内容の数を調べた結果である。

 

【表15】技術がテーマの新聞記事 省略された段落内容の数

 

省略された段落は合計で27個。1件当たり平均4.5個省略されており、全体の平均である4.8個よりわずかに少ない。しかし記事番号50においては、省略された段落が15個と多くなっていることが分かる。

段落内容の各項目については、反響が最も多く省略されており合計で8個、それに専門家・第三者の意見の5個が続く形となっている。ただ反響は8個中6個が記事番号50によるものなので、傾向とは言えない。当事者の発言は6件中4件で1個ずつ省略されている。

記事番号50は記事が1頁に収まらない故省略する。記事番号50はイギリス王室に子どもが生まれたニュースであり、それを受けて王子夫妻、エリザベス女王、そして世間がお祝いムードに沸く反響が書かれているため反響の項目が多くなった。また、朝日新聞ではイギリス王室が性別不問の王位継承権であることを受け日本の皇室典範にまで話題を広げているため記事が長くなり、その他段落の省略数も増えたと考えられる。

 

以下の【表16】はスポーツがテーマの新聞記事6件について、省略された段落内容の数を調べた結果である。

【表16】スポーツがテーマの新聞記事 省略された段落内容の数

 

省略された段落は合計で28個。1件当たり平均4.6個省略されており、全体の平均である4.8個よりわずかに少ない。しかし記事番号45においては、省略された段落が13個と多くなっていることが分かる。

段落内容の各項目については当事者の発言と内容が最も多く省略されており、それぞれ計8個。それに対象の7個が続く形となっている。これは朝日新聞のスポーツに関する記事はスポーツの試合について報じることが多く、それと共に試合内容と試合に参加した当事者の発言を掲載する機会が増えることが理由である。

 

以下の【表17】は政治がテーマの新聞記事12件について、省略された段落内容の数を調べた結果である。

 

【表17】政治がテーマの新聞記事 省略された段落内容の数

 

省略された段落は合計で68個。1件当たり平均5.6個省略されており、全体の平均である4.8個より多い。さらに記事番号2については合計が12個と多くなっており、記事番号39や記事番号70のようなそれに続く省略個数も全体平均より高くなっている。一方で記事番号53は省略数が1個となっている。

段落内容の各項目については、内容が最も多く省略されており合計で24個、それに当事者の発言の11個が続く形となっている。朝日新聞の政治を扱った記事は、式典や諸外国との会談について書かれており、その内容と出席者の発言が多く掲載される。この2つは母数が多いため省略数上位になった

合計数が多かった記事番号2は安倍首相の主権回復式典出席の記事である。朝日新聞が主権回復式典に対する沖縄の反発と抗議大会について15段落中5記事掲載、式典以外のこうした話題を掲載したため全体の段落数が多くなり、省略数も増えた。

 

次の【表18】は生物がテーマの新聞記事3件について、省略された段落内容の数を調べた結果である。

 

【表18】生物がテーマの新聞記事 省略された段落内容の数

 

省略された段落は合計で12個。1件当たり平均3個省略されており、全体の平均である4.8個より少ない。しかし、記事番号47については合計が7個と多くなっている。段落内容の各項目については、専門家・第三者の意見、原因、添加・関連情報がそれぞれ2個となった。

記事番号47の記事は温暖化とリンゴの糖度との関連を調べた研究結果についてかかれている。調査内容や結果を示す記事は、テーマに関係なく全ての記事で省略数が多くなっている。

 

次の【表19】は都市がテーマの新聞記事1件について、省略された段落内容の数を調べた結果である。

 

【表19】都市がテーマの新聞記事 省略された段落内容の数

 

記事番号36は、東京都が道路標識をローマ字表記から英語表記に変えることを報じた記事である。省略記事の合計は3個であるが、1記事のみなので、傾向を見ることはできない。

次の【表20】は文化がテーマの新聞記事11件について、省略された段落内容の数を調べた結果である。

【表20】文化がテーマの新聞記事 省略された段落内容の数

 

省略された段落は合計で50個。1件当たり平均4.5個省略されており、全体の平均である4.8個より少ない。しかし記事番号64については合計が26個と平均よりかなり多くなっている。

段落内容の各項目については、専門家・第三者の意見が最も多く省略されており合計で10個、それに添加・関連情報の9個が続く形となっている。しかし専門家・第三者の意見は記事番号6410個中7個を占めているため、傾向とは言えない。

合計数が多かった記事番号64は本屋大賞を扱った記事である。朝日新聞は本屋大賞創設の背景や仕掛け人の情報も伝えているため段落数が増え、朝日小学生新聞はそれらを省略した形となった。

 

 これら13テーマごとに省略傾向を調べてわかったことをまとめる。まずテーマごとの平均省略段落数は以下の通りになった。尚、テーマ名は2文字目までを記入、数字の単位は個である。

 

学校

政治

社会

国際

文化

スポ

経済

安全

都市

生物

技術

災害

5.7

5.6

5.6

5.4

4.5

4.6

4.5

4.2

3.6

3.0

3.0

2.5

1.5

 

学校の省略個数が多いのは、朝日新聞の調査結果を知らせる記事中から省略が多いことが原因であった。同じ傾向は生物のテーマ記事や技術のテーマ記事の中で突出して省略数が多くなった記事にもいえる。これらのことから、朝日小学生新聞は扱うテーマに限らず、調査や報告書を伝えるときは観点を絞り、それ以外の情報は大幅に省略していることが分かった。

また、政治記事や社会を扱う記事は、当事者や専門家・第三者の意見を省略することが多かった。スポーツ記事、文化を扱う記事においても同じである。これらのことから朝日小学生新聞はテーマに関係なく個人の発言を省略する傾向にあることがわかった。

さらに、記者の意見は全て省略されていたことから、朝日小学生新聞は客観的事実のみを伝える傾向にあると言える。

政治を扱う記事で、省略個数が最も多かったものは主権回復式典とともに沖縄の抱える不満に触れた記事であった。人を扱う記事で省略個数が最も多かった記事は、ジョージ王子誕生から男女平等の王位継承権まで扱った記事であった。また、社会を扱う記事では総人口の減少を一票の格差問題につなげた記事もあった。これらは沖縄について1段落書いた以外は全て小学生新聞では省略されていた。朝日新聞が関心をもつ社会問題を使った切り口は、朝日小学生新聞では用いられない傾向があった。

 

第二節 加筆される記事の傾向

 

加筆された段落は朝日小学生新聞の100記事の内25記事、合計段落数は28個であった。

以下に加筆された記事の特徴を述べる。

 

健康・安全を扱った記事からは下記のような加筆があった。

 

 

朝日小学生新聞は夏季中に一面特集記事で、3回熱中症に対する注意喚起を行っている。全段落中「することが大切」「〜しましょう」という語尾この段落にしかなく、小学生新聞が読者の子どもを意識していることが伺える加筆である。次の表は元の記事が文化を扱った記事の加筆箇所である。

 

 

上記の段落は記事中の対象となっているものに説明を加える役割を果たす加筆である。歴史を学習していない児童ならば鑑真を知らない。また中段落に書かれている百田尚樹氏の書いた作品も読む対象年齢ではない。更にもののけ姫の映画公開時に現在朝日小学生新聞を読む子どもたちはまだ生まれていないため、そうした読者の年代層にも理解しやすいよう配慮された加筆であると考えられる。似た傾向のものとして次のようなものも挙げられる。

 

 

上段は里見さんの説明に「出雲のイナズマ」と呼ばれることを加わることで、子どもの興味を引く記事となっている。

中段落は堺市選挙戦で大阪維新の会が負けた記事に加筆された部分である。争点であった大阪都構想についての説明は朝日小学生新聞のみに見られ、大阪都構想知らない世代に向けての配慮と考えられる。

下段の国際記事はシリアの和平を訴えるマララさんの演説を伝える記事であるが、すでに報道されているシリアでのサリン使用が背景にあることを子どもにも伝わるように書いている。

このように読者である子どもを意識して加筆された記事は28個中半分の14個であった。

次の加筆タイプは次のような記事である。

 

左が朝日新聞記事の一部、右が朝日小学生新聞の記事の一部であり、赤枠で囲っているのが加筆された部分である。

しかし朝日新聞の紙面を見ると37面=「何とかやめて」と書いているため、赤枠の内容は朝日新聞にかいていないのではなく、朝日新聞の別の面にかかれているということがわかる。

このように子どもへの配慮というより、大人向けの朝日新聞の都合で小学生新聞に加筆されている記事のタイプは28記事中半分という結果になった。

上記のことから加筆された記事には2つのタイプがあり、1つは読者である小学生に配慮して加えられた記事、そしてもうひとつは朝日新聞の別の紙面に掲載されたことによって朝日小学生新聞に加筆されたようにみえる記事であることがわかった。

 

第四章 まとめと今後の課題

今回の研究では朝日小学生新聞の表現特徴として次のことが明確になった。

@接続詞が他の文章に比べ少ない。

A前の段落ほど決まった型があり後の段落ほど記事の種類が増え不定型。

B調査や報告を伝える場合は内容が省略されており、また当事者や第三者・専門家の意見も省略されやすい傾向にある。

C加筆傾向としては子どもに配慮した加筆と、紙面上の問題である加筆との2種類ある。

 

 しかし、今回研究の対象としたのは朝日小学生新聞のストレートニュース記事のみであり、また記事のタイトルやサブタイトルについても一切検証していないため、今後は更に記事の範囲を広げながらタイトルや紙面の構成といった観点からも研究したいと考える。また、学校現場で国語の授業にどう新聞を取り入れていけばよいのか、新聞を用いた授業法なども模索していきたい。

 

章 研究対象・参考文献

研究対象

朝日小学生新聞 朝日学生新聞社 20133月〜11

朝日新聞    朝日新聞社   20133月〜11

参考文献

『はじめて学ぶ 学校教育と新聞活用』小原友行ミネルヴァ書房 2013330日 

現代マスコミ文章論』 赤井直恭著 有峰書店 昭和45620

『新聞教育ルネサンスへ』 越田清四郎 白順社 2012315