平成25年度 卒業論文

卒業論文題目

「青少年読書感想文全国コンクールの入選作品の主題と表現特性との関わりの研究」

大阪教育大学 教育学部

学校教育教員養成課程 国語教育専攻小学校コース

国語表現ゼミナール

学籍番号 102138 和田 良樹

指導教官 野浪 正隆教授

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―目次―

第1章 はじめに

 

第2章 研究対象

  青少年読書感想文全国コンクールについて

  

 

第3章 研究にあたって

 第1節 予想される結論

 第2節 研究対象

 第3節 研究方法

第1項   文長分析

   第2項 漢字使用率

   第3項 品詞分析

 

第4章 研究結果

第1項    第1節 文長分析

   第2項 漢字使用率

   第3項 品詞分析

 

第5章 まとめと今後の課題

 第1節 全体考察

 第2節 今後の課題

 

 

第6章 おわりに

 第1節 おわりに

 第2節 参考文献

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1章 はじめに

私は、本を読むのが好きで、卒業論文でも本に関する物を扱いたいと考えていた。しかし私は、本を読む時にあまり作者などで選ぶのではなく、話題の本や進められた本、題名を見て決めた本を読んで来てこれといった題を決める事はできないでいた。そんな中で、小学生の時に出していた青少年読書感想文全国コンクールのことを思い出し、自分は入選した事がないがどんな作品だったのだろう。との興味もわき、自分自身も文章を書くということに少し苦手意識もあり、近頃子どもの活字離れが指摘される中で、今後子どもに活字との付き合い方を教えていく中で子どもが到達すべき文章表現とはどのようなものかという疑問にぶつかり、読書感想文コンクールの優秀作品を研究することが、今後の作文指導で役に立つのではないかと思ったのがきっかけである。そして入選作品を分析し、自分の教え子を入選させるためにはどのような事が必要かを軸に、入選作品約60作を教科書と比べながら研究していきたい。

 

第2章 研究対象

  青少年読書感想文全国コンクールについて

〇全国学校図書館協議会 青少年読書感想文全国コンクールとは

 

*児童生徒・勤労青少年を対象に、読書活動の振興等を目的に1955 年に始まった息の長い読書運動で、その成果は高く評価されています。全国学校図書館協議会と毎日新聞社の主催で、各都道府県学校図書館協議会の協力を得て毎年開催しています。
このコンクールは、個人応募ではなく、学校単位で参加をします(但し、勤労青少年は個人応募)。各学校で読書指導の一環として書かれた感想文は、校内審査、地区審査、都道府県審査により都道府県代表作品となり、中央審査会に送付されます。中央審査会では、「読書感想文審査基準」に基づいて審査の上、内閣総理大臣賞、文部科学大臣奨励賞、全国学校図書館協議会長賞、サントリー奨励賞等を選考し、2月に東京で行われる表彰式で授賞をします。これらの入賞作品と県代表の作品は、読書感想文集「考える読書」(毎日新聞社刊)として3月に刊行されます。

 *ホームページ 公益財団法人 全国学校図書館協議会 コンクール・募集より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第3章 研究にあたって

 第1節 予想される結論

  今回の研究を進めていくにあたって、研究する前の私なりの予想をたててみてその違いから、できる文章を書く人と書けない人との違いのヒントを得られるのではないかと考える。考察していくのは文長、既習漢字と未習漢字の使用率・品詞の使用割合、接続詞の使用実態についての状況と学年ごとの変化についてである。

 まず、文長については、全体として文章をはじめ・なか・おわりの3つに分けたとすると大きい方からなか→はじめ→おわりの順に少なくなると考える。理由としては、なかの部分は本文の引用をつかっての説明の部分になると思われるので、必然的に長くなると予想されるからである。次にはじめとおわりでは、終りの部分の方が、言いたい事をまとめている場面であるため、文章も精錬された読みやすいものとなっているものだと考えるからである。学年ごとの変化については、小学校低~中学年までは、あまり全体としてのばらつきが見えにくいものであると考える。それはやはりまだ文章の書き方に慣れていないという事でとにかく自分の書きたいように書くことの方が大きいと考えるためである。逆に言うと高学年以上の書き方という物を意識し始めてからは中→はじめ→おわりの変化は変わらないと思う。

 次に漢字の使用率についてだが、低学年ほど漢字の使用率は少なく、逆に未習漢字の使用率は大きいと考える。これは低学年が漢字を使うのと高学年が漢字が使うのとでの意味合いの違いからこの様になるのではないかと考える。

 そして、品詞の使用割合の変化は低学年は副詞・形容詞が少なく感動詞などが多くなっているのではないか。

 接続詞は、低学年は、あまり使われず、中学年ぐらいは多く使われ、中学ごろから数は抑えられてくるのではないかと考える。理由は、低学年はそもそも接続詞をあまり使えないと思うからであり、中・高学年では、接続詞を使う事で、低学年との差を出そうとすると考える。そして中・高校では、数より、文章に応じた接続詞を使う、つまり上手い文章に仕上げようとするのではないかと考える。

 そして、これからはこの考えが正しいかどうか。またその結果はどうしてなのかという物を考えながら、進めていきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第2節 研究対象

  全国学校図書館協議会の総理大臣賞及び文部科学大臣賞受賞作品全60作品と教科書掲載の説明文教材各区分5作品計25作品

 

読書感想文の題

読んだ本

「ついてもいいうそってあるのかな」

「うそつきにかんぱい!」(童心社)

「みんな、みんないっしょ」

「またおいで」 もりやま みやこ 作 いしいつとむ 絵 あかね書房

「『ここがわたしのおうちですんで

「ここがわたしのおうちです」(さ・え・ら書房)アイリーン・スピネリ文 マット・フェラン絵 渋谷弘子訳

『「八郎」を読んで』

八郎  出版社: 福音館書店 作: 斎藤 隆介 絵: 滝平 二郎

「今日の風は、どこまでも青色」

「ピアノはともだち:奇跡のピアニスト辻井伸行の秘密」(講談社) こうやまのりお著

『兼好が教えてくれたこと ~『徒然草』を読んで~』

徒然草 ビギナーズ・クラシックス 著者:角川書店 編:角川書店デザイン:谷口広樹

「『ともにそしてともにきる』」     

「もの食う人びと」(角川書店)辺見庸著

「『怪物はささやくんで

怪物はささやく 著者:パトリック・ネス、シヴォーン・ダウド、ジム・ケイ/ 出版社:あすなろ書房

「歴史たどるということ

「パスタでたどるイタリア史」(岩波書店)池上俊一著

キャルパーニアの精神

ダーウィンと出会った夏  ほるぷ出版 ジャクリーン・ケリー・作 斎藤 倫子・訳

もじのおしゃべりききたいな

「ひらがなだいぼうけん」(偕成社)宮下すずか・さく みやざきひろかず・え

かたづけがんばるぞ」 

アリクイにおまかせ 小 峰 書 店 竹下 文子・作 堀川 波・絵

「土、命をささえている

「土のコレクション」(フレーベル館)栗田宏一・著

とくべつな場所」かうために

わたしのとくべつな場所 新日本出版社 パトリシア・マキサック・文 ジェリー・ピンクニー・絵 藤原 宏之・訳

「自分『心』かい

「こども電車」(金の星社) 岡田潤・作 挿画

「元素は美しい」

世界で一番美しい元素図鑑 創元社 セオドア・グレイ・著 ニック・マン・写真 若林 文高・監修 武井 摩利・訳

「希望未来     

「夢をつなぐ:山崎直子の四〇八八日」(角川書店) 山崎直子・著

「自分えるということ

「夢をつなぐ:山崎直子の四〇八八日」(角川書店) 山崎直子・著

「『マルカの旅』んで

「マルカの長い旅」(徳間書店)ミリヤム・プレスラー・作 松永美穂・訳

「鳥から世界」

野川  長野まゆみ著 河出書房新社

「大すきなひいおばあちゃんへ

 「むねとんとん」  小峰書店 えぐさひろこ 作 松成真理子 絵

ダンゴムシはきょうもげんき

ダンゴムシ -やあ! 出会えたね- 今森光彦 アリス館

「少女たちの希望とメッセージ

「ともだちのしるしだよ」 岩崎書店 カレン・リン・ウィリアムズ、カードラ・モハメッド 作 ダーク・チャーカ 絵 小林 葵 訳

「心じてきていこう


 点子ちゃん 野田 道子(作) / 太田 朋(絵) 毎日新聞社(刊)

「私「自分」まれる~『ジロジロないでをきっかけに

ジロジロ見ないで―"普通の顔"を喪った9人の物語 写真 高橋 聖人  構成茅島 奈緒深  扶桑社

「人間そして

『トロッコ鼻』芥川 龍之介 【著】 (講談社)

「昆虫魅力」

「ぼくは昆虫カメラマン:小さな命を見つめて」(岩崎書店)新開孝・写真・文

「西魔女がくれた勇気」

「西の魔女が死んだ」梨木香歩    (装画・野中ともそ)小学館

「共存するということ

「ハサウェイ・ジョウンズの恋」(白水社)カティア・ベーレンス・著、鈴木仁子・訳

『「インパラの朝」んで

インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684 (集英社文庫) 中村 安希 (著)

「おこだでませんように」を読んで

「おこだでませんように」くすのきしげのり /石井聖岳 絵  小学館

「ぼくにできること」

 地球温暖化、しずみゆく楽園ツバル  山本 敏晴 () 小学館

「伝えられたメッセージ —人間は運鈍根—」

「春さんのスケッチブック」(汐文社)依田逸夫作・藤本四郎絵

「科学の火を灯して」

「雪は天からの手紙 中谷宇吉郎エッセイ集」(岩波書店)中谷宇吉郎 池内了・編

「カレンダーから世界を見る」

「カレンダーから世界を見る」(白水社)中牧弘允・著

わたしって、すごいんだなあ

「どんなかんじかなあ」中山千夏・ぶん/和田誠・え(自由国民社)

つながっている時間

「わたしたちの帽子」 高楼方子・作/出久根育・絵(フレーベル館)

必ずできると信じて

「ライト兄弟はなぜ飛べたのか紙飛行機で知る成功のひみつ」土佐幸子・著(さ・え・ら書房)

「宮澤賢治に聞く」を読んで

「宮澤賢治に聞く」井上ひさし、こまつ座・編・著(文藝春秋)

「美の呪力」を読んで

「美の呪力」 岡本太郎・著(新潮社)

つながっているいのち

「いのちは見えるよ」 及川和男・作 長野ヒデ子・絵(岩崎書店)

いっしょにとぼう、しゅう平君

「そして、カエルはとぶ!」広瀬寿子・作 渡辺洋二・絵(国土社

命の木を探して

「おじいちゃんの桜の木」 アンジェラ・ナネッティ・作 アンナ・バルブッソ、エレナ・バルブッソ・絵 長野徹・訳(小峰書店)

「愛」が教えてくれた大切なこと

「ドッグ・シェルター 犬と少年たちの再出航」今西乃子・著 浜田一男・写真(金の星社)

古い日本と新しい日本−「ラフカディオ・ハーン」を読んで−

「ラフカディオ・ハーン 日本のこころを描く」河島弘美・著(岩波書店)

ぼくもちょうせん

「ダイズの絵本」 こくぶんまきえ・へん うえのなおひろ・え(農山漁村文化協会)

ゆっくり、しっかり大人になろう

 「ねこたち町」わしおとしこ・文 藤本四郎・絵(アリス館)

出会い

「よみがえれ白いライオン」 マイケル・モーパーゴ・作 佐藤見果夢・訳 クリスチャン・バーミンガム・絵(評論社)

西遊記再考

「西遊記(上)(下)」 呉承恩・作 君島久子・訳 瀬川康男・画(福音館書店)

俳句的人間 短歌的人間

「俳句的人間 短歌的人間」 坪内稔典・著(岩波書店)

「にじいろのはな」をよんで

「にじいろのはな」マイケル・グレイニエツ・作・絵 ほその あやこ・訳(ポプラ社)

『赤ちゃんのはなし』と出会って

「赤ちゃんのはなし」マリー・ホール・エッツ・ぶん・え 坪井 郁美・やく(福音館書店)

信頼を積み重ねて

「少年たちの夏」 横山 充男・作 村上 豊・絵(ポプラ社)

心を豊かにしてくれるもの—「空を見る」を読んで—

「空を見る」 平沼 洋司・文 武田 康男・写真(筑摩書房)

「金閣寺」を読んで

「金閣寺」 三島 由紀夫・著(新潮社)

「たんぽぽ さいた」を読んで

「たんぽぽ さいた」 小川 潔ぶん・加藤 新・え(新日本出版社)

「青空の指きり」を読んで

「青空の指きり」 恩田 皓光・著 (河出書房新社)

『カモメがおそう島』に見たもの

「カモメがおそう島:巨大石像物語」ロベルト・ピウミーニ・作 高畠 恵美子・訳 末崎 茂樹・絵(文研出版)

「寄生虫」の悩み

「森よ生き返れ」 宮脇 昭・著(大日本図書)

「アフリカ」が気づかせてくれたこと

「片目のオオカミ」 ダニエル・ペナック・作 末松 氷海子・訳(白水社)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第3節 研究方法

 研究に当たっては、作品分析を進めていく。その方法としては、読書感想文の受賞単位である、低学年・中学年・高学年・中学・高校の5つの範囲に対して、教科書の物語文と説明文とを比較していき見えてくる特徴を探る。そのうえで他の作文課題との比較としいて自然科学観察コンクールと税に関する作文とを比較していきたい。

 

1 文長分析

 物語の一文の長さと文章内での変化を調べる。文章内での変化を調べる際に、何故変化が置こうか・または起こらないのかを調べるために読書感想文に関してはどのような傾向の文章(例えば はじめ→本を選んだきっかけ なか→要約的引用と感想 おわり→決意表明)なのかを調べ、どういった文長が理想的なのかを調べていく。

 

 

2漢字の使用頻度(未習漢字と既習漢字)

 文章中に使用された漢字を文部科学省の作成した学年別漢字配当表のどの学年のものかをそれぞれ文章全体でわり、それを原稿用紙1枚(400字)でどの程度出てくるかを示したものである。

 これの目的は、特に低学年においての漢字使用率を調べることで未習漢字を使った文章の方が評価されるのか、それとも逆に既習漢字つまり学校での学習を意識した評価になっているのかを調べたかったためである。

 

 

3 品詞分析 

 文章中の品詞を調べ、その割合の変化から学年ごとの求められる文章傾向を調べていく。

そして、その中の接続詞について注目し、どのようなものがどれだけ使われているかなどから、学年ごとの接続詞の使われ方を見ていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                                        

第4章 研究結果

第1節 文長分析

 読書感想文と教科書物語文での文の長さをはじめ・なか・おわり・全体の観点から比較したものが下のグラフである。

低学年

 

はじめ 

なか

おわり

全体

感想文

32.8

34.7

30.4

30.1

教科書・説明文

26.8

38.2

51.5

35.2

 

 

 

 

 

<注目点>

・はじめの部分を除き感想文の方が文長が短くなっている。

・感想文の方が文長の変化が少ない。

・感想文の方の文長の長さの変化は多い方からなか→はじめ→おわりになっている。

・教科書の文長の変化は、おわり→なか→はじめとどんどん多くなっている。

・全体の文字数自体が少ないためか文長自体が感想文30.1字・教科書35.2字とやや少ないものとなっている。

 

 

 

はじめ 

なか

おわり

全体

感想文

39.2

41.4

33.6

33.9

教科書・説明文

34.6

40.3

48.3

39.9

中学年

         

<注目点>

   ・中学年でも全体での文長の長さを比べると、教科書の方が長くなっている。

   ・文長の長さ自体は低学年と比べて長めになっている。

   ・文長の変化は、感想文・説明文共に低学年と同じような傾向になっている。

   ・文長の変化幅も教科書の方が大きく低学年と同じ傾向が見える。

 

 

高学年

 

はじめ 

なか

おわり

全体

感想文

35.3

31.7

32.4

34.6

教科書・説明文

40.7

40.3

44.7

39.6

 

 

 

 

<注目点>

    ・高学年でも文章全体で、教科書の方が文長が長くなっている。

    ・文長の長さ自体はあまり増えていない。

    ・文中での文長の変化は教科書はほぼ低・中学年と同じような傾向を示している    

     が、感想文はなかの部分が一番短くなっている。

    ・文長の変化幅は、低・中学年と同様に教科書の方が大きくなっている。

 

 

中学校

 

はじめ 

なか

おわり

全体

感想文

34.9

41.0

32.5

38.9

教科書・説明文

42.6

48.1

47.1

47.0

 

 

 

 

 

<注目点>

・教科書の方が文長は長くなっている。

・文長の長さは増えている。

・文長の長さの変化幅はこれまでの傾向と違い逆に感想文の方が大きい。

・文中での文長の変化はおおむね低・中学年の傾向と同じである。

 

 

はじめ 

なか

おわり

全体

感想文

38.5

36.4

38.5

37.1

教科書・説明文

49.2

50.9

54.0

50.9

高校

<注目点>

・文長は教科書の方が長い。

・文中での文長の変化は、どちらもこれまでの傾向と同じである。

・文長の変化幅も教科書の方が大きい。

・文長自体の長さはやや長くなっている。

 

学年別

 

はじめ 

なか

おわり

全体

低学年

32.8

34.7

30.4

30.1

中学年

39.2

41.4

33.6

33.9

高学年

35.3

31.7

32.4

35.4

中学校

34.9

41.0

32.5

38.9

高校

38.5

36.4

38.5

37.1

 

 

 

 

 

 

 

・教科書の方が、文長は長い。

・感想文の全体の文長はほぼ学年に従って長くなっている。

・教科書と比較して感想文は、文章中での文長の変化はあまり大きくない。

・文章中での文長の変化は、大きくはないが、傾向としては、短いほうからおわり→はじめ→なかというよう変化している場合が多い。

 

 <はじめ・なか・おわりの内容分析>

・はじめ→読む前の感想・読んだあとの感想・直接的引用など種類がさまざま

・なか→ほぼ要約的引用と感想

・おわり→決意表明・読んだあとの変化

 

・はじめの部分は、導入部分であり様々な書き方の工夫がなされていた。この部分は、一番技巧的に工夫しやすい部分でありその結果が様々な書き出しの工夫となっている。

・なかの部分は、物語の内容とそれに関する内容で高学年以降では、この部分に書き手の一番の主張などがある場合も見られた。この部分は、自己の体験との関係を書かれているものが多く、その中での気づきを本を通して訴えかけている。

 ・終りの部分は、一番の特徴的な部分であり、感想文の特徴的な部分であると思う。なぜなら読書感想文の目的としては、やはり本を読んでどのような影響があったか、などの部分であり、審査員の心情にも訴えていける部分である。

その結果なかでの気づきなどを踏まえて自分がどう変化するのかという部分を示した部分であり、内容的にはとても似通ったものになっているように感じた。

 

<予想との比較と考察>

まず、予想との比較であるが、文章中の変化に対しては、予想に反して、あまり大きな変化は見られなかった。はじめ・なか・おわりそれぞれの内容は予想どうりであり、確かに文長の変化も少しは予想どうりの傾向はみられた。

しかし、はっきりとした変化として現れなかった原因として考えられるのは、ある程度書けるようになると自然と文長が整理されてくるのだと思う。よってここから分かった事は、良い文章での文長の長さはおおそよ30字~40字程度に抑えた文章であるという事が言える。

 

 

 

 

 

 

 

 

漢字出現率

低学年

 

一学年

二学年

三学年

四学年

五学年

六学年

教育漢字以外

常用漢字以外

感想文

12.5

13.2

2.8

0.8

0.1

0.2

0.1

0.6

教科書

19.8

19.5

0.9

0.0

0.0

0.1

0.0

0.1

 

中学年

 

一学年

二学年

三学年

四学年

五学年

六学年

教育漢字以外

常用漢字以外

感想文

21.2

21.2

15.2

7.8

1.7

0.4

1.5

0.1

教科書

23.4

28.3

15.1

5.8

1.3

2.9

1.5

0.0

 

高学年

 

一学年

二学年

三学年

四学年

五学年

六学年

教育漢字以外

常用漢字以外

感想文

26.7

30.1

23.0

15.5

8.6

5.9

4.3

0.2

教科書

21.5

31.4

20.1

11.6

8.3

6.6

8.1

2.4

 

 

中学

 

一学年

二学年

三学年

四学年

五学年

六学年

教育漢字以外

常用漢字以外

感想文

17.3

23.5

19.7

16.0

13.6

5.7

9.8

0.5

教科書

22.6

27.5

18.3

12.1

6.2

7.8

12.4

2.1

高校

 

一学年

二学年

三学年

四学年

五学年

六学年

教育漢字以外

常用漢字以外

感想文

20.0

30.9

24.6

12.1

11.6

6.1

8.6

0.9

教科書

22.3

29.8

23.1

16.2

9.6

8.6

12.9

2.7

 

 

学年別

 

一学年

二学年

三学年

四学年

五学年

六学年

教育漢字以外

常用漢字以外

低学年

12.5

13.2

2.8

0.8

0.1

0.2

0.1

0.6

中学年

21.2

21.2

15.2

7.8

1.7

0.4

1.5

0.1

高学年

26.7

30.1

23.0

15.5

8.6

5.9

4.3

0.2

中学校

17.3

23.5

19.7

16.0

13.6

5.7

9.8

0.5

高校

20.0

30.9

24.6

12.1

11.6

6.1

8.6

0.9

 

<気付いた点>

・二年生に習う漢字が、一番多く使われている。

・教科書の方が全体的に漢字の使用率は高い。

・教科書と比べて感想文が特に既習・未習で漢字の使用率に変化があるようには見えない。

 

 

《事前の予想と考察》

事前の予想では、感想文は教科書に比べて既習漢字は少ないが、未習漢字では多いと予想していたが、実際は全体的に教科書の方が漢字の使用率は高かった。既習漢字と未収感じの関係については、小学校中学年までは感想文のほうが、教科書と比較して未習漢字の使用が多かった。しかし高学年以降、つまり本当の意味での難しい・専門的な漢字という意味合いでの教育漢字以外・常用漢字以外では、教科書の方が多い。

 ここから推察すると、中学年までの未習漢字は、ただ習っているかどうかつまり習ったら普通に使える漢字であり本などでしか使わないような難解な漢字ではない。つまり感想文では専門的な言葉を使い、私はこういう感じも知っているような文学好きだというような漢字を使用することはあまり好まれないのだと思う。

 つまり感想文は、あくまでその本の内容に焦点を絞ってただ純粋な気持ちと本を読んだことによってなにかが変わったかということに重点が置かれている。

 結論としては、読書感想文コンクールでは、なるべく学校で習うような漢字を使うような表現にした方が良く。難しい漢字を使っても感想文コンクールでは、評価されない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

品詞分析

低学年

 

感動詞

形容詞

助詞

助動詞

接続詞

動詞

副詞

名詞

連体詞

感想文

0.8

5.8

68.6

24.3

2.3

46.1

5.9

57.9

3.1

教科書

0.8

6.8

67.5

30.5

1.4

43.5

4.7

52.8

2.1

 

 

 

 

 

中学年

 

感動詞

形容詞

助詞

助動詞

接続詞

動詞

副詞

名詞

連体詞

感想文

0.5

3.2

69.3

21.6

3.1

42.0

3.7

60.7

3.4

教科書

1.0

4.5

68.0

25.2

1.1

39.0

5.8

64.7

3.2

 

 

 

 

 

 

 

高学年

 

感動詞

形容詞

助詞

助動詞

接続詞

動詞

副詞

名詞

連体詞

感想文

0.2

3.5

69.8

21.5

2.5

33.6

4.5

76.3

3.7

教科書

0.2

5.3

69.4

23.7

1.6

37.7

5.1

67.8

3.6

 

 

 

 

 

 

 

 

中学校

 

感動詞

形容詞

助詞

助動詞

接続詞

動詞

副詞

名詞

連体詞

感想文

0.1

2.5

67.6

19.9

2.7

33.2

4.6

73.2

3.1

教科書

0.1

4.5

66.8

19.6

1.6

36.1

4.7

68.6

3.1

 

 

 

 

 

 

 

 

高校

 

感動詞

形容詞

助詞

助動詞

接続詞

動詞

副詞

名詞

連体詞

感想文

0.0

3.2

68.1

20.8

2.7

33.5

4.5

74.8

2.7

教科書

0.0

4.0

73.1

23.6

1.7

36.3

4.7

72.1

3.3

 

 

 

 

 

 

 

 

<気付いた点>

・学年ごとの推移では、感動詞が学年ごとに少なくなっている。その代わり名詞の割合が逆に多くなっている。

・教科書と感想文の比較では、感想文の方が接続詞の割合が大きく、逆に形容詞がすくな合くなっている。

・感想文の方が接続詞の割合が大きい。

 

<補足研究>

接続詞の変化

 以下は先ほどの研究で分かった接続詞についてさらに詳しい使用の変化を見ていく。

内容としては、先ほどの研究で出した接続詞をさらにこまかく分類し、学年ごとで接続詞に求める役割の変化について調べる。

分類は、「順説」「逆接」「添加」「対比」「転換」「同列」「補足」の7種類とした。この分類は『国語教育のための文章論概説』pp.6567(市川孝 教育出版 1978年)によるものであり、文と文の連接関係の分類に用いられているものである。

 

 

 

 

 

a 接続詞分類表

用法

主な例

「順接」

前の内容を条件とするその帰結を導く。

だから それで したがって すると かくて

「逆接」

前の内容に反する内容を導く。

しかし けれども だが それなのに ところが

「添加」

前の内容に付け加わる内容を導く。

そして ついで そのうえ また ならびに

「対比」

前の内容に対して対比的な内容を導く。

というより そのかわり それとも あるいは または

「転換」

前の内容から転じて、別個の内容を導く。

ところで ときに さて それでは ともあれ

「同列」

前の内容と同等とみなされる内容を導く。

すなわち つまり 要するに

「補足」

前の内容を補足する内容を導く。

なぜなら というのは ただし もっとも ちなみに

 

 

順接

逆接

添加

対比

転換

同列

補足

低学年

9

17

9

0

0

0

0

35

中学年

9

23

24

1

1

0

0

58

高学年

5

30

31

2

4

0

8

80

中学

7

43

44

0

3

0

11

108

高校

13

50

41

4

8

0

9

125

 

 

順接

逆接

添加

対比

転換

同列

補足

低学年

26%

49%

26%

0%

0%

0%

0%

中学年

16%

40%

41%

2%

2%

0%

0%

高学年

6%

38%

39%

3%

5%

0%

10%

中学

6%

40%

41%

0%

3%

0%

10%

高校

10%

40%

33%

3%

6%

0%

7%

 

<気付いた点>

・一番多いのは逆接で、二番目に多く使われているのは、添加である。

・低学年では、順接や逆接などが多く使われている。

・学年が上がると対比や、転換、補足なども使われるようになる。

 

 

 

<事前の予想と考察>

 品詞の割合については、感動詞が感想文の方が教科書と比べて多いだろうと予想していたが、実際にはあまり差がないかむしろ教科書の方が多い場合もあった。また形容詞は予想通り教科書の方が多かった。そして感動詞と形容詞・名詞は学年が進むにつれ反比例の関係つまり低学年から高校にかけて感動詞は減り、それに伴い形容詞は増えていった。

 これは、感想文の方が意識して感動詞のような漠然とした感想ではなく、名詞・形容詞を使い、いろいろな人にきちんと分かってもらえるように工夫しているのだと思う。

 また接続詞については、感想文で良く使われていた。学年が上がっても接続詞の割合が減らなかったのは、それだけ文長をそろえようという意識が働いていたためだと思う。

高学年になる説明が難しくなるにつれ、補足や転換など、様々な角度から説明しようとしていたのがうかがえる。

 これらの事から感想文は、ただ自分の気持ちを伝えるのではなく、どういった理由で感動や気づきが生まれたかという事を相手に理解しようとする事が大切でそのためには、接続詞の使用がポイントになっている。

 

 

 

第5章 まとめと今後の課題

第1節 全体考察

  読書感想文コンクールでは、どんな作品が入選しているのかを、自分の予想をたてて検証してみた。これまでは、それぞれの項目ごとに見てきたのをまとめて考察していく。

 まず文長については、小学校低学年から高校まで文章量が大きく増大し、内容も難しく説明しなくてはならない言葉も多くなった。これは高学年になるにつれ名詞やそれを修飾する形容詞が増えていた事からもわかるにもかかわらず、文長が極端に増大しなかったのは、上手に接続詞を使用している作品が多かったためだと思われる。接続詞自体も低学年の順接や逆接の単純なものから、補足や転換など学年や内容に応じた物が増えてくる。漢字は、主に教科書で習った程度のものが多く、無理に難しい言葉を使うより、先ほど述べたようにみんなが分かるような例を使って説明する作品が多かった。

 これらの事から感想文を書くときには、まず文長を30~40字程度に収め、高学年以降では、相手に分かるよう具体的な名詞を形容詞と組み合わせながら説明し、自分の考えと本を読んだことによって自分はこれからどうしたいかを書いていく事が大賞になるための一つの要素であると思う。            

 

 

 

第2節 今後の課題

 今回は、教科書の説明文を比較対象としてやってみたが、本来は入選作品と、入選しなかった作品との比較の方が感想文コンクールの基準を図るという点では効果的であったと思う。また分析も文の中心の位置の変化などの課題も残してしまった。今後はさらに様々な観点から読書感想文の分析を行っていく事が必要であると思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第6章 おわりに

第1節 おわりに

卒業論文で読書感想文をしようと思ったのは、漠然とした自分の文章力のなさを感じていたため、自分の文章のどのようなところが上手な文章と違うのかを知る必要があると思ったためである。しかし実際にやってみると、あまり深く考えずに課題を選ばなかったせいで、最も重要な比較対象が確保できなかった事が大きな反省である。また、どのような項目も探れば何が見えてくるという具体的な考えもなく、結局のところ自分が本当は何を知りたかったのかという物が自分のなかではっきりとした形で示す事が出来なかったのが非常に心残りである。今回の卒業論文では、課題設定の際の事前調査の重要さを痛感し、また実際の研究の中では、どのように調査していけばいいのかという基本をつかめたのではないかと思う。これらの経験は今後の貴重な糧としていきたい。

 最後になりましたが、遅々たる歩みであるばかりか迷子になってばかりいた研究を最後まで御指導して下さいました野浪先生、ご助言いただきました諸先生方、本当にありがとうございました。心から御礼申し上げます。また2年間表現ゼミで一緒だった同回生の皆さんや、先輩、後輩からは、貴重なアドバイスや刺激をいただき、この2年間はとても素晴らしい時間でした。あらためてありがとうございました。

 

第2節 参考文献

 国立国語研究所編 (2004) 「分類語彙表-増補改訂版-」 大日本図書 

『国語教育のための文章論概説』pp.6567(市川孝 教育出版 1978年)

 『学校図書館』2013年2月号  全国学校図書館協議会

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