一 次の文章を読んで、右の問いに答えよ。


 むかしむかし、あったとさ。{1}きつねが歩いていると、{2}たひよこがやってきた。
かぶりとやろうと思ったが、やせているので考えた。
{3}てから食べようと。
そうとも。
よくある、よくあることさ。
「やあ、ひよこ。」
「やあ、きつねお兄ちゃん。」
「お兄ちゃん?やめてくれよ。」
きつねは、{4}とみぶりした。
でも、ひよこは目を{5}して言った。
「ねえ、お兄ちゃん。
 どこかにいいすみか、ないかなあ。
 こまってるんだ。」
きつねは甲c心の中でにやりとわらった。
「よしよし、おれのうちに来なよ。」
すると、ひよこが言ったとさ。
「きつねお兄ちゃんって、やさしいね。」
「やさしい?やめてくれったら、そんなせりふ。」
でも、きつねは、生まれてはじめて「やさしい」なんて言われたので、乙cすこしぼうっとなった。
ひよこをつれてかえるとちゅう、
「おっとっと、おちつけおちつけ。」
切りかぶにつまずいて、ころびそうになったとさ。
きつねは、ひよこに、それはやさしく食べさせた。
そして、ひよこが「やさしいお兄ちゃん」と言うと、ぼうっとなった。
ひよこは、まるまる太ってきたぜ。

ある日、ひよこが、さんぽに行きたいと言い出した。
――はあん。にげる気かな。
きつねは、そうっとついていった。
ひよこが春の歌なんか歌いながら歩いていると、やせたあひるがやってきたとさ。
「やあ、ひよこ。
 どこかにいいすみかはないかなあ。
 こまってるんだ。」
「あるわよ。きつねお兄ちゃんちよ。
 あたしといっしょに行きましょう。」
「きつね?とうんでもない。
 がぶりとやられるよ。」
と、あひるが言うと、ひよこは首をふった。
「ううん。
 きつねお兄ちゃんは、とっても親切なの。」
それをかげで聞いたきつねは、うっとりした。
そして、「親切なきつね」ということば、五かいもつぶやいたとさ。
さあ、そこでいそいでうちにかえると、まっていた。
きつねは、ひよことあひるに、それは親切あった。
そして、二人が「親切なお兄ちゃん」の話をしてるのを聞くと、丙c「   」となった。
あひるも、まるまる太ってきたぜ。

ある日、ひよことあひるが、さんぽに行きたいと言い出した。
――はあん。にげる気かな。
きつねは、そうっとついていった。
ひよことあひるが夏の歌なんか歌いながら歩いていると、やせたうさぎがやってきたとさ。
「やあ、ひよことあひる。
 どこかにいいすみかはないかなあ。
 こまっているんだ。」
「あるわよ。
 きつねお兄ちゃんちよ。
 あたしたちといっしょに行きましょう。」
「きつねだって?とうんでもない。
 がぶりとやられるぜ。」
「ううん。
 きつねお兄ちゃんは、かみさまみたいなんだよ。
」 それをかげで聞いていたきつねは、うっとりして、きぜつしそうになったとさ。
そこで、きつねは、ひよことあひるとうさぎを、そうともかみさまっみたいにそだてた。
そして、三人が「かみさまみたいなお兄ちゃん」の話をしていると、ぼうっとなった。
うさぎも、まるまる太ってきたぜ。

ある日。
くろくも山のおおかみがおりてきたとさ。
「こりゃ、うまそうなにおいだねえ。
 ふんふん、ひよこに、あひるに、うさぎだね。」
「いや、まだいるぞ。きつねがいるぞ。」
言うなり、きつねはとび出した。
きつねの体に、ゆうきがりんりんとわいた。
丁cおお、たたかったとも、たたっかたとも。
じつに、じつに、いさましかったぜ。
そして、おおかみは、とうとうにげていったとさ。

そのばん。 きつねは、はずかしそうにわらってしんだ。

まるまる太った、ひよことあひるとうさぎは、にじの森に小さなおはかを作った。
そして、せかい一やさしい、親切な、かみさまみたいな、そのうちゆうかんなきつねのために、なみだをながしたとさ。
とっぴんぱらりのぷう。