次の文章は、『枕草子』の第一段、『徒然草』の第五十二段である。これを読んで、右の問いに答えよ。

 春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、a紫だちたる雲の細くたなびきたる
 夏は夜。月の頃はさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。
 秋は夕暮れ。夕日の差して山の端いと近うなりたるに、烏の寝所へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音など、はた言ふべきにあらず。
 冬はbつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりてわろし。

 仁和寺にある法師

 仁和寺にある法師、年寄るまで石清水を拝まざりければ、心憂く覚えて、あるとき思ひ立ちて、ただ一人、徒歩より詣でけり。極楽寺・高良などを拝みて、cかばかりと心得て帰りにけり。
 さて、かたへの人にあひて、「年ごろ思ひつること、果たしはべりぬ。聞きしにも過ぎて尊くこそおはしけれ。そも、参りたる人ごとに山へ登りしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど、神へ参るこそ本意なれと思ひて、山までは見ず。」とぞ言ひける。
 少しのことにも、先達はあらまほしきことなり。