小専火4 創作童話 最終稿

k142013

このクラスにはひょうきん者がいました。彼は真面目な話、暗い話、悲しい話が大っ嫌い。だから、彼はいつもいつもひょうきん者でした。そんな彼をクラスのみんなはバカにしながらも、面白い友達として大変したっていました。彼がおかしことをするとするとと、お腹をよじりながら笑う人、目に涙を溜めて笑う人、大きな口を開けて笑う人、たくさんの笑顔であふれます。そして彼自身も、みんなの期待に応えようとして、次から次へと、どんどん面白いことをしてはみんなを笑顔にしました。
そんないつもと変わらないある日のお昼休み。給食を食べ終えた人から順番に掃除を始めていきます。しかし、なかなか掃除を始めない人もいて、先生はついに顔を真っ赤にして怒りました。「君たちはいつになったら掃除をするんだい?」みんなは困ります。どうにかして、先生に許してもらわないと…。そこで、みんなはひょうきん者の彼の方を見ます。そして、彼はいつものように変な顔をしてみたりと色々試しました。みんなは笑いますが、先生はますます怒ります。そして、ついにひょうきん者の彼だけ、放課後居残りで掃除をすることになってしまいました。
ひょうきん者の彼は、放課後一人で掃除をしています。寂しい気持ちが嫌な彼はおかしなことをしてみました。けれど、寂しい気持ちは大きくなりました。そこで、もっともっとおかしなことをしてみました。けれども、それでも、寂しい気持ちはもっともっと大きくなりました。そこで、彼はどうすればよかったのかを考えました。そして、同時に昔を思い出しながら、どうしていつもこうなってしまうのだろう、と考えました。けれども、彼にはどうしても分かりません。なぜなら、彼はひょうきん者。そうすることしか知らなかった、そうすることしかできなかったのですから。

k152503

4年生のケンは走ることが大好きな元気な少年でした。ケンは毎日学校のグラウンドで元気に走っています。ケンは町で一番足が速く、大会で優勝するほどでした。
「おれに競争で勝てるやつがいたら、走ることをやめてやるぜ!」
ケンは自信満々でした。ケンはこうも言いました。
「足のおそいやつ、走れないやつはかわいそうだよな。生きていても楽しいことなんかきっとないよ。」
ケンのクラスメイトで、小さいときに足をケガして車いすに乗っているジュンは、いつもばかにされていました。

ある日のことです。ケンは公園に自転車で向かっていました。しかし曲がり角で、車とぶつかってしまったのです。ケンはこの事故で足をケガしてしまいました。
「先生、おれはもう走ることができないんですか。」
「これからのケンくんのがんばり次第だね。ただ、少なくとも二年間は、走ることはできないと思うよ。」
ケンはひどく落ち込みました。リハビリをしても、思うように足を動かせない。今までばかにしていたジュンみたいで、はずかしくて腹立たしくて、リハビリをやめてしまいました。


ある日、ジュンがケンのみまいにきてこういいました。
「ケン。ぼくはもうじぶんで歩くこともできないけど、はずかしいなんか思ったこともないし、すごく楽しいよ。ぼくはぼくのことが大好きだし、ケンのことも好きだよ。でも、今のケンは嫌いだ。ぼくとちがって走れるようになるかもしれないのに、それをあきらめているケンは嫌いだ。どれだけ頑張ってもぼくはもう走れない。」
「ジュン…。今までばかにしてごめんな。わかったよ、おれ、リハビリ頑張るよ!」

ケンは今日も、ジュンに応援されながら、頑張っています。

k162531

あるところに、子供が鳥だけの小学校がありました。
今日もこの小学校の子供たちは元気よく遊んでいます。
そんなところに一人だけ、さびしそうな子供がいました。
つい最近この学校に転校してきたペンギンのぺんいちくんです。
ぺんいちくんをみてかわいそうに思ったカラスのからたは、ぺんいちに声をかけました。
「ぺんいちくん、一緒におにごっこしようよ!」
ぺんいちくんは遊びにさそってくれてうれしかったのですが、まだ気は晴れていない様子です。いったいどうしたのでしょう?
近くにいたスズメのすーこちゃんが聞きました。
「ぺんいちくん、なにか不安なことでもあるの?」
するとぺんいちくんは、重い口を開けて話しました。
「実はぼく鳥なのに飛べないからみんなと一緒に遊べないんだ。」
それを聞いたからたは言いました。
「確かにぼくたちは飛ぶことができるけれど、ぺんいちくんは泳げるじゃないか!じゃあ今から泳ぎに行こうよ!」
ぺんいちくんは、カラスのからたが泳げないのにそんなことを言ってくれているのだと気づき、からたの優しさに胸を打たれました。
そこで、すーこちゃんが「飛べないぺんいちくんも、泳げないからたくんも一緒にできる遊びをしようよ!」と言い、みんなでサッカーや野球をすることにしました。
ぺんいちくんは、一緒に遊ぶ友達ができたことがとてもうれしくて、毎日毎日たくさん遊んで帰りました。

k172501

とある港町に少女が一人で座っていました。その少女は周りよりも背が高く体格のいい少女でした。その少女は元々いた国から追い出されたのです。間違って少女の友達を殴って死なせてしまったからです。少女の両親は国の王様に必死に抗議をしました。しかし王様はたいそうご立腹で自分の意見を変えることはありませんでした。そして何も知らない少女は、その港町に出かけるとだけ言われ、そして両親は少しの食料とおやつだけを残して泣く泣く少女をその島においてきたのでした。
 少女は両親が自分を迎えに来てくれることを信じて何日も待ちました。おなかがすいても雨や雪が降っても同じ場所で待ち続けていました。しかしいつになっても両親が迎えに来ないので、少女は寂しさのあまり泣いてしまいました。そのとき一人の心優しい女性が少女に声をかけ家に連れて行ってくれました。女性の家には他にも両親がいない子どもたちがたくさんいました。少女はその家の子どもたちととても仲良くなり女性も子どもたちと常に一緒にいてその家は笑顔と活気が溢れていました。
 そしてその少女はその家で過ごしていくうちにみんなで争いもせず、笑顔が溢れる今の状況が大好きでみんながここのような暮らしをすれば幸せになれると思い始めました。元々ここの子どもたちは生まれも育ちもバラバラ。それでもみんな仲良くしているので少女は必ずできると確信しました。そして心優しい女性は少女の考えを否定することなく、むしろ背中を押してあげました。そして少女は立派な国の女王様になりました。その家に住んでいた子どもたちも同じ国で楽しく過ごしています。少女は気づきました、国生まれや育ちが同じ必要なんてないと。そして少女は今もいろんな国でそれ伝え続けています。

k172503

 ある街に、タヌキのポンタときつねのコンがいました。二人は友だちで、よく一緒に学校終わり、近くの公園でボール遊びをしたり、川へ遊びに行ったりしたりするほどの大の仲良しです。仲良しなばかりに、ケンカもよくしてしまいます。この前は、お菓子屋さんに行ったら、二人の大好きなイチゴチョコレートが一つしかお店に並んでいなくて、どっちが買うか言い争ってしまってケンカしてしまいました。その時は二人とも違うお菓子で我慢しようということで、なんとか収まったそうです。二人がケンカするのは、好きなお菓子がかぶったりするように、二人とも好みが似ていたり、とる行動も似ていたりするため、ケンカしてしまうのでしょう。

 ある日ポンタはコンに相談があるといって、コンもちょうど話したいことがあるらしく、いつもの公園で話をしようと集まりました。なんと、ポンタには好きな女の子がいるらしく、その女の子は同じクラスで、ウサギのピン子のことでした。いつも優しく接してくれて、話も合うそうで、告白しようか迷っているらしく、コンに相談をしているようです。しかし、困ったことにコンもまったく同じ理由でピン子ちゃんが好きで、今日そのことをポンタに相談しようと思っていたばかりに、相談にうまく乗ってあげることができませんでした。コンはお互いの気持ちを知ってしまい、ポンタにに不信感を与えましたが、ポンタは気にせず、一人で告白する決意をしたのです。
 コンは親友ともいえるポンタといえど、ピン子が好きな気持ちは変えることができずにいたため、コンはポンタに化けて、ピン子に嫌がらせをして、ポンタの評判を下げて、告白を失敗させてやろうと決心しました。スカート捲りをしたり、目の前でお尻をぺんぺんしたりして、見る見るうちにポンタの評判は下がっていきました。ポンタはピン子に避けられていることに気づき、コンの仕業なのではないかと疑いました。ポンタはむきになり、仕返しをするようにコンに化けてピン子にいたずらを仕掛けました。すると、ピン子に二人は呼び出されて、「二人のいたずら競争に巻き込まないで。二人とも嫌いよ。」といわれました。二人仲良くピン子に嫌われてしまったのです。好きな人に同時に振られてしまった二人は、ハハッとつい笑いだしてしまいました。それからお互いに悪いことをしたことを謝り、二人はこう思ったのです。「俺たちやっぱりよく似ているね。」

k172510

ヒロくんは英雄幼稚園に通う5さいのとってもげんきな男の子。将来の夢はカッコいいヒーローになることです。ヒロくんはいつだってせいぎのミカタです。「わるものはぼくがやっつけるんだ!」そう、ヒロくんが大好きなヒーローのマモルンジャーはいつだってわるものをやっつけてくれます。
ある日のこと、ヒロくんがいつものように幼稚園の中をパトロールしていると女の子の泣き声がしました。あわててヒロくんがかけつけるとお友達のマイちゃんが泣いていました。「どうしたの?」と聞くと、「タケシくんにおもちゃを取られたの。」とマイちゃんは言いました。タケシくんは隣の組の体が大きな男の子で、よく人のおもちゃを横取りしては泣かせていました。「よーし!わるものはぼくがやっつけてやる!」ヒロくんはそう言うとすぐにタケシくんのところへ走って行きました。そして、「くらえ、必殺パーンチ!」と言ってタケシくんに向かってパンチをしました。大好きなマモルンジャーはわるものをたおす時、いつも必殺の「ディフェンシブパンチ」でやっつけるのです。すると、とつぜんパンチをされたタケシくんは泣き出しました。わるものをやっつけたヒロくんは「やっぱり僕はヒーローだ!」とそう思い、いいことをしたと思っていました。でも、その日お家に帰るとヒロくんはママに叱られました。「いきなりパンチなんかしたらだめじゃない!」いいことをしたのですっかり褒められると思っていたヒロくんはびっくりして泣きそうになりながら言いました。「僕はわるものをやっつけたんだ!何もわるいことはしてないじゃないか!」ヒロくんはムカムカした気持ちで眠らなければなりませんでした。
その日ヒロくんは夢をみました。大好きなマモルンジャーが出てきました。ヒロくんは今日あったことをマモルンジャーに話しました。「わるものをやっつけたのに、ママに怒られたんだ。僕はヒーローなのにおかしいと思わない?」すると、マモルンジャーは少し悲しそうな顔をしてヒロくんに言いました。「ヒーローはパンチをしたり蹴ったりすることが仕事じゃないんだ。ヒロくんはタケシくんにパンチをしたけど、他に何かやり方はなかったかな?僕の敵は話しても聞いてくれないけれど、タケシくんは話せば聞いてくれるんじゃないかな?」そして、マモルンジャーは真っ直ぐにヒロくんの目を見て言いました。「ヒロくん、ヒーローってゆうのはね、人を笑顔にすることが仕事なんだよ。だからヒロくんには必殺パンチなんて必要ないと思うな。」ヒロくんはマモルンジャーの言葉にびっくりしました。そして、タケシくんにパンチしたことを後悔しました。ヒロくんはこころに決めました。「もう誰にもパンチはしないでおこう。」
次の日、ヒロくんはタケシくんのところに行って言いました。「昨日はパンチなんてしてごめんね。」するとタケシくんは「いいよ。」と小さい声で言いました。ヒロくんは勇気を振り絞って言いました。「マイちゃんからおもちゃを横取りしたらだめじゃないか。おもちゃは順番に使おうよ。」するとタケシくんは「うん。ごめんね。」と謝りました。マモルンジャーの言うとおりタケシくんは話せば聞いてくれました。でも、なんだかタケシくんは元気がありません。タケシくんは昨日おもちゃを横取りしたことでマイちゃんから嫌われてしまい元気がないのでした。ヒロくんはマモルンジャーの言葉を思い出していました。「ヒーローはみんなを笑顔にすることが仕事なんだ。」そこでヒロくんは思い切ってタケシくんに言ってみました。「僕と一緒にヒーローになろうよ!そしたらマイちゃんもタケシくんのこと許してくれるかもしれないよ!」するとタケシくんは「うん!」といって少し元気になりました。
それからというもの、ヒロくんとタケシくんは幼稚園のお花に水をやったりケガをしたお友達を助けてあげたりとみんなを笑顔にするために頑張りました。いつしかヒロくんもタケシくんもみんなから「ヒーロー」と呼ばれるようになっていました。そのかいがあってタケシくんは無事にマイちゃんと仲直りすることができたのでした。ヒロくんは自分たちが「ヒーロー」と呼ばれてとっても嬉しそうです。ヒロくんとタケシくんはみんなを笑顔にするためにあっちでこっちで毎日大忙しです。小さなヒーローたちのおかげで英雄幼稚園は今日も笑顔でいっぱいなのです。

k172515

一匹の犬がいました。その犬は三年前にある家族のもとに来ました。その家族は四人家族でお父さんとお母さん、子供たちはその犬が来たとき8歳のお姉ちゃんと7歳の弟でした。
その犬が来たときには家族全員その犬のことをかわいがり、だれが散歩に連れていくのかをいつも楽しそうに言い争っていましたし、お出かけするときも一緒でいろんなところへ連れて行ってもらいました。そうやって過ごしていて犬は毎日がとても楽しみで、いい家族のもとに来たと満足していました。

ところが犬がきて三年がたち、今の犬の気持ちは三年前と全く違うものになっていました。今では、あんなに楽しそうにしていた言い争いはただの押し付け合いになり、お出かけには連れていってもらえなくなり、犬はどうしてこうなってしまったのか考えました。犬は自分がもう必要とされていないのではないかと考えるようになりました。そして犬は必要としてくれる人がいるはずだと考え家族のもとを去ることにしました。

いざ、家を出てみると自分で食べ物を見つけることなどの大変さがわかるようになりました。そして、今まで当たり前に感じていたものがなくなって初めて犬は気づきました。しかし、犬は自分で出ていったので戻るかどうかとても迷いました。迷っていると知らない間に犬は元の家族の家のあたりをうろついていると犬を探してていた帰りの弟に見つかりました。弟は泣いて犬に抱きつきました。犬は自分が必要ではないと思っていたのでこの反応は予想外でした。そこでようやく犬は自分には居場所があることがわかり、とても安心しました。その日から犬は来た時のように毎日明日が楽しみになりました。

k172518

黒色の眼球

ある村に、食べたものの力を使える仙人がいました。カニを食べれば手がカニに、鳥を食べればつばさが生える力を持っていました。仙人はその力を使って、村を悪い人からずっと守ってきました。
 そんな仙人に憧れる少年が村にはいました。少年は仙人に憧れ、色々なものを食べましたが、力を使うことはできませんでした。その力は仙人だけのものだったのです。
 ある日少年は仙人に聞きました。「仙人はこのままずっと村を守ってくれるのですか。」と。すると仙人は首を横に振りました。
実は、仙人は村の人から仙人と呼ばれているだけで、実は力を持った人間だったのです。仙人の力と生命は永遠ではなく、いつかはこの村を守れなくなる日が来ることを仙人は、少年だけに伝え、2人だけの秘密にしました。
 しかし、少年は仙人がいつかいなくなってしまう悲しみと不安でいっぱいになりました。

 またある時、村に街から商人がやってきました。商人は世界中を旅していて、少年の知らないことをたくさん知っていました。
 商人は少年にある話をしました。「西の山の頂の湖に人間が生まれる前から今までずっと生えている草がある。人もその草のように永遠に生きることができたらどれ程良いだろうか。」と。少年はその話を聞いた時、仙人との2人だけの秘密を思い出しました。少年は仙人にその草を食べて永遠に生きる力を手に入れてもらおうと考え、西の山の頂の湖までその草を取りにいきました。その草はいとも簡単に見つかりました。
 少年はその草を持ち帰り、仙人にご馳走することにしました。
 その日のうちに少年は仙人を家に招き、その草を煮浸しにしてご馳走しました。仙人は「ありがとう。」と言って、残さずきれいに食べました。
 しかし、次の日、いつも村のどこかでうろついている仙人の姿がありませんでした。不審に思った少年は仙人の住処に駆けつけます。そこには血を吐いて倒れた仙人がいました。少年が取ってきた草は毒草だったのです。
「もう死ぬ。私の力を君に授ける。君が村を守るんだ。」そう言い残して、仙人は死んでしまいました。
 少年は悲しみ、泣き崩れてしまいます。そして、少年は気づきました。あの商人に騙されたのだと。仙人の敵を討とうと商人を探しましたが、商人も既に村から姿を消していました。それに少年は授かった力をまだうまく使うことができませんでした。カニを食べても泡だけを吹いたり、鳥を食べても羽毛が生えたりする程度でした。敵を討つため、力を使いこなすために少年はとにかくたくさんのものを食べ続け、嘔吐と擬態を繰り返しました。

 数年後、少年はたくましく成長し、力を使いこなせるようになっていました。かつての仙人のように村を守れるだけの力も身についていましたが、肝心のあの商人を探すことを第一に考えていました。
 少年はあらゆる虫や鳥を食べ、虫や鳥と会話する力を手に入れました。そして、たくさんの仲間たちに商人を探すのを手伝ってもらいました。すぐに商人は見つかり、少年は蜘蛛の糸を使って商人を羽交い締めにしました。数年間ためた憎悪の念があふれかえっていましたが、まず少年は商人に真実を聞きました。
 確かに、商人は少年を騙し、仙人を殺そうとしました。しかし、商人の弟も村の敵とみなされ、仙人に殺されていたのです。殺された弟の敵を討つために仙人を殺そうとしたのです。
 その話を聞き、少年は自分と目の前の憎しみと怒りの宿った目をした男とを重ねました。自分もこの男と同じように親しい人を殺され、真っ黒に染まっていたのだろうと気づきました。
 少年はその男を殺しませんでした。次のその黒色の眼球を生まないために。

k172519

小さいころから人間に育てられ、自分のことを人間と思っている黒いネコがいました。
そのネコは自分の親ネコの顔も見たこともなければ、ほかのネコと顔を合わせたこともありませんでした。
毎日かいぬしさんと遊んでいた黒いネコは人間のことばを話すことができたので、毎日かいぬしさんと話して楽しくくらしていました。
かいぬしさんもそのネコと話すことができてうれしかったのか、いつも笑顔でネコと話していました。

しかしある時、その家に新しく茶色のネコがやってきていっしょにくらすことになりました。
さいしょは黒いネコも茶色のネコとどう遊べばいいのかわからずに困っていました。
なぜならその茶色のネコは人間のことばを話すことができなかったのです。
その時黒いネコははじめて自分以外のネコが人間のことばを話すことができないことを知りました。
黒いネコは茶色のネコと遊ぶために必死にネコのことばを覚えました。
ネコのことばを覚えていく中で、黒いネコは茶色のネコとだんだん仲良くなっていき、一緒に遊ぶことが楽しくて楽しくてしかたありませんでした。
黒いネコは茶色のネコとばかり遊んでいるのでかいぬしさんは少しさみしそうに笑っていました。

そうしてネコのことばをおぼえた黒いネコは毎日茶色のネコと遊ぶようになりました。
茶色のネコと遊んでいるうちに黒いネコは人間のことばをだんだんわすれていってしまいました。
黒いネコは毎日かいぬしさんと話していたことも忘れていきました。
そしてついに黒いネコは人間のことばを話すことができなくなってしまいました。
かいぬしさんは黒いネコが茶色のねこと楽しそうに遊んでいるのを見て、笑顔いっぱいになりました。
それからというもの、二度とかいぬしさんと黒いネコはにんげんのことばで話すことはありませんでしたが、かいぬしさんと二匹のネコはしあわせに暮らしましたとさ。

k172902

あるところに夢に挫折し、他人に心を閉ざしてしまい心から笑えないようになってしまっているあんちゃんという女の子がいました。あんちゃんはお母さんにさえも本心を話せませんでしたが、心配をかけまいと表向きは元気を振舞って毎日を過ごしていました。しかし夢への挫折の悲しみや苦しさ、辛さを1人で抱える日々はあんちゃんの心をどんどん痛めつけ、凍らせていきました。
ある日、あんちゃんは田舎であるおばあちゃんの家に帰り、そこで一羽の鳥に出会いました。その鳥の名前はレノア。あんちゃんのお兄ちゃんが飼っている鳥でした。あんちゃんはレノアを一目見た時からなにか不思議な力を感じていました。レノアはまるで今までもずっと一緒に過ごしてきたかのように、初めからあんちゃんに懐きました。おばあちゃんの家にいる間、あんちゃんは毎日レノアと遊びました。おばあちゃん家から帰る日、つまりレノアとお別れの日、あんちゃんはお兄ちゃんにお願いし、レノアを譲ってもらえることになりました。
レノアを連れて家に帰り、レノアがいる新しい生活が始まりました。夏休みの間、あんちゃんはレノアと片時も離れず朝から晩までずっと一緒に過ごし、寝る時も一緒でした。レノアは言葉を話すわけでも話を聞いてくれるわけでもありませんでしたが、あんちゃんの抱えてる辛さ苦しさを分かっていたかのようにそっと心に寄り添いあんちゃんの心を少しずつ溶かしていきました。そんなある日、あんちゃんの心に変化が生まれていました。今まで考えられなかったような前向きな気持ちが芽生えていたり、心から笑えるようになっていたのです。レノアのおかげであんちゃんはまた夢に向かって進む道を選びました。そして夢のためにあんちゃんは忙しくなり、レノアと過ごす時間は次第に減って行きました。またいつものようにレノアと一緒に寝ていると夜中なぜか突然レノアが心配で目が覚めると、隣でレノアは亡くなっていました。
レノアはあんちゃんの心を溶かすためだけにやってきてくれた魔法の鳥だったのです。レノアを失った悲しみは大きく泣いてばかりの日々を過ごしていましたが、ある日、夢にレノアが出てきて、「目で見えなくなってしまっただけで、私は今でもいつでもあんちゃんのそばにいるよ。」と言いました。それからあんちゃんはいつもレノアといる気持ちになり、夢に向かって頑張れています。

k172912

山の奥にとてもとても小さな集落がありました。その集落には3人の職人がいました。木を使うことが得意なナオくん、石を使うことが得意なゴロウくん、紐を使うことが得意なヒロコさんです。3人はいつも仲が良くて自分の作ったものを自慢しあったり、一緒に物作りを楽しみました。そんな仲のいい3人の職人が暮らしている村に大きな嵐が通り過ぎました。通り過ぎた後に集落の長が橋が壊れていることに気づきました。その橋は山の麓に降りるための唯一の橋だったのです。村のみんなは困りました。
そこで集落の長は三人の職人を呼び出し、こんな提案をしました。(川を渡る方法を見つけることをできた人にはたくさんの褒美をやろう。)といいました。それを聞いた職人は褒美を独り占めしようと一人ずつ挑戦しました。ナオくんは木を一本向こうぎしまで倒しました。しかし、風で飛ばされてしまいました。ゴロウくんは大きな石をいくつも投げ入れて道を作りました。でも、石は濡れていて滑ってしまい石に乗ることはできませんでした。ヒロコさんは紐を向こう岸の木にひっかけて綱渡りで渡ろうとしました。しかし、紐は人が乗るとちぎれてしまいました。
三人とも諦めて帰っていると、目の前に人影が見えました。近づいていくとそれは三人のそれぞれの子供が仲良く遊んでいました。何をしているのかと思うとそれぞれの持ってきたものを組み合わせて遊んでいたのです。そこで三人は息を揃えていいました。(これだ!!) と。そのあと三人はすぐ川に戻って作業しはじめました。石の上に木の板をおいて木を紐で結び見事橋を完成させました。その後集落の長から褒美も三人で仲良く分けました。三人はずっと三人で物作りを楽しみました。

k172915

なくていいや」と考えてもいました。2つの気持ちが入り交じりあまり楽しくない、寂しい日々を過ごしていました。そんなつまらない日をある日クラスの仲良し3人組から話しかけられました。「一緒に遊びに行こう!!」
男の子はその誘いがとても嬉しくて飛び跳ねるように「一緒に遊ぶ」と言い、学校が終わったあとに3人組と一緒に公園に遊び行きました。公園では、砂場で遊んだり、遊具を使って遊んだり、サッカーをしたりとてもとても楽しい時間を過ごしていました。その時間は男の子にとっては今までに経験した事のないとても素晴らしい時間でした。あっという間に時間は過ぎていってしまい、帰る時間になりました。「また明日ね!」と言いそれぞれ家に帰っていきました。
男の子は1人で自分の家に帰り、楽しかったことを思い出しながらルンルンで家に帰りました。家に帰ってご飯を食べクラスの子と遊んだことをお母さんにたくさん話した。寝る時間になりふと目を閉じると急に寂しくなってきた。でもそれは今までのひとりだったあ寂しさとは違い遊んでいた時間が恋しくて寂しく思っていた。「早く明日にならないかな」そう思い眠りについた。次の日男の子は飛び起きるように起き上がり走って学校に行き、まるで人が変わったかのように元気な声で「おはよう」と言った。その時男の子は今まで見ていた景色とは違いまるで新しい世界に来たかのように世界が輝いて見えた。

k172919

とあるヨーロッパの国の、都会からは遠く離れた森にその男の子は暮らしていました。彼の友達はクマやブタ、カンガルーなどの動物たちでした。この森には彼ら以外にはだれもおらず、だれにも、また何にも邪魔をされずに楽しく遊んでいました。「僕たちはずっと友達だよね?」「うん、もちろん。ずっと友達だよ。」彼らの友情は間違いなく本物でした。ここにいる誰もが、ずっとここでみんなと楽しく遊んで暮らすのだと信じていました。

しかし時がたち、やがて男の子は立派な大人になりました。大人になるということは遊んで暮らしていくわけにはいきません。仕事にいって働いたり、家族をもって養ったりしなければいけないのです。すなわちこの森を出る必要があるのです。そこで彼らは話し合いました。この森を出ていくことをみんなに告げなければなりません。「僕はもう大人になったんだ。だからもうこの森で遊んでいるわけにはいかないんだよ。」「それはどうしても必要な事なの?」「僕は君たちとは違うんだ!」「そっか。じゃあ仕方ないね。僕たちはもう会わない方がいいんだね。」彼らは喧嘩をしてしまいました。それ以降、会うことはありませんでした。

さらに時がたち、彼は森のことや友達のことを忘れ、せわしなく働いていました。家族を持ち、一家の大黒柱として過ごしていましたが、仕事が忙しく家庭を顧みることができていませんでした。そのため家族と喧嘩をしてしまい、仕事もうまくいかなくなってしまいました。彼は自分の居場所はどこなんだろうと思い悩んでいました。そんなときにふと思い浮かんだのは、あの森とあの仲間たちと過ごした日々でした。「どうして僕はあんなことを言ってしまったんだろう。僕の大事な居場所だったのに。みんなを傷つけてしまった。謝りに行かなくちゃ。」彼は久しぶりにあの森へ行きました。すると「おかえり。きっと帰ってくると信じていたよ。」という、聞きなれた、どこか懐かしい声がしました。「ただいま、みんな。」彼は改めて自分の居場所、大切なものを見つけたのでした。

k172932

昔々ある山奥におじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは川へ魚釣りに、おばあさんは山へ山菜を取りに行きました。そんな時二人の孫の和直(かずただ)はあることを考えていました。それはこの山を下りて都会へ上京するか、このままおじいさんとおばあさんと一緒に山で穏やかに平和に暮らすかであった。二人は早くに亡くなってしまった両親の代わりに自分を育ててくれたこともあり、深く悩んでいました。

そんな時おじいさんとおばあさんは和直と話をし、こんな話をしました。「あなたの両親はあなたを都会へ送り出すつもりだった」と。それを聞いた和直は自分の考えを打ち明け、都会へ行くことを話し、決心しました。二人と暮らす最終日、和直は二人にある約束をしました。「必ず恩返しをするから。」そうして、和直は二人に別れを告げて都会の街へと踏み出していきました。歩いていく中で和直の手にはおにぎりの形をした財布が握られていた。

町についたとき和直は驚きました。これまでの自分の生活の仕方がいかに二人に支えられていたのかを知ったからです。都会で過ごしていく中で和直は強く、たくましく育っていきました。そんな中でも元から兼ね備えてきた優しい気持ちは忘れず生活していった。そうして彼の周りには自然と人が集まっていきました。そして時が過ぎ成長した和直は自分の成長と最愛の人を連れて再びおじさんとおばあさんのもとへ。しかしふたりはもうこの世には…

k162929

ある所にうさこちゃんとくまおくんがいました。うさこちゃんとくまおくんは次の日曜日にうさこちゃんの家で遊ぶ約束をしました。くまおくんはうさこちゃんと遊ぶのが大好きなので日曜日が待ち遠しくてたまりません。うさこちゃんの家にお邪魔するからとお母さんにクッキーを焼いてもらうようお願いもしました。
そんなある日、うさこちゃんから連絡がありました。
「日曜日…遊べない。ごめんね。」うさこちゃんは言いました。くまおくんはすごく楽しみにしていたので、「なんで?」と聞くと、「亀太郎くんと遊ぶ予定があったの。」と答えました。それを聞いたくまおくんは「うさこちゃんなんか大嫌い!」と怒って電話を切りました。
うさこちゃんはなんでくまおくんがそんなに怒って電話を切ったのかわかりません。日曜日になる前にちゃんとくまおくんに言ったのに、しかもごめんって謝ったのに…うさこちゃんの心はモヤモヤしています。
その様子を見ていたうさこちゃんのお母さんはうさこちゃんに「何があったの?」と聞きました。うさこちゃんはくまおくんと遊べなくなったこと、謝ったのにくまおくんが怒ってしまったことをお母さんに言いました。うさこちゃんのお母さんは「それはうさこが悪い。だってくまおくんとも約束してたんでしょう?くまおくん、悲しかったと思うよ?予定はちゃんと管理しないと。」と言いました。
うさこちゃんはくまおくんの気持ちを考えて、悲しい気持ちになりました。ちゃんと謝ろうと思いました。 「ごめんね。これからはちゃんと予定を自分で管理するからまた遊んで欲しい。」と言いました。くまおくんは「そんな間違いは誰にもあるから僕も気をつけるよ。」と言い、仲直りしました。予定の管理は大切だということを知った2人でした。

n181103

あるパティシエのオオカミが森の中にパンケーキやさんを開きました。森は、たちまち甘い香りに包まれていきました。すると最初のお客さんの、うさぎの親子がやってきました。キッチンにいたオオカミは急いでお店の方にやってきて、大きな声でうさぎたちをお出迎えしました。「いらっしゃい!」うさぎの親子はオオカミに驚いて、逃げて行ってしまいました。オオカミはがっかりしてしまいました。その後も、お客さんは来ることがありませんでした。その夜、オオカミはひとりさみしく考えていました。たくさん作ったパンケーキは、すべてのこっています。「もしかしたら、僕がオオカミだから、見た目がこんなだから、みんな怖がってしまうのかなあ?」
次の日、お店にはキツネの人形が置かれていました。それはオオカミが怖がられないようにお客さんと話すために置いたものでした。するとそこに、1匹の子りすがパンケーキを買いにやってきました。オオカミは人形のふりをして、お出迎えをしました。子りすはとても喜びました。そこに空からカラスが飛んできて、子りすの順番を抜かそうとしました。「こんなりすのパンケーキよりおれのを先にくれ!」そう言って、子りすのことを大きな翼で殴ろうとしました。そのときです。「やめろ!りすをいじめるな!!」隠れていたオオカミは思わず出て行ってしまいました。するとカラスは驚いて、すぐに飛んで行ってしまいました。
ハッと我に返ったオオカミは、やってしまった、またお客さんを怖がらせてしまった!と思いました。しかし子りすは笑顔でオオカミを見つめていました。「オオカミさん、助けてくれてありがとう!やっぱりパパとママにもあげたいから、パンケーキみっつください!」自分を怖がらない子りすにオオカミはびっくり。「オオカミさんはこんなに優しいのに、どうして怖がるの?」オオカミは喜んで、子りすにとびっきり美味しいパンケーキを作ってあげました。その日以来、オオカミのパンケーキやさんは、森中で大人気のお店になりました。

n181104

ある小さな村に、めいちゃんという1人の女の子がいました。めいちゃんはかくれんぼが大好き。ある日、めいちゃんとめいちゃんの友だちは森の中でかくれんぼをすることにしました。めいちゃんは森の中をどんどんどんどん進んでいきました。ずっと進んでいくと、あかりのついた小さな小屋を見つけました。めいちゃんは少し怖がりながら、そっと小屋の中に入って行きました。「誰かいますか?」と声をかけても返事はありません。めいちゃんはとっても良い場所を見つけたと思い、小屋の中でじっとかくれることにしました。
めいちゃんがあんまり遠くに行ってしまい、どんなに待っても友だちはこなかったので、めいちゃんはだんだん眠くなってしまい、そのままスヤスヤと眠ってしまいました。すると、「くんくん、くんくん、」なんだかいい匂いがしてきました。目を開けると、そこにはなんと森の動物たちがいて、みんなでご飯を作っていたのです。美味しそうなハンバーグとスープにサラダ。めいちゃんはとっても嬉しくて森の動物たちと一緒に、「いただきまーす!」料理をお腹いっぱい食べました。その後も、みんなでトランプをして遊んだり、うたをうたって、楽しい時間を過ごしました。
「ドンドン!」と音がしてめいちゃんはパッと目を開けました。するとそこにはお母さんとお父さんがいたのです。あんまりにも見つからなかったのでお母さんたちが探しにきてくれたのです。あたりを見回すと、そこには森の動物たちも料理もトランプもありませんでした。そう、めいちゃんはずっと夢を見ていたのです。めいちゃんはこの夢のことをだれにも話しませんでした。自分だけの思い出にしておこうと思ったからです。その日からかくれんぼをするときは必ずそこにかくれるようになりました。そのせいで、いつも一番にめいちゃんは見つかってしまうけれど、めいちゃんにとってはだいすきな、とっておきのかくれ場所なのです。

n181108

森のケーキ
ある小さな森に、さっちゃんという笑顔が素敵な女の子がいました。さっちゃんは、ケーキを作るのが大好きで、森の動物さんたちのためによくケーキを作ってあげていました。はちみつが大好きなクマさんには、「はちみつたっぷりケーキ」。にんじんが大好きなウサギさんには、「にこにこにんじんケーキ」。さっちゃんが作るおいしいケーキは、いつしか小さな森の中でとても有名になっていました。毎日、毎日、さっちゃんの家には、たくさんの動物さんたちがケーキを作ってほしいとお願いしにきていました。
そんなある日のこと、さっちゃんのもとに1つのお手紙が届きました。
「誰からお手紙が届いたのかしら?」
そう思ってお手紙の後ろを見てみると、なんと、それは森の女王様からでした。さっちゃんは、びっくりして急いで中を見てみました。するとそこには、
「あなたの作るケーキがとてもおいしいと森の中で評判だと聞きました。ぜひ、食べてみたいと思いましたので、私にもケーキを作ってください。楽しみにしています。」
と、書いてありました。
「女王様にケーキを作るなんて、、おいしいケーキが作れるかしら、どんなケーキを作ったらいいのかしら。」
さっちゃんの心の中は、嬉しいという気持ちよりも不安な気持ちでいっぱいになりました。そして、考えれば考えるほどケーキのアイデアが浮かびませんでした。
そんな様子を見た森の動物さんたちは、なにかさっちゃんの役に立てないかと考えました。そして、さっちゃんはいつも食べる人のことをたくさん考えているから、素晴らしい愛で溢れたケーキが作れるんだということに気づきました。
「さっそくさっちゃんに伝えよう!」
みんなは急いでさっちゃんのところに行き、このことを伝えました。
「そうか、女王様のことを考えて愛を込めて作ればきっと素敵なケーキができるわ!みんなありがとう!」
さっちゃんは、すっかりいつもの笑顔に戻りました。そして、あっという間にケーキを完成させました。その名も「森のケーキ」。森のことが大好きな女王様に、森でとれたたくさんのフルーツと動物さんたちのイラストクッキーをのせた素敵なケーキをプレゼントしました。女王様は、とても喜んでくれました。そして、さっちゃんのケーキはもっともっと人気になっていきました。

n181111

むかしむかし、とある村で病が流行り村人はある一人の男の子以外寝たきりの状態になってしまいました。その病を治すには魔物たちがたくさん生息する森の中のさらに奥にしか生えていない薬草が必要でした。その男の子はとっても泣き虫で甘えん坊でしたが、人一倍正義感が強く村のみんなを救うため旅に出ると言い出しました。村人たちは心配で心配で、外から来た人が助けてくれるなどといい、絶対に冒険に出ないように言い聞かせました。しかし、少年はその言いつけも聞かず旅に出てしまいました。
 その冒険は大人からしても決して楽なものではありませんでした。少年に襲い掛かる様々な苦難たち、泣き虫な彼に耐えられるはずがありませんでした。森の中は迷路のようになっており少年は迷子になってしまいました。途方に暮れてはなし泣いているとき、そこに少女が現れました。話を聞くと、その少女の村でも同じ病気がはやりみんなの命を救うために旅に出たとのことでした。彼女は少年と違い泣き虫ではありませんでした。そうして、少年とその少女はともに旅をすることになりました。泣き虫でない彼女は少年と違い気が強く、泣き虫な彼をいつも叱り、彼のことを引っ張ていました。食料の調達から魔物退治まですべてをこなす少女、少年はいつも足手まとい、少年はいつしかそんな自分が嫌になっていきました。そんなある日、少女が突然同じ病に侵され、動けなくなってしまいました。少年は彼女を救いたい、もう一人になりたくない、その一心で全てをこなしていきました。少女がやっていたことを全て見ていた少年は、最初は不格好ながらも、徐々に成長していきました。しかし、魔物退治だけは一筋縄ではいきませんでした。そうやって日が過ぎていくうちに、少女は死んでしまいました。彼女の残した遺書を見ると、こう書かれていました。「ずっとあなたのことが心配でした。でももう大丈夫だね。あなたは強くなった。」と。その日少年は泣き叫びました。泣いて泣いて、ずっと泣いて。そして泣き止んだ後、彼は決心しました、彼女の分まで生きようと。
 一人じゃなくなった少年はいつの間にか泣くことを忘れ、強くたくましくなっていきました。目標を達成し村の人々を救った彼らは同じような人を救いたいと思い、また旅に出ました。彼らのうわさはすぐに王国全土に広がりました。泣き虫だった勇者、彼の伝説は今でもその国で言い伝えられており、伝記ともなりました。強く、たくましく、優しい彼を目指す人は少なくありません。なぜならその勇者は元は泣き虫でしたから。

k182103

運命のいたずら
                            182103 池田裕城
 ある日の朝、ななせは走っていた。今日は朝寝坊しちゃったから、急がないと学校に向かうバスに乗り遅れちゃう。
「きゃあ!」
ななせはつまずいてこけてしまった。ひざをすりむいたらしくじんじん痛むが、それよりもかけていためがねがない。まわりを探しても見つからず、探しているうちにバスが行ってしまった。
「うち、なにやってるんやろう…」
肩を落としとぼとぼ歩いていると、うしろからトントンと肩をたたかれた。
「このめがね、あなたのものですよね?めがねをかけないほうがかわいいですね」
スーツを着た男の人はにっこりほほえんで続けた。
「私、芸能プロダクションではたらいている者です。アイドル、やってみませんか?」
渡された紙には『新グループのメンバー募集』という文字がでかでかとかかれていた。ななせは突然のことに首をかしげるばかりだった。


それから数週間後の昼休みのことだった。
「ええっ!」
ななせは思わずさけんでしまった。
「どうしたの?」
いっしょにお弁当を食べていた友だちが聞いてくる。
「アイドルのオーディション、受かった…」
スマホの画面には『合格』の二文字がおどっていた。
「すごいじゃん!」「サイン今から考えんといかんな〜」という友だちの祝福を受けながらも、ななせは
「うちにできるんかな…。ダンスとか歌とかあんまり得意やないし…」
と不安になっていた。

 迎えた初レッスンの日。
「大丈夫なんかなあ…。うち、ダンスとか歌、すぐ覚えられるやろか…。メンバーたちとうまくやっていけるやろか…」
ななせはドキドキしながらレッスン場のドアを開けた。
そこには、ななせと同じようにオーディションに受かったなかまたちがいた。
「これからいっしょにがんばろうね!!」
「あたしもダンス苦手だから、一緒に練習しようよ!」
いの一番に声をかけてきたかずみ、ゆうりのあとに続くように、他のなかまたちもななせに話しかける。みんなと話しているうちに緊張もほぐれてきたようで、ななせは笑顔になっていった。
「みんなとならうち、がんばれる!これからよろしくな!」
レッスンが始まるとき、ななせは自信に満ちあふれた顔で、不安そうだったかつての表情はもうなかった。


 
 ななせがオーディションに受かってから7年が過ぎた。この7年の中で、楽しいことだけでなく苦しいこともたくさんあった。しかし、ななせは胸を張ってこう言える。
「アイドルになれて、よかった」と。
 思えば7年前のあの日の朝、寝坊をしていなければ…。こけてしまっていなければ…。すぐにめがねが見つかってバスに乗れていれば…。これらのうちのたった一つでも起こっていたらななせは芸能プロダクションの人と出会っていなかっただろうし、オーディションを受けていなかっただろうし、アイドルになることもなかっただろう。すべてはぐうぜんのつみ重ね、神さまのちょっとした“運命のいたずら”だったのだとななせは信じている。
 あの日の“運命のいたずら”に感謝してななせは今日もげんきにステージに上がる。
「みなさん、こんにちは〜!」
                                 【完】

k182104

たろう君はお父さんとお母さんの三人家族です。毎日楽しくて、幸せな日々を過ごしていました。そんなある日、お母さんが突然入院することになってしまいました。幸い症状は軽かったようで一週間入院すれば家に帰ってこれるようです。たろう君は何かお母さんを元気づけて力をつけてもらうことはできないかと考えました。「そうだ、お母さんがいつも作ってくれるカレーを退院したら作ってあげよう!!」こうして、お父さんと一緒にカレー作りが始まりました。
 まずは、材料集めです。たろう君は八百屋さんを回って新鮮な野菜をたっぷり買いました。そして、肉屋で牛肉を買いました。最後に近くにあるカレー屋さんに行ってたろう君の本当においしいカレーを作りたいという思いを伝えました。たろう君の気持ちに心を打たれた優しい店長さんは、店で使っている秘伝の調合スパイスをたろう君に渡して、特製カレーの作り方のレシピを教えてあげました。準備を終えたたろう君とお父さんはさっそくカレー作りを始めました。
 たろう君とお父さんはお母さんのことを思って一所懸命カレーを作りました。普段から料理をしない二人にはとても難しく大変なことだらけでした。そして、お母さんが退院したその晩、二人は特製カレーをお母さんにふるまいました。お母さんはカレーを一口食べると、「こんなおいしいカレーは食べたことがない!!」と大絶賛で息をつく間もなく食べ終えてしまいました。そんな元気なお母さんを見てたろう君とお父さんは幸せな気持ちになりました。そして、また作ってあげようと約束しました。

k182105

前歯のないこのクリスマス
季節は12月。あるところにちいさな男の子がいました。男の子の住む街もすっかりクリスマス一色に染まっています。きらきらのイルミネーション、大きなクリスマスツリー、デコレーションされたジンジャークッキー。まわりの友だちも、おしゃべりの話題はサンタさんにおくるクリスマスプレゼントのおねだりのお手紙ことばかりです。「新しいサッカーボールが欲しいなあ」「ぼくはゲームがいいな」「サンタさんはいい子にしかプレゼントはくれないんだよ!」
そんななか、男の子の耳にはみんなの話など全く入ってきません。男の子の目は、耳は、クラスの中でも憧れのあっこちゃんのことばかり追ってしまいます。落ち着いていてすこしみんなより大人っぽいあっこちゃんは、どんなクリスマスを過ごしたいのか、気になって仕方ありません。おんなのこたちの話に耳を傾けてみると、同じようにクリスマスの話題ばかりです。「わたしは自転車が欲しいな」「ことしはどんなクリスマスケーキを作ろうかなあ」
そんなとき、「やっぱりクリスマスにはかっこよく口笛でクリスマスソングをふけたら素敵よね」というあっこちゃんの声が聞こえました。
口笛!男の子はがっかりして涙が出そうになってしまいました。なぜなら、男の子はつい先週に上の前歯が抜けてしまっていたからです。男の子は口をすぼめて口笛を吹いてみました。前歯がないせいでうまく音が出てくれません。男の子は何度も何度もくりかえし口をすぼめ息をはきました。しかし、上手くいきません。かっこよく口笛を吹いてみせたいのに、前歯がなくて吹けないだなんてあっこちゃんにきっと笑われてしまいます。男の子は藁にもすがる思いで「サンタさん、クリスマスにはぼくに前歯をください。あっこちゃんにクリスマスソングをプレゼントしたいんだ」とお願いしました。
クリスマス当日の朝。男の子はワクワクしながら鏡の前でにっこり笑って前歯を確認してみました。でも、そこには歯抜けの笑顔があるばかり。男の子は心底がっかりしました。「せっかくのクリスマス、チャンスだったのにな」
学校に登校すると、窓際にあっこちゃんが座っていました。男の子は勇気を振り絞って陰から口笛を吹いてみました。やっぱり、上手く音が出ません。それでも一生懸命吹いていると、「だあれ?」とあっこちゃんの声がしました。「ぼくだよ。ハッピークリスマス!…変な顔しないでよ、前歯がなくて上手くできないんだ」返事をしたあと恥ずかしくて俯いていると、あっこちゃんからクリスマスソングが聞こえました。「来年のクリスマスは一緒に口笛を吹こうよ」
男の子は笑顔で頷いたあと「前歯よりずっと素敵なプレゼントをもらっちゃった」と呟きました。

k182106

 あるところに発明家を目指すアールという男の子がいました。アールはいつも部屋で何かを作っています。しかし、アールはいつも失敗してしまいます。アールが失敗をすると、たいていの場合は爆発して煙がモクモクと出てくるので、みんな失敗に気づきます。そのため、周りの人たちに「お前のせいでみんな迷惑してるんだよ!」と怒られたり、「あいつまた失敗してるよ」を嘲笑いながら言われたりしました。しかし、それでもアールは発明をあきらめませんでした。アールのお父さんは素晴らしい発明家で、アールはお父さんのようになりたいと強く思ったからです。
 ある日、アールが一生懸命努力したことで、ついにみんなをあっと驚かせるようなとても不思議な発明をしました。それは、アールが作った特殊なヘルメットをかぶることで、頭の中で思い浮かべたことを何でも現実に起こせるようになるというものでした。みんなはその発明をすごいと思い、たくさんの人がヘルメットを使うようになりました。何もなかったところにシャンデリアのようなキラキラしたブランコを作ったり、本の世界に入ることが出来るようにしたり・・・みんな様々なことをしました。
 しかし、そのヘルメットの力を独り占めしようとするラクという者が現れました。ラクはそのヘルメットをかぶり、頭の中で自分以外のヘルメットが使えなくなった世界を想像しました。そうすると、本当にラク以外はそのヘルメットが使えなくなってしまいました。それを知ったアールはあせり、何とか解決せねばと思いました。そして、アールはいつも失敗するので、万が一のためにヘルメットの力がなくなる緊急のボタンを作っていたことを思い出しました。アールは急いでそのボタンを押しました。そうすると、ラクのヘルメットが使えなくなり、どのヘルメットも使えないものになってしまいました。
 アールは今回の発明もうまくいかなかったので、またみんなから冷ややかな目で見られると思っていました。しかし、みんなはアールが緊急のボタンを作っていたことを失敗の天才だとたとえ、褒めたたえました。
それから3年後、アールは発明家の卵たちに自分の今までの失敗を教える先生になっていました。アールの失敗を教えてもらった発明家の卵たちは、同じような失敗はせず、色んな面白い発明を成功させていったのでした。「アール先生、また失敗を教えてよ!」教室では、この言葉がしょっちゅう飛び交っています。

k182107

むかしむかしあるところに、1つの町がありました。
そんな町に、いつも町の人たちに悪さばかりするキツネのコン次郎と、いつも町の人たちを助けて、みんなに慕われているくまのくま男くんが住んでいました。
そんなくま男くんをコン次郎が妬むのは当然で、いつも事あるごとにいたずらをしていました。
ある時、コン次郎が密かに想いを寄せている、うさぎのウサ美ちゃんがライオンのサーカス団につれさられてしまいます。
コン次郎は助けに行こうと思うのですが、勇気がなかなかでません。
コン次郎がなやんでいるうちに、くま男くんがうさ美ちゃんを取り返すために、ライオンのサーカス団と戦うのですが、相手はライオンです。強すぎてやられてしまいました。そしてくま男くんもライオンのサーカス団につかまってしまいます。
そんな状況をみたコン次郎は1人では無理だ、と町の人たちに助けを求めにいきます。
しかし、いつもの悪さが影響して、町の人たちに避けられたり、また悪さの一貫だろう、と話を信じてもらうことができません。
それでも、コン次郎は諦めずにくま男くんとウサ美ちゃんを救おうと、町の人たちにずっと声を掛け続けます。
コン次郎の必死の訴えに町の人たちはコン次郎の話を信じ、くま男くんとウサ美ちゃんを助けに向かいます。
さすがのライオンのサーカス団も町の人たちの数の多さに、勝てないと思ったのか、逃げて行きました。
そして、無事、コン次郎はくま男くんとうさ美ちゃんを助けられたのでした。
それ以後、コン次郎は自分のこれまでの行いを反省し、悪さをやめ、町の人たちと仲良く楽しく暮らしましたとさ。

k182108

きつねくんはともだち屋さんをはじめました。
きつねくんは「ともだちーともだちーともだちはいりませんかー?1時間100円、2時間200円!!おともだちになりすよー」といいました。
大きい声で町のひとにきこえるように、何回もいいながら歩きました。
くまさん「おれの相手をしてくれ」
と名乗りでました。
石遊びで勝負しました。きつねくんが勝ちました。くまさんは悔しくて何回も何回も勝負を申し込みました。とても楽しい時間を過ごしました。
2時間たったので、きつねくんは
「そろそろお代金をもらってもよろしいですか、、、」といいました。
すると、くまくんは
「おれは相手をしてくれといっただけで、お金をだすとはいってないぞ!!」
と怒りだしました。
くまくんが「お前は友だちからお金をとるのか??」と続けて言いました。
きつねくんは「ぼくらってともだちなの??またあそびにきていいの?」とききました。
くまくんは「もちろんいいにきまってるだろ。ぼくらはもうともだちだよ。」
きつねさんはくまさんにそう言われてとっても嬉しい気持ちになりました。
きつねくんは本当のともだちを手に入れました。ともだち屋さんをはじめたきつねくんは、一緒に遊べる本当の友達が欲しかったのです。さみしかったのです。友達はお金では買えません。それをきつねくんはよくわかりました。それは大切なともだちができたからわかりました。もうともだち屋はやめました。きつねくんにはもう必要がなくなったからです。これからも2人が仲良く遊べますように。おわり。

k182111

(148 語)
「Fix-It Felix」の悪役キャラ、ラルフは、嫌われ者の悪役を演じ続けることに嫌気がさして自分のゲームから飛び出し、お菓子の世界で繰り広げられるレースゲーム「シュガー・ラッシュ」に出ることに。そこでラルフは、仲間はずれにされているヴァネロベに出会い、孤独な2人は友情を深めていく。「ヒーローズ・デューティ」では、ラルフが現場を仕切る女軍人カルホーン軍曹の制止も聞かずメダルを入手していました。ラルフは嬉しさのあまり、昆虫型機械生命体サイ・バグの卵を踏み割って孵化させてしまいます。揉み合う内にラルフはサイ・バグと一緒に非常用シャトルに入ってしまい、めちゃくちゃに飛んで「シュガー・ラッシュ」というゲームに迷い込みます。ラルフはシャトルから放り出された衝撃でメダルを落としてしまいます。そこへ小さな女の子ヴァネロペが現れ、メダルを横取りしていきました。彼女はメダルを参加費にしてレースにエントリーしますが、プログラムの不具合を抱えているヴァネロペは皆に嫌われレースから締め出されます。メダルはレースで優勝しないと取り戻せないと知ったラルフはヴァネロペと相談し、メダル奪還とレース優勝のために手を組むことにしました。
その頃、ラルフとサイ・バグを追ってフェリックスとカルホーン軍曹も「シュガー・ラッシュ」へやって来ました。フェリックスは「ターボする」という言葉の意味を説明します。ゲームの住人たちは自分の役割を変えたり他のゲームを乗っ取ったりすることを「ターボする」と言うようになりました。一方カートを作ったラルフとヴァネロペは、レースに向けて練習を重ねます。いよいよ予選レースという時、ヴァネロペは忘れ物をしたと言ってラルフから離れます。そこへキャンディ大王がやって来て、プログラムから再現したメダルを差し出し、ヴァネロペのレース参加を阻止するよう頼みます。ヴァネロペの不具合が露見すれば「シュガー・ラッシュ」は故障と判断されてしまいます。他の住人は逃げ出すことも出来ますが、不具合の元であるヴァネロペはこのゲームから出られません。コンセントが抜かれれば彼女はゲームと一緒に消滅してしまいます。大王が去り、戻って来たヴァネロペはラルフにお菓子で作ったメダルを渡します。そこには「私のヒーロー」と書かれていました。ラルフは苦悩しながらも、ヴァネロペを守るためカートを破壊。ヴァネロペは泣きながら走り去ります。
「フィックス・イット・フェリックス」に帰ったラルフですが、そこに住人の姿はありません。1人きりになったラルフは張り付いている「故障中」の紙をめがけヒーローメダルを投げつけます。すると、衝撃で張り紙が傾き「シュガー・ラッシュ」の外観が見えました。ゲーム機には大きくヴァネロペの姿が描かれています。不審に思ったラルフはもう一度「シュガー・ラッシュ」に入り、キャンディ大王の側近から真相を聞き出します。ヴァネロペは元々正規のレーサーでしたが、大王がプログラムを改竄して不具合にしたこと。住人は誰も思い出せないこと。ヴァネロペがレースのゴールラインを通過すると全てがリセットされること。ラルフはまずフェリックスを救出してカートを直してもらい、それを持ってヴァネロペを助け和解するのでした。
遅れて予選レースに参加したヴァネロペは順位をぐんぐん上げていきます。しかし、その頃にはラルフが持ち込んだサイ・バグが大量繁殖し、今にも「シュガー・ラッシュ」を乗っ取ろうとしていたのです。その頃レースはヴァネロペと大王の一騎打ちになっていました。大王の体にノイズが走り、彼の正体が明らかになります。彼は消滅したと思われていたターボだったのです。ヴァネロペは不具合を利用した瞬間移動でピンチを脱し、ターボは待ち受けていたサイ・バグに食われてしまいます。ゲーム内はサイ・バグに埋め尽くされ、ラルフはヴァネロペを連れて逃げようとしますが彼女はゲームから出られません。サイ・バグが強い光に引き寄せられると知ったラルフは、火山を噴火させようと走ります。そこへサイ・バグと融合し最強のウィルスとなったターボが現れます。ラルフは消滅を覚悟して噴火を起こします。間一髪でカートに乗ったヴァネロペがラルフを救出。ターボはサイ・バグの本能に逆らえず、他のサイ・バグと一緒に噴火に巻き込まれて消滅しました。ヴァネロペがゴールラインを通過すると「シュガー・ラッシュ」の世界がリセットされゲームが正常に戻ります。そしてヴァネロペは豪華なドレスに包まれました。ヴァネロペは「シュガー・ラッシュ」の真の支配者たる王女だったのです。記憶が戻り謝る皆とヴァネロペは和解します。ゲームセンターの開店時間が迫り、ラルフとヴァネロペには別れの時が。その後、ラルフは「フィックス・イット・フェリックス」で相変わらず悪役を続けています。...

k182114

チサキは5歳のおんなのこ。今日は金曜日。毎週金曜日はお母さんに絵本を読んでもらう日。こころもからだも、いつのまにかぴょんぴょんしています。晩御飯も食べて、お風呂にも入って、歯磨きも済ませて、ふわふわの布団に包まれて寝る準備はカンペキ!
「今日は何を読もうか?」
お母さんがやさしい声で尋ねます。
「じゃあこれ!」
チサキはお気に入りの一冊、「魔法のおくすり」を選びました。
「ちぃちゃん、またそれ?よく飽きないわね。」
笑いながら本を開き、少し声を明るくして読み始めます。
「あるところに……。」
するとチサキは急にまぶたが重たくなってきて視界が暗くなりました。

「ん…?ここはどこ…?たしかお母さんに絵本を読んでもらっていたはずだけど…。」
気が付くとチサキは知らない場所にいました。
あたりを見渡すとお花畑でもくもくと何か探しているようなようすのウサギが一匹。
「何か探しているの?手伝おうか?」
チサキは近寄っておそるおそる話しかけてみました。
「実はお父さんが風邪をひいちゃったんだ。この森には何でも治る魔法の薬があるって聞いて探していたのさ。どうやらその薬からはとってもいい香りがするみたいなんだ。それを手掛かりにいっしょに探してくれると助かるよ。ありがとう。」
ふたりが手分けしてお花畑の中を探していると、なんだかおなかの減るようなほかほかした香りが鼻を通りました。
「きっとこの香りだよ!ついて行ってみよう!」
チサキとウサギは森の中をずんずん進んでいきました。香りはどんどん近づいてきます。すると一軒の小さなおうちに着きました。どうやら香りの出どころはこの中のようです。扉を開けると中ではリスの親子が鍋でぐつぐつ何かを煮ているよう…。
「なあんだ。カレーの香りだったのか。」
ふたりはがっかりしたような、うらやましいような…。
気を取り直して森の中を探していると、どこからかうっとりするようなふわふわした香りが流れてきました。
「今度こそ!薬の香りだよ!」
ふたりは期待に胸を膨らませながら香りのもとを追ってきました。徐々に見えてきたのはクマの兄弟がせっせと洗濯物を干していました。
「なああんだ。洗濯物の香りだっのか。」
ふたりはしょんぼりしたような、もっと嗅いでいたいような…。
その時!今まで嗅いだことのない香りがぷかぷか風に乗ってやってきました。
「間違いないよ!きっとこれだ!」
ふたりは自信をもって香りのもとをたどりました。ついた先にはきらきら光るきのこたちが仲良く並んでいました。
「ついに見つけたね。これでお父さんの風はばっちり治るよ。」
そういいながらチサキの体は引っ張られるような、宙に浮くような感じがしました。

「ちいちゃん。そろそろ起きなさい。」
お母さんのやさしい声がします。目を開けるとそこには見慣れた景色が広がっています。
「なあんだ。夢だったのね。」
チサキは布団からからだを半分出して周りに目を向けました。台所ではお母さんお手製のカレーがぐつぐつ煮込まれています。ベランダでは柔軟剤のいい香りのする洗濯物がぱたぱた干されています。
「ああ。いい香り。」
ふと横を見やるとちいちゃんのお気に入りのキノコのクッションがおいてあります。なんだか夢で見た魔法のキノコ薬みたい…。
「ウサギさんのお父さん、元気になったかなあ。」
そんなことを思いながらチサキは新聞を読むお父さんに「おはよう!」と抱き付きました。
(あれ、どこかで嗅いだことのある香り…。)

k182118

色鉛筆は12色です。
その子たちの人生の長さは色々です。
白色さんの人生はとっても長いです。
青色さん、ピンクさん、黄色さん、みどりさんは寿命が悲しいけどとっても短いです。
白色さんはみんながどんどん短くなっていくのを毎日じっと見ていて、悲しい思いになっていました。白色さんもほかの色たちみたいに、もっと人生を全うしたいなと思っていました。
色鉛筆の世界では寿命が短いことのほうが、素晴らしいと思われていたからです。
そんな色鉛筆さんたち12人を大切に使っている男の子、佐々木くんがいました。
佐々木くんは、12色の色鉛筆をお母さんに、買ってもらって、とても嬉しい気分でした。その色鉛筆を使ってたくさんの絵を描きました。
でも、ある日、ほかの色鉛筆12人家族と同じように、白色さんだけが使われていなくて、長いままなことに佐々木くんは気がつきました。白色さんが悲しい思いをしているだろうなと感じました。
でもまだ小学1年生の佐々木くんには、白色をどうやって使ってあげたらいいのか分かりません。
ほかの色鉛筆さんたちは短くなっていくばかりです。
夏休みのある日、家族と一緒に花火を見に行きました。とてもきれいだったので、忘れないように絵を描くことにしました。
空は真っ黒です。赤色、黄色、緑色、青色、ぴんく色…。いつものようにいろんな色鉛筆を使ってあげています。
とうとう花火の絵は完成しました。
でも何かもの足りないのです。
佐々木くんはずっとずっと考えました。
その時、ふと目に映ったのが長いままの白色さんです。空は真っ黒だから白色さんを使えるかもしれない!そう思いました。
花火の絵は今までで一番上手に描けました。
それからというものの、白色さんの魅力に気づいた佐々木くんは、ほかの色に追いつくくらい白色さんを使うようになりました。
そして白色さんはどの色よりも早くに人生を終え、大満足でした。

k182122

ある深い森のに年老いたくまさんが住んでいました。お嫁くまさんさんを早くに亡くしてから、何年もの間ひとりぼっちで暮らしています。料理も自分で作ります。机や椅子も自分で作ります。掃除も自分でします。ひとりでなんでも完璧にできるくまさんは、最近思うことがあります。「ひとりぼっちはさみしいなぁ。誰かと話したいなぁ。」くまさんの住んでいるところはとても深い森の奥なので、誰もくまさんの家には近づこうとしません。秋になり少しずつ寒くなってきて、ふと誰かとこたつに入ってお鍋を食べたいと思っていたのです。
ある秋の日、くまさんの住む森に3人の子どもがやってきました。子どもたちはきのこ狩りにやって来たのです。他の山はたくさんのきのこ狩りをする人たちで溢れていて、きのこはほとんど残っていなかったので、この森にやって来ました。秋の天気は変わりやすいもので、朝は秋晴れだったけれどお昼を過ぎると黒い雲が出てきました。そしてザーーッと雨が降り出しました。子どもたちは「どこかで雨宿りしよう!」と森の奥へ奥へと走りました。そしてくまさんの家を見つけたのです。子どもたちは「すみません!雨宿りさせてください!」と大きな声で言いました。
くまさんはとても久しぶりのお客様が来たので喜んで迎え入れました。「さあ入って入って!寒かっただろう。暖かい鍋を作ってあげよう。こたつに入ってみんなで食べよう!」子どもたちはくまさんが作った鍋をとても気に入り鍋いっぱいの野菜をペロリと平らげました。「くまさんはとても料理が上手なんだね!またくまさんの料理を食べたいな!」と子どもたちは言いました。くまさんはとても嬉しくなって「もちろんだ!いつでもここへおいで。おいしいご飯を用意して待ってるよ。」と言いました。それから何度も子どもたちはくまさんの家に通い、魚釣りをしたり工作をしたりしてとても仲良くなりました。くまさんはもうひとりぼっちではありません。次の春には、森の入り口からくまさんの家まで、子ども3人分の広さの道ができていました。

k182123

「学校なんてもう行かない!」ゆりちゃんは学校なんて、大きらいでした。だって、面白くもなんともないんですから。「国語も算数も、理科も社会もみんな、難しくて分からないからつまんないし。お友達だってやさしくないし、先生も、宿題ばっかりだすから大きらい」これがゆりちゃんの言い分でした。とうとうこの日は、朝お母さんに「学校よ、起きましょう。」と言われたときに「学校なんか行かない!」と言ってしまったのです。するとお母さんは困ったような表情を一しゅん見せてから「いい子のところにしかサンタさんは来ないらしいのよ。」と言いました。ゆりちゃんには、兄弟がおらずいつもさみしかったので、今年はサンタさんに子犬をお願いしていました。やっとさみしくないと思ったのにサンタさんが来ないのはとても困ります。

いい子でいるために、ゆりちゃんは学校へちゃんと行くことにしました。お母さんに「悪いことを言ってごめんなさい。」を言って、お母さんの朝ごはんづくりも手伝い、残さず食べました。元気に登校して、もっと、いい子になるために、大きらいなことにもちゃんと取り組みました。いつもはお絵かきしながら過ごしていた授業も、先生のお話をきちんと聞きました。すると、勉強がわかるようになると楽しくて、好きになりました。先生もほめてくれて、先生のことも大きらいじゃなくなりました。するとゆりちゃんは今度は人のために何かをしようと、困っているお友達にも「どうしたの?」と声をかけたり、やさしく接しました。すると、お友達もゆりちゃんにやさしくなりました。
クリスマスの日の朝、ゆりちゃんは、起きて、大きなあくびをしました。ぐーっと伸びをしようと思ったら何やらリビングがさわがしいことに気づきました。「わんわん!!」と聞こえます。リビングのドアを開けると、そこにはかわいい、子犬がいました!ゆりちゃんはとてもうれしくて顔いっぱいが笑顔になりました。子犬の名前は、何にしようかな、と考えながらクリスマスってなんていい日なんだろうと思いました。ゆりちゃんはクリスマスに、最高のパートナーになる子犬もらいました、、、もらったのは一匹の子犬だけど、ゆりちゃんがクリスマスに手に入れられたものはもっとありそうだね。

k182130

あるところに、キキという名の小さい女の子がいました。キキは虹を見るのがとても好きでした。ある日、お母さんに頼まれて森に出かけ、キノコ狩りをしていると、古びた本が落ちているのを見つけました。なんだろうとペラペラっとめくってみると、どうやら虹の作り方が書かれた本のようでした。キキは驚きながらも喜んで家に帰り、誰にも気づかれないようにこっそり作ってみました。
すると、キキの片手くらいの長さの美しい虹が出来上がりました。本をよく読んでみるとこの虹は魔法が使えるということです。しかし、これほどまで綺麗な色をした虹を間近で見たのは初めてなのでキキは嬉しくなり、このまま大切にしようと思いました。キキは虹をふわふわっと丸めてポケットに入れ、上機嫌で散歩に出かけました。誰かに自慢したい気持ちを抑えて、何度もポケットの中を覗きながら、自分だけの虹がある幸せを噛み締めていました。
キキはおばあちゃんの家に行くことにしました。おばあちゃんは目が悪く寝たきりでした。キキはいつものようにスープを作ってあげました。そしてもしかしたら、と思い、虹を少しちぎってスープに入れ、ふたりで飲みました。すると、おばあちゃんの視力が良くなり、キキは身長が5センチも伸びました。おばあちゃんとキキはとても喜びました。おばあちゃん家から帰る途中、小さな男の子が泣いているのを見つけました。手足にひどい怪我をしていました。キキは、少し躊躇いましたが、ほんの少しだけ虹を指先でちぎり、それをポケットにいれ、残りの虹全部を使って怪我しているところに被せてあげました。すると、怪我は治り、魔法のような出来事に男の子はとても喜びました。キキも嬉しくなりました。家に帰り、庭のベンチでほんっの少しの虹と本を眺めていると、虹はどんどん大きくなり、キキの手から溢れ、空に浮かびました。一緒に持っていた本はいつの間にか消えていました。キキが寂しそうにしていると、周りでは、虹だ!と空を見上げて笑っているみんなの顔が見えます。キキは嬉しくなりました。やっぱりこうやってみんなで見る虹が一番だなと思いました。助けた男の子は元気になったし、おばあちゃんの目も良くなったし、キキの身長も伸びました、それに、自分のポケットに確かに虹が入っていたんだという満足感がキキにはありました。キキは空に大きく広がる虹を見てにっこり笑いました。

k182132

風邪
かぜをひいた。ねつが38度6分もあると母ちゃんが言っていた。家にはおれ以外誰もいない。母ちゃんは仕事、りなは保育園に行ってしまった。でもおれはもう1年生だから、さみしくなんかない。ひとりでこうやって寝ていてもへいきだ。よゆう、よゆう。だっておれはもう1年生だから。…でも、今ごろこうたやそういちはなにしてるかな。今日の給食、なんだったっけ…。いろんなことを一生懸命ぐるぐると考えているうちに、おれはいつのまにかねむってしまっていた。

あれ、中村先生、いつのまにうちに来たの。
「はやとは本当にがんばり屋さんだなあ。先生、いつも見てるよ。」
えへへ、そうでしょう。おれおにいちゃんだし、もう1年生だから。
「でもな、がんばりすぎてつかれたときは、まわりにあまえてもいいんだよ。」
えっ、それってどういうこと?
「はやとはがんばりすぎるから、先生心配だなあ。」

「はやと、具合はどう?」
「おにいちゃん、おねつだいじょうぶ?」
目が覚めたら母ちゃんとりながかえってきていた。なんだ、ねていたら1日ってすぐだなあ。ゆっくりと起きあがるとまだ頭がずきずきして、それからのどがからからなことに気づいた。母ちゃんがすりおろしたりんごを持ってキッチンから出てきた。
 「ごめんね、ねつがあるのにひとりにして。さみしかったよね。」
 大丈夫だよ、だっておれもう1年生だから。そう答えようかとおもったけど、今日ぐらいはいいよな、と思って、おれはちいさくうなずいた。母ちゃんはおれをぎゅっと抱きしめてくれた。

k182133

あるところに、太陽くんと雨くんがいました。ふたりはいつも空の上からみんなを眺めていました。太陽くんは天気を晴れ、雨くんは天気を雨にする力を持っていました。太陽くんはいつもみんなを眺めながら、にこにこうれしそうです。なぜなら、みんなが笑っているからです。子どもたちは外で遊べるし、きれいな青色の空をみんなが見上げてくれるからです。それに比べて、雨くんはいつも悲しそうです。「雨くん、いつも元気がないね、どうしたの?」太陽くんは聞きました。「だって、ぼくのせいでみんな悲しそうなんだもん。」みんなを笑顔にする太陽くんのことが、雨くんはうらやましかったのです。

雨くんはすっかり落ち込んでしまいました。「もうぼくなんていらないんだ。」雨くんの元気がなくなったのでしばらく晴れの日が続きました。そんなある日、太陽くんが大急ぎで雨くんのところにやってきました。「どうしたの?」雨くんは聞きました。「大変だ!」太陽くんは言いました。「毎日晴れて困っている人がいるんだ!」雨くんは最初意味が分かりませんでした。「いいから、見てみなよ!」太陽くんに引っ張られて下をのぞいてみると、麦わらぼうしをかぶったおじいちゃんが悲しそうな顔で空を見上げているのです。「毎日晴れると、野菜を育てるのに必要な水分が足りないんだ。」おじいちゃんはつぶやきました。そのおじいちゃんは野菜を育てている農家の人だったのです。「ぼくの出番だ!」雨くんはうれしくなりました。

それ以来、雨くんはながめることが楽しみになりました。野菜の育っていく様子を見ることができるからです。野菜が育つと、おじいちゃんもうれしそうです。雨くんはさらに気が付きました。「あ!あそこにも笑顔が!」そこにはかたつむりやかえるたち。「ぼくたち、雨がふってうれしいんだ!雨くんありがとう!」かたつむりたちは元気に歌い、かえるたちはとびはねています。「ぼくも笑顔にすることができるんだ。」今日も太陽くんと雨くんは空の上から仲良くみんなのようすをながめています。

k182134

犬のポンタ君は四人家族です。優しいお母さんとお父さんと、りょうすけ君と暮らしています。りょうすけ君は、ポンタ君のお兄ちゃんのような存在です。二人でボール遊びをしたり、散歩にも毎日連れて行ってくれます。ポンタ君はりょうすけ君のことが大好きで、りょうすけ君もポンタ君のことが大好きでした。二人はお母さんのために洗濯物や、掃除のお手伝いをします。それはお母さんのお腹の中に、赤ちゃんがいるからです。お父さんが嬉しそうに「二人もお兄ちゃんになるからお手伝い頑張れよ」と言いっていました。

ある日の朝、お母さんが「赤ちゃんが生まれそう」といい、お父さんとりょうすけ君と三人で病院に行きました。ポンタ君も病院んについて行きたいと思いましたが、だれも連れて行ってくれませんでした。その日はとても長く感じ、ポンタ君は心配しながら眠ることもできず一人で待っていました。ガチャ、っとドアが開き、家族が返ってきました。お母さんの手の中にはとても小さい赤ちゃんのみはるが眠っていました。ポンタ君は精一杯みんなに駆け寄りましたが、だれも振り返ってくれません。この時ポンタ君は突然やってきた暗闇に一人おびえていたのです。みんなは赤ちゃんに夢中、僕の事を忘れているんじゃないかと思いました。この前の幸せを取り戻したい、一緒に楽しい時間を過ごしたい、その一心でポンタ君は今自分が出来ることを考えました。ふと思い出した言葉がありました。「二人もお兄ちゃんになるからお手伝い頑張れよ」という笑顔いっぱいの父の言葉でした。ポンタ君はこの言葉を信じ、精一杯にお手伝いを頑張りました。

あれから数か月後、ポンタ君の家からは、暖かくて楽しそうな笑い声が聞こえてきます。そこにはみんなの笑顔がありました。みはるの生まれる前よりずっと楽しそうな笑顔です。そこにはポンタ君も含めた家族5人が幸せそうに、あたたかな家庭で暮らしているのです。「これから先もみんなずっと一緒だよ。」ポンタ君もりょうすけ君もみんな心の中でこう思いました。前は、ポンタ君とりょうすけ君の二人の散歩の時間でしたが、今は家族5人の時間です。よちよち歩きのみはるちゃんもポンタ君に手を添え歩きます。今日もポンタ君のお家からは5人の楽しそうな話声が聞こえてきます。

k182136

ある町に、お兄ちゃんのレオン、弟のヒロという名前の双子の兄弟がいました。二人はとっても仲良し。お出かけに、ご飯に、遊びに、お風呂に、寝るのも、何をするのもいつも一緒でした。
二人のお家では夜寝る前に、お母さんが絵本を読んでくれるのですが、今夜の絵本はいつもの絵本とはなんだか違うのです。絵本の中も表紙も白色でいっぱいなのです。レオンとヒロは、絵本が白いことがとってもおかしくって、不思議でした。だから、二人はお母さんに尋ねます。
「お母さん、これはなぁに。お空から白いものが落ちているよ。」
「こんなに白い所なんてないよ。」
すると、お母さんは答えました。
「これは雪というんだよ。冷たいけど、とっても綺麗なんだって。」
二人の住む町は雪が降らない所だったので、雪を知らなかったのです。
その日の夜は、二人とも、雪がどんなものなのか気になって、眠れなかったので、雪のことを、二人でたくさん話し合いました。
「おいしいかな。」「甘いかな。」「見てみたいな。」「本当に白色なのかな。」「重たいかな。」「雪に当たったらケガしちゃうのかな。」「この町にも雪がやってこないかな。」
話しているうちに、だんだん、二人にとって雪は憧れで、特別なものになりました。

ある日、弟のヒロは、レオンに借りていたおもちゃを壊してしまいました。そのおもちゃは、お誕生日にお父さんにもらった、とても大切にしていたものだったのです。ヒロはレオンに壊してしまってごめんねと、言ったけれど、レオンは大切なおもちゃが壊れてしまったことが嫌で悲しくて、「ヒロなんてもう知らない」と言って泣き続けました。
ヒロは困った、とっても悪いことをしてしまった、どうしようと、うんと考えました。そして、二人の思い出しました。
「そうだ、雪だ!僕たちの憧れで、特別な、雪をプレゼントしてもう一度謝ろう。そうしたら、仲直りできるかもしれない!」そう思ったヒロは急いで準備をして、雪が降るという噂の町まで出かけました。
テクテク
ガタンゴトン
プップー
ヒロは町を歩いているおじさんに尋ねます。
「雪はいつ見れるの?」
おじさんは答えます。
「今夜あたりにふるだろうね。今夜は寒いから。」
そう聞いたヒロは小さくガッツポーズをしました。そして、おじさんにお礼を言って、少し高い丘に登って雪が降るのを待ちました。
その日の夜のことです。ふわり、ふわり白い冷たいものが空から落ちてきました。ヒロは飛び跳ねました。「これが雪だ!」そしてヒロは、できるだけたくさんの雪を瓶の中入れて、レオンが待っている家へと走り出しました。
タッ、タッ、タッ
ガチャ
「ただいまー。」
家に帰るとレオンが泣きながら駆け寄ってきました。ヒロもレオンの顔を見るとホッとしてわんわんと泣いてしまいました。二人はぎゅっと抱きしめ合いました。
ヒロは言いました。「レオン、おもちゃを壊してしまって本当にごめんね。」
レオンは言いました。「いいよ。僕もひどいこと言ってごめんね。」
ヒロはカバンから雪を入れた瓶を取り出して、レオンに渡していいました。
「これ、中に雪が入ってるんだ。あげる。レオンに笑って欲しくてとって来たんだ。」
レオンはドキドキしながら瓶の中をのぞきました。けれど、瓶の中の雪は溶けてしまって、透明のお水になっていました。ヒロは真っ白な雪をプレゼントしたかったのに、できなくて悲しくなりました。すると、しばらくしてレオンは言いました。
「ありがとう。これは僕の宝物。今度は二人で一緒に見に行こう。そしたら、きっととけないよ!二人が一緒なら、なんでもへっちゃらさ。」
二人はまるで、雪のようにきらきらと輝く笑顔で笑い合いました。

k182137

トナカイが住む小さな森に、赤い鼻のトナカイがいました。他のトナカイの鼻は、みんな茶色です。なので、赤い鼻のトナカイはみんなから「だるま」と呼ばれていました。だるまが買い物に出かけると、いつも町のみんなに「だるまトナカイ」といって笑い者にされてしまいます。お花見に行っても、映画に行っても、公園に遊びに行っても、いつでもどこでも笑い者です。だるまはいつも泣いていました。ある日、みんなでかくれんぼをすることになりました。しかし、だるまだけは仲間に入れてもらえません。
だるま「どうして仲間に入れてくれないの?」
みんな「だるまのお鼻は真っ赤っか。すぐに見つけちゃって楽しくないもん。」
そしてだるまは公園を追い出されてしまいます。
だるま「僕もみんなと同じお鼻がよかったなあ、、、」
帰り道、だるまは一人でしくしくと泣いていました。すると、困った顔のサンタさんに出会いました。そのサンタさんは、大切なプレゼントをトナカイの森に落としてしまったのです。サンタさんは今日の夜のうちに世界中の子どもたちにプレゼントを届けなければなりません。ですが、辺りはもう真っ暗です。するとサンタさんは言いました。
サンタさん「暗い森の中では、あなたのピカピカのお鼻が役に立ちます。お手伝いしてください。」
だるま「笑い者のぼくでよければお手伝いしましょう。」
そして二人で協力して森の中を探し回り、ついにプレゼントを見つけることができました。
サンタさん「暗い夜道はピカピカのあなたのお鼻が役に立ちます。一緒に世界中の子どもたちにプレゼントを届けましょう。」
いつも泣いていただるまは、今宵こそはと張り切りました。
たくさんの子どもたちに応れ然とを届け、そして無事に全部届け終えました。
サンタさん「だるまくん、今日はどうもありがとう。素敵なお鼻のおかげで子どもたちに笑顔を届けることができました。」
いつも笑いものにされてきた真っ赤なお鼻が、初めて褒められました。だるまはうれしくて仕方がありません。
だるま「僕のお鼻はみんなを笑顔にできるすごいお鼻なんだ!」
いつも泣いていただるまは、その日から泣かなくなりました。そして、サンタさんのお仕事の手助けをしたという噂はすぐに広まり、だるまはみんなの人気者になりました。トナカイ委の住む小さな森にはもう、だるまを笑いものにするものはいません。だるまはいつまで笑顔で暮らしましたとさ。めでたしめでたし。

k182138

ある街に8人のレンジャーがいました。8人のカラーは赤、黄、緑、青、茶、紫、黒、オレンジの8色でした。この8人はとても仲が良く、街の平和を守るため毎日パトロールをしたり困っている人がいたら率先して手助けしたりしていました。そんなある日、茶、紫、黒、オレンジの4人がパトロールをしている時にこんな声を聞きました。「わたしはレッドレンジャーが好き」「私はイエローレンジャー!」「私はグリーンレンジャー!」「私はブルーレンジャーかなぁ」『8人の中でカッコイイのはあの4人だよね他の4人はあんまり目立たないし影うすいよね?』これを聞いていた茶、紫、黒、オレンジの4人はとても傷つきました。
次の日、茶、紫、黒、オレンジの4人は赤、黄、緑、青の4人よりも早くレンジャー事務所に行き、それぞれ赤、黄、緑、青のレンジャースーツを奪いそれに着替えました。あとから来た赤、黄、緑、青の4人はびっくり。「おい、なんで俺たちのスーツを取るんだ」『だって俺たちだってもっと目立った色のスーツを着てカッコイイって言われたい!』茶、紫、黒、オレンジの4人は赤、黄、緑、青のスーツを着たまま譲らず、その日はレンジャー活動が出来ませんでした。
そんな日が何日か続いたある日、隣町からとても凶暴な悪者がやって来ました。8人のレンジャーは街の平和を守るため戦わなければなりません。でもそんなときでも茶、紫、黒、オレンジの4人は赤、黄、緑、青のスーツを奪って脱ごうとはしません。仕方が無いので赤、黄、緑、青の4人は残っている茶、紫、黒、オレンジのスーツを着て戦いに行きました。しかし、いつもと違うレンジャースーツを着ているせいか8人はまったく力が出ません。このままじゃやばいと思った茶、紫、黒、オレンジの4人は『ごめん!俺たちが悪かった!一旦スーツを着替えよう!』と言いました。そして8人は元の自分の色のスーツに着替え再び戦いに挑みました。すると8人はとてつもない力を発揮し、無事悪者を倒すことが出来ました。戦いのあと、茶、紫、黒、オレンジの4人は『与えられた色で頑張ることが大事なんだ。スーツを奪ったりしてごめんね。』と赤、黄、緑、青の4人に謝りました。そしてそこからもう二度とスーツの色でケンカすることは無くなりました。

k182139

今日もこうたは家いっぱいに広がるたきたてご飯のにおいに囲まれながら、「いってきます。」と台所に立っているおかあさんに声をかけた。「いってらっしゃい。ちゃんと信号守るのよ。」
 こうたのクラスの朝礼はほかのどのクラスよりも早く終わる。なぜならみんな特に問題を起こさないからだ。こうたの担任の田中先生も「このクラスは優秀だ。」といつもうれしそうだった。だが最近はそういうわけではなくなった。引っ越してきたひとしのせいだ。ひとしはほとんど毎日学校に遅刻する。「ひとし、なんかいいったらわかるんや。ちゃんと時間を守って行動せんとあかんやろ。今日も放課後残って掃除や。」田中先生は怒ると関西弁になる。こうたはひとしが引っ越してくる前の静かなクラスが好きだった。朝から先生のどなり声はききたくないし、なぜ毎日ひとしが遅刻するのか分からなかった。こうたはひとしを少し心の中で軽蔑していた。
  
  次の日こうたが目を覚ました時、時計の針は8時をさしていた。前日お母さんに「明日おかあさん、隣町の集会のごはん、朝早くから配達しなきゃいけないから、自分でちゃんと起きるのよ。」といわれていたが、うっかり目覚ましをセットするのを忘れてしまったのだ。
こうたは案の定学校に遅刻してしまった。こうたが教室に入った数分後にひとしが教室に入ってきた。「今日はひとしだけじゃなくて、こうたも遅刻か。最近このクラスはどうなってるんや。今日は二人で居残りの掃除や。」田中先生はひときわ大きい声で怒鳴った。
 放課後、ひとしの掃除はおどろくほどテキパキしていた。こうたが「毎日掃除していて、いやじゃないの。」ときくと、ひとしは「もう慣れちゃった。今日は一人じゃないからいつもよりも早く終わるよ。」といった。帰り道、おたがいの家が意外と近いことがわかった。「今から買い物行かなきゃ。」とひとしが言うので「えらいね。おつかい?」とこうたがきくと「ちがうよ。買ってきたもので料理して、弟の面倒も見なきゃいけないんだ。」と答えた。「毎日買い物行って、弟の世話もしてるの?」とこうたがきくと「あー、うん。ぼくのお父さんとお母さん、二人とも夜おそくまで働いてて、帰ってくるのが遅いんだ。だからぼくが面倒みてるの。」ひとしはどこかさみしそうに答えた。こうたはひとしのことをもっと知りたくなり、質問を続けた。「じゃあ、毎日遅刻してくるのも、家事が大変だから?」「うん。そうそう。」。まるで、他人事のようだった。

 こうたはずっとなやんでいた。遅刻は良くない、だがひとしのことをほっておくこともできない。ひとしのために自分ができることはないか。すこしでもひとしの力になれることはないだろうか。なやみになやんだが、まったく解決策は思いつかない。思い切ってお母さんに相談した。「うちでいっしょに朝ご飯食べて、学校にいったらどうかな。いいじゃないの、にぎやかで」
こうたは翌朝思い切ってひとしの家を訪ねた。「おはよう、ひとし。学校の用意した?」「あ、うんしたけど」「よし、弟くんもつれて僕んち行こう」「は?何言ってるの?」「いいから、はやく」それはそれは気持ちのいい朝だった。こうたとひとしとひとしの弟は急いで道を下って行く。「ほら炊き立てご飯のにおいがしてきたよ。」

k182140

トンボ花ちゃんとセミ夏ちゃんはとてもいい友だちです。
セミ夏ちゃんはいつも、木に停まって、鳴き続けています。「ミンミン〜〜〜ミンミン〜〜〜」それにこの鳴き声はとても誇りだと思っています。夏ちゃんがお腹が空いたときに、木の汁を吸います。それは一日中怠けるので、脂肪がどんどん増えてきました。
トンボ花ちゃんはいつも自由に飛んでいます。それはしばらくの間に、害虫を捕まえて食べたりします。それはとても幸せだと思っています。トンボ花ちゃんは勤労で、スポーツが好きなので、足が長くて、細いです。
セミ夏ちゃんはトンボ花ちゃんに「花ちゃん、あなたが食料を探すために、一日中飛んでゆき、わたしのことを参照して下さい。私みたい疲れを感じることはありません。木が毎日汁を作っているからです。いつでも、どこでも、食べることに困りませんよ。さぁ〜一緒に食べませんか」と言いました。
トンボ花ちゃんは「そんなことができませんよ。木は私たちの環境を美しくしてくれているのに、傷をつけたりすることはできません。あなたはあっち、こっち、木の上に穴を掘っています。醜いですよ。わたしは一日中飛んでいで、害虫を探しながら、人類を助けています。わたしにとっては一番の幸せです。そして、あなたみたい、毎日木に停まって、うごかなく、木が死んでしまうかもしれませんよ。いいことがありません。さぁ〜わたしと一緒に害虫を探しに行きませんか。と言いました。
セミ夏ちゃんは軽蔑な顔をして「そんなことが絶対ありません。世の中にあなたみたいな馬鹿がいますね。わたしは虫なんで、絶対たべませんから、まずいです。」と言ってから、鳴き続けています。「ミンミン〜〜〜ミンミン〜〜〜」トンボ花ちゃんも翼を振って、害虫を探しに飛んで行きました。
何日か後に、人類は木を立派に育つために全ての木を農薬をふりかけてました。セミ夏ちゃんは農薬をかけている木の汁を食べ続けると、死んでしまいました。
一方、トンボ花ちゃんはいつものように、自由に空を飛んでゆきます。

k182141

@ある動物園に、好奇心旺盛な子猿がいました。
子猿はとっても芸が上手でした。毎日同じ時間になれば、人間の前でお辞儀して、ボールに乗って片足立ちして、面白おかしく笑われます。そうすれば、お菓子がもらえました。
「はぁ....。」大きなため息が猿の檻の中に響きます。
「どうしたんだい?」
年取った老猿が小猿に近づいてきました。
「毎日同じことをする生活には飽き飽きだ。」小猿は言います。
「君は外の世界を知っているのかい。」
「知らないよ、1度でいいから外に出たいなぁ。」
「俺はもう20年、爺さんになったが、外を知らない。もう外に出る気力もないが、外の世界を君の目で見て教えてくれないかい。ある噂を聞いたんだ、外には青くて広くて、ユラユラ揺れる、大きな大きな水たまりがあるとな。」
A小猿はなんだかワクワクしていました。右も左も分かりませんし、どうやって外に行けばいいのかなんて小猿が知っているはずがありませんでした。しかし、小猿はとっても楽しみでした。その日の夜、小猿はなかなか眠れませんでした。目をつむっていると「ぼうや。」耳元で声がします。見上げると遠い記憶のどこか懐かしい香りのする、優しげな猿がいるではありませんか。「母さん!どうしてここに!?どこに行ってたのさ、ボクをおいて。」
「ちょっとね、旅に出ていたのよ。外の世界よりもっと遠いところに。」母猿は続けて 、「ぼうや、外に行くには覚悟が必要だよ、たくさんの危険があるからね。」
「分かってる。でもどうやって行けばいいんだろう」
........朝日がさわやかに差し込み、小猿を照らします。ぱっと目が覚めました。「不思議な夢だなぁ。」ひらひらと葉っぱが頭の上に降ってきて、ふと見てみると、地図のようなものが、書いてあるではありませんか。
「これだ!!!」
小猿は周りの猿達がわーわーと騒ぐのをよそに、走り出しました。柵の隙間を、お客さんやえさやりのおじさんの見ていないところを、猿は上手くすり抜け、、、。ついに、出口にたどり着きました。
「ついに僕は外の世界に出るんだ。」
小猿はついに外の世界に1歩踏み出しました。
B人がいきかい、車がスピードを出しています。
ぴよぴよと鳥の歌が聞こえました。
「おーい、鳥さーん、僕は大きな水たまりを探してるんだ。ユラユラ揺れる青くて広い水たまりさ!」
鳥は大きな声で笑って、「世間知らずの坊やや。それはきっと海だよ。海はここからずっとずっと南に進めば見えてくるよ、あの山を超えたところさ。」
小猿は言われた通り南に南に進みました。山の中では、初めて見るたくさんの植物に目を輝かせて、外の世界の美しさをきっと、おじさんに教えてあげよう、と思うのでした。
日が沈む頃、キラキラと光るものが見えました。青くて赤くて、ゆらゆらと揺れる大きな大きな大きな大きな水たまりでした。
小猿は美しいその景色から決して目が離せませんでした。夢を見ているようでした。いつまでもいつまでもこの景色を見たいと思いました。
突然、「すごいや、父さん!こんなにきれいなものがあるんだ!」と声が聞こえました。人間の子のようです。
その光をうけて火照る笑顔は、海以上に輝いているようで、小猿は思わずじっと見つめました。
でも実は、小猿はその笑顔を知っていました。人の笑顔をたくさん見たことがありました。
それに気づいた小猿は、ハッとして、一回りも二回りも伸びて大きくなった影に向かって走り出しました。
「外の世界には、大きな大きな水たまりがあってね!ほんっとうにきれいだったんだ!でも、もっときれいなものに出会ったよ。それは、僕らも作ることができるって、教えてもらったんだ!」
次の日のショー。小猿の瞳はいつもよりもキラキラと光っていました。

k182146

ある日、ちからくんは外へ散歩をしに出かけました。ちからくんは散歩の最中に少し不気味なお店を発見しました。ちからくんは好奇心からそのお店の中に入りました。お店の中に入ると、奇妙な薬のようなものがたくさん置いてありました。そして、さらに奥へと足を進めると、そこにはシワだらけのおばあちゃんが座っていました。ちからくんはそのおばあちゃんに尋ねました。「このお店の中で一番おすすめの商品はなんだい。」おばあちゃんは答えました。「整形油がおすすめだよ。この整形油を身体に塗ると塗った部分の身体を自由に伸ばしたり縮めたりすることができるんだよ。」ちからくんは身長にコンプレックスがあったので、すぐにこの整形油を購入しました。「おばあちゃんありがとう。」ちからくんはそう言って店を出ました。ちからくんが店を出てすぐ、おばあちゃんは一人つぶやきました。「使い方には気をつけるんだよ。」
ちからくんは家に着くとすぐに整形油を使ってみました。「まずは足を伸ばしたいなあ。」そう言って足に整形油を塗り込みました。すると翌日0.5センチメートル足が伸びていました。ちからくんはとても喜び、嬉しい気持ちになりました。それからというもの、ちからくんは来る日も来る日整形油を使い、身長を伸ばし続けました。そして、一ヶ月後には15センチメートル近くも身長が伸びていました。ある日、ちからくんは毎日整形油を塗ることが面倒になってしまいました。そこで、ちからくんは考えました。「整形油でお風呂を作ってそれに浸かれば一気に伸びるかもしれない。」ちからくんはすぐに整形油でお風呂を作り、浸かりました。整形油で作ったお風呂はとても気持ちがよかったので、ちからくんはお風呂場で寝落ちしてしまいました。
翌日、ちからくんはお風呂場で目を覚ましました。しかし、おかしなことに体に力が全く入りませんでした。「おかしいなあ、何でだろう。」そんなことを考えながらふと自分の身体に目をやるとびっくり。身体が跡形も無くなっていました。ちからくんは泣き叫び助けを求めましたが、誰も助けようがありません。ちからくんはその姿のまま一生を終えました。自分の嫌いなところに目を向けるのではなく、好きなところに目を向けていきたいものですね。

k182149

ヤンキー高校の教師として働いているA先生は気がちいさく、その高校を牛耳っているボス生徒に注意することはできない。ビビっているからだ。夜の街もビビりながら歩く。なるべく怖い人に目をつけられないように生きている。しかし、ボス生徒を黙らせるということに憧れを持っている部分もある。ボス生徒を召使いのように使えたらなぁ、従わせられたらなぁと思うこともある。しかしA先生にそんなことができるはずがない。肩身の狭い思いをしながら教師生活を送っていた。
夜の街を歩いているとき怖い人と肩をぶつけた。怖い人は慰謝料を払えとA先生を追いかけた。A先生は必死ににげる。ドカンっと誰かにぶつかり押し倒してしまった。大きな大きな怖い人を押し倒していた。急いで逃げようとした矢先、その先で看板が落ちてきた。押し倒してしまった怖い人Bはもう少しで死ぬところをA先生に助けてもらった、命の恩人だと、A先生に恩返しをしたいと言った。A先生は高校の生徒指導として元ヤクザのBを雇うことにした。Bは生徒指導ということをいいことに、ヤンキーの生徒達を力尽くで抑えたり、丸刈りにしたりした。生徒達はそんなBを怖がり、理不尽と感じていたが、それを利用して気の小さかったA先生の態度はどんどん豹変していった。A先生はバックに怖い人をつけることで自分が強くなった気になっていた。
そのことを気に入らないと思っていた、その高校でトップをはっている、金髪パーマの生徒Cとツンツン頭のDはどうやってBを倒すか考えていた。考えた結果、ヤシの実に胡椒を入れて、Bに投げつけ、目を痛めている間にやっつけるという姑息な手段をとった。しかしその作戦は成功し見事、生徒指導という名のもと暴力で生徒達を押さえつけていたBを倒し、押さえつけることができた。と同時に、自分が強くなったと錯覚していたA先生も目を覚まし、本来の気の小さな性格に戻った。

k182501

あるところに結婚もせず、働きもしない男の人がいた。男は楽してお金がほしいと思っていて、パチンコをしては負けてばかりだった。毎日外に出て働いている人を見ては「時間の無駄だなあ。」と見下していた。両親はそんな男に呆れていた。ある日男は甥に動物園に連れて行ってほしいと言われ、しぶしぶ行くことにした。ピースサインをする甥の写真を撮りながら「こんなことしたくないんだけどな。」思っていると、「おじさん、見て!フラミンゴ!」と甥が走りながら叫ぶ。走って追いつくとそこはフラミンゴのコーナーだった。
 フラミンゴは片足立ちをしたピンクの鳥で、とても人気だ。「立っているだけでちやほやされるなんて、楽なことしてていいよなあ。」そう言った時だった。突然パッと光って、男は気を失った。目を覚ますと、さっきと景色が違う、前を見ると家族がたくさんこちらを見ている。そして周りにはフラミンゴがいる。足元を見ると片足しか見えない。男は自分がフラミンゴになってしまったと気付いた。「どういうことだ。」そう考えると思わずバランスを崩して倒れてしまった。「おい!何倒れている!しっかりしろ!」周りのフラミンゴに怒られる。片足立ちはとても難しい。「ずっとこのままなのか?夢ならどんなにいいか、、。」「わかったかい?フラミンゴも楽じゃないって。」柵の向こうにいる本来の自分が言う。「これは、お前と俺が入れ替わったのか!?」「そうだよ。世の中楽なことはないんだ。頑張ればその分の幸せがある。君もこれからは頑張るんだ。」
また目を覚ますと、近くのベンチに座っていた。体は元に戻っていた。「おじさん、どうしたの?ずっと寝て。」なんだ、俺は寝ていたのか。しかし、立ち上がるとふらふらしてしまった。(さっきのは夢じゃない!片足立ちで疲れた感覚が残っている!)男はフラミンゴに言われたことを思い出した。(これからは楽ばかりじゃなく、まじめに働くか。)その時、フラミンゴが少し笑った気がした。男はその日を境に真面目に働くことに決めた。それから結婚することができ、幸せに暮らした。しかし、フラミンゴと入れ替わったという話は生涯誰にも話さなかった。

k182505

(111 語)
数本と白井ボクサー
 東京都足立区北千住にボクシングジム「数本ジム」がありました。このジムは長い間、有名なプロの選手を輩出することもできず、会員も減り閉鎖の危機に直面していました。
「長い間続いたこのジムも、とうとう終わりか・・・。」
ある日、数本会長がいつものようにジムへ行くと、見慣れない人がいました。新しくこのジムへ入ってきた白井でした。彼はボクシングは未経験でしたが誰よりも意欲的に練習に取り組み、プロデビュー戦も1ラウンドKOで勝利をおさめます。会長は、白井は逸材のボクサーだと確信します。
白井はその後も順調に勝ち進んでいき、ついに日本王座への挑戦権が与えられました。白井は、日本王座を勝ち取って世界を目指そう、そして世界王者に・・・そうすれば自分をここまで育ててくれた会長に恩返しができる。そう思って試合に臨みました。しかしそんな白井を好ましく思わない人もいました。日本ボクシング連盟の会長でもある山根会長です。
「あんなジムから出てきたしょぼいボクサーに、わしの田中が負けてたまるかっ!
もしもの時は・・・わかってるよな、審判。」

 試合は白井が優勢でしたが決着がつかず、判定に持ち越されました。結果は白井が優勢だったのにも関わらず田中の勝利になりました。数本会長は必死に抗議しましたが受け付けられず、日本王者田中の防衛成功という形で試合は終わってしまったのです。
 白井は何が起こったのかわからず、ただただ呆然としているだけでした。

 試合後の休暇中、思わぬニュースが白井のもとへ飛び込んできました。
―――――――――「数本ジム」閉鎖――――――――
新聞によると山根会長が関与しているとの記述もありました。数本会長に連絡しても返事がありません。白井は真相を確かめるべく、山根ボクシングジムへと向かいます。

「白井さんじゃないか、どうしたのだね。」
山根会長は机に脚をかけ、葉巻を吸いながらそう尋ねました。
「ジムを閉鎖させたのはあなたなのですか?」
白井は怒りに声を震わせながら聞きました。
「わしじゃあないよ。数本会長が自ら閉鎖したんだよ。」
白井は首をかしげました。
「君はニュースをみとらんのか!内部から告発があったんや!数本会長の暴力行為などに対してな!わしはその訴えの手助けしてあげただけのことや!!」
嘘だ・・・。数本会長はそんなこと一度もしていない、するはずもない・・・。
実際、白井は試合に負けたショックから立ち直れず、数日間ニュースを見ていませんでした。暴力行為の疑いで数本会長が訴えられているなんて知る余地もなかったのです。
「それは間違いだ!数本会長がそんなことするはずがないっ!!」
白井は机をたたきながらそう主張しました。
「うるさいねぇ!わしだってあんたらのためにしてやったんや!!!」
山根会長は声を荒げました。
「まあええわ・・・。」
山根会長は葉巻をプハーっと吹かすと白井をじっと見て言いました。
「ほんまはな、わしがデマ流したったんや。あのジムつぶすためにな。」
一度方向を見失いかけた怒りが、もう一度ふつふつと湧き上がってくるのを感じます。今度はしっかりと方向を見据えて。
「ただ単に最近あんたが出てきて、あのジムちょっと目障りやな思たのもあるけどな、ジムつぶせばそのジムの生徒ら困るやろ、それをわしが引き受けたんねん。んで訴えの手助けしてるやろ、もうイメージアップしまくりやで、ほんま。」
山根会長は満面の笑みで続けます。
「今更誰に言うても無駄やで白井さん。だからこうして手の内明かして説明してあげたんやけどな。まぁ、このまま目障りなあんたを、帰す気もないけどな・・・。」
白井の背後には何人もの会長の護衛がにじり寄ってきていました。
「今度は判定負けとかそんな甘いもんちゃうで・・・ここはリング外や・・・。」
白井は上着を脱いでファイティングポーズをとりました。
「オレはここから絶対にここから無事に帰る!数本会長やほかの仲間の為にっ!!」
その後白井の姿を見たものはいません。

山根会長に対する告発があったのはこの事件があった数年後のことでした。山根会長のパワハラ、不正な判定結果などに対し、内部から告発があったのです。アマチュアボクシングを統括する日本ボクシング連盟の会長も辞任を余儀なくされたのでした。
自分が他人にしたことは、まわりまわって返ってくる。そのことを山根会長は身に染みて感じたのでした。


※この物語はフィクションで...

k182508

クマのブーさんは、いつも森の中を散歩します。最近なんかは人間が山道を舗装しているので、歩きやすい。でも、親戚のクマのビューさんは人間は恐ろしい生き物だからあまり人間のつくった道を歩かないようにとブーさんにいつも言っていました。仲間のクマもそれを信じ、言いつけを守っていました。それでも、人間の舗装した山道は走り心地が良い。ブーさんは毎日のように人間のつくった山道を駆け抜けていました。ブーさんはこれまで一度も人間と遭遇したことはなかったから、ビューさんの言いつけは守らなくても良いと思っていました。
ある日、ブーさんはいつものようにいつもの山道を歩いていたら、曲がり角の方に動く影を見つけました。どんどんその影は近づいてきます。ブーさんも興味を持ってその影の方へ近づきました。ブーさんがパッと顔をあげると、そこには小さな女の子がいました。ブーさんはそれが人間であると気づき、ビューさんの言っていたことを思い出すと、怖くなって一目散にスタコラサッサと逃げました。逃げて逃げてとうとう森の一番高いところに着きました。そして、もう大丈夫だと安心し、ホッと息をつきました。ブーさんはビューさんの言いつけを守るべきだったと後悔しました。
ブーさんは息を整えて、山の入り口を見下ろすと、さっき遭遇した女の子がとても泣きそうな顔で大声をあげながら、まるで怖い大きな動物にでも追われているかのように山道を下っているのが見えました。そして、ブーさんは人間にも怖いと思う動物がいるのだと思いました。家に帰って、仲間やビューさんにそのことを話しました。その後、その森のクマ界では、この森には人間までもが怖がる生き物がいるから慎重に行動しようという言いつけがとても広まりました。

k182515

ある谷にダンという男の子がいました。ダンの黄金色の大きなからだにはするどいきば、アーモンド型の真っ黒な目、そして風になびいてきらきらと金色に光るたてがみが付いていました。他のみんなは、大きなたてがみをもっていて、谷で1番強いダンのことを恐れていました。だから、ダンはいつでもひとりぼっちです。「ぼくと同じ姿の子はひとりもいない。小さいみんなはぼくから離れていく。本当はぼくだって遊びたいのに。友達が欲しいなあ。」ダンはぽつんと呟きます。それを噂好きの小鳥たちが聞いていました。

小鳥たちは空の上の方でチュンチュンと話し始めます。「そういえばダンに似ている子たちを見かけたことがあるぜ。」「たくさんいたな。」「ダンみたいな大きなやつがたくさんいるなんてとても怖いだろうな。」それを耳にしたダンは小鳥たちに尋ねました。「それはどこで見たの。」ダンに気がついていなかった小鳥たちは驚いてぶるぶる震えながら「み、3つ先の丘だよ、きちんと教えたんだから食べないでくれよ。」と答えました。ダンは目を輝かせて、「ありがとう!」と言った途端に走り出しました。
3つ先の丘を目指しながらダンはこんなことを考えます。「ぼくに似た子たちがいるだって、友達になれるかもしれないぞ。会ったらどんな話をしよう、緊張しないで話せるかな。『気分はどう。』とか『君のたてがみ、かっこいいね。』とか言ったりして。とっても楽しみだ!」
ダンはずっと、一日中走り続けました。お腹が空くのも、喉が乾くのも忘れて、ただ仲間に会うことだけを楽しみに走りました。そしてとうとう、その丘にたどり着きました。しかしその丘にはダンに似た、大きなたてがみをもつ仲間どころか、動物は誰も見あたりませんでした。「小鳥たちは見間違えたのかなあ。」そう思ってダンが立ち去ろうとした時、ふと丘のふもとに目を向けるとあたり一面が金色に光っていました。「いた!」ダンはふもとへ急いで降りました。そこには小さな小さな花が咲いていました。ダンと同じ、風になびいてきらきら光るたてがみが付いています。ダンは自分と同じ姿の仲間を見つけられて、とても嬉しくなりました。
それからダンは、毎日その丘を訪れて金色のたてがみの花たちと時間を過ごしました。そのうち、谷の小さな動物たちは花を見つめて優しい顔をしているダンのことを怖がらなくなりました。ダンはたくさんの友達と幸せに暮らしました。

k182523

「ただいま。」
小学校から帰ってきて、今日はなんだかいつもより元気なまきちゃん。お母さんはそんな元気なまきちゃんにおつかいを頼むことにしました。「まきちゃん、今日の晩ごはんはなにがいいの?」 「まきはカレーライスがいい!」「今ねえ野菜がなにもなくてねえ、まきちゃん買ってきてくれない?」「わかった!任せといて!」もう小学1年生のまきちゃんは1人でおつかいなんてへっちゃらです。
さてまきちゃんは歩いて八百屋まで行き、野菜を買うことができました。にんじん4本に、じゃがいも6こ、玉ねぎも3こで少し重いなとまきちゃんは歩きながらおもっていました。まきちゃんが家の近くの坂道を歩いていると、「まきちゃん、やっほ〜!」同じクラスのケンタくんと会いました。「わあ!」しかし、まきちゃんはいきなり話しかけられおどろいてしまい手に持っていた買い物袋の中に入っている野菜をぜんぶ落としてしまいました。
コロコロコロコロコロ
コロコロコロコロコロコロ
「せっかく買った野菜が…」
「ごめんね、一緒に取りに行くよ」
ケンタくんはいっしょに取りに行ってくれるけれど野菜はどんどん下へ進んでいきます。
「追いかけないと!」
走って追いかけていると
「あ!ポチ!お母さん!!」
坂の下にいるケンタくんのお母さんとポチが落ちた野菜を拾ってくれていました。
しかし野菜はコロコロと転がってしまったので、泥だらけでした。
「せっかく買ったのに泥だらけで、お母さんに怒られちゃうよ……」
すると、ケンタくんは
「僕も泥んこを落とすの手伝うよ!」
そうして二人は一生懸命どろんこを落として、まきちゃんのお母さんの元へ行きピカピカの野菜をわたすことが出来ました。
ケンタくんもカレーをふるまってもらい、二人で美味しいカレーを食べました。

k182703

(140 語)
町のはずれの森の中。木に開いている小さな穴の中にはリスのトンクリが住んでいます。小さな小さな巣は、葉っぱとベリーの実でいっぱいです。ふかふかの葉っぱの上で、トンクリはねころんでいます。
「何でだろう、どうしてだろう」
トンクリは毎日たくさんのことを考えています。どうして空は青いんだろう。どうして葉っぱのおふとんはあったかいんだろう。どうしてくだものはおいしいんだろう…。
今日もトンクリは考え事をしています。
「どうして僕は生きているんだろう。僕は何のために生きているんだろう」
トンクリは考えて、考えて、考えます。しかし一向に答えが出ません。長い間考えこんでいたトンクリはぱっちりひらめきました。
「よし、森にいるみんなに聞いてみよう!」
起き上がったトンクリはかばんにベリーの実をいくつか入れて、秋の風吹く巣の外へと旅立ちました。

外に出るとすぐそばの木の枝の先に、茶色のまあるい姿が見えます。フクロウのオールおじいさんです。のんびりなオールおじいさんは悩んでいるトンクリにいつもアドバイスをくれます。
「ねえねえ、オールおじいさん。」
のろりのろりとこちらを向いたオールおじいさんは、トンクリを見ると茶色の羽をゆらしました。
「おやおやトンクリじゃあないか。今日はどうしたんだい」
「あのね、あのね。どうして僕は生きているんだろう。僕は何のために生きているんだろう。どうしてオールおじいさんは生きているの」
トンクリの言葉を聞いたオールおじさんはほうほうと考えこみました。
「うーん、そうだねえ。どうしてだろうか。こればっかりは、自分で考えてみないと分からないねえ。わたしはね、この森を見守るために生きているんだよ。みんなが今日も元気に過ごせるように、こうやって空から見ているのさ」
オールおじいさんは茶色の羽をゆらしながら、あったかい目で森を見渡しています。トンクリはオールおじいさんの言葉を聞いて考えました。
「森を見守るためかあ。羽がない僕には、空を飛んでみんなを見ることはできないな。それなら、どうして僕は生きているんだろう」
ふたたびうんうんと考え出したトンクリを見て、オールおじいさんはほうほうと笑いました。
「いろんな動物に聞いてみるといい。きっと答えが見つかるよ」
「そうするよ。オールおじいさん、ありがとう」
そう言って、トンクリは木を下りました。
地面に下りてからトンクリはしばらく歩きました。すると森の入り口方面から大きな荷物を背負った人間がやってきました。
「ねえねえ、そこの人!」
トンクリが一生懸命叫ぶと、歩いていた人間はきょろきょろと周りを見渡すと、トンクリを見つけて近づいてきました。
「おやおや小さなかわいいリスさん。何かごようかな?」
荷物を下ろしてかがみこんだ人間は、にこにこしながら気軽にトンクリに話しかけてきます。
「あのね、あのね。どうして僕は生きているんだろう。僕は何のために生きているんだろう。どうしてあなたは生きているの」
小さな声を聞き取った人間は、ううむと考えこみました。
「どうしてなんだろうなあ。言われなければ、考えなかったなあ。僕はね、きっと自分の夢をかなえるために生まれてきたんだ」
「自分の夢?」
トンクリが聞き返すと、人間は大きな荷物を指さして、胸を張って言いました。
「そう。僕の夢は冒険家さ。世界中の国を旅して、いろいろな景色を見るのが僕の夢さ。今はその旅の途中なんだよ」
誇らしげに語る人間を見て、トンクリは考えました。
「冒険をするためかあ。僕のこの小さな体じゃあ世界中は回れないなあ」
ふたたびうんうんと考え出したトンクリを見て、人間はにっこりとほほえみました。
「いろんな意見があるんじゃないかな。自分の答えが見つかるといいね」
「そうだね。ありがとう、心優しい人間さん」
人間はのっそりと立ち上がると、大きな荷物を背負って去っていきました。

トンクリはゆっくりゆっくりと歩きだしました。
何でだろう、どうしてだろう。
考えても、考えても、答えは見つかりません。
いつの間にか空には星がいて、遠くにはお月様が見えます。
広い広い星空に向かって、つぶやきました。
「どうして僕は生きているんだろう。僕は何のために生きているんだろう」
そのとき、トンクリのそばにころりと何かがころがってきました。かばんに入っていたベリーです。真っ赤に熟れた実はとても美味しそうなかおりがします。
そのベリーを手に取って、トンクリは思いつき...

k182706

大きな森の中にクマの兄弟がいます。ある日、クマのお兄ちゃんは川にさけを取りに行きます。「弟に美味しいさけを食べさせてやるぞ。」と、意気込んでいます。川に着くと、たくさんの大きなさけが元気に泳いでいるのが見えます。「これはたくさん取れるぞ。弟も喜ぶだろうな。」と、クマのお兄ちゃんは嬉しそうです。思ったとおり、さけはたくさん取れて、クマのお兄ちゃんは笑っています。手には5匹も大きなさけを持っています。
さけをたくさん取れたクマのお兄ちゃんは、満足気に川を去って行きました。おうちに帰る途中、きつねさんと会いました。嬉しそうにしているクマのお兄ちゃんに、「どうしたの?」と、きつねさんが聞きます。すると、クマのお兄ちゃんは、「さけがたくさん取れたんだ。良かったらどうぞ。」と、きつねさんに1匹さけをあげました。きつねさんとさようならをして帰ろうとすると、たぬきさんの姉妹と会いました。すると、クマのお兄ちゃんは、嬉しそうに「良かったらどうぞ。」と、さけを2匹あげました。そこへ、ねずみさんの親子がやって来ました。すると、クマのお兄ちゃんは、嬉しそうに「良かったらどうぞ。」と、さけをまた2匹あげました。みんなとさようならをして、クマのお兄ちゃんは、「あっ!さけがない!」と、気がつきました。もう辺りには誰もいなかったので、クマのお兄ちゃんは仕方なくおうちに帰りました。
おうちに帰ると、弟が元気に「お兄ちゃん、ただいま!」と待ってくれていました。クマのお兄ちゃんは、「ごめんよ。今日はさけは取れなかったよ。」と、しょんぼりして部屋に入って行きました。すると、次の日、おうちの前には、たくさんの食材が置いてあります。野菜に、くだものに、きのこに、そしてさけまで。その横には、手紙が1枚あります。「クマさん、昨日は大きなさけをありがとう。お礼に良かったらどうぞ。 きつね たぬき ねずみ より」クマのお兄ちゃんは、とても喜びました。そして、お礼にもらった食材で美味しい美味しいご飯を作って、弟と食べました。もちろん、メインディッシュはさけで。お兄ちゃんも弟もとても笑顔で楽しそうです。

k182711

 山奥の小さな村の小さな家に、一人の女の子が住んでいました。女の子のお父さんとお母さんは女の子が小さいときに死んでしまいました。女の子にはお友達は一人もおらず独りぼっちでした。だからいつも家の中で、昔お母さんに教えてもらった折り紙を折っていました。家の中は、折り紙で作られた動物や植物であふれかえっていました。女の子は折り紙の動物たちと会話をして毎日を過ごしていました。いつかたくさんの本物の動物たちとお友達になって一緒に遊びたいと思っていました。
 ある晴れた日の昼、女の子は、
「今日は流れ星がたくさんみれる日だわ。」
と言って、折り紙を持って山の頂上へ出かけました。
山道を歩いているとウサギさんが泣いていました。
「どうしたの。」
女の子はウサギさんに聞きました。
「病気のクマさんを助けにいきたいんだけど、オオカミがいて通れないんだ。」
ウサギさんは言いました。
女の子は困ってしまいました。女の子はオオカミと戦うことはできません。
「そうだ。土佐犬を折ってあげる。」
女の子はウサギさんのために、折り紙で土佐犬を折ってあげました。
するとどうでしょう。土佐犬がみるみるうちに大きくなるではありませんか。土佐犬はウサギさんよりも、女の子よりも大きくなりました。
「しめた。これに乗ってクマさんのところに行こう。」
二人は土佐犬に乗り、クマさんの家に向かいました。
 二人は無事、クマさんの家に着きました。ウサギさんはクマさんを助け、クマさんは元気になりました。
それを聞いた周りの動物たちは、
「僕にも折って。」
「私に教えて。」
と、次々に言いました。
女の子はすっかり人気者になり、たくさんのお友達ができました。

k182712

しょうくんは5歳の男の子です。しょうくんには生まれたまかりの妹がいます。妹の名前はさとこといいます。さとこが生まれる前、しょうくんはいつもお父さんとお母さんと公園で遊んでもらっていました。しかし、お母さんのおなかが大きくなるにつれてあまり外でボールで遊んだり追いかけっこをしなくなりました。「妹にもうすぐ会えるね。楽しみだね。」とお母さんはしょうくんに話しましたが5歳のしょうくんにはあまりピンときませんでした。
そしてお母さんが家に帰ってこない日がありました。だけどすぐにお母さんは帰ってきました。お母さんは赤ちゃんを抱っこしていました。小さくてとてもかわいい赤ちゃんでした。妹のさとこです。しょうくんはとてもかわいがりました。そしていろんなお手伝いをたくさんしました。お母さんとお父さんに「お兄ちゃん」と呼ばれるようになり、うれしかったからです。
3か月くらい経ったあとしょうくんは、「お兄ちゃん」と呼ばれることが嫌になりました。妹のさとこばかりにかまってしょうくんと遊んでくれなくなったからです。ある日しょうくんはお母さんたちの言うことを無視してお手伝いをしなくなりました。それでもお母さんたちはさとこにかまったままです。しょうくんはどうしたら、さとこが生まれてくる前のように遊んでもらえるか考えました。しかし答えは出ませんでした。
その日の夜、しょうくんはベッドで一人で泣いていました。するとお母さんたちの声が聞こえました。「お兄ちゃんいつもお手伝いたくさんありがとう、最近遊べてなくてごめんね。」とお母さんたちがいいました。しょうくんは泣いているのを隠して「お兄ちゃんだから。」といいました。しょうくんは知らない間に眠っていました。朝起きると、お母さんの声がしました。「お兄ちゃん、手伝ってくれる?」しょうくんはすぐに返事をして手伝いに行きました。かわいい妹のさとこと大好きなお母さんたちのためにたくさんお手伝いをしてかっこいいお兄ちゃんになろうと思えるようになりました。

k182713

1年生用に作りました

k182716

うさぎのうさこは、パパとママが大好きでした。困ったことがあった時には助けてくれるし、悲しいことがあった時には話を聞いてくれるし、嬉しいことがあった時には一緒に喜んでくれるし、いつもうさこの味方でした。うさこには、カエルのケロッグと猫のニャン吉という友達がいました。いつも3人でかけっこをしたり、お砂遊びをしたり、おままごとをしたりして遊んでいました。3人は、とても仲良しでした。何をするにしても、3人はいつも一緒でした。
ある日、うさこはいつものように、3人で遊んでいる公園へ向かいました。空には灰色の雲が沢山出ていてました。うさこが、公園に来につくと、2人の姿が見つかりません。うさこが必死で探していると遠くから「助けてー!!」と声がしました。あの声は、ケロッグもニャン吉に間違いないと思いました。声のする方へ急いで駆けつけると、大蛇が2人をぐるぐる巻きに縛っていました。うさこは助けたいと強く思いましたが、怖くて動けません。そんな時、ふとママとパパの顔が浮かびました。いつも自分を助けてくれる心強い存在、自分もそんな人になりたいと思うようになりました。その瞬間、うさこはパワーがみなぎってきました。そして、大蛇に立ち向かっていきました。大蛇は、うさこのパワーに圧倒され、逃げていき、うさこは無事2人を救い出すことが出来ました。
2人は、うさこに泣きながら「ありがとう。」とお礼を言いました。3人は抱き合って喜びました。空を見上げると雲ひとつない真っ赤な空が広がっていました。3人は夕日を見ながら、帰りました。うさこは、パパとママの顔を見ると、急に安心したのか、泣きだしました。パパとママは、「どうしたの?」と優しく聞いて抱きしめてくれました。うさこは、「なんでもないよ。いつもありがとう。」と口にしました。ママは「変ねぇ?そう言えば、今日はうさこの好きなカレーライスだよ。早く食べましょう。」と言いました。3人は、カレーライスを美味しく食べましたとさ。

k182718

ある山の中の大きな広場にある集団がいました。
その集団の人は走ったり投げたり跳んだり、各々が好きなことを一生懸命しています。時には協力し、時には1人で努力を重ねて毎日がんばっています。その山には野生の動物達も来るのです。しかし、動物達は人がいる間は姿を滅多にみせません。隠れて人が少なくなって広場が使えるようになるのを待っているのです。そして広場があくと食料を探しにやってきます。地面をほってほって探すのです。人間達はその地面を掘ったあとに悩まされていました。ボコボコの地面を走ると足を捻ってしまうからです。どうにかならないものかと悩んでいました。
ある日、集団の1人が夜遅くまで広場にいました。さあ帰ろうと荷物をまとめて歩き始めて数分後…。なんと野生の動物達の1匹、イノシシにあってしまったのです。とても大きなイノシシです。もし襲ってきたら太刀打ちできません。1対1の睨み合いが始まります。逃げては追いかけられると睨むその人。どうすれば分からず睨むことしかできません。心の中ではとてもとても不安でした。怖くてたまりませんでした。どうしよう、どうしよう、と思っていると、イノシシが近づいていました。ゆっくりゆっくり歩いてきました。そしてすぐ手の届くところまでやってきて人の匂いを嗅ぎ始めました。怖くて声も出ません。身体も動きません。すると、イノシシは体を人に擦り付けてきました。そして人の手を自分の頭に乗せたのです。恐る恐る頭を撫でるとイノシシはとても気持ちよさそうにするのです。
そうしてその人とイノシシは仲良くなり、集団の人達はゆっくりイノシシと仲良くなっていきました。一緒に広場で遊んだり、イノシシの子供も一緒に来てみんなで可愛がったりしました。イノシシは人の言葉が分かるのか、新しい遊びを説明するとすぐに出来るようになりました。そしてイノシシと話をして食料を探す時に、掘った跡を埋めることを教えました。すると賢いイノシシは1度教えるとすぐに覚え、それ以来地面がボコボコになることはありませんでした。そしてそれは何十年も続いたのでした。

k182719

あるところに、しょうたくんという10歳の男の子がいました。
しょうたくんは周りの男の子たちより背が低く、なんなら背の低い女の子と同じくらいの身長で いつも男の子たちに「しょうたはちっさくて女子みたいだな。」とバカにされていました。
背を伸ばすために毎日牛乳を飲んだり、みんなよりたくさんご飯をたべたり、ジャンプしてみたりしますが、全然身長は伸びません。
大人たちは「いつか大きくなるし焦らなくても大丈夫だよ。」と言ってくれますが、そんなの信じられませんでした。
しょうたくんは、今 みんなより大きくなって、みんなを見返してやりたいのです。
そんなある日のことです。
しょうたくんがみんなと公園で遊んでいると、大きな犬がやってきました。
二本足で立つと しょうたくんの背を抜かしているんじゃないか、と思うくらい 大きな犬でした。
その犬はしょうたくんたちの方を向いていて、今にも走って来そうでした。
みんな怖くて逃げ出したかったのですが、追いかけられそうで動けずにいました。
助けを呼びたかったのですが、近くに大人はいません。
「怖いよ、どうしよう、助けて。」
みんな泣きそうになっています。
しかし、しょうたくんは違いました。
犬に向かって自分から走り出したのです。
すると犬はびっくりして逃げてしまいました。
「しょうた、みんなを守ってくれてありがとう。」
「あんな大きな犬に向かっていけるなんて、すごいね。」
「小さいなんてバカにしてごめんな。しょうたは強いなあ。かっこいいなあ。」
と、みんなはいいました。
しょうたくんは、その日からみんなの小さなヒーローになりました。
「お父さん、僕はなんでみんなより小さいのかなあ。大きくなって、強くなりたいよ。」
ある男の子はお父さんにいいます。
「そうだなあ。大きくなりたいよなあ。でもな、小さくてもみんなを守れる強い人になれるんだよ。お父さんが子供の頃に 男の子の友達がいたんだけど、その子は背は小さくても 心が強くて、みんなを守ってくれるヒーローだったんだよ。小さくても、強くて かっこよくなれるんだよ。」
お父さんは、子供の頃を思い出して懐かしく思いました。

k182720

(248 語)
とある村――レクイエム。
この村は歌であふれており、村人はみんな歌が大好きです。
そんな村にうり二つの顔をした双子の兄弟がいます。名前はシンとダン。シンは村一番の歌い手で村の人たちも一目置く存在です。一方ダンは村一番の音痴でいつも村の子供たちからからかわれています。
歌の練習の日。子供たちにからかわれることが嫌なダンは練習場所である教会には行かず森へ行ってしまいます。ダンが一人で遊んでいると後ろから声がしました。
「ダンはまた今日も教会に行ってないっスね。」
「なんだ、ミヤか。」
ミヤは村の子供で唯一ダンのことをからかわない子でダンの大親友です。
「ミヤは教会に行かないのか。」
「んー。ダンが行くなら俺もいくっス!」
ミヤは笑顔で答えました。
「やだよ。あいつらいつも俺のこと音痴って言ってくんだもん。ミヤはいいじゃん、歌下手じゃないから。この村ではさ、歌が歌えない奴は用済みなんだぜ…」
「そんなことないっス。俺にはダンが必要っス!村の子供たちもダンのことをちゃんと知れば絶対好きになってくれると思うっス。」
以前、ミヤは村の子たちに嫌われていじめられていました。おそらくミヤの「〜っス」というのがいじめっ子たちには気に食わなかったのでしょう。そんな時に助けに来たのがダンです。ダンはミヤをいじめていた子たちにこう言いました。別に「〜っス」っていうのは個性だからいいじゃないかと。この時、村の子供たちはダンとシンの見分けがつかなかったのでシンにそう言うのならとすごすごとその場を去り、ミヤへのいじめはなくなりました。
「ねえ、ダン。教会で練習するのが嫌ならこの森で一緒に練習するっス!そんで、村の奴ら見返したらいいっス。」
「えー。無理だよ。俺にはそんなこと出来なくても別にいいし。」
ダンはふてくされてしまいました。
「でも、感謝祭はどうするんスか?」
感謝祭とはこの村の伝統で村の人たちが一人ずつ村の人全員に歌を発表するお祭りです。
「それはいつも通り俺の番でシンに代わりに歌ってもらえばいいよ。」
ダンはますます不機嫌になっていきます。
「だめっス!これからもずっとシンに頼み続けれると思ってるんスか。さすがにこれ以上は村の大人たちもシンとダンが入れ替わってることぐらい気づいちゃうっス」
ミヤが必至でダンを感謝祭に参加させようと説得していると、突然声が聞こえてきました。
「そうだよ、ダン。僕らもう10歳だよ。さすがに自分で感謝祭に出ないと。」
それは、シンの声でした。ダンのことを心配してシンもこの森に駆けつけてきたのです。
「シン…。なんでここに?」
ダンは驚きを隠せません。
「父さんたちに言われたんだ。「シン、いつも感謝祭でダンの番で歌ってたのはお前だろ。父さんたちはな、ダンが感謝祭に出ているところを見たいんだよ」って。だから、今年は頑張って出てみない?」
お父さんのことを言われてダンはまた顔を暗くしました。
「お前はいいじゃんか、めちゃくちゃ歌うまいんだからさ。みんなに「下手くそ」って、「音痴」って、「お前が歌なんか歌うな」って言われたことないだろ!だから、歌いたくないんだ…。歌が嫌いなわけじゃない。みんなの中に気持ちよく入れないことが嫌なんだ…。」
泣きそうなダン、シンは返す言葉がありません。森に鳥のさえずりが聞こえてきます。そんな静寂を切ったのはミヤでした。
「そんな子なら大丈夫っス、ダン。俺やシンはお前に歌うなとか音痴とか言わないっス。そうっスよね、シン。」
ミヤに突然話を振られて驚いたシンですが大事な兄弟のためにこう答えました。
「うん、当たり前じゃないか。ダンの歌の練習ぼくも手伝う。」
こうして感謝祭までの4日間。シンとダンとミヤの3人は森の中で一生懸命練習しました。しかし、それでもやはりダンの歌は上手になりませでした。

感謝祭当日。発表は村にある大きな広場で行われます。
「よう、ダン。久しぶりだなぁ。まぁた今年もシンに代わりさせんのか。いい加減あきらめて村の人たちの前で恥かけよ。」
村の子供たちはそう言ってダンをからかった後、発表の準備にかかりました。ダンは悲しい気持ちになっていつもの森に行ってしまいました。
心配になって追いかけてきたミヤがダンに話しかけます。
「ねえダン、大丈夫っスか」
「今年も僕が代わりに歌おうか」
ミヤの後からシンも声を掛けます。
「もう、ほっといてくれ!!」
ダンが大声で叫びました。それはダンの心の叫びでした。その声に負けじとミヤも叫びま...

k182721

ある森の中に、クマのくまどんとウサギのうさぎどん、キツネのきつねどんが住んでいました。3人はとても仲良しです。今日は3人でお出かけの日。約束の時間、約束の木の下にうさぎどんときつねどんがやってきました。「やあ、きつねどん。くまどんを見なかったかい?」「やあ、うさぎどん。僕は見ていないよ。また朝寝坊でもしているんじゃない?」「朝、電話をしたから起きているはずなんだ。どうしたんだろうな。」「くまどんの家に行ってみよう!」
 こうして、うさぎどんときつねどんはくまどんの家に行きました。玄関のドアをノックしてみるとくまどんのお母さんが出てきました。「うさぎどん、きつねどんおはよう。くまどんならもう家を出たわよ。会わなかった?」「えっ!出会わなかったよ。すれ違ってしまったのかなあ。」うさぎどんはそう答えました。そうです。少し遅れて家を出発したくまどんとくまどんの家に向かっていったうさぎどんときつねどんはすれ違ってしまってしまったかもしれません。きつねどんは言いました。「早く戻って、くまどんと合流しよう。」
 2人が約束の木の下に戻ってみると、木の下でくまどんが座って待っていました。「うさぎどん、きつねどん、どこに行ってたの?遅れたから先に行っちゃったかと思ったよ。」「くまどんが来ないからくまどんの家に行ってたんだよ。なあ、きつねどん。」「ああそうだよ。心配したんだから。」するとくまどんは、「心配かけてごめんなさい。これからは遅れないように気を付けるよ。」と言いました。そして、3人は仲良くお出かけに行きました。

k182726

大人はみんな自分勝手だ。いつからだろうこんな風にお母さんと接するとき思うようになってしまったのは。そう思う僕の脳は僕の口からお母さんに棘のある言葉を出すように命令する。また、今日もだ。お母さんがすべて悪いわけではない。悪いのはどちらかと言えば自分だと分かっている。晩ごはんができ呼ばれたときタイミング悪く部屋でテレビゲームをしていた。「キリがいいところ」と言いながら結局20分、30分とゲームをし続けお母さんに「いつまでしてるの?」と言われたことについかっとなってしまった。「うるせ!邪魔すんな!」そう言われたお母さんは何か言いたげであったが何も言わずに立ち去って行った。この後に出てくるのが姉ちゃんだ。お母さんがリビングに戻ったと思われるや否や部屋の前にやって来て「ほんと小さいわね!」と言われてしまった。あー、どうして女ってのはこんなにもめんどくさいんだ。

そんなこんなで何もせず部屋から出ずにいるとお父さんが入ってきた。「なんでお父さんが?」僕の脳内はそれでいっぱいだった。普段、仕事で帰りが遅く僕たちが寝るころに家に帰るのが日常だ。どうやら今日は少し早く帰れたらしい。それでも時計を見ると9時をゆうに過ぎている。お父さんは部屋に入るや否やすぐに僕の横に座ってきた。普段あまり話すどころか顔を合わせないせいかどう接していいかわからない。お父さんは座るとまず「お父さんにもそんなときがあったぞ」と話しかけてきた。僕は黙ったままでいた。お父さんはつづけた。僕のおばあちゃんにきつく当たっていたこと。今思えばくだらないようなエピソードまでせきららに語ってくれた。僕はお父さんの話が面白くて笑いをこらえることが出来なかった。ふと思った、「あれ?家で笑ったのはいつぶりだろう?」そう思ったころお父さんが「不思議だな。どうしてあのころはあのやさしさに気づけなかったんだろう。」と言った。僕にはその言葉がなぜか心に澄み渡っていくように響いた。確かに納得のいかないこともある。ただ、今思えばどんなに僕がきついことを言ってしまってもお母さんは僕を見捨てることはなかった。それも優しさではないのか。最後にお父さんが「まあ、言葉ってのは難しいものだからな。捉え方によっては相手勘違いさせてしまうしな。俺もおばあちゃんもたくさんそれで怒らせたしお母さんとだって何度もけんかしたさ。まあ、頑張れ。」そう言うとそそくさと部屋を出ていってしまった。

あれ以降、僕はお母さんと接することが以前より苦痛でなくなった。確かに納得のいかないこともまだあるけど前よりとがることは無くなったと思う。お父さんのおかげでお母さんのやさしさを感じられるようになったのが大きいかもしれない。ただただとがっていたあの頃は何だったんだろうかと時々不思議に思う時もある。なんだか少し大人になれたような気もする。こうやって大人の階段を上っていくのかなと感じた。さあ、お風呂の掃除にでもいこう。そう思い前よりも軽くなった腰を上げ部屋から出る僕であった。

k182728

むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんと小さな子供が住んでいました。おじいさんはからだがたいそう弱っていて、病気をしては寝込んでを繰り返していました。そんなある日、おばあさんがおじいさんの看病の疲れからか注意力が散漫になってしまっていて、石ころにつまづいて転んでしまい、そのとき運悪く近くにあった大きな石に頭を打って死んでしまいました。おじいさんも子供もたいそう落ち込んでおじいさんも今までにないほどしんどい今にも死んでしまいそうな病気にかかってしまいました。しかし、もうおばあさんはいません。なので子供が看病しなければなりません。濡れた布でからだを拭いてあげたり、できないなりにあたたかいおかゆを作ってみたり。
しかし、おじいさんはなかなか良くなりません。良くなるどころかどんどんひどくなっていきました。子供はどうすればいいのかとてもとても考えました。そんなとき、むかしおばあさんが峠を3つ越えたところにあるお薬屋さんで全ての病気を治してしまうという万能薬を売っていると言っていたことを思い出しました。しかし、子どもの足では何日もかかってしまいます。子供はそんなこと気にもせず、一目散に家を飛び出しました。峠をひとつ越え、ふたつ越え、やっとこさみっつ越えて、ようやくお薬屋さんにたどり着きました。万能薬のお代はまた今度持ってくると屋主と話をつけて、休むことなく今度は家に向かって走りはじめました。でも、子どもの足はもう限界でした。峠をひとつ越える頃にはもう足は前には進みませんでした。途方に暮れていたとき、たまたま近くを通ったきつねの親子が心配して声をかけてきました。子どもは家で待つおじいさんの元へ急がなければなりません。しかし、もう足はボロボロでした。おじいさんの話をきいたきつねが子どもを背中に乗せ走り出しました。
きつねは3つもある峠をあっという間に走り抜け、家につきました。しかし、子供が家を出てから1週間という時間が過ぎてしまっていました。おじいさんの元へ子どもはかけよりましたが、寝ているおじいさんはもう息をしていませんでした。それからしばらくして、1人になってしまった子どもの家の扉を強くたたく者がいました。扉を開けると底には1匹の子ぎつねがいました。この前、たすけてくれたきつねだと子供はすぐに気が付きました。どうしたのかわけを聞くと、お父さんきつねが大変だという。子どもは万能薬を握りしめ、お父さんきつねの元へ一目散に走り出しました。お父さんきつねの病気は子どもが持ってきた万能薬ですっかり良くなりました。

k182732

森の中にこぐまが住んでいました。こぐまはいつもひとりぼっちでした。なぜなら、どうぶつに怖がられていたからです。こぐまはいつの日かみんなとなかよくなって人気者になるのが夢でした。
 ある日、こぐまがさんぽしているとけがをして弱っているうさぎがいました。こぐまは森の中の薬草を集め、一生けんめいうさぎのかんびょうをしました。うさぎはみるみると元気になりました。
「助けてくれてありがとう。わたしのなかまにあなたをしょうかいしたいわ。」
うさぎはこぐまにお礼を言いました。そして、なかまのもとへこぐまをつれていきました。
 最初は、うさぎが連れてきたこぐまを見てなかまは怖がりました。
「私のことを助けてくれたこぐまさんよ。」
うさぎがみんなにしょうかいするとなかまはこぐまに
「うさぎさんを助けてくれてありがとう。」
とかんしゃしました。
 それからこぐまは森のなかまたちとなかよくなりました。森のなかまがけがしたときはこぐまがなおしてあげました。こぐまは森のおいしゃさんとしてとても人気者になりました。

k182734

アイリスは奥の森にあるとされている宝『ユニパ」を探していた。山を越え、川を越え、強い日差しの中も激しい豪雨の中も、降り積もる雪の中にも屈することなく、『ユニパ』を探すべく、友人のムードルとともに奥の森を突き進んだ。そして洞窟を抜けると何やら神々しく光る箱を見つけた。紅白歌合戦のフィナーレの紙吹雪のごとし。あと10歩、9歩・・・あと3歩、2歩、1歩・・・。と、その時
 「僕たちの『ユニパ』に触るな!」
と、茂みから出てきた見たこともない動物たちが言い、アイリスとムードルに襲い掛かってきた。
 「ユニパまであと少しだったのに!!!」
ここでアイリスは目が覚めた。瑞夢なのか悪夢なのかわからない、杏仁豆腐にも似た何とも言えない夢であった。
 「夢だったのか。」
大学生のアイリスは毎日暇を持て余していた。休みの日の過ごし方というと、アルバイトやたまに友達と遊びに行ったりするか、本当に何もない日は一日中寝ているかであった。アイリスはふと思い立った。
 「宝探しに行ってみよう。」
一人では心もとないので友人のムードルを誘ってみると
 「宝なんてあるはずがない。大学生にもなって何言っているんだ。」
と一刀両断。しかしアイリスは折れず、何とか説得して一緒にユニパを探しに行くことになった。
この日はあいにくの雨であった。大きな水たまりもできていた。鯉が泳いでいてもおかしくないほどだ。そんな中家を飛び出し、とりあえず森の奥の方に行ってみることにした。2時間ほど歩いたころにはお互いびしょ濡れで泥まみれで、アイリスは足を滑らせたときに捻挫してしまっていた。中学の部活動以来の負傷である。痛みとともにほろ苦い青春の味がした気がした。
 体力的にも天候的にも時間的にも精神的にも限界を感じたし、何せ宝探しは無謀であったことに気付き、諦念に打ちひしがれた。ムードルに支えられながら家に帰った。
 家につくと家族が心配していたらしく、すぐにタオルを持ってきてくれて体を拭き終えると温かいシチューを出してくれた。身心温まった。体にしみるとはこのことである。シチューを食べ終えるとアイリスは今日一日のことを日記にすることにした。書いていくうちにアイリスは涙が出てきた。無謀な宝探しに付き合ってくれて支えてくれたムードル、日ごろから自分のことを考えてくれていると知った家族に対しての涙だ。そしてアイリスはこう思った。
「探し求めていた『ユニパ』は、神々しい金銀財宝のようなものではなく日ごろから自分を支えてくれている友人や家族のことだったのではないか」と。

k182901

あるところにおじいさんがいました。
おじいさんはみんなを困らせてやろうといつもみんなに嘘をついていました。
「おい、お前の娘がけがをしていたぞ。」「あの男は人の畑から野菜を盗んでいる盗人だぞ。」
適当な嘘をついて人が困っている姿を見るのが大好きなのです。
今日もいつものように嘘をついています。
「おい、おばさん。お前の家のほうから黒い煙があがっていたぞ。火事になっていないか?」
おばさんは慌てて家に帰りましたが、家は少しも燃えていませんでした。おばさんはおじいさんのいつもの嘘に引っかかったことに気が付きました。
ある日、おばさんはおじいさんの家の庭で燃やしていた焚火をおじいさんが消し忘れているのを見つけました。
「おじいさん、大変よ。あなたの庭の焚火が付いたままだわ。このままだと火事になるわよ。」
しかし、おじいさんは信じませんでした。
「おいおばさん。お前、この間俺が騙したから俺に嘘をついているんだろう。俺は騙されないぞ。」
 おじいさんはおばさんが自分に仕返しのため嘘をついていると考え家の様子をみに帰りませんでした。
 おじいさんの家は焚火の火の粉がとびうつって本当に火事になってしまいました。
 おじいさんは慌てて火を消し、「俺が嘘さえつかなければ素直におばさんの言葉を信じることができたのに」と後悔しました。
 それからというものおじいさんが嘘をつくことはなくなりました。

k182906

k182913

あるところに正直者で有名なマジシャンであるカリックがいました。カリックは全然売れていませんでした。なぜなら、マジシャンは人を騙して驚かせる職業であるため彼はどうしてもマジックの途中でお客さんに見せてしまうのです。
しかし、カリックは友達がたくさんいました。お金がなくて食べ物がないときにはいつも誰かが分けてくれます。困っていてもいつも誰かが相談を受けてくれます。
ある日、カリックは隣町で行われるマジシャンの大会があるということを知りました。「よし!!!大会に出てマジシャンとして成功するぞ!!」そう誓うとその日からカリックは一生懸命練習をしました。2ヶ月たち彼はマジックの腕は一流になりました。
大会の前日になりました。カリックは大会が行われる隣町に来てぶらぶら散歩していました。「あー、明日大会だ。技術はついたけど、いつものようにまた正直にタネを言ってしまいそうだ。不安だなー」
するとそこに真っ黒の服を着た女の人が近づいてきました。「あなた、どうしてそんなに悩んでいるんだい?」そう聞かれたカリックは全て正直に話しました。するとその女は「私に任しなさい。あなたをこの街で一番の嘘つきものにしてあげるわ」そう言うと彼女はカリックにおまじないをしました。するとカリックはしだいに眠たくなりいつのまにかぐっすり眠っていました。はっと気がつくと大会当日になっていました。カリックは大慌てで大会会場に向かっています。その途中おじいさんが前を歩いていると財布を落としました。カリックは財布を盗みました。おじいさんはカリックに「財布を拾わなかったかい?」と聞くとカリックは「知らないよ」自然と嘘をついていました。
大会が始まりました。そして前の人が終わり、カリックの番になりました。カリックは「自分ならできる!練習もしたし嘘つきにもなった」そう心の中で呟くと舞台に上がって行きました。彼は今までで最高のパフォーマンスをして優勝をしました。大会後カリックはうきうきしながら街に帰っていきます。「やった!優勝したぞ!みんな喜んでくれるだろな」。街に着きました。そして、友達の前で優勝したことを言うとみんな全く喜んでくれません。無視をする人もいました。「なぜ喜んでくれないんだい?」カリックが聞くと友達は「君は嘘つきで犯罪者だ」そういうとどこかへ去って行きました。そう、カリックが財布を盗んだことが街で広がっていたのです。それからカリックはマジシャンとしては成功しても友達は1人もできませんでした。

k182914

家族想いなヨシ君は、プロ野球選手です。小さい頃から野球を始め、野球が大好きになりました。高校を卒業してすぐにプロの世界に入り、念願の夢を叶えることができました。最初の数年間はケガや病気に苦しめられましたが、ようやく出番が増えるようになりました。そして今ではチームに欠かせない選手であり、今年も日本一とはなりませんでしたが、優勝へとチームを導きました。そう、ヨシ君はただのプロ野球選手なんかではありません。スター選手なのです。
そんなヨシ君は、次の春から野球を続けていくチームが決まらずにいました。それは決してヨシ君がクビになったからではありません。ヨシ君はスターです。人気者なので、いろいろなチームが「一緒に野球をしよう。」と誘ってくれるのです。そのチームの1つに、とってもたくさんお金を積んでくれるチームがありました。(お金は欲しい...。でもここでそのチームに行ってしまえばお金で動いたとみんなに嫌われるかも...。)ヨシ君は悩みました。
とても悩んだ結果ヨシ君は、そのチームで野球をすることを諦め、誘ってくれたもう1つのチームに行くことに決めました。お金よりも、みんなと一緒に楽しんで大好きな野球をすることを選んだのです。そして、その球団は小さい頃に家族と一緒に一番応援していたチームでした。自分が得をすることではなく、家族や仲間のことまで考えて大きな決断をしたヨシ君は、まさに本物のスタープロ野球選手なのでした。
 

k182918

昔昔、仲のあまり良くない3人の兄弟がいました。3人はよく口けんかをし、時には手を出してけんかもしていて、よくお母さんにめいわくをかけていました。お母さんとお父さんは数年前に離婚していて、兄弟3人ともがお母さんの元で生活していました。ある日、急にお母さんが倒れてしまいました。すぐに病院に行ったものの、医者にはこの病気は難病で、治すことが不可能だと言われました。それからというもの、お母さんは目を開けることはなく、かろうじて生きているという状態でした。そんなある日、1番上のお兄ちゃんがあることを耳にしました。それは、遠くの山の山頂に、何でも治すことができるという薬草が生えているということでした。それを聞いたお兄ちゃんは、すぐさま弟たちのところへ行き、その事を伝え、兄弟3人でその薬草を取りに行くことになりました。
薬草を取るための旅は、全く楽な旅ではなく、とても過酷なものでした。たくさんの川を渡り、とても暗く深い森を抜け、いくつかの山を越え、やっとのことで薬草のある山までたどり着くことができました。薬草は、3人が協力しないと手に入れることができないところにありましたが、ここまで3人で力を合わせてきたので、楽に薬草を取ることができました。3人は、一緒に旅をしているうちに、お互いの気持ちを考え、助け合い、協力し合うことができるようになっていたのです。
3人は薬草をお母さんのところに大事に持って帰り、すぐにお母さんに食べさせました。すると、お母さんの目がゆっくりと開きました。なんと、本当に病気が治ったのです。お母さんと兄弟3人は、嬉しさのあまり、抱き合って泣き叫びました。その場にいた医者や看護師など全員ももらい泣きしていました。それからというもの、兄弟3人は一切けんかをすることがなくなり、3人で助け合いながらお母さんを手助けするようになりました。そして、4人は、楽しく、幸せに暮らしました。

k182920

あるところに、どこにでもいるような普通の女の子あんはお母さんとお父さんと住んでいました。
お金持ちでも貧乏でもなく、友達が多いわけでも少ないわけでもなく、毎日平凡な生活を送っていたため、あんはいつも退屈そうでした。
ある日、友達と買い物に行った帰りにふと見ると占いの看板が目に入り、吸い込まれるように2人はその中へと入っていきました。
中には、見るからに詐欺師のようなうさんくさい占い師がいて、半信半疑でしたが占ってもらうことにしました。すると、占い師はあんを見た瞬間に全てを見透かしたような顔をして、「そんなに毎日退屈なら幸せになれるように、あなたの願ったことが叶うようにしてあげよう。ただし、平凡な毎日を忘れずに調子に乗ってはだめだよ。」と告げました。2人は占い師の見た目てきに全然信じていなかったので何か良いことあったらいいなくらいにしか思いませんでした。
それから1週間後、あんはいつものように過ごしていました。しかし、だんだん不思議なことが起きるようになりました。それは何かと自分の都合の良い方向へといくのです。今日はうどんが食べたいなと思うとその日の夜ご飯はうどんだったり、ちょっと薄着しすぎたなと思うとヒートテックをいつのまにか着ていたり。最初のうちはそんなちっちゃいことでしたがあんはだんだん嬉しくなって、テストの解答が事前に分かるようにしたり、バイトをしなくてもお金が振り込まれるようにしたりずる賢いことを考えるようになりました。
そしてそんな生活を続けていたある日の朝、ニュースで大雨の予報が出ているのをあんは確認すると、学校に行けなくなるくらい大雨が降ったらいいのにとつい思ってしまいました。あっと思ったときにはもう遅く、ニュースを再び見ると、大雨による洪水によって町のあちこちが浸水し、家が流されたり、何人もの行方不明の方がいるという被害が映し出されていました。それを見てあんは、急に怖くなりました。そして、今まで自分の都合の良いことしか考えてなかったことを心から後悔して、台風の影響が少しでも小さいことを心の底から願いました。
すると、光がぱあっと差し込み、周りが一瞬にして真っ白になりました。あんは気がつくと、あの占い師の前で友達と2人で座っていました。急いで時間を確認するとあの占いをしてもらっていた時間のままでした。あんは心から喜び、安心しました。
それからあんは誰からみてもいつも楽しそうに見える子になりました。そう、あんは生活の中に隠れている小さな幸せに気がつけるようになったのです。

k182921

あるところにお金持ちになりたいおじいさんが山にひとりで住んでおりました。どうしたらお金持ちになれるのかとたくさん考えていました。そしてこどもの頃に読んだ昔ばなしを思い出しました。いじめられている亀を助ければ竜宮城へ連れて行ってくれるかもしれない、弱っている鶴を助ければ恩返しをしてくれるかもしれない、そう思いました。そして亀を助けるために海辺まで行ったり、弱っている動物がいないか探したりしました。
しかしまったく亀はいじめられていないし、竜宮城へも行くことが出来ません。山へ帰って困っている動物を助けることはありました。恩返しをされないかと思いながら、街に出るときも、山にいるときも、また海辺に行くときも困っている人や動物がいないか気を配っておりました。いつの日か竜宮城に、いつの日か恩返しを受けたいと願いながら毎日を過ごしておりました。
おじいさんは気づけば何百もの動物や人を助けたり、親切にしてあげていました。初めは竜宮城に行きたいといったお金持ちになることが目的でしたが、動物や人に感謝され、「ありがとう」と言われることが嬉しいことだと知り、みんなの役に立ちたいと思うようになりました。たくさんの動物や人を助けているところを見た人たちに「親切なおじいさん」としてどんどん知られていきました。そして有名になり、いいことをするたびにお礼を貰えるようになりました。おすそ分けを貰ったりたくさんのものを貰い、生活に困ることが無くなりました。初めの目的であるお金持ちになることは出来ませんでしたが、たくさんの人たちの信頼を得ることができ、他にもたくさんのことを知ることができました。人は周りの人たちと関わって、助け合うことが大切だと知ることが出来たのです。

k182923

ある森の中の小屋に一人の少女が住んでいました。彼女は弟とお母さんとお父さんとともに暮らしていました。しかし彼女は学校のクラスメイトや弟のように野原をかけたり森を探検したりすることができませんでした。彼女は目が見えなかったのです。そのため、いつも他の子どもたちから取り残されて悲しい思いをしていました。そんなある日、お母さんが絵具とキャンバスを買ってきてくれました。彼女はすっかり絵を描くことに夢中になっていきました。
毎日友達と遊べずに寂しい日々を送っていましたがそんな中でも絵だけは彼女の親友でした。彼女が描く絵には不思議なちからがありました。彼女はみずからのこころをそのままキャンバスに描き出すことができるのでした。彼女はとても親切でやさしい人だったので彼女の描く絵はみんなを癒してくれました。音楽隊の音楽が奏でられてみなが踊りあかすようなパレードを彼女が描けばその絵はみるみるうちにわたしたちをのみこんでその世界に行くことができるのでした。
そうやって毎日絵を描き続けているうちに彼女はいつしか寂しいと思って生活することがなくなりました。彼女にはいつだって絵という親友がそばにいてくれます。弟やほかの友達をみて目が見えることをうらやんだりすることもなくなりました。そしてきづけば彼女のまわりには絶えずひとが集まってくるようになりました。もうひとりぼっちではありません。そして毎日描き続けます。こころのなかのひかりに耳をかたむけながら。

k182926

aくんは仲良く友達と遊んでいる。夜遅くまでずーっと、遊んでいる。でも、次の日になると周りの友達はaくんの事を忘れてしまう。そして、また友達になり夜遅くまで遊び、また忘れられる。
でもaくんはいつも笑顔だった。たとえ、昨日まで遊んでいた友達に忘れられようと、また次の日仲良くなりずーと遊ぶ。何があっても泣かない強い子であった。一方で、どんなに仲良くなっても次の日には何もなかったかのように忘れられる悲しい子でもあった。
ある日、ある女の子と出会った。aくんはいつも通り仲良く遊んだ。鬼ごっこをしたり、家でしゃべったり、買い物をしたり、ボーリングしたり、一日中遊んだ。でも、だんだんaくんの心に変化が生まれてきた。もっと遊んでいたい。ずっとこの人と遊んでいたい、もっとボーリングしたい。夜が近づくにつれ、そういった思いがaくんの中でいっぱいになっていた。
でも、遊び終わると忘れられてしまう。
今日のことも全部。
そう思ったaくんの目から涙が溢れだしてきた。
長い間ずっとずっと、涙を流していた。
初めて涙を流したaくんは、しばらくの間ポツポツと歩いて、川辺に座り込んだ。
aくんにとって今日一日の出来事はとても大切なものだった。たとえもう一度友達になろうとも今日のような日は二度と来ない。そー思いながら、眠ってしまっていた。
しばらくの間眠いっていた。すると、
「aくん!」女の子の声で目を覚ました。
なんやねんと思いながら見つめあっている2人の
後ろでは朝日がのぼっていた。

k182927

題名:愛する理由
ある田舎町に若い夫婦がいました。
その夫婦はその田舎町でも有名になるほど互いを愛し、信じ合っていました。
しかし、明日の食事に困るほどお金がありませんでした。ただ、女の父が残してくれた大きな馬が一頭いるだけでした。
ある朝、女は自分達の生活のために父の形見である一頭の馬を売るという決断をしました。女は男に馬を市場に売ってきてほしいとお願いしました。
「分かった。」その一言を残し、男は市場に出ていきました。
何も変わったことはなく市場で商人に馬を売り終えた男は得た金を持ち帰路についていました。
その道中、小さな子供が一人泣きながら歩いているのを見かけたので、男はその子供に「どうしたの?」と聞きました。
するとその子供は、「病気のお母さんのにお薬を買う為に今までお仕事をして、お金をためていたんだけど、そのお金を誰かにとられちゃったみたいなんだ。」と言いました。
男はすぐにそれが最近流行っている貧しい子どもがする市場から帰ってきた人のする?だとわかりましたが、お金を持って帰らないとその子供が大人から暴力などを受けてしまうということも分かっていました。
男はその子供にさっき市場で商人から得た金を渡しました。
子供は満面の笑みで「ありがとう!お兄さん!」と言ってその場を立ち去りました。
その時その男の横に自分が馬を売った商人が馬車に乗って来ました。
商人は「そんなことをしてしまったら家で待つお前の妻に失望されるのではないか?はっはっは!」と男を笑いました。
男は「いや、私の妻はきっと私の行動をほめてくれるだろう。」と商人に言いました。
すると商人はこう言いました。
「なら、私と賭けをしよう!もしお前の妻がお前のその行動をほめてくれたならもう一度お前にやった金をやろう。しかし、もし失望したならお前の妻を私に渡せ!」と。
男は家に帰り女に事の顛末を詳しく話しました。
すると女は「帰りが遅いからあなたのことだしそんなことだろうと思いましたよ。さぁ、ご飯を食べましょう?冷めてしまうわ。」と言いました。
男は「失望しないか?」と尋ねましたが、すぐに女は「まさか!するわけないでしょう?あなたのしたことは何も間違ってないもの。そんなあなただから一緒になったのよ?ふふっ。」と微笑みました。
外からその様子を見た商人は家のドアの前に馬のお金よりも少し多くのお金を残し帰って行きました。

k182928

 ある村にカラスのカー君が住んでいました。その村にはりんごや梨、柿などの、実がたくさんなっている果物の木が数えきれないほどあるひろーい森や、それはそれは大きくて、とってもきれいな湖がありました。カー君はそんな素晴らしいところにお父さんとお母さんと五人の兄弟と、そのほかたくさんのカラスの友達と、リスさんや白鳥さんなどの素敵な仲間と一緒に暮らしていました。しかし、カー君にはコンプレックスがありました。それは自分一人だけ真っ白だということです。
 ある日、お隣の村からカー君たちとは別のカラスのグループがやってきました。そして彼らはカー君を見るなりこう言いました。
「お前、カラスのくせになんで白いんだよ。」
「ほんとにカラス?」
「黒は強そうでかっこいいんだよ、白なんてだっせ。」
と。カー君は悲しい気持ちになりました。夜に一人でしくしく泣きました。今までこんなこと何にも言って来なかった同じ村の仲間たちもおんなじようなことを思っていたのかなと不安になりました。
 夜が明けました。今日も朝の集いからこの地域の一日が始まります。そこで長老の白鳥のパクさんが言いました。
「白い毛だってきれいでかっこいいんだぞ。それから、空を飛ぶのがうまいやつがいて、泳ぐのが速いやつがいて、木の実をつつくのが得意なやつがいて、毛が黒いやつがいれば白いやつがいて、背が高いやつがいれば低いやつがいて、みんな違ってみんないいんだぞ。」
と。昨日カー君にひどいことを言った隣村からやって来たカラスたちはカー君に謝りました。そして、お互いに村に遊びに行く仲になりました。

k182929

フルーツに溺れた王様
 昔々、とある南の国の小さな島に、一人の王様がいました。王様はそれはそれは世にも珍しいフルーツ好きでした。そのフルーツへの溺愛ぶりというと、朝にフルーツ、昼にフルーツ、夜にフルーツと、そのうち、体自体がフルーツになってしまうのではないかと民にも心配されるほどのものでした。その島では、珍しいフルーツを王様に献上した者には、褒美に黄金がたんまりと与えられました。しかし、その噂を聞きつけたフルーツマニアたちが島の外からも次第に集まるようになりました。彼らは、王様の創造を絶する素晴らしいフルーツをたくさん持ってきました。王様はそのフルーツに夢中になり、民のことは何も考えられなくなってしまいました。
 王様はついに家来を島の外に派遣し、気に入ったフルーツをありったけ持って帰るように命じました。しかし、当時の航海はとても過酷でした。たくさんの家来を乗せて出発した船も、帰ってきたときには数えられるくらいの家来しか残っていませんでした。それでも褒美の黄金なしでは、貧しい暮らしを強いられていた家来や民たちは、命を懸けて航海に臨みました。ある日、王様の大好きな黄金色に光るマンゴーを持ち帰った男が言いました。「王様!このマンゴーを私は命懸けで持ち帰りました。どうか褒美の黄金をいただきたい。」すると、王様は顔をゆがめてこう言いました。「悪いが、今黄金が不足していてねー、この程度の量じゃ褒美はやれんよ。」これを聞いた男は激怒し、持ち帰ったマンゴーをその場で食べてしまいました。王様は、顔を真っ赤にして怒り、その男を牢屋に入れてしまいました。
 王様は、その後も大好きなフルーツを持ち帰らせては食べまくりました。しかし、あの一件を見ていた家来がうっかり口を滑らせ、民にも知られてしまいました。そのことは瞬く間に島中に知れ渡り、おまけに黄金も底をついた王様の言うことは誰も聞かなくなりました。王様は独りぼっちです。来る日も来る日もフルーツを待ち続けました。しかし、誰も王宮には現れません。王様は寂しくなって、トボトボと今まで見たこともないような山道を歩きました。すると、小さな少年が王様の元へ駆け寄ってきました。彼の手にはまだ熟れきっていない小さなヤシの実が握られていました。「これあげる。」そう言って、走り去った少年の後ろ姿を見た王様は、わんわんと声を荒げて大粒の涙を流しました。そのヤシの実は、今まで食べたどんなフルーツよりも格別においしいものでした。それから、王様は間違いを認め島中の民に謝り、どんな時でも民の幸せを一番に考える心優しい王様になりました。

k183107

『ずっと一緒に』
色々な国と国が激しい戦争をしていた時代のお話。
他国と戦争中の国にある、とても大きなお屋敷に表情の無い一人の青年がいました。一族の当主であるその青年に家業で右に出る者はおらず、多くの部下を従え堂々としている姿はまさに完璧で、周囲は青年の実力を認めていました。しかし、母親だけは彼が慢心して足元をすくわれないよう厳しく接するのでした。青年は母親に認められたいという想いを昇華させるように趣味の人形作りに没頭し、自室には青年に似た一体の人形と母親に似た沢山の人形がありました。
そんな日々が長く続いた中のある暖かい日。青年の姿は一人の少女と共にありました。暗く狭い所に閉じ込められていた少女を青年が助け、屋敷に迎え入れたのです。少女は言葉を話す事は出来ませんが、自由に顔を変える事が出来る不思議な力を持った希少な種族の子で、故郷から遠く離れたこの地へ連れて来られた様でした。少女はせめてものお礼に青年を笑顔にさせようとプレゼントを渡したり、色々な手を尽くしましたが失敗が続いていました。その日は青年の顔に化け、彼の目の前でとびきりの笑顔を見せてみました。つられて笑ってくれるかもしれないと考えた為です。青年はその時初めて自分の笑顔を知り、自然と涙が溢れ出ました。
この日を境に仲を深めた2人は1つの秘密の約束をしました。『全てが落ち着いたら、君(少女)の故郷にいこう』少女が寂しくない様にと、青年の部屋には少女の人形が増えていきました。
それから少し経ったある冷たい日。青年の国は戦争に負けてしまい、一族断絶を免れる為に当主の首を差し出さなくてはならなくなりました。しかし、この家には跡継ぎが彼しか居なかった為、不思議な力を持った少女に白羽の矢が立ちました。青年に成りすました少女の首を差し出そう…その提案をしたのは彼の母親でした。それを知った青年は少女を守る為、自ら命を絶ってしまいました。その事を知った少女もまた…
戦後しばらく経った頃、青年の部屋から2体の人形が姿を消した事が分かったそうです。そして同じ頃、どこか遠く離れた場所で青年が少女に優しく微笑みかけていました。2人でぎゅっと手を繋いで。

k183108

あるところに、空が好きだったももかという1人の女の子がいました。ももかは0歳の頃から赤ちゃんモデルとして芸能界で活動しています。
小さい頃は、モデルをしたり、教育番組に出たり、子役としてドラマや舞台に出たり、歌やダンスの練習をしたりと、目の前のことにいつも一生懸命取り組んで、様々な場面で小さいながら、活躍をしていました。そんな彼女の姿に心を打たれた人もきっと少なくなかったでしょう。
しかし、ももかが12歳になった時、年齢的にももう子役ではなくなってしまうため、今までの活動とは一変して、仕事がだんだんとなくなってきてしまいます。芸能界は思っているよりも厳しく、ももかが悪いわけではなくても、自分は周囲から必要とされてないのではないかとももかは自分を責め、とても落ち込みます。ももかは落ち込んでいるときはいつも、空を見上げて、元気を出していました。
そんなある日、ももかの元にある話がやってきてます。それは、デビューしたばっかりの無名アイドルグループに、新メンバーとして入らないかという話でした。
何事にも全力で取り組むももかは、もちろんその話を受け入れ、子役から今度はアイドルとしてデビューすることになりました。
そのアイドルグループは、いろんな壁を乗り越え、たくさんの会場でライブをし、人々に笑顔を届け、いつしか知らない人はいないほどのみんなから愛されるグループになるまで成長します。
しかしもうすぐそのグループは活動を続けて10周年になる頃のことでした。
ももかは0歳から芸能界に入り、子役やアイドルを続けてきて今年で22年になります。
周囲の人々に生きる道を作ってもらってきて、幸せな人生を送ってきたももかでしたが、一般人が社会に出る22歳になる今、自分で選んだ人生を歩んでいきたいという気持ちが強くなってきてしまい、たくさん悩んだ末に、芸能界を引退することを決意します。彼女の引退に多くの人が涙を流し、引退を惜しみましたが、そんなファンのみんなに向けてももかが最後に言った言葉が、遠くの空からみんなのことをいつまでも応援してるから、空は繋がっているからね。と。
そして彼女は、新しい青空へ向かって、新たな人生を歩き始めたのでした。

k183111

あるのどかな村に男の子が住んでいました。男の子はおじいさんと一緒に羊を飼って生活をしていました。ある日村の近くの少し高いところで羊を放していると、狼のような恐ろしいなにかが村に入ろうとしているのが見えました。驚いた男の子は村のみんなに知らせなければ!と急いで村に戻りました。知らせを聞いた村人たちは大慌てで、そのなにかを追い払うための支度をしました。しかし、いくら待っても村にはなにも現れません。日が暮れて、夜になってもなにも起こらなかったので、その日はみんなそれぞれのうちへ帰りました。男の子に、村人たちはまあそんな見間違いをすることもあるさと言いました。不思議な気持ちになりながらうちに帰ると、おじいさんが優しく迎えてくれました。
それから何日かたったある日、羊を放していた男の子は、また村に恐ろしいなにかが入ろうとしているのを見ました。その場におじいさんはいなかったので、あわてて村に戻り、村人たちに知らせました。村人たちは半信半疑ではありましたが、村を守るために支度をしました。しかし、やっぱりなんにも起こりません。日が暮れて、夜になってもなんにも起こらなかったので、その日もみんなそれぞれのうちへ帰りました。男の子に、村人たちは全く気をつけて欲しいもんだ、仕事もできゃしないと言いました。悲しい気持ちになりながらうちに帰ると、おじいさんが頭を撫でてくれました。
また何日かたったある日、男の子は再び村に恐ろしいなにかが入ろうとしているのを見ました。もう誰も信じちゃくれないのではと怖くなりながらも、男の子は村人たちに知らせました。やっぱりもう誰一人信じてはくれません。怒った村人たちは、男の子を村の外へ放り出しました。放り出された男の子は、悲しくなりながら羊たちを放しているところに戻りました。日が暮れてくるまでそこにいて、日が暮れ始めた頃に羊たちを連れて村に戻りました。するとどうしたことでしょう。村には1つも灯りがついていません。いつもは夕ご飯の匂いや楽しそうな音が聞こえてくるのに静まり返っています。不思議な気持ちになりながらうちに帰ると、おじいさんが迎えてくれました。みんながお前を嘘つきだと言っても、私はお前を信じているからね。そう言って男の子を撫でるおじいさんの手はまるで狼の前脚のようでしたが、男の子はそれには気づきませんでした。

j189463

それは、ゆきちゃんが小学2年生のころのことでした。ゆきちゃんのお母さんはお家の庭で野菜づくりをしていました。ゆきちゃんはたまに、お手伝いとして水やりをしていました。庭で作っている野菜は、ミニトマトやナス、きゅうりなどで、食べごろになるとゆきちゃんがしゅうかくします。お母さんはしゅうかくした野菜を使って料理を作ってくれました。しかし、ゆきちゃんは野菜がとても苦手なので、食べることを嫌がり、よく残していました。

ある日、お母さんが新しいミニトマトの苗を買ってきました。お母さんはゆきちゃんに、「ゆきちゃん、今日からこのミニトマトのお母さんはゆきちゃんだよ。」と言って、お母さんはゆきちゃんに苗を渡しました。お母さんとゆきちゃんは一緒に苗を植えました。その日からゆきちゃんは、毎日欠かさず水やりをしました。苗は少しずつ、大きくなっていきました。しかし、ゆきちゃんがある日水をやろうと庭に行くと、苗がしおれているのです。ゆきちゃんは、落ち込みながらお母さんにそのことを話しました。「毎日毎日、水やりをしていたのにどうして。」すると、お母さんは「ミニトマトはお水をあげすぎると、根ぐされしちゃうのよ。ゆきちゃんはお水をあげすぎちゃったのかもしれないね。」と、なぜ苗が枯れたのかを教えてくれました。ゆきちゃんはその時、野菜を育てることのむずかしさを感じました。せっかく育てるなら食べられるようになった野菜を育てたい。そう思ったゆきちゃんはお母さんにたのんで、また新しい苗を買ってもらいました。それから、ゆきちゃんはまた毎日苗に水をやります。こんどはあげすぎないように気をつけました。

大きく育った苗は、きれいな赤色の実をつけました。食べごろになったミニトマトをしゅうかくする時が来て、ゆきちゃんは自分で育てたミニトマトをしゅうかくしました。おかあさんは、「せっかく自分で作ったんだから食べてごらん。」とゆきちゃんに言いました。ゆきちゃんは、目をとじて、おそるおそるミニトマトを口へ運びました。ゆきちゃんは驚きました。きらいだったはずのミニトマトを食べることができたのです。お母さんは「ゆきちゃん、やったね。」と言ってくれました。ゆきちゃんは、とってもうれしい気持ちになりました。それからゆきちゃんは、野菜をのこさず食べるようになりました。