指導教官 野浪正隆教官
大阪教育大学教育学部 小学校教員養成課程 国語専攻
学籍番号 952222 笹尾美香
序 章 | 課題解明の方法 | ||
第一節 | 課題設定の理由 | ||
第二節 | 課題解明の方法 | ||
第一章 | 多様な解釈ができる詩の表現分析 | ||
第一節 | 多様な解釈ができる詩の表現特性についての仮説 | ||
第二節 | 読み手が詩を解釈する上で必要な叙述が不足している詩の分析 | ||
第一項 | 登場人物の心理や作者の考えの叙述がなく、場面の叙述しかない詩について | ||
第二項 | 視点のありかを示す叙述がない詩について | ||
第三項 | 作者が読み手に疑問を投げかけ、その疑問の答えに関わる叙述が明示されていない詩について | ||
第四項 | リズム感を重視して音合わせをしているためか、表現が不適切で意味が曖昧になっている詩について | ||
第三節 | 読み手が詩を解釈する上で必要な叙述は不足していないが、叙述の伝達内容に含みがある詩の分析 | ||
第一項 | 読み手による個々の叙述に対してのウエイトのかけ方次第で多様な解釈が生まれる詩について | ||
第二項 | 場面のある部分がクロ−ズ・アップで叙述されているとも読めることによりその場面の出来事に対する登場人物や作者の捉え方がかかれているともよめる詩について | ||
第三項 | 指示語・代名詞が示す内容が特定しにくい叙述がある詩について | ||
第四項 | 表記の仕方の使い分けにより、その出来事に対する登場人物や作者の考え方がかかれているとも読める詩について | ||
第四節 | 読み手が詩を解釈する上で必要な叙述は不足していないが、叙述の伝達内容が独特である詩の分析 | ||
第一項 | 読み手にとって聞き慣れない言葉が用いられている詩について | ||
第二項 | 読み手にとって作者の表現意図が理解しにくい叙述がある詩について | ||
第五節 | 多様な解釈ができる詩の表現特性の分類 | ||
第六節 | 多様な解釈ができる表現特性が複合している詩について | ||
第二章 | 解釈が多様にならない詩の表現分析 | ||
第一節 | 作品分析 | ||
第二節 | 解釈が多様にならない詩の表現特性 | ||
終 章 | まとめと今後の課題 | ||
第一節 | まとめ | ||
第二節 | 今後の課題 | ||
資料・参考文献・参照文献 | |||
おわりに |
仲なほり |
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げんげのあぜみち、春がすみ、 むかうにあの子が立つてゐた。 あの子はげんげを持つてゐた、 私も、げんげを摘んでゐた。 あの子が笑ふ、と、氣がつけば、 私も知らずに笑つてた。 げんげのあぜみち、春がすみ、 ピイチク雲雀が啼いてゐた。 |
U−145
(a) | 「あの子が笑ふ、と、氣がつけば、私も知らずに笑つてた。」での「あの子」と「私」の心理状態はどのようなものであったか。
|
---|---|
(1) | ‘笑い’が‘仲直り’を暗示している… |
@ | 「あの子」が仲直りの意味を込めて笑いかけたのに対し、それを承知する返事として無意識のうちに「私」も笑っていた。 →無意識的な仲直り |
A | 「あの子はげんげを持つてゐた、私も、げんげを摘んでゐた。」の二人ともがげんげを持っていたことと同様に、二人ともが笑っていた。二人が同じ行為をしているということに、二人ともが自発的に仲直りしようという気持ちが表れており、お互いのその気持ちが瞬時に通じた。 →意識的な仲直り |
B | 「あの子はげんげを持つてゐた、私も、げんげを摘んでゐた。」で、二人ともがげんげを持っているという偶然により、二人の雰囲気が和やかになり、自然と笑いが起こり、仲直りした。 →無意識的な仲直り |
(2) | 相手に親しみを感じている… |
C | 「あの子はげんげを持つてゐた、私も、げんげを摘んでゐた。」の二人ともがげんげを持っていたことと同様に、二人ともが笑っていた。二人が同時に同じ行為をしたという仲の良さに、親しみを感じた。
|
(b) | 「ピイチク雲雀が啼いてゐた。」はどのようなことを表現しているのか。
|
(1) | あの子と私が仲直りしたことを暗示している… |
@ | 雲雀が二人を取り巻いてピイチク鳴いているという、和やかな様子を描写することによって、仲直りできた和やかさを暗示している。 |
A | 「げんげのあぜみち、春がすみ、むかうにあの子が立つてゐた。」で、二人は向かい合って立っていると考えられる。向かい合って立っているということで、二人が喧嘩していることを暗示し、「ピイチク雲雀が啼いてゐた。」で、ひばりの鳴き声を二人一緒に並んで歩きながら聞いているという状況を推測させ、仲直りしたことを暗示している。 |
(2) | ただ単なる場面の叙述 |
B | あの子と私を取り巻く状況のうち、雲雀がピイチク鳴いている様子に特別に焦点を当てて、場面を叙述している。
|
◎ | 全体を通して解釈する上で不適当なもの |
(b)B | …「ピイチク雲雀が啼いてゐた。」を、雲雀がピイチク鳴いているという場面のただ単なる叙述だと捉えると、詩の表現内容が収束しないので解釈として不適当だと考える。 |
(a) | (b) | 解釈 |
---|---|---|
@ | @ | …春霞がけむるげんげのあぜみちの向こうの方に、(私と喧嘩をした)あの子が立っていた。あの子はげんげを持っていて、私もげんげを摘んでいた。あの子が仲直りの意味を込めて笑いかけ、それを承知する返事として無意識のうちに私も笑っていた。春霞がけむるげんげのあぜみちで、私とあの子が仲直りできた和やかさを示すかのように、雲雀が二人を取り巻いてピイチク鳴いている。 |
@ | A | …春霞がけむるげんげのあぜみちの向こうの方に、(私と喧嘩をした)あの子が(喧嘩中であることを暗示するかのように私と向かい合わせになるような位置で)立っていた。あの子はげんげを持っていて、私もげんげを摘んでいた。あの子が仲直りの意味を込めて笑いかけ、それを承知する返事として無意識のうちに私も笑っていた。春霞がけむり、ピイチク雲雀が鳴いているげんげのあぜみちを、無事仲直りできた二人は一緒に並んで歩いている。 |
A | @ | …春霞がけむるげんげのあぜみちの向こうの方に、(私と喧嘩をした)あの子が立っていた。あの子はげんげを持っていて、私もげんげを摘んでいた。そして気がつくとあの子も私も笑っていた。二人ともが同じ行為をしているということによって、お互いに相手と仲直りをしたいと思っているのだということを感じ、瞬時に仲直りをした。春霞がけむるげんげのあぜみちで、私とあの子が仲直りできた和やかさを示すかのように、雲雀が二人を取り巻いてピイチク鳴いている。 |
A | A | …春霞がけむるげんげのあぜみちの向こうの方に、(私と喧嘩をした)あの子が立っていた。あの子はげんげを持っていて、私もげんげを摘んでいた。そして気がつくとあの子も私も笑っていた。二人ともが同じ行為をしているということによって、お互いに相手と仲直りをしたいと思っているのだということを感じ、瞬時に仲直りをした。春霞がけむり、ピイチク雲雀が鳴いているげんげのあぜみちを、無事仲直りできた二人は一緒に並んで歩いている。 |
B | @ | …春霞がけむるげんげのあぜみちの向こうの方に、(私と喧嘩をした)あの子が立っていた。あの子はげんげを持っていて、私もげんげを摘んでいた。喧嘩をしていた二人ともがげんげを持っているという偶然により、二人の雰囲気が和やかになり、自然と笑いが起こり、仲直りした。春霞がけむるげんげのあぜみちで、私とあの子が仲直りできた和やかさを示すかのように、雲雀が二人を取り巻いてピイチク鳴いている。 |
B | A | …春霞がけむるげんげのあぜみちの向こうの方に、(私と喧嘩をした)あの子が立っていた。あの子はげんげを持っていて、私もげんげを摘んでいた。喧嘩をしていた二人ともがげんげを持っているという偶然により、二人の雰囲気が和やかになり、自然と笑いが起こり、仲直りした。春霞がけむり、ピイチク雲雀が鳴いているげんげのあぜみちを、無事仲直りできた二人は一緒に並んで歩いている。 |
もくせい |
---|
もくせいのにほひが 庭いつぱい。 表の風が、 御門のとこで、 はいろか、やめよか、 相談してた。 |
T−32
(a) | なぜ表の風が、庭に入ろうかやめようか、と迷って相談したのか。 |
---|---|
○ | 「表の風」の視点でかかれていると解釈する場合 |
@ | 表の風は良いにおいに包まれたいので入ろうか、においを追い出してしまうことは残念なので入らないでおこうか、と迷って相談している。 |
A | 表の風は良いにおいを庭の外へ追い出すといういたずらをするために入ろうか、においを追い出してしまうことは残念なので入らないでおこうかと、迷って相談している。 |
B | 表の風は庭の外に居る者にも良いにおいを分けてあげるために入ろうか、良いにおいを庭だけに留めておくために入らないでおこうか、と迷って相談している。 |
C | 良いにおいに包まれたいので入ろうか、でも入ってしまうと庭から立ち去ることが惜しくなって、風としての“吹く”という役割を果たせなくなりそうだから入らないでおこうか、と迷って相談している。 |
○ | “庭に居る人”または「庭」の視点でかかれていると解釈する場合 |
D | 門の所で、表の風が良いにおいに包まれたいので入ろうか、においを追い出してしまうことは残念なので入らないでおこうかと迷って相談している光景が見える。
|
◎ | 作品全体を通しての解釈 |
@ | …庭はもくせいの良いにおいでいっぱいなので、表の風はとても入りたいと思っているが、風である自分達が庭に入るともくせいのにおいを庭から追い出してしまうことになる。良いにおいに包まれたいので入ろうか、においを追い出してしまうことは残念なので入らないでおこうか、と迷って相談している。 |
A | …庭はもくせいの良いにおいでいっぱいであり、風である自分達が庭に入るともくせいのにおいを庭から追い出さすことになる。良いにおいを庭の外へ追い出すといういたずらをするために入ろうか、においを追い出してしまうことは残念なので入らないでおこうか、と迷って相談している。 |
B | …庭はもくせいの良いにおいでいっぱいであり、風である自分達が庭に入るともくせいのにおいを庭から追い出さすことになる。庭の外に居る者にも良いにおいを分けてあげるために入ろうか、良いにおいを庭だけに留めておくために入らないでおこうか、と迷って相談している。 |
C | …庭はもくせいの良いにおいでいっぱいである。良いにおいに包まれたいので入ろうか、でも入ってしまうと庭から立ち去ることが惜しくなって、風としての“吹く”という役割を果たせなくなりそうだから入らないでおこうか、と迷って相談している。 |
D | …庭はもくせいの良いにおいでいっぱいであり、表の風に入られるとせっかくの良いにおいが庭の外に追い出されてしまう。門の所で、表の風が良いにおいに包まれたいので入ろうか、においを追い出してしまうことは残念なので入らないでおこうかと迷って相談している光景が見える。 |
薔薇の根 |
---|
はじめて咲いた薔薇は 紅い大きな薔薇だ。 土のなかで根が思ふ 「うれしいな、 うれしいな。」 二年めにや、三つ、 紅い大きな薔薇だ。 土のなかで根がおもふ 「また咲いた、 また咲いた。」 三年めにや、七つ、 紅い大きな薔薇だ。 土のなかで根がおもふ 「はじめのは なぜ咲かぬ。」 |
U−22
(a) | 「はじめの」とは何を指すのか。 |
---|---|
@ | 初めて咲いた薔薇のつぼみより前についていた、咲かなかったつぼみ |
A | 初めて咲いた時の薔薇の花 |
(b) | 「はじめのは なぜ咲かぬ」とはどういう意味か。 |
@ | 初めて咲いた薔薇のつぼみより前についていた、咲かなかったつぼみに対して、なぜ咲かなかったのかとただ単に疑問を抱いている。 |
A | 初めて咲いた薔薇のつぼみより前についていた、咲かなかったつぼみに対して、なぜ咲かなかったのかと疑問を抱いている。二年目までは薔薇の花が咲いたことに喜んでいるが、三年続けて咲くと、咲くことがなかば当たり前になり、咲いた喜びが薄れたばかりでなく、以前の咲かなかった薔薇のつぼみに対して咲かなかったことへの不満が生じている。満たされていくとどんどん要求がエスカレ−トしてしまうという根の慢心を表している。 |
B | 初めて咲いた時の薔薇の花はどうしてまた再び咲かないのか、と疑問を抱いている |
◎ | 全体を通して解釈する上で不適当な組合せ | |
(a) | (b) | |
@ | B | …「はじめの」が指す内容が、(a)は‘初めて咲いた薔薇のつぼみより前についていた、咲かなかったつぼみ’(b)は‘初めて咲いた時の薔薇の花’と、それぞれ違う。そのため、(a)(b)が含まれているこの二行を解釈することは、不可能であるといえる。 |
A | @ | …「はじめの」が指す内容が、(a)は‘初めて咲いた時の薔薇の花’(b)は‘初めて咲いた薔薇のつぼみより前についていた、咲かなかったつぼみ’と、それぞれ違う。そのため、(a)(b)が含まれているこの二行を解釈することは、不可能であるといえる。 |
A | A | …「はじめの」が指す内容が、(a)は‘初めて咲いた時の薔薇の花’(b)は‘初めて咲いた薔薇のつぼみより前についていた、咲かなかったつぼみ’と、それぞれ違う。そのため、(a)(b)が含まれているこの二行を解釈することは、不可能であるといえる。 |
◎ | 全体を通しての解釈 | |
(a) | (b) | |
---|---|---|
@ | @ | …初めて咲いた薔薇は、赤くて大きな薔薇だ。土の中で根が「うれしいな、うれしいな。」と思っている。 二年目には三つ咲いた。赤くて大きな薔薇だ。土の中で根が「また咲いた、また咲いた。」と思っている。 三年目には七つ咲いた。赤くて大きな薔薇だ。土の中で根が「初めて咲いた薔薇のつぼみより前についていた、咲かなかったつぼみはなぜ咲かなかったのか。」とただ単に疑問を抱いている。 |
@ | A | …初めて咲いた薔薇は、赤くて大きな薔薇だ。土の中で根が「うれしいな、うれしいな。」と思っている。 二年目には三つ咲いた。赤くて大きな薔薇だ。土の中で根が「また咲いた、また咲いた。」と思っている。 三年目には七つ咲いた。赤くて大きな薔薇だ。土の中で根が「初めて咲いた薔薇のつぼみより前についていた、咲かなかったつぼみは、なぜ咲かなかったのか。」と疑問を抱いている。二年目までは薔薇の花が咲いたことに喜んでいるが、三年続けて咲くと、咲くことがなかば当たり前になり、咲いた喜びが薄れたばかりでなく、以前の咲かなかった薔薇のつぼみに対して咲かなかったことへの不満が生じている。満たされていくとどんどん要求がエスカレ−トしてしまうという根の慢心を表している。 |
A | B | …初めて咲いた薔薇は、赤くて大きな薔薇だ。土の中で根が「うれしいな、うれしいな。」と思っている。 二年目には三つ咲いた。赤くて大きな薔薇だ。土の中で根が「また咲いた、また咲いた。」と思っている。 三年目には七つ咲いた。赤くて大きな薔薇だ。土の中で根が「初めて咲いた時の薔薇の花は、どうしてまた再び咲かないのか。」と疑問を抱いている。 |
⇒ 「はじめのは なぜ咲かぬ。」と、根が疑問を持ったままで詩が結ばれている。この部 分は、根の視点を通して作者が読み手に対し、疑問を投げかけていると捉えられる。し かし、その疑問の答えを読み手が考える上で必要な叙述(その疑問の答えに関わる叙述)が明示されていない。そのため、その疑問の答えを読み手が探ることになり、以上のように解釈が多様になるのである。
どの全体を通しての解釈も、この詩の解釈として成り立つと考えられる。
私と小鳥と鈴と |
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私が両手をひろげても、 お空はちつとも飛べないが、 飛べる小鳥は私のやうに、 地面を速くは走れない。 私がからだをゆすつても、 きれいな音はでないけど、 あの鳴る鈴は私のやうに たくさんな唄は知らないよ。 鈴と、小鳥と、それから私、 みんなちがつて、みんないい。 |
V−81
(a) | 「みんなちがつて、みんないい。」はどのような意味か。 |
---|---|
@ | それぞれにできることとできないことがある。個性を認め、個性があることは素晴らしいのであり、みんな違っているからこそ、みんないいのである。 |
A | できないことがあっても、できることが必ずあるのだから、できないことがあっても気にすることはなく、みんな違っていてもみんないいのである。 |
B | できないことがある、できることがあるにかかわらず、それぞれ存在そのものが素晴らしいのである。 |
⇒「みんなちがつて、みんないい。」には、登場人物の心理や作者の考えの明示の補助の働きをする接続助詞が欠落しているため、接続助詞が入るべき場所の先行部分と後続部分との関係を促す叙述がない。だから、読み手が独自に接続助詞を補ってこの部分を解釈せざるを得ない結果、解釈が多様になるのである。
「みんなちがつて、 みんないい。」@ | 私が両手をひろげてもお空をちっとも飛べないけれど、お空を飛べる小鳥は私のように、地面を速くは走れない。私が体をゆすってもきれいな音はでないけれど、あのきれいな音の鳴る鈴は私のようにたくさんの唄は知らないよ。鈴と小鳥とそれから私、それぞれにできることとできないことがある。それぞれの個性を認め、それぞれに個性があることは素晴らしいことである。みんな違っているからこそ、みんないいのである。 |
A | 私が両手をひろげてもお空をちっとも飛べないけれど、お空を飛べる小鳥は私のように、地面を速くは走れない。私が体をゆすってもきれいな音はでないけれど、あのきれいな音の鳴る鈴は私のようにたくさんの唄は知らないよ。鈴と小鳥とそれから私、できないことがあっても、できることが必ずある。できるに超したことはないけれどできないことがあっても気にすることはない。みんな違っていてもみんないいのである。 |
B | 私が両手をひろげてもお空をちっとも飛べないけれど、お空を飛べる小鳥は私のように、地面を速くは走れない。私が体をゆすってもきれいな音はでないけれど、あのきれいな音の鳴る鈴は私のようにたくさんの唄は知らないよ。鈴と小鳥とそれから私、できないことがある、できることがあるにかかわらず、それぞれ存在そのものが素晴らしいのである。 |
げんげの葉の唄 |
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花は摘まれて どこへゆく ここには青い空があり うたふ雲雀があるけれど あのたのしげな旅びとの 風のゆくてが おもはれる 花のつけ根をさぐつてる あの愛らしい手のなかに 私を摘む手はないか知ら |
U−107
(a) | 「花のつけ根をさぐつてる あの愛らしい手のなかに 私を摘む手はないか知ら」で、 「私」は摘み取ってほしいと思っているのか、思っていないのか。 |
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(1) | 「花のつけ根をさぐつてる あの愛らしい手」の部分にウエイトをかけて解釈した場合 |
@ | 思っている… 「花のつけ根をさぐつてる あの愛らしい手」の叙述より、愛らしい手がいつも求めているのは美しいげんげの花なのであり、美しくない葉である私ではない。私だって、あの愛らしい手に求められるような存在になりたいと思っている。 |
(2) | 「あのたのしげな旅びとの 風のゆくてが おもはれる」の部分にウエイトをかけて解釈した場合 |
A | 思っていない… ここのげんげ畑には、青い空があり、雲雀がうたっているというのどかさがあるけれど、摘まれて連れていかれる先にはいかなることが待ち受けているか全くわからない。私にとって「私を摘む手」は、「愛らしい手」なのではなく、いかなることが待ち受けているのかわからない所に自分を連れていく、いわば恐ろしい手なのである。だから、私は摘まれたくないと思っているのである。 ⇒「私を摘む手」と「愛らしい手」は《私を摘む手=愛らしくない手(≒恐ろしい手》のように対比していると捉えることができる。 |
B | 複雑な気持ちである… 「あのたのしげな旅びとの」の叙述より、摘まれたげんげは楽しげに見えるが、摘まれて連れていかれる先にはいかなることが待ち受けているか全くわからいという不安がある。しかし、「あの愛らしい手」が、美しくない葉である私に見向きもせずに摘み取ってくれないことに、さびしさも感じている。 |
@ | げんげの花は摘まれてどこへ行くのだろう。このげんげ畑には青い空があり、雲雀がうたっているというのどかさがある。あの摘まれて楽しげなげんげの花の、風の行く手がおもわれる。あの愛らしい手がいつも探し求めているのは美しいげんげの花なのであり、美しくない葉である私ではない。私だって、あの愛らしい手に求められるような存在になりたい。私を摘んでくれる手はないのかしら。あったらいいのになあ。 |
A | げんげの花は摘まれてどこへ行くのだろう。このげんげ畑には青い空があり、雲雀がうたっているというのどかさがあるけれど、あの摘まれて楽しげなげんげの花の、風の行く手がおもわれる。摘まれて連れていかれる先にはいかなることが待ち受けているか全くわからないからである。げんげの花のつけ根を探っているあの愛らしい手の中に、いかなることが待ち受けているのかわからない所に自分を連れていく、いわば恐ろしい手(私を摘む手)はないかしら。なかったらいいのになあ。 |
B | げんげの花は摘まれてどこへ行くのだろう。このげんげ畑には青い空があり、雲雀がうたっているというのどかさがあるけれど、あの摘まれて楽しげなげんげの花の、風の行く手がおもわれる。摘まれて連れていかれる先にはいかなることが待ち受けているか全くわからず、不安だけれど、「あの愛らしい手」がげんげの花のつけ根ばかりを探し求め、美しくない葉である私に見向きもせず摘み取ってくれないことに、さびしい気もするなあ。私を摘み取ってほしくない気持ちと摘み取ってほしい気持ちの両方の複雑な気持ちでいっぱいだなあ。 |
雀のかあさん |
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子供が 子雀つかまへた。 その子の かあさん 笑つてた。 雀の かあさん それみてた。 お屋根で 鳴かずに それ見てた。 |
T−17
(a) | 「お屋根で 鳴かずに それ見てた。」はどのようなことを表しているのか。 |
---|---|
@ | 雀のかあさんにとって、自分の子供が人間の子供に目の前で捕まえられ、その人間の子供の母親が笑ってそれを見ているという光景はいたたまれないものである。しかし雀のかあさんはそれをどうすることもできない。ただ黙って見ているしかないのである。雀のかあさんの心情を叙述するのに「鳴かずに それ見てた。」という部分をクロ−ズ・アップで叙述している。その結果、我が子が捕まえられているのを見ていながらそれをどうすることもできない悲しさ・やるせなさを表している。 →「鳴かずに それ見てた。」の部分がクロ−ズ・アップで叙述されていることにより、自分の子供が人間の子供に捕まえられた出来事に対する雀のかあさんの心情が表されている。 |
A | 雀のかあさんとその子供、人間の子供とその母親を取り巻く状況のうち、自分の子供が人間の子供に捕まえられる出来事を屋根で鳴かないで見ている雀のかあさんの様子に焦点を当てて、場面を叙述している。 →ただ単なる場面の叙述 |
@ | …(人間の)子供が子雀を捕まえた。その子(人間の子供)のかあさんは笑っていた。雀のかあさんはその様子を見ていた。雀のかあさんは、子供を助けるために何をすることもできない悲しさ・やるせなさでいっぱいの気持ちでその様子を見ていた。屋根で鳴かずにその様子を見ていた。 |
A | …(人間の)子供が子雀を捕まえた。その子(人間の子供)のかあさんは笑っていた。雀のかあさんはその様子を見ていた。屋根で鳴かずにその様子を見ていた。 |
海とかもめ |
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海は青いとおもつてた、 かもめは白いと思つてた、 だのに、今見る、この海も、 かもめのはねも、ねずみ色。 みな知つてるとおもつてた、 だけどもそれはうそでした。 空は青いと知つてます、 雪は白いと知つてます。 みんな見てます、知つてます、 けれどもそれもうそか知ら。 |
T−164
(a) | 「みな知つてるとおもってた、」の「みな」は何を指すのか。 |
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@ | 「海」や「かもめ」のこと |
A | 「海」や「かもめ」を含め、今見える世界全体 |
×B | 語り手を含めた世間一般の人々→一・二連で、語り手自身が(a)の@またはAの内容を知っていると思い込んでいた事実はいえているが、世間一般の人々も語り手と同じように思い込んでいたとはいえない。「みな知つてるとおもってる」であれば、Bも解釈の一例となり得る。 |
(b) | 「だけどもそれはうそでした。」の「それ」は何を指すのか。 |
@ | 「海」や「かもめ」のことをきちんと知っているということ |
A | 「海は青い」「かもめは白い」ということ
|
(c) | 「みんな見てます、知つてます、」の「みんな」は何を指すのか。 |
@ | 「空」「雪」を含めた、実際に見たことがある他のどんなものもすべて |
A | 「海」「かもめ」「空」「雪」 |
B | 「空」や「雪」のこと |
C | 「空は青い」「雪は白い」ということ
|
(d) | 「けれどもそれもうそか知ら。」の「それ」は何を指すのか。 |
@ | 「空」「雪」に限らず、他のどんなものに対しても、そのものの実際の姿をきちんと見て知っている、という認識自体→人間は、そのものの実際の姿をきちんと見て知っていると思い込んでいることがある。その思い込みは、“…は〜だ”いう通念を、その人が無条件に受容してしまっていることから生じる。 |
A | 「空」「雪」のことをきちんと見て知っているということ。 |
B | 「空は青い」「雪は白い」ということ |
(a) | (b) | (c) | (d) | |
---|---|---|---|---|
@ | A | …(a)(b)が含まれているこの二行を解釈しようとすると、 〈海やかもめのことをきちんと知っていると思ってた。けれども海は青く、かもめは白いということはうそでした。〉 となり、不自然である。 | ||
A | @ | …(a)(b)が含まれているこの二行を解釈しようとすると、 〈「海」や「かもめ」を含め、今見える世界全体のことをきちんと知っていると思ってた。けれども「海」や「かもめ」のことをきちんと知っているということはうそでした。〉 となり、不自然である。 | ||
@ | A | …(c)(d)が含まれているこの二行を解釈しようとすると、 〈「空」「雪」を含めた、実際に見たことがある他のどんなものもすべて見ていて、知ってます。けれども「空」「雪」のことをきちんと見て知っているということもうそかしら。〉 となり、不自然である。 | ||
@ | B | …(c)(d)が含まれているこの二行を解釈しようとすると、 〈「空」「雪」を含めた、実際に見たことがある他のどんなものもすべて見ていて、知ってます。けれども「空は青い」「雪は白い」ということもうそかしら。〉 となり、不自然である。 | ||
A | @ | …(c)(d)が含まれているこの二行を解釈しようとすると、 〈「海」「かもめ」「空」「雪」はきちんと見て知ってます。けれども「空」「雪」に限らず他のどんなものに対しても、そのものの実際の姿をきちんと見て知っている、という認識自体もうそかしら。〉 となり、不自然である。 | ||
A | A | …(c)(d)が含まれているこの二行を解釈しようとすると、 〈「海」「かもめ」「空」「雪」はきちんと見て知ってます。けれども「空」「雪」のことをきちんと見て知っているということもうそかしら。〉 となり、不自然である。 | ||
B | @ | …(c)(d)が含まれているこの二行を解釈しようとすると、 〈「空」や「雪」はきちんと見て知ってます。けれども「空」「雪」に限らず他のどんなものに対しても、そのものの実際の姿をきちんと見て知っている、という認識自体もうそかしら。〉 となり、不自然である。 | ||
C | @ | …(c)(d)が含まれているこの二行を解釈しようとすると、 〈「空は青い」「雪は白い」ということはきちんと見て知ってます。けれども「空」「雪」に限らず他のどんなものに対しても、そのものの実際の姿をきちんと見て知っている、という認識自体もうそかしら。〉 となり、不自然である。 |
(a) | (b) | (c) | (d) | |
---|---|---|---|---|
@ | @ | @ | @ | … 海は青いと思っていた。かもめは白いと思っていた。それなのに、今見るこの海もかもめの羽も、ねずみ色をしているなあ。海やかもめのことを知っていると思っていた。だけど海やかもめのことをきちんと知っているということはうそだった。 空は青いと知っています。雪は白いと知っています。空や雪を含めた、実際に見たことがある他のどんなものもすべてをきちんと見て知っています。けれども、空や雪に限らず他のどんなものに対してもそのものの実際の姿をきちんと見て知っている、という認識自体もうそなのかしら。 |
@ | @ | A | B | … 海は青いと思っていた。かもめは白いと思っていた。それなのに、今見るこの海もかもめの羽も、ねずみ色をしているなあ。海やかもめのことを知っていると思っていた。だけど海やかもめのことをきちんと知っているということはうそだった。 空は青いと知っています。雪は白いと知っています。海やかもめや空や雪をきちんと見て知っています。けれども空は青い、雪は白いということもうそかかしら。 |
@ | @ | B | A | … 海は青いと思っていた。かもめは白いと思っていた。それなのに、今見るこの海もかもめの羽も、ねずみ色をしているなあ。海やかもめのことを知っていると思っていた。だけど海やかもめのことをきちんと知っているということはうそだった。 空は青いと知っています。雪は白いと知っています。空や雪をきちんと見て知ってます。けれども空や雪のことをきちんと見て知っているということもうそなのかしら。 |
@ | @ | B | B | … 海は青いと思っていた。かもめは白いと思っていた。それなのに、今見るこの海もかもめの羽も、ねずみ色をしているなあ。海やかもめのことを知っていると思っていた。だけど海やかもめのことをきちんと知っているということはうそだった。 空は青いと知っています。雪は白いと知っています。空や雪をきちんと見て知ってます。けれども空は青い、雪は白いということもうそなのかしら。 |
@ | @ | C | A | … 海は青いと思っていた。かもめは白いと思っていた。それなのに、今見るこの海もかもめの羽も、ねずみ色をしているなあ。海やかもめのことを知っていると思っていた。だけど海やかもめのことをきちんと知っているということはうそだった。 空は青いと知っています。雪は白いと知っています。空は青い、雪は白いということはきちんと見て知っています。けれども空や雪のことをきちんと見て知っているということもうそなのかしら。 |
@ | @ | C | B | … 海は青いと思っていた。かもめは白いと思っていた。それなのに、今見るこの海もかもめの羽も、ねずみ色をしているなあ。海やかもめのことを知っていると思っていた。だけど海やかもめのことをきちんと知っているということはうそだった。 空は青いと知っています。雪は白いと知っています。空は青い、雪は白いということはきちんと見て知っています。けれども空は青い、雪は白いということもうそなのかしら。 |
A | A | @ | @ | … 海は青いと思っていた。かもめは白いと思っていた。それなのに、今見るこの海もかもめの羽も、ねずみ色をしているなあ。海やかもめを含め、今見える世界全体のことをきちんと知っていると思ってた。けれども海は青い、かもめは白いということはうそだった。 空は青いと知っています。雪は白いと知っています。空や雪を含めた、実際に見たことがある他のどんなものもすべてをきちんと見て知っています。けれども、空や雪に限らず他のどんなものに対してもそのものの実際の姿をきちんと見て知っている、という認識自体もうそなのかしら。 |
A | A | A | B | … 海は青いと思っていた。かもめは白いと思っていた。それなのに、今見るこの海もかもめの羽も、ねずみ色をしているなあ。海やかもめを含め、今見える世界全体のことをきちんと知っていると思ってた。けれども海は青い、かもめは白いということはうそだった。 空は青いと知っています。雪は白いと知っています。海やかもめや空や雪をきちんと見て知っています。けれども空は青い、雪は白いということもうそかしら。 |
A | A | B | A | … 海は青いと思っていた。かもめは白いと思っていた。それなのに、今見るこの海もかもめの羽も、ねずみ色をしているなあ。海やかもめを含め、今見える世界全体のことをきちんと知っていると思ってた。けれども海は青い、かもめは白いということはうそだった。 空は青いと知っています。雪は白いと知っています。空や雪をきちんと見て知ってます。けれども空や雪のことをきちんと見て知っているということもうそなのかしら。 |
A | A | B | B | … 海は青いと思っていた。かもめは白いと思っていた。それなのに、今見るこの海もかもめの羽も、ねずみ色をしているなあ。海やかもめを含め、今見える世界全体のことをきちんと知っていると思ってた。けれども海は青い、かもめは白いということはうそだった。 空は青いと知っています。雪は白いと知っています。空や雪をきちんと見て知ってます。けれども空は青い、雪は白いということもうそなのかしら。 |
A | A | C | A | … 海は青いと思っていた。かもめは白いと思っていた。それなのに、今見るこの海もかもめの羽も、ねずみ色をしているなあ。海やかもめを含め、今見える世界全体のことをきちんと知っていると思ってた。けれども海は青い、かもめは白いということはうそだった。 空は青いと知っています。雪は白いと知っています。空は青い、雪は白いということはきちんと見て知っています。けれども空や雪のことをきちんと見て知っているということもうそなのかしら。 |
A | A | C | B | … 海は青いと思っていた。かもめは白いと思っていた。それなのに、今見るこの海もかもめの羽も、ねずみ色をしているなあ。海やかもめを含め、今見える世界全体のことをきちんと知っていると思ってた。けれども海は青い、かもめは白いということはうそだった。 空は青いと知っています。雪は白いと知っています。空は青い、雪は白いということはきちんと見て知っています。けれども空は青い、雪は白いということもうそなのかしら。 |
お堀のそば |
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お堀のそばで逢うたけど、 知らぬかほして水みてた。 きのふ、けんくわはしたけれど、 けふはなんだかなつかしい。 につと笑つてみたけれど、 知らぬ顔して水みてた。 笑つた顔はやめられず、 つッと、なみだも、止められず、 私はたつたとかけ出した、 小石が縞になるほどに。 |
T−104
(a) | 「知らぬかほして水みてた。」と「知らぬ顔して水みてた。」でなぜ「かほ」と「顔」で表記の仕方が違うのか。
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@ | 一連の「知らぬかほして水みてた。」時点での「私」は、けんかした手前、決まりが悪かったから相手に対して知らん顔をしていた。そして、相手も自分と同じような心境で知らん顔をしていたのだと思っていた。だから、仲直りの意味も込めて「私」は、にっと笑いかけてみたのだけれど、相手は知らん顔をしたままだった。自分とは違って相手に仲直りの意志はなかったのである。一連・三連とも“知らん顔をして水を見ていた”こと自体に変わりないが、その行動が持つ意味やその行動から受ける「私」の心境は、全く違っている。表記の仕方を変えることで、その違いを色濃く表していると考えられる。 * 一・三連それぞれの“知らん顔をして水を見ていた。”という行動が持つ意味の違いやその行動から受ける「私」の心境の違いと表記の仕方の違いの関係
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A | 特別な意図があって違う表記の仕方をしたわけではない。 |
@ | …お堀のそばで(昨日けんかした相手と)会ったけれど、昨日けんかをした手前、決まりが悪いのでお互い知らん顔をして(お堀の)水を見ていた。昨日けんかはしたけれど、今日はそれがなんだか懐かしい気持ちがするなあ。仲直りの意味も込めて勇気を出してにっと笑いかけてみたけれど、悲しくも相手は変わらず知らん顔で(お堀の)水を見ていたままだった。仲直りできたらいいなあと思って笑った顔はやめられず、そして悲しさのあまりつっと流れる涙も止められない。私は、道に敷きつめられている小石が縞のようになるぐらい、たったと駆け出さずにはいられなかった。 |
A | …お堀のそばで(昨日けんかした相手と)会ったけれど、お互い知らん顔をして(お堀の)水を見ていた。昨日けんかはしたけれど、今日はそれがなんだか懐かしい気持ちがするなあ。仲直りの意味も込めてにっと笑いかけてみたけれど、相手は変わらず知らん顔で(お堀の)水を見てたままだった。仲直りできたらいいなあと思って笑った顔はやめられず、そして悲しさのあまりつっと流れる涙も止められない。私は、道に敷きつめられている小石が縞のようになるぐらい、たったと駆け出さずにはいられなかった。 |
石ころ |
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きのふは子供を ころばせて けふはお馬を つまづかす。 あしたは誰が とほるやら。 田舎のみちの 石ころは 赤い夕日に けろりかん。 |
T−97
(a) | 「田舎のみちの 石ころは 赤い夕日に けろりかん。」とはどういう様子を表しているか。 |
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@ | 自分のせいでまわりがどうなろうともいっこうに気にしない石ころの様子。 |
A | 自分のせいでいろいろなものを転ばせてしまうことに対し、自身の存在に負い目を感じつつも強がる石ころの様子。 |
B | いろいろなものが自分につまづいて転ぶことを楽しんでいる石ころの様子。 |
C | 小さなものでもこれだけ力があるのだということで、自身の存在感をアピ−ルし、自身を誇りに思っている石ころの様子。 |
@ | …昨日は子供を転ばせ、今日は馬をつまづかせる石ころ。その石ころに明日は誰がつまづき、転ばされるのだろう。しかし石ころを見ていると、石ころ自身は、自分のせいでまわりがどうなろうともいっこうに気にしない様子に見えるなあ。そんな様子で石ころは赤い夕日に照られているように見えるなあ。 |
A | …昨日は子供を転ばせ、今日は馬をつまづかせる石ころ。その石ころに明日は誰がつまづき、転ばされるのだろう。石ころを見ていると、このことに対して石ころ自身は、自分の存在に負い目を感じつつも強がっている様子に見えるなあ。そんな様子で赤い夕日に照られているように見えるなあ。 |
B | …昨日は子供を転ばせ、今日は馬をつまづかせる石ころ。その石ころに明日は誰がつまづき、転ばされるのだろう。石ころを見ていると、このことに対して石ころ自身は、楽しく思っている様子に見えるなあ。そんな様子で赤い夕日に照られているように見えるなあ。 |
C | …昨日は子供を転ばせ、今日は馬をつまづかせる石ころ。その石ころに明日は誰がつまづき、転ばされるのだろう。石ころを見ていると、このことに対して石ころ自身は、こんな小さな自分でも子供や馬などの大きなものをつまづかせ、転ばせるほどの力を持っているのだということで自身の存在感をアピ−ルし、誇りに思っている様子に見えるなあ。そんな様子で赤い夕日に照られているように見えるなあ。 |
ぬかるみ |
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この裏まちの ぬかるみに、 青いお空が ありました。 とほく、とほく、 うつくしく、 澄んだお空が ありました。 この裏まちの ぬかるみは、 深いお空で ありました。 |
U−14
(a) | 「この裏まちの ぬかるみは、 深いお空で ありました。」とはどういう意味か。 |
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@ | この裏町にあるぬかるみは、深いお空のようでありました。 |
A | この裏町にあるぬかるみには、深いお空が映っていました。 |
B | この裏町にあるぬかるみは、深いお空そのものでありました。 |
@ | …この裏町のぬかるみに、青いお空がありました。遠い遠い所に、美しく澄んだお空がありました。この裏町にあるぬかるみは、深いお空のようでありました。 |
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A | …この裏町のぬかるみに、青いお空がありました。遠い遠い所に、美しく澄んだお空がありました。この裏町にあるぬかるみには、深いお空が映っていました。 |
B | …この裏町のぬかるみに、青いお空がありました。遠い遠い所に、美しく澄んだお空がありました。この裏町にあるぬかるみは、深いお空そのものでありました。 |
◎ | (a)(2) | 視点のありかを示す叙述がないので、読み手が視点を勝手に定めて読み深めることになり、作品全体の解釈が分かれる。 |
(c)(1) | 読み手にとって聞き慣れない言葉(作者の造語と思われる言葉も含む) が用いられているため、読み手はその言葉を理解することが難しく、読 み手自身が好む読みをし、作品全体の解釈が分かれる。 の二つの表現特性が複合している詩 |
石ころ |
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きのふは子供を ころばせて けふはお馬を つまづかす。 あしたは誰が とほるやら。 田舎のみちの 石ころは 赤い夕日に けろりかん。 |
T−97
(a) | 一連の視点は誰か。 |
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@ | 作者 |
A | 石ころを見ている人 |
B | 人間一般 |
⇒ | 石ころへの心理的距離に@>A>B>のような違いがあるが、@ABとも客観視点としては同類であり、全体を通して解釈する上ではあまり違いが生じないので、これら@ABをまとめて@’とする。 |
C | 石ころ ⇒限定視点 |
(b) | 「田舎のみちの 石ころは 赤い夕日に けろりかん。」とはどういう様子を表しているか。 |
@ | 自分のせいでまわりがどうなろうともいっこうに気にしない石ころの様子。 |
A | 自分のせいでいろいろなものを転ばせてしまうことに対し、自身の存在に負い目を感じつつも強がる石ころの様子。 |
B | いろいろなものが自分につまづいて転ぶことを楽しんでいる石ころの様子。 |
C | 小さなものでもこれだけ力があるのだということで、自身の存在感をアピ−ルし、自身を誇りに思っている石ころの様子。 |
(a) | (b) | 全体を通しての解釈 |
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@’ | @ | …昨日は子供を転ばせ、今日は馬をつまづかせる石ころ。その石ころに明日は 誰がつまづき、転ばされるのだろう。しかし石ころを見ていると、石ころ自 身は、自分のせいでまわりがどうなろうともいっこうに気にしない様子に見 えるなあ。そんな様子で石ころは赤い夕日に照られているように見えるなあ |
@’ | A | …昨日は子供を転ばせ、今日は馬をつまづかせる石ころ。その石ころに明日は誰がつまづき、転ばされるのだろう。石ころを見ていると、このことに対して石ころ自身は、自分の存在に負い目を感じつつも強がっている様子に見えるなあ。そんな様子で赤い夕日に照られているように見えるなあ。 |
@’ | B | …昨日は子供を転ばせ、今日は馬をつまづかせる石ころ。その石ころに明日は誰がつまづき、転ばされるのだろう。石ころを見ていると、このことに対して石ころ自身は、楽しく思っている様子に見えるなあ。そんな様子で赤い夕日に照られているように見えるなあ。 |
@’ | C | …昨日は子供を転ばせ、今日は馬をつまづかせる石ころ。その石ころに明日は誰がつまづき、転ばされるのだろう。石ころを見ていると、このことに対して石ころ自身は、こんな小さな自分でも子供や馬などの大きなものをつまづかせ、転ばせるほどの力を持っているのだということで自身の存在感をアピ−ルし、誇りに思っている様子に見えるなあ。そんな様子で赤い夕日に照られているように見えるなあ。 |
C | @ | …昨日は子供を転ばせ、今日は馬をつまづかせた。明日は誰が通り、私(=石ころ)につまづいたり、転んだりするのだろう。(石ころの視点) 石ころを見ていると、石ころ自身は、自分のせいでまわりがどうなろうともいっこうに気にしない様子に見えるなあ。そんな様子で石ころは赤い夕日に照られているように見えるなあ。(作者または語り手の視点) |
C | A | …昨日は子供を転ばせ、今日は馬をつまづかせた。明日は誰が通り、私(=石ころ)につまづいたり、転んだりするのだろう。(石ころの視点) 石ころを見ていると、このことに対して石ころ自身は、自分の存在に負い 目を感じつつも強がっている様子に見えるなあ。そんな様子で赤い夕日に照られているように見えるなあ。(作者または語り手の視点) |
C | B | …昨日は子供を転ばせ、今日は馬をつまづかせた。明日は誰が通り、私(=石ころ)につまづいたり、転んだりするのだろう。(石ころの視点) 石ころを見ていると、このことに対して石ころ自身は、楽しく思っている様子に見えるなあ。そんな様子で赤い夕日に照られているように見えるなあ(作者または語り手の視点) |
C | C | …昨日は子供を転ばせ、今日は馬をつまづかせた。明日は誰が通り、私(=石ころ)につまづいたり、転んだりするのだろう。(石ころの視点) 石ころを見ていると、このことに対して石ころ自身は、こんな小さな自分でも子供や馬などの大きなものをつまづかせ、転ばせるほどの力を持っているのだということで自身の存在感をアピ−ルし、誇りに思っている様子に見えるなあ。そんな様子で赤い夕日に照られているように見えるなあ。(作者または語り手の視点) |
お日さん、雨さん |
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ほこりのついた 芝草を 雨さん洗つて くれました。 洗つてぬれた 芝草を お日さんほして くれました。 かうして私が ねころんで 空をみるのに よいやうに。 |
U−53
*視点のありかを示す叙述がないので、読み手が視点を勝手に定めて読み深めることになる結果、作品全体の解釈が分かれる。である。
土 |
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こッつん こッつん 打たれる土は よい畠になつて よい麥生むよ。 朝から晩まで 踏まれる土は よい路になつて 車を通すよ。 打たれぬ土は 踏まれぬ土は 要らない土か。 いえいえそれは 名のない草の お宿をするよ。 |
U−27
*作者が読み手へ疑問を投げかけているが、その答えに関わる登場人物の心理や作者の考えなどが明示されていないので、その疑問の答えを読み手が探ることになる結果、作品全体の解釈が分かれる。である。
蓮と鷄 |
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泥のなかから 蓮が咲く。 それをするのは 蓮ぢやない。 卵のなかから 鷄が出る。 それをするのは 鷄ぢやない。 それに私は 氣がついた。 それも私の せいぢやない。 |
U−117
*指示語・代名詞が示す内容が特定しにくいため、読み手がその指示語・代名詞が示す内容を独自に特定する結果、作品全体の解釈が分かれる。である。
二連:「それ」 | … 泥の中から蓮が咲くこと |
四連:「それ」 | … 卵の中から鶏が出ること |
五連:「それ」 | … 泥の中から蓮が咲いたり、卵の中から鶏が出るのは何か違うものの力によるのだということ |
六連:「それ」 | … 泥の中から蓮が咲いたり、卵の中から鶏が出るのは何か違うものの力によるのだということに、私が気づいたこと |
平成11年2月1日