再会
wiedersehen
平山 健史
「必ず、帰ってくるから」
漆黒の闇の中、青年は少女に背を向け歩み始める。
「待って、ねえ、待ってよ。待ってってばぁ」
少女は青年の後を追って駆け出すが、その距離は縮まらずますます開いてゆくばかりである。
「待ってよー、きゃぁ」
悲鳴を上げて、少女が転倒する。しかし青年は歩みを止めず、振り返ることもしない。
「ばかぁー!」
少女の声にエコーがかかり……。
「夢か」
いつもと同じ部屋、同じベッドで迎える朝。カーテンの透き間から差し込む一筋の朝の光。鳥たちのさえずりが耳に心地よい。いつもと変わらぬ同じ朝。しかしなんだって今頃あのときの夢を……。
軽いため息を漏らし、独りごちる。
「街へ、出てみるか」
かつて戦争があった。その北端をドイツに接する緑豊かな国、ケルンテン。自治領であるグリューネラントの帰属問題に端を発した独立戦争は、隣国ドイツの介入によりその激しさを増し、天上の神々の代理戦争と謳われるまでに至ったが、一九三八年十月、一年半にわたる戦いは、ドイツによる両国併合という形で幕を閉じた。
それから八ケ月……。
木陰をぬってはしる田舎道を、小型車でとろとろと転がして行く。エンジンの軽いうなりが体に心地よい。見渡せば、木立の合間に新築の建物の数々。その向こうには、延々と連なる畑……越して来た当初は廃村同然だったこの村も、復興がようやく一段落ついた、そんなところだ。一つの戦争が終わり、今また、きな臭い匂いが漂い始めているこんな御時世だが、活気が絶えることはなかった。古い建物を解体して耕地を整えていく、村おこしのどんな厳しい作業の中でも、いつも祭りのような雰囲気だった。今も、向こうの畑では草むしりレースが盛大に行われている。よその村では、こうはいかないだろう。
俺は、ヘンデル・ゲルデラー。この小さな村で独り、古書店を営んでいる。戦争さえなければ、大学で普通の学生生活を送っているところだ。戦争で家も家族も失った俺は、自らの力の無さを呪い、ただ純粋に力のみを求めた。その果てに、暴走を始めかけた俺をギリギリでとどめて、正義無き力の無意味さを教えてくれたのが、この村の仲間達だった。
この村に来たときだれかがこう言った。まるで落ち武者みたいだ、ここは落ち延びた侍の隠居の地だ、と。そのときは笑ったものだが、今ははっきりと違うと言える。ここは、最期まで戦い抜いた、将神たちの眠る村だと。
「相変わらず手掛かり無しか」
新聞屋の事務所から出てつぶやく。こんな時代に行方知れずの少女を捜し出すなど、到底無理な話なのかもしれない。戦火の中で別れた恋人を、俺は捜し続けていた。初めて出会ったこの街なら……、そう考え度々訪れているのだが、未だ手掛かりはない。知らず知らず、ため息がこぼれる。
うっそうとした街並み、どこかうつむき加減で街を行く人々……見ているだけで気が滅入ってくる。こういった雰囲気が普通なのだろうが、あの村の連中を見慣れている俺としては、なんとかしてくれと言いたくもなる。
気分転換にタバコでも吸おうかと懐をまさぐる。戦後に覚えた悪い癖だ。あいにくとタバコは切れていた。こんなものだ、人生は。さらに深いため息をつくと、俺は静かに足を踏み出そうとした。
「……」
呼び止められたような気がする。回りを見渡すがそれらしい気配がない。気のせいか。幻聴とは気が滅入っている証拠だな。半ばうつむき加減で再び歩きだそうとする。
「ヘンデル!」
今度ははっきりと聞こえた! 明るい張りのある少女の声が俺を呼び止めた。しかも、この声は。はっとして顔を上げると、そこには、大きめの袋を手にした小柄な少女が一人。
「ヘンデル! やっぱりヘンデルだぁ!」
「タ、タリオーニ?」
少女は亜麻色の長い髪を振り乱して走ってくると、そのまま勢いを殺さず俺に飛びついてきた。あわてて両腕をまわして抱きとめる。
「ヘンデル! ヘンデル! ホントに、ホントに……もぅ、ばかぁ!」
一気に感情が爆発したのだろうか。周囲の目も気にせず大声を上げて泣きじゃくる彼女に戸惑いを覚えたが、やがて彼女の背中を、髪をゆっくりと、優しくなでてやる。
彼女の名は、タリオーニ・バルタムス。俺の……恋人だ。一年前、戦火の中で別れて以来消息を絶っていた彼女が、今、俺の腕の中にいた。リボンで束ねた後ろ髪も、動きやすいようにと、軽装でまとめた服装もあの頃のままに。ただ、かすかに漂う甘い香りだけが、彼女の変化を俺に告げていた。香水か? 以前は身支度にすらあまり気を使っていなかったのに。
彼女はただ言葉もなく泣いていた。俺自身、驚きと喜びとで感情が高ぶり、気の利いた台詞ひとつ出せず、ただ彼女を優しく抱き締めているだけだった。
「ヘンデル?」
しばらくたって、落ち着いてきたのだろうか、彼女がおずおずとたずねてきた。
「タバコの匂いがする。タバコ、はじめたんだ」
かすかな変化に気づいてくれる彼女に、小さな感動を覚える。
「ああ。タリオこそ、この香りは?」
「え、あ、うそ。わかっちゃった? やだなあ」
ほんの少し顔を赤らめると、彼女は耳元でささやいた。
「これ、紅茶の香りなの。ヘンデルの真似して持ってたら、香りがしみついちゃって。恥ずかしいなあ」
ペロリと舌を出してウインクをして見せる。一つ一つの仕草が可愛らしくなっているのは、この一年のなせるわざだろうか。そんなことを考えて、つい彼女に見とれていると、その大きな瞳を見開かせて俺の顔を不思議そうにのぞき込んできた。
「どうしたの、あたしの顔、何かついてる?」
返事に困って目線をそらした先に、足型のついた大きな袋が一つ、地面に転がっているのが目に入った。あれは確か、
「ところでタリオ、買い物の途中だったんじゃないのか。あそこに荷物が」
そう言って、踏み潰された袋を指さす。
「あぁぁぁっ! 編集長に頼まれた買い物がぁぁぁぁっ! 誰よぉ、こんなにして! これは事件ね! このあたしがずぇええったいに、真犯人を挙げてみせるわ!」
あらぬ方を指さして、突然気合を入れ始めたタリオの肩を、チョンチョンとつついてやる。
「真犯人も何も、お前がほうり出して自分で踏み付けて来たんじゃないか」
あらぬ方を指さした姿勢はそのままに、タリオのこめかみに一滴の汗が浮かんだ。
「そ、そうだった? ま、まあ、やっちゃったことは仕方ないわよね。あ、大変。急いで買い直さないと、編集長におこられちゃう! ヘンデル、付き合ってくれるわよね」
あわてて取り繕いながらも、有無を言わせぬ口調でこちらを振り返る。少しは女らしくなったのかと思ったら、こういうところは全然変わっていない。思わず口元がほころぶのを押さえ切れない。
「な、何よ? 何笑ってるのよ、もう」
「いや、悪い。やっぱりタリオだな、と思って。ところで」
さっきのタリオの言葉に引っ掛かる所があって、それを尋ねてみる。
「さっき、編集長と言っていたようだけど」
俺の言葉を聞いたとたん、すねた表情が一転、ぱっと明るくなっていく。
「そう、そうなのよ! あたし、新聞記者になれたのよ!」
そう言うと、その場でクルリと回って見せる。グレーのギンガムチェックのパンツと、クリーム色のブラウス。大きめの黄色いスカーフを首の回りに結んでいるのがちょっとしたアクセントになっている。なるほど、言われてみれば、そう見えなくはない。
「よかったじゃないか、夢がかなって」
素直に祝いの言葉を述べると、ばつの悪そうに少しうつむき加減になって、小声で付け加えた。
「まだ、見習いなんだけどね。でも、いつか一人前になって、大きなスクープをあげて見せるんだから!」
「で、その新聞社って、ここ?」
「うん。でも、それが何か」
ほんの数分前の出来事を思い出し、かぶりを振る。
「人捜しを、タリオを探してくれるよう、編集長に頼んでいたんだ。一月以上前から」
俺の言葉が終わらないうちに、それまでほほ笑んでいたタリオの表情が、一転、怒りの表情へと見る見るうちに変わっていく。
「あのタヌキおやじ! ちょっと四回ほどあたしに振られたからって、あたしとヘンデルの仲を引き裂こうなんて、一千万年早いわよ。行きましょ、ヘンデル。こんなところに用は無いわ」
言うが早いか、通りをさっさと歩きだす。怖い怖い。仕事をほうり出していいのか、なんて野暮なことは言わない。こんなときの彼女には何を言ってもむだである。内心舌を出しつつ、彼女の後を歩き始めた。
それは、まさに一瞬の出来事だった。突然、横合いから走り出た男は、タリオーニを肩からひょいとかつぐと、そのまま何事も無かったかのように走り去って行く。
「きゃあ」
後に残ったのは、タリオの平凡な悲鳴だけ。
「きゃあ?」
あまりの出来事に、一瞬状況がつかめなかった。もう少しオリジナリティのある悲鳴はあげられないのか、それにもう少し色気が……などとばかなことを考えて、はたと事の重大さに気づく。男はといえば、二つ先の角に停めてあったトラックに、彼女もろとも乗り込んでいるところである。慌てて俺も、猛然とダッシュをかける。
ブゥゥオッ、ブロロロロー キューイィッ、キキキキー ゴフッ
間一髪。俺が荷台に手をかけるのと同時に、その場でシフトアップすると、派手にタイヤを鳴らしてトラックは一気に加速を始める。
「ふぬぉっ」
その反動で、車体からひっぺ返されるが、両手はしっかりと荷台を握り締めている。あまりの速度に体が地面に平行に流されるのを、両腕の筋力で無理やり荷台に引き寄せる。あの運転手は、俺を殺すつもりか。並の人間なら、車から落ちてその場でご愁傷様、ということにも成りかねない。
荷台で体を安定させることができた俺は、冷静にトラックを観察する。一番目立つのは荷台に、でん、と置かれた木箱ではなかった。
「こいつは、装甲車か?」
そう言わせる程、この車は隙が無かった。小さめに作られたサイドとリアの窓。リアには金網のメッシュまで入っている。足回り、タイヤ前後と外側には装甲板がつけられて、タイヤの露出面積を小さくしている。車高が低いのに揺れが少ないのは、サスペンションを強化してあるからか。いずれにせよこいつは、普通のトラックとは全くの別物だった。
「とりあえず、中の様子を……げっ」
中の様子を探ろうと、サイドミラーをのぞき込んだ俺が見たものは……運転席の男と、親しげに談笑するタリオーニの姿だった。それに、この後ろ姿は、もしかして。
車が急停車する衝撃を利用して、荷台から荷台から飛び降りる。見渡せば森の中。ここはいったい。
「あら、ヘンデルどうしたの?」
頭上からの声に顔を上げると、そこにはキョトンとした顔で俺を見下ろしている、タリオーニの顔があった。
「どうしたの、じゃない! お前、一体」
「え、だって、ヘンデルと待ち合わせしてるからって、そう言うから」
そんな約束を誰かとした覚えはない。しかし、思いつく限りでこんなことをする人物は、一人しかいなかった。悪い予感が脳裏をかすめる。その予感に答えるように、運転席の扉が開いた。
「お久しぶり、ゲルちゃん」
運転席から降りて来たのは、黒いソフト帽に黒いサングラス、三つボタンのダブルのジャケットにスラックスも黒なら、タイにワイシャツも黒、とどめに髪の色まで真っ黒という、全身黒ずくめの長身の男だった。サングラスを外すと、そこには見慣れた顔が見慣れた表情で、少しにやけた表情を見せている。
「やっぱり、先輩でしたか」
クラウゼヴィッツ・パウル。俺の学生時代の先輩。戦場での上官にして戦友。そして、最高の親友であり、最も危険な疫病神である。仲間達が村に移り住んだとき、自らの目的のために村を離れるものたちがいた。先輩もそのうちの一人だったのだが、こんなところで再会するとは。
「本当は村まで行こうと思っていたのですが、ゲルちゃんの姿を見かけたものですから、つい」
「つい、で人を誘拐するんですか!」
思わず絶叫するが、先輩は一向に気にする様子もない。タリオは額に指を当てて、うつむき加減で何やら思案顔だったのが、ポンと手を打つと、
「だって、パウルだもん」
と事もなげに言ってのけた。
「だ、そうです」
と、隣で先輩もうんうんとうなずいている。
あああ、忘れていた。いや、忘れようとしていた。この人は、こういう人だった。タリオもタリオだ。だてに虹の向こうへ、フェルネラントヘ行っただけのことはある。村の連中と同じで、普通の神経の持ち主じゃなかった。軽いめまいを感じて、頭を抱えしゃがみこむ。
「大丈夫、ヘンデル」
タリオが心配して駆け寄ってくるが、先輩は、
「まあ、いつものことでしょう」
と、気にもとめない。一体、誰のせいだと思っているんだか。ますます激しくなるめまいに、とどめを刺したのは、タリオの次の一言だった。
「でも、ヘンデル、何か楽しそう」
次の瞬間、視界が暗転した。
「しっかり、ねえ、しっかりしてってば……」
一人の少女が、耳元でささやいている。誰だ、グレーテルか? いや、妹は死んだはずだ。じゃあ、彼女は……なんだ、タリオーニじゃないか。生き写しだっていうんで、先輩と大騒ぎしたこともあったっけ……先輩?
「先輩!」
横になっていた体を、一気に引き起こす。そばには驚いた顔のタリオと、相変わらずうなずいている先輩が立っている。
「いやいや、さっきの追跡といい、今の寝起きのよさといい、勘はにぶっていないようですね」
「勘はって、また何かやっかいごとに巻き込もうって言うんですか」
先輩が持って来た話がまともだったことは、いまだかつて一度もない。俺の心配をよそに、タリオは眼を輝かせて先輩に詰め寄る。さりげなく両手を、体の前でわきわきさせているところが、ポイントが高い。
「なに、秘密? 事件? ひょっとして、スクープ?」
「タリオ、新聞社には戻らないんじゃなかったのか」
クギを刺すつもりもあって、皮肉交じりにつぶやくが、
「それはそれ、これはこれ、よ」
と、そっけなく返されてしまう。そんなタリオににっこりと|ただし、この人のにっこりは後が怖いのだが|ほほ笑むと、先輩はぴっと人差し指を顔の前に立てて、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「ドイツ軍の秘密兵器を、破壊します」
ああー、聞くんじゃなかった。顔に手を当てると、うなだれる。考えつく限り、最悪の、そして最も難しい任務だった。
「どうせ、いやだと言ってもつれて行くんでしょう。さっさと行きましょうよ、先輩」
半ばやけくそぎみに言い放つと、タリオは妙にうれしそうな顔でこちらを見ている。まさか、ついて来るつもりじゃないんだろうな。正直言って、彼女の身を守りきる自信は、全くなかった。そんな気持ちを知ってか知らずか、先輩は懐から剣呑なものを取り出した。
「はい、タリオ。これを持っていてください」
そう言って差し出したのは、二個の手榴弾だった。
「この手榴弾は護身用ですよ。最悪の場合、それで活路を開いてください」
言いながら、もう一度懐に手を入れる。
「活路って、二人であたしのこと守ってくれるんじゃないの?」
小首をかしげるタリオ。先輩はそれには答えず、続けて懐をガサガサとまさぐる。
「それはそうなんですが……ちょっと右手を出してください」
「ふむ」
先輩の言葉に、つられて手を出すタリオ。
「はい」
こぎみよい音を立てて、タリオの右手に手錠がかかる。そのまま空いた方の輪を、傍らの木の枝にかけてしまう。一瞬の早業だった。
「え、ちょ、ちょっと。これ、どういうつもりよ」
「民間人を危険な目に遭わせるわけにはいきませんからね。あなたは特に、ほおっておくと何をやりだすかわかりませんから。僕たちが戻ってくるまで、ここでおとなしくしていてください」
あくまでにこやかに、淡々と話を続ける先輩。一方のタリオはすごい表情でにらんでる。そういえば、以前もこんな場面があったような気がする。
「ほら、ゲルちゃんからも何か言ってあげてください」
言い残すと、さっさと自分はトラックの運転席に姿を消してしまう。
「必ず、帰ってくるから」
そう一言だけ告げると、俺もタリオに背を向ける。
「待って、ねえ、待ってよ。待ってってばぁ」
タリオは手錠を鳴らして暴れているが、繋がれた枝はびくともしない。
「待ってよー、いつもあたしだけおいてけぼりにして。もぉ、ばかぁー!」
タリオの叫びを背に助手席に飛び乗る。待ち兼ねたように、車のエンジンがかかる。
「前回足かせに鉄球をつないだら、引きずって追いかけてきましたからね」
正面を見ながら、先輩。
「今朝、あの日の夢を見ましたよ」
街へと出掛けるきっかけとなった、今朝の出来事を思い出す。
「そう、ですか」
一瞬複雑な表情を見せて、またいつもの少しにやけたような表情に戻ると、先輩にしては冷静かつ真面目な口調で、任務の内容を語り始めた。
「この先にドイツ軍の新しい駐屯地ができたのは」
「知っています」
「うん。そこで夜間に新兵器のテストが行われているらしいんですよ。いくつかの証言が上がっているので、確定事項だと思います。今回の任務は、それの奪取、及び破壊です」
確認するように俺の方にちらりと目をやる。俺は小さくうなずいて、話をうながす。
「倉庫の位置はあらかじめ確認してありますので、これで現物の前まで乗り付けます。警備態勢もあまり厳しくないようなので、これは楽でしょう」
警備がゆるい、という言葉に罠では、という不信感がつのる。
「で、秘密兵器を奪取。使えるようでしたら持ち出して破壊。無理でしたら、その場で自爆、ということになります。あ、武器は現地調達ですから、お忘れなく」
「現地調達って、あからさまに罠だと分かっているところに、丸腰で忍び込めって言うんですかそれに秘密兵器って、一体」
「戦闘が目的ではありませんからね。無益な殺生はしたくありません。それに、物が動くようでしたら、十分以上の戦力になるはずですよ。それから、罠の危険性も考えて、僕たち二人で行くんです。まだ、ほかの皆さんのことは知られたくありませんから。秘密兵器については、文字通り、秘密です」
先輩の言葉に、大きくかぶりを振る。そうだった、俺たちは守りたいものを守るために、戦っていたんだ。忘れてはいないが、あまりに無謀な計画を聞かされると、文句の一つも言いたくなる。護身? 先輩が大丈夫というのなら、多分死ぬことだけはないのだろう。窓の外に視線を移すと、サイドミラーには、いかにも楽しそうな俺の顔が映っていた。結局のところ、自分が一番、自分のことが分かっていないのだろうか。
「ま、いつものことですから、慣れてますけどね。先輩の無茶と、秘密主義には」
「そういうことです。では、行きますよ」
話をしているうちに、車は駐屯地の入り口へと差しかかっていた。エンジン音が大きくなり、車は加速を開始する。
「止まれ! そこの車! 止まらんと撃つぞ」
警告の声と共に銃声が響き渡る。と同時に、車体に跳弾の音が響く。道一杯に広がるバリケード、まばらに散る衛兵。そんな全てがフロントガラスに大きく映り、後方へと流れて行く。銃弾の音が絶え間無く続くのは、駐屯地内部からの迎撃も重なっているからだ。
「少々の攻撃ではびくともしませんよ。何といっても、カーニッツ鋼を使っていますからね」
「カーニッツ鋼って」
硅緑戦争で特殊な用途に用いられた合金である。まだそんなものが残っていたとは。たしか、全て廃棄されたはずだが。
「あるところには、色々と残っていますからね。ジャガイモの取引もたまには役に立つでしょう」
ジャガイモを育てる、そう言って、先輩は村を離れた。まさか、怪しい商品の流通にまで手を出していたとは、いかにも先輩らしいと言ってしまえばそれまでなのだが。
「そういえば、足回りの外側にも装甲してありましたね。内側にもやっぱり装甲が?」
「いや、内側には弾がいかないだろうって、カバーしていないんだけど」
先輩の言葉に重なるようにして、パンと、タイヤのバーストする音が車内に届く……。
「先輩」
「やっぱり、手抜きするとだめみたいですねえ」
気楽な口調で反省らしきものをしているが、両腕は車のコントロールを取り戻そうと、引っ切りなしに動いている。大きく蛇行するトラック。
「もう少し、もう少しなんですけどね」
正面に見える倉庫、あれが目的地らしいのだが、なかなか車は真っすぐに進まない。
パパン グワシャ グゥワラ グゥワラ
派手な音を立てて二つ目のタイヤがバーストして、車は横転を始めた。俺も先輩も、車から振り落とされまいと、必死にコンソールにしがみつく。
ドゥガヴァシャ
転がり続ける車を止めたのは、目的の倉庫の扉をぶち破った衝撃だった。
「ははは、着いちゃいましたよ。なんとかなるもんですねー」
やっぱりお気楽な口調で、先輩がおどけて見せる。ところが、俺の耳にはその声は届いていなかった。目の前の二つの機体、本来あってはならないはずの物だったからだ。
「イェーガー、エカテリーナが、なんでこんなところに」
パンツァーカンプイェーガー。全高五メートルの鋼の人形。硅緑戦争時、フェルネラントから魔力の供給を受けて動く機体だったが、戦争終了間際にあそこが消滅して以来、動くはずのないものだ。先のカーニッツ鋼はこれの装甲用に開発された合金で、機体同様、全て破棄されたはずだったのだ。
「魔力に頼らない動力源の開発、それがここでの実験だったようです」
「で、その実験は成功した。が、逆にイェーガー稼働の目撃証言が出て、俺たちがここにいる、そんなところですか」
うなずく先輩を見やってから、再びイェーガーに目を移す。試験機のためか、本来の色とは違う漆黒に塗り替えられている。どちらも背嚢が外されて、見慣れない機械を背負っているが、一機は標準型、もう一機は右腕に接近戦用の巨大な衝角を取り付けた改造機だ。あの機械は、魔力の代用の動力供給装置だろう。さらに視線を下に落とすと、
「先輩、あれ!」
「ああ。物騒なものを取り付けているな」
改造機の脚部には、やはり巨大な、ジェットブースターが取り付けられていた。弾道軌道を使って、敵陣へと直接奇襲をかける名目で開発されたそれは、配備が終了した後に、目的通りに使用すれば中の人間がGで生きちゃいないことが公開され、役に立たない装備ワースト1に輝いたという代物である。うまく使いこなせば、超高速のホバー移動も可能らしいが、戦時中、それをやってのけた人形遣いを、俺は見たことがない。さらに、ブースター用の液体燃料を脚部に併設しているため、脚部を破損すると誘爆して大惨事になるという特典まで付いている。もっとも、俺の機体にも装備していたのだが……。
「僕が標準機のほうですね」
「あ、先輩ずるい!」
言うが早いか、先輩は一目散に機体へと駆けて行く。
「改造機は、ゲルちゃんの方が慣れているでしょう」
捨てぜりふを残すと、操縦席の扉を閉める。仕方ない、俺はもう一機に乗るか。これを使わない、という選択肢は残っていない。イェーガーがある以上、この世には残しておけないし、また、その関連資料は消えてなくなってもらう必要がある。ドイツ軍がどこまで研究を進めているのか知らないが、とりあえず、この駐屯地は破壊しておく必要がありそうだ。それならば、これ以上強力な兵器は外にはない。ただし、使いこなせれば、の話だが。
シートに着くと、昔の手順道理にセッティングを始める。背部で耳慣れない駆動音が聞こえるが、これは外部の供給装置だろう。罠の可能性はあまり考えていなかった。素人に扱えるものではないし、ケルンテンの人形遣いは、書類上は全員死亡したことになっているからだ。
「ん?」
足に何かが当たる感触がして、足元をのぞき込む。布切れに包まれた何かがある。つまみあげてみると、香りのなくなった紅茶の葉が一掴み。
「冗談だろ、おい。これ、俺の機体じゃないか」
改造された部位、操縦席に持ち込まれた紅茶の葉……シートに座ったときに、妙にしっくりくると思っていたが、本当にグレーテルだったとは。今日は一体、なんて日だ!
「ゲルちゃん、悪いけど先に出てもらえるかな。どうも調子が悪いんだ」
先輩から通信が入る。周波数はもちろん、ケルンテンの軍用のものだ。
「了解。先に出ます。ところで先輩、知ってたんですか?」
「? 何を」
「いいえ、何でもありません。あまり遅れると、獲物がなくなりますよ」
横転したトラックをの上を踏み付けて外に出る。これに乗っていれば歩兵の攻撃は防げるはずだが、
「やっぱり、罠か」
倉庫を出た俺を待ち受けていたのは、グレーに塗り込まれた6体の、やはりエカテリーナだった。
『そこの機体、停まれ。素人が動かせただけでも大したものだが、ここまでだ。速やかに機体を降りろ。才能があるようなら、今回の件には目をつぶって、軍部に取り立ててやってもいいぞ』
隊長機なのだろう。先頭に立つ機体の外部スピーカーから、ひどいダミ声が流れてくる。ざっと見回せば、相手は全て標準型。武装は手に持った斧、あるいは鉄パイプである。飛び道具がないのが唯一の救いだが、この数の差は……冗談だろ、ふらついている機体もあるじゃないか。戦後組か? そっちの方が素人同然じゃないか。そうとわかれば、奇襲あるのみ。
「訓練と実戦の違いを」
手近の一機との間合いを、一足飛びに詰める。
「思い知らせてやるぜ!」
接近と同時に、右腕の衝角を頭部に突き立てる。貫通した衝角を引き抜く動作に併せて、相手を蹴り倒し踏み付ける。
ボフッ
ペダルを通して軽い衝撃が伝わり、足元の機体が小さな爆発音とともに燃え上がる。背部の供給装置が爆発したのだろう、案外もろかったな。おっと、感想を述べている場合じゃない。仕事だ、仕事。
俺の突然の行動に浮足立ったのか、目茶目茶な動きを見せている機体までいる。すぐ右手の機体が上半身をぐるぐる回しているのは、焦ってペダルを踏み間違えているからだろう。チャンスだ。回っている背中に目がけて、タイミングを合わせて右腕をたたき込む。ぶつかると同時に上半身を旋回させて、攻撃の威力を増してやる。ねらい違わず供給装置に食い込んだ衝角が、先回の反動で、相手の機体を押し倒す。崩れ落ちると同時に炎上する機体。
さらに背後から迫る機体には、右の肘を打ち込むと半歩踏み込んで旋回、相手の踏み込んだ足に足払いを掛けると、倒れる機体の背中を蹴り上げる。
「これで、半分」
残りの三機へとゆっくりと機体を向ける。その中には、先程のダミ声隊長機も入っている。
『ば、化け物だ!』
使い古された捨てぜりふとともに、機体を反転して逃げ出そうとする。おいおい、足元がふらついているぞ。ま、逃がすつもりは元からないが。イェーガーの破壊が俺たちの任務なんだ。こんなものは、人間が玩具にできるものじゃない。
ドゥキューン
逃げる相手を追おうと、一歩踏み出したとき、一発の銃声が戦場にこだました。解き放たれた銃弾は、逃げるイェーガーの背部に吸い込まれるように命中する。もんどり打って倒れる機体。御定まりのように、炎上を始める。
「僕の獲物も、残してほしいな。ゲルちゃん」
振り返ると、口径四十ミリの巨大ライフルを構えた先輩の機体が、倉庫の入り口をくぐるところだった。
「先輩、そんなものどこから持ち出して来たんですか」
「あ、こんなこともあろうかと、あらかじめ用意していたんだ」
あっさりと答える先輩。そういえば、トラックの荷台にあった異様に大きな木箱、あの中身がこれだったに違いない。こんあもの、どこから仕入れて来るのだか。
「ジャガイモの取引で、手に入れてきたのですよ」
俺の内心の疑問を知ってか知らずか、先輩が通信をよこす。
「はい、上がり」
立て続けに二連射させると、先に逃げた二体のイェーガーが炎に包まれる。あまりにもあっけない最後だった。ま、俺たちと比較する方が間違っているのだが。何と言っても俺たちは、あの戦争を唯一生き残った部隊の、一員なのだから。
「ゲルちゃん、ちょっとこれ持ってて」
そう言うと、ライフルを放ってよこす。あわてて両手で受け止める俺。衝角がこういうときには邪魔になる。射撃はさらに苦手だ。
「後始末をしなくては、いけませんからね」
倒れたトラックのところに戻ると、木箱の中から戦車砲弾を一掴み取り出し、ポンポンと駐屯地内の建築物、たいていはバラック小屋だが、目がけて次々と投げ込んでゆく。着弾と同時に起こる爆発炎上。駐屯地内はさながら地獄絵図と化していた。反撃を試みるものなど誰ひとりとしておらず、ただ逃げ惑うのみ。いや、一台の戦車が、無謀にもこちらへと向かって来る。
「やります」
一声残すとライフルを足元に転がして、戦車へと走りだす。砲塔は照準を合わせようと回っているが、こちらも蛇行して狙いを付けさせない。
「遅い!」
最後の数歩の距離で戦車の横に回り込むと、衝角を砲身へと振り下ろす。振り抜いたその刃でキャタピラを切断すると、砲塔の可動部分へと衝角を突き立てる。この一撃で、戦車は完全に沈黙した。
「さて、仕上げといきましょうか」
駐屯地は一面火の海。建築物が全て壊れている以上、イェーガーも打ち止めだろう。後は俺たちの機体を爆破して、任務完了ということになる。
ゴゴゴゴゴッ キュイーッ キキキキキ ゴウ
唐突に、巨大トレーラーが炎を突っ切って駆け抜けると、倉庫の残骸にぶつかって横転する。と、同時に荷台から一つの巨大な影が現れた。
「きょ、巨大イェーガー?」
どちらともなく上げた声は、しかし、的確にその物体を表現していた。エカテリーナの三倍はあるそれは、ぬっと右手を突き出すと、一方的にまくし立ててきた。
『よくもよくも、わたくしの秘密基地をめちゃんめちゃんにしてくれたわね。こううなったら腹いせに、途中で拾って来たこの女を、あんたたちの目の前でひんねりつぶしてくれるわよ!』
そういう右手には、確かに何かが握られ……あれは、タリオーニじゃないか! じたばたともがきながら何か言っているようだが、こちらまでその声は届かない。
「先輩?」
「うーん、途中で残して来たのが、裏目に出たようですね。ま、タリオのことですから、心配は要らないと思いますけど。それよりも、あの機体どう見ます?」
タリオのことだから、と言わると妙に納得してしまう。彼女のことはとりあえず頭の隅に押しやった。
「新規の供給装置と同じで、普通の鋼板で組み上げたんじゃないでしょうか。巨大に設計したのではなくて、強度の関係であの大きさになったのでは」
「そう考えるのが、妥当ですね」
先輩はそう言って通信を切ると、外部スピーカーを使ってどなり返した。
『えー、巨大イェーガーの操縦者に告げる。あなたが今掴んでいるのは、我々よりも危険な物体です。その機体だけでも持ち帰りたいのなら、速やかにそれを手放しなさい』
先輩、どさくさにまぎれて、かなりひどいことを言っているような気がする。
『言うことが聞けないようですね。タリオ、あれを手首の関節に入れてください。入れたらすぐに、身を縮めて』
一瞬、閃光が走ると、タリオーニの体ごと手首がもげ落ちる。
『なに、なんなのよ、これは』
動揺した声が伝わってくる。が、そのお姉言葉はなんとかしてほしいものだ。しかし、手榴弾の爆発で手首がもげる程度とは、なんて強度だ。
「あれを壊すのは、一苦労しそうですね。せめて強力な爆弾でもあればいいのですが」
先輩からの通信も、同じ内容を伝えてくる。強力な爆薬、強力な……。
「そうだ、これしかない!」
俺の声と、通信の先輩の声が同時に重なる。
「先輩、援護してください!」
一声掛けると、俺は敵に向かって突進する。先輩は、ライフルを構えて側方に回り込んでゆく。
チュイン チュイン
ライフルの弾丸を浴びて、敵は先輩の方へと機体を向けてゆく。うまい、かかった。さあ、今そのでくの坊に、引導を渡してやるからな。
関節可動のリミッターを解除しスロットルを全開、ペダルを思いっきり蹴っ飛ばす。
「くらえっ!」
相手の足に自分の足を思いっきりぶつける。衝撃で脚部が壊れ、ジャンプユニットの燃料が漏れる。
「点火!」
同時にユニットのスイッチを入れる。漏れた燃料に引火し、轟音と供に相手の脚部を爆砕する。
『な、なんと』
「まだ、まだ!」
残った左足で飛び上がり、相手の腰にしがみつく。さらにここで、残ったジェットに点火。同時に俺は操縦席から脱出する。
轟音を上げ、炎に包まれていく巨大イェーガー。いったい何のために出て来たんだ、こいつは。
「取り敢えず、終わりましたね」
気が付くと、先輩が横に立っていた。機体は、同様に炎の中に沈めたようだ。
「あれは、神の力で作られたものなんです。人間が手にしては、いけないものなんですよ」
感慨深げにつぶやく先輩。この点に関しては、俺も先輩と同意見だ。
ガンガンガン
「巨大イェーガーの脅威は去りました」
「いや、脅威ってほどでもなかったんですけど」
何か動作をする前に、片付けてしまっては、脅威になりようもない。
『こーらーっ、ここから出しなさいよ!』
「ですが、いつまた第二、第三のイェーガーが現れるかわかりません」
「ま、その意見には、同感ですが……先輩」
さっきから聞こえるその音に、先輩も気づいているはずなのだが。
『ヘンデル! パウル! 早くあたしを助けなさいよ!』
「タリオーニ、あなたの貴い犠牲は決して忘れません」
「いえ、まだ死んではいないと思うんですけど」
ほら、やっぱり忘れようとしている。遠い目をしても無駄だ、冷や汗が一筋、流れている。
『こーらーっ! 出さないとひどいわよ』
「先輩、意図的に忘れようとしているでしょう」
「やっぱり、助けないとだめですかね」
俺と先輩は二人で顔を見合わせ、そしてつぶやいた。
「イェーガー、残しておいたらよかった」
タリオーニは巨大な手首の下にうずもれている。人の手で助け出すのは、一苦労だった。
「先輩、行ってしまうんですか」
タリオーニを引っ張り出した俺たちは、再び街へと戻って来ていた。
「うん、とりあえず、僕だけで調査を進めようと思うんですよ。村の皆さんが出て来るには、まだ少し早いと思うので」
「分かりました。その代わり、必ず、また会いましょう。この街で」
「ええ、この街で。ゲルちゃんも、タリオーニと仲良く」
そう言うと、先輩はトラックを走らせた。見えなくなるまで、取り敢えず見送る。
「で、タリオ。君はこれからどうするんだ」
俺は、背後のタリオーニを振り返る。俺の瞳をじっと見つめる彼女。
「あの新聞社に戻る気はしないし、これからどうしようかな」
俺の言葉を期待するかのように、上目づかいでこちらを見る。さりげなく、つま先で地面を蹴っていたりする。
「俺たちの村で、村の新聞を作ろうという話が、前々から出ているんだが、人手が足りなくて。どうする?」
答えは、聞くまでもなかった。いや、問うまでもなかったと言うべきか。
「もう、ヘンデルの、バカ」
俺の胸に飛び込む彼女の瞳は、涙で潤んでいた。
「絶対、二度と放さないんだから」
Ende
「……一九四六年 五月、と」
原稿の最後に日付を書き込むと、カバンの中にしまい込んだ。これを持って行けば、しばらくは生活に困らないだろう。椅子に深く腰掛けて軽く伸びをすると、遠慮がちにノックの音が聞こえた。
「どうぞ」
「お茶を、入れたわよ。原稿、仕上がったの?」
落ち着いた、そして柔らかな女性の声が問いかける。書斎に入って来た人物を振り返らずに、僕は答える。
「ええ、出来上がりました。今日、出版社に持って行くつもりです」
「そう」
短い返事に続く言葉を待つが、後には沈黙しか残らない。昔は彼女もこれほど静かではなかったのだが。ともに過ごしたこの一年、昔のような感情の激しさを、表に出したことは一度もない。やはり、あのことが原因なのだろう。しばらく考えてから、思い切って声をかける。
「あなたも、一緒に来ませんか。夢を、見たんです。あのころの夢を。もしかしたら、彼に会えるかも知れません」
さらに沈黙の後、おずおずとたずね返してくる。
「ヘンデル、に? でもあの人は、パウル、あなたをかばって……」
「彼はきっと生きています。死体が確認された訳じゃありませんから。あなただってそう言っていたじゃないですか、タリオーニ」
だから、僕も、君には手を出していないんだ。後に続く言葉はそっと飲み込む。ゲルデラーが彼女に惚れた理由が、今ではよくわかる。
「きっと、彼に会える。そんな予感がするんです。街へ、出掛けましょう。約束の、あの街へ」
END
表紙/目次に戻る
編集後記/奥付
ご感想をお送り下さい。
nonami@cc.osaka-kyoiku.ac.jp