イシガイ類の生活史

 アサリやハマグリなどの海産の二枚貝では、精子と卵は水中に放出されて受精し、幼生はプランクトン生活をしながら変態を完了して底生生活に移る。しかし、淡水に生活する二枚貝のイシガイ類では、幼生は浮遊生活をしない。海産の二枚貝と同様に,雄は精子を水中に放出するが,その頭部を透明な球体に埋め込んだ精子球として放出する。この精子球は,球の外側に出ている多数の鞭毛を協調して動かすことによって移動することができる。精子球から脱落した精子は2分ほどで失活してしまうが,精子球に頭を埋め込んでいる精子は約2日間,元気に活動している。雌はこの精子球を入水管から取り入れると同時に,自分の鰓の中に卵を送り込み、受精はこの鰓の中で行われる。その後、受精卵は鰓の中で発生を続け,孵化した幼生を水中に放出される。この幼生は魚の鰓や鰭に寄生し、そこで変態を完了して稚貝となって底生生活に移る。
 

 このように,イシガイ類の幼生は魚に寄生しなければ変態できない。一方,コイ科魚類のタナゴ類はイシガイ類の鰓に卵を産み付ける。このため,古い文献にはイシガイ類とタナゴ類との間に共生関係があると記述されていることが多いが,これは完全な誤解である。タナゴ類はイシガイ類の幼生の寄生に抵抗する性質を発達させていて,イシガイ類の幼生はタナゴ類に寄生してもすぐに離れてしまうか,あるいはうまく変態できずに死亡してしまう。タナゴ類が世代を継続するためには産卵母貝であるイシガイ類の存在が不可欠であるが,イシガイ類が世代を継続するためにはヨシノボリなどの他の魚種の存在が不可欠なのである。

 動物行動の映像データベースに「ドブガイの繁殖」という映像が登録してある。「ドブガイ」としているが,実際はタガイの映像である。精子球を放出したところから,妊卵雌,放出された幼生,ヨシノボリに寄生している幼生,そして変態を完了して落下してきた稚貝の様子を撮影した。タガイの精子球の状態はあまり良くないので,末尾にカタハガイとマツカサガイの精子球の映像を付け足した。

 

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