1.温度計の歴史
1592年 ガリレイ:初の温度計 目盛りはなく,温度変化があったことのみを測定

1611年 サンクトリウス:目盛りをつけた温度計

1632年まで  フランスの医者レイ:ガリレイらの成果を知らずして,空気の変わりに液体を液体を指示液として用いた最初の温度計を発明

1644年頃   フェルディナンド2世大公:レイ型の温度計は大気圧に左右されるため密封するということを考えついた。また,フローレンスにアカデミア・デル・チメントを創立した。この学院では広範な温度測定実験を行った。ここで作られたフローレン式温度計は1世紀以上にわたって広く使用された。初めて温度計に水銀を用いたのもこの学院の人々である。

1672年  ユービン:大気圧から独立した最初の空気温度計を発明

2.温度目盛りの発達  

【華氏目盛り】デンマークの天文学者レーマーは,水の沸点に60度を指定し,氷の融点に7.5度を指定した。気象学の観測において目盛りの上の部分を使うことがほとんどなかったので,上の基準温度を血液温度にあわせた。後に,この目盛りはドイツ系オランダ人の器具職人のファーレンハイト(1686ー1736)に影響を与えた。今日でも英語圏で広く使われているファーレンハイト目盛り,つまり華氏目盛りは彼の温度目盛りから派生したものであるが,2つの基準点を氷の融点を32度,水の沸点を212度としている。この目盛りの温度単位はFで,水の沸点及び氷点間の180分の1である。

【レオミュール目盛り】1730年,フランスの科学者レオミュールによるもので,0度が水の氷点で,80度が水の沸点となっていた。しかし,彼が百分目盛りを初めて打ち立てた功績者であったとみとめてよい。なぜなら彼の目盛りでは水の沸点はおそらく100度に近かったからである。

【摂氏目盛り】1742年スウェーデンの天文学者セルシウスが,真に百分目盛りといえる最初のものを作った。目盛りとしてある特定大気圧のもとで沸騰水中に温度計の球を浸したときの水銀柱の高さを0度に指定し,融解中の雪の中に球を浸したときの水銀柱の高さを100度とした。少しのちに同僚のストロェメルが1750年に呼称を逆にした。

【絶対温度目盛り】 1800年頃,シャルルゲイ・リュサックはそれぞれの実験から一定圧力に維持された気体の閉める体積は気体の種類によらず温度変化に比例して変化することを突き止めた。 V=V0(1+αt)ここでVは摂氏温度tにおける体積,V0は0度における体積,αは熱膨張係数である。この法則は低圧の極限でのみ厳密になりたつ法則であって,低圧の極限でαは,273.15分の1である。これでは,tが−273.15度のとき気体はまったく体積を持たないことになる。このことから−273.15度は,絶対0度と呼ばれる。そして,新しい温度Tを T=t+273.15 と定義すればシャルルの法則はVT=一定  と書き直すことができる。これをボイルの法則と結び付けたのが PV/T=一定 この方程式から,ある量の気体の圧力または体積を一定に保てば温度が決定できる。これが気体温度計の原理である。この式が成り立つのは理想気体または完全気体と呼ばれ,この温度による目盛りは,絶対温度目盛りまたは理想気体温度目盛りと呼ばれる。

【ケルビン目盛り】物理学者トムソン(ケルビン卿)は1848年にカルノーによって発表された理想的熱機関の効率を用いた熱力学的な温度の定義を提案した。高温源から抽出された熱量をQ1低温源に返却された熱量をQ2とすると温度目盛りは次式がなりたつ。T1/T2=Q1/Q1ここでT1およびT2は熱力学的温度目盛りとして高温および低温の熱源に対して指定される温度である。これは彼の業績をたたえてケルビン目盛りと呼ばれる。さらに絶対温度と熱力学的温度が同一であることを証明した。ケルビンの温度単位Kは,℃と同じ大きさである。両目盛りの関係はT(K)=t(℃)+273.15

3.いろいろな温度計  

温度による水銀の体積のように温度の変化により変化する物理的性質はたくさんあるので,温度の範囲,測定環境などによっていろいろな温度計が生まれた。

  ガラス製温度計,バイメタル温度計,蒸気圧式温度計,熱電対温度計,抵抗温度計,水晶温度計

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