| 白葱の一人の家を鳥渡る |
白葱のひかりの棒をいま刻む (黒田杏子) 雲の峰一人の家を一人発ち (岡本眸) 新宿ははるかなる墓碑鳥渡る (福永耕二) |
| 熊の子が鴬とまる切り落とす |
熊の子が飼はれて鉄の鎖舐む (山口誓子) 切株に鴬とまる二月かな (原石鼎) 向日葵や信長の首切り落とす (角川春樹) |
| この頃のいひしばかりの篝守 |
この頃の蕣(あさがほ)藍に定まりぬ (正岡子規) ゆきふるといひしばかりの人しづか (室生犀星) 花冷えの闇にあらはれ篝守 (高野素十) |
| 大空に風たてば白着物着る |
大空に羽根の白妙とどまれり (高浜虚子) 淡墨桜風たてば白湧きいづる (大野林火) さくら咲き去年とおなじ着物着る (桂信子) |
| 西行忌とき突堤を虫しぐれ |
西行忌我に出家の意(こころ)なし (松本たかし) 日傘さすとき突堤をおもひ出す (岡本眸) けふはけふの山川をゆく虫しぐれ (飴山實) |