秋の淡海春はあけぼの風花す |
秋の淡海かすみて誰にもたよりせず (森澄雄) 日本の春はあけぼの犬の糞 (坪内稔典) 約束は確か北口風花す (中原道夫) |
日盛りに露けき夜と見に出づる |
日盛りに蝶のふれ合ふ音すなり (松瀬青々) もの言ひて露けき夜と覚えたり (高浜虚子) 家にゐても見ゆる冬田を見に出づる (相生垣瓜人) |
人の死の曳きて晩夏の灌仏会 |
人の死の小さき活字春火鉢 (中村汀女) 水脈しるく曳きて晩夏のひかりとす (藤田湘子) 仏母たりとも女人は悲し灌仏会 (橋本多佳子) |
何求(と)めて姉は二階へ帯を解く |
何求(と)めて冬帽行くや切通し (角川源義) 叱られて姉は二階へ柚の花 (鷹羽狩行) 籾かゆし大和をとめは帯を解く (阿波野青畝) |
火を焚くや一本道が熟柿かな |
火を焚くや枯野の沖を誰か過ぐ (能村登四郎) 戦前の一本道が現るる (三橋敏雄) てのひらにうけて全き熟柿かな (木下夕爾) |