| 帰り道開けている夜桃香る |
帰り道猫をかまいて遅れけり 窓少し開けている夜春間近 黄昏の父の帰還や桃香る |
| バターの香なおそこにあるねだり声 |
バターの香鶴橋駅に満ちており 見飽きてもなおそこにある夜景かな 『山月記』大教猫のねだり声 |
| 掛布団しの字ヌの字の夢の中 |
掛布団やはり脱いでる秋浅し 三匹でしの字ヌの字のミミズかな 木漏れ日は地中の蝉の夢の中 |
| 紫陽花や年賀葉書の溶かしおり |
紫陽花や実習生の手の動き 買ってきた年賀葉書の白さかな 子の熱が水羊羹を溶かしおり |
| 水球に六甲山は二月尽 |
水球に世を写しおり苔の花 花を待つ六甲山は霧の中 丑三のテレビの軋み二月尽 |