大阪教育大学 国語教育講座 野浪研究室 ←戻る counter

2010年度 国語学概論 歌詞を原作にしたシナリオ コンクール 相互評価結果

投句者一覧
GUCCI   NIR   TYoBI   V3   mogu   おさんぽゴンタ   かつ   かやな   このは   しんこ   じゃがびーの女   すえ   ずっち   たろ吉   だいふく   ちさと   ちゅん   つーち   てむじん   にゃんちゅう   はなお   ばりー   ひのまる   ふくちゃん   みかん   みなみかぜ   やんも   ゆの   ゆり   よっしー   わらびー   カレーライス師匠   ガチャピン   サリチル酸   ニャゴロワ   ハッチ   ビギン   ペリー   ミッシェル   ムツゴロウ      空の中   国士無双   四槓子   篠田推し   生春巻   泉水   妄想男  
得点順

シナリオ『精霊流し』  みかん

1 部屋の中(夕方)
  夕焼けが差し込む部屋に一人の女、吉川亜紀(25歳)。
  壁にもたれ、畳に膝をまげて座りこんでいる。
  傍らにあったテープレコーダーを手に取り再生ボタンを押す。
  恋人の隆一の声が部屋の中に漂う。
隆一『……えっ、え〜と…。7月10日土曜日。窓から入ってくる風が気持ちよかです。』
  テープレコーダーを握りしめる亜紀。
隆一『入院して2週間。もう大丈夫やて言っとるばってん、お医者さんが外に出してくれなかです。早う亜紀に会いたい…』
亜紀「隆一さん…。」
隆一『来週には退院できるけん、また一緒に花火見に行くたい。』
  部屋の中のカレンダー。色とりどりの花火のイラストが描かれている。
  涙をあふれさせる亜紀。テープが流れ続ける。
隆一『…けほッけほッ…8月10日火曜日。こん前は、花火見に行けんで、ごめんな。そいと……』
  「ピンポーン」
  インターホンが鳴る。亜紀はハッとなって白い浴衣の袖で涙をぬぐい、玄関へと下りていく。
  部屋の中に残されたテープレコーダー。

2 玄関(日暮れ)
  引き戸を開けると隆一と亜紀の友人たちが顔をそろえている。
亜紀「みんな、久しぶりたいね。」
友人A「隆一はにぎやかなんが好きけん。」
友人B「こうして、よーさんで集まらな」
  そこへ亜紀の弟の雄介(8歳)が駆け寄ってくる。
雄介「姉ちゃん、どこ行くたい?」
亜紀「姉ちゃん、お友達と精霊流しに行ってくるたい。」
雄介「俺も行く〜!」
亜紀「ばってん、遊びに行くんじゃなかよ。」
雄介「俺も行く〜!」
友人B「ええじゃなか、亜紀ちゃん。」
友人A「ほれ、あんちゃんら、ええもん持っとるぞ〜」
  手に持っていた花火セットを見せる。
雄介「わ〜い!」
  男友達は雄介を連れて出かけてく。
亜紀「……」
  亜紀の肩にそっと触れる友達の春香(24歳)。
春香「亜紀ちゃん、その浴衣きれかねぇ。」
亜紀「ありがとう。隆一さんとお揃いやったけん…。」
春香「そう…。」

3 回想 川辺(精霊流しの夕方)
亜紀「隆一さん、浴衣ありがとう。すごくきれかぁ。」
隆一「亜紀に似合うと思っとった。俺とお揃いたい。」
  川辺を歩く二人の前を行く隆一の母、美智子(53歳)が振り返る。
美智子「大変やったんよ〜亜紀ちゃん。今まで女の子にプレゼントなんかあげたことなかったけん。
母ちゃんに泣きついてきて、一緒に選んでくれ〜って。」
隆一「母ちゃん、余計なこと言わんでよか!」
亜紀「……。」
隆一「…亜紀?」
  うつむく亜紀をのぞきこむ隆一。
亜紀「うれしい…。」
隆一「亜紀…。」
美智子「はぁ〜。あつかねぇ〜。」
隆一「ッ母ちゃん!」

4 回想 川岸(精霊流しの夜)
美智子「父ちゃん、隆一ももうすぐ結婚たい。もったいないくらい、よかお嬢さんばい。」
隆一「…父ちゃん、俺、亜紀を幸せにするけん。」
  流し船に野球のボールを置きながら隆一が言う。
  白く丸いボールを乗せながら静かに流れていく小さな船。
亜紀「きれかねぇ…。」
  たくさんの明かりのついた船を見て、亜紀は思わずつぶやく。
隆一「ああ、きれかぁ。…親父は、三度の飯より野球が好きでな。死ぬ時も『あっちで野球がしたいから』って言っちょった。」
亜紀「隆一さんなら、なんを流してほしか?」
隆一「俺はギターがよかね。」
亜紀「ばってん、大きすぎるったい。」
隆一「そうか…。なら、レコードがよか。亜紀が初めてくれたプレゼントの。…そいけん、亜紀。」
亜紀「なん?」
隆一「俺の精霊流しは、あのレコード。流してくれったい。」
亜紀「はいはい。それまでに、私が生きちょったらね。」
隆一「そりゃ、そうたい。」
  笑いあう二人。

5 川岸(夜)   
亜紀「隆一さん…。」
  黒い丸いレコードを乗せながら船はどんどん小さくなっていく。
亜紀「ひっく……ぅっ……ぇ……」
  涙で船がにじんでいく。
春香「亜紀ちゃん……。」 
  亜紀を見守る友人たち。
  そこに、隆一の母、美智子が近づく。
美智子「亜紀ちゃん……。その浴衣、着てきてくれたんばいねぇ。」
  浅黄色の着物を着た美智子は、また少し痩せていた。
美智子「隆一も父ちゃんも、先に逝っちまったばい。『幸せにする』って言っちょったのに……。」
亜紀「お母さん……。」  
美智子「ごめんねぇ……。亜紀ちゃん……。」
  泣き崩れる美智子。
  涙をぬぐって顔を上げる亜紀。
亜紀「お母さん、私。隆一さんにちゃんと幸せにしてもらいました。そいけん……。」
  しゃがみ、美智子の手を握る。
亜紀「そいけん、隆一さんに『ありがとうね』って言いたいんです。」
美智子「亜紀ちゃん、ありがとう―」

6 部屋の中(深夜)
  精霊流しから帰ってきた亜紀。隣の部屋には遊び疲れて眠ってしまった弟の雄介。
  ふと、置きっぱなしになっていたテープレコーダーを手に取る。
  途中まで聞いていた録音の続きを流す。
隆一『……そいと、もうひとつ、あやまらないけん。…もう、俺は、花火を見に行けんかもしれん。……ばってん、亜紀。』
  隆一の温かい声がする。
隆一『俺は、ここからでも花火が見えるたい。亜紀の流してくれたレコードも聞けるたい。』
  まるで、今、本当に話しかけているかのような隆一の言葉。
隆一『ありがとう、亜紀。……そいと、』
  亜紀はレコーダーを耳に押し付ける。隆一の声にもっともっと近づけるように。
隆一『そいと……好いとうよ、亜紀。』
  「カチッ」  テープが終わりを告げた。

7 川岸(夜)
  小さな女の子、菜月(4歳)がたくさんの光る船が流れる川を不思議そうに見つめている。
菜月「お母さん、あのお船なぁに?」
  そばにいる白い浴衣の母親にたずねる。
母親「あのお船はね、天国にいる、大切な人へとどいて行くのよ」
菜月「大切な人?」亜紀「お母さん……。」
母親「うん、大切で大好きな人……」
  母親は微笑んで、そう言うと、小さな船にまたひとつ、レコードを乗せた。
  暗転

シナリオの書き方になっている =57
映像が見えるようだ =57
感動した =55
イチオシ=80
得点合計=249
カレーライス師匠
映像が目に浮かんできて、話に入り込むことができました。
私が実際に体験したようなことではないのに涙がでそうになりました。
ペリー
感動しました!
方言が効果的に使われていると思います!
てむじん
ちゃんとシナリオの書き方になっていて良いと思います。
ゆり
精霊流しという長崎の盆の行事に九州の方言を使ったエピソードがそえられていて、物語がよりリアルに感じられました。
空の中
情景が目に浮かびます。
関西弁や標準語でない方言がまたGOOD!!です。
なんだか、よりリアルに感じます。
よっしー
少しずつ二人の関係を明かしていくのが上手かった。
現実と想像との関係がきれいだった。
いい作品をきれいにまとめているなと思った。
じゃがびーの女
感動しました。セリフが方言になっていて、さらに感情が伝わってくる感じがしました。最後は時間が経過していて、母になった亜紀の変わらない雄介への思いがうまく表現できていると思いました。
だいふく
精霊流しのシーンだけでなく、幸せな回想シーンが後の別れを際立たせていて、とても切なくなりました。また、テープレコーダーや、レコードという歌詞の中のキーワードを上手く使ってシナリオにしているなぁとも思いました。

シナリオ『償い』  ひのまる

1 街中の郵便局前(夕方)

  昭和後期。
  作業着を着た一人の男(ゆうちゃん)(29歳)が足早に郵便局に入って行こうとする。
  ゆうちゃんの懐には薄い給料袋が入っている。
  あと一歩で郵便局、というところで仕事兼下宿仲間(4人)に出くわす。
仲間1「よお、お疲れさん。これから飲みに行くんだ。お前も行くか?」
ゆうちゃん「いや、俺は・・・」
  すでに仲間達数人からは酒の匂いがついている。
仲間2「ダメダメ!ほら見てみろよ、郵便局 !大事な大事なお金様を早く安全な所に入れにゃあ・・・」
仲間3「俺らに全部酒に変えられちまうってか!」
  仲間1〜3は爆笑するなか、一人(ヤツ)だけ黙って、ただニコニコ笑っているゆうちゃんの方をチラチラ見ている。
ヤツ「ほら、行こうよ。ゆうちゃん、困ってる。それに早く行かないと席が取れなくなるよ。」
仲間1「おっ、そうだな」
仲間2「それでは、今月もせいぜい貯金に勤しんでくれたまえ、守銭奴クン」
  仲間達は去って行き、ゆうちゃんは郵便局にやっと足を踏み入れる。

2 郵便局内(夕方)

ゆうちゃん「全く、あんなに気ぃ遣わなくてもいいのに・・・」
  ふうっと鼻で息をし、つぶやいて、慣れた様子で現金書留の封筒を窓口で買う。
  ペンを借り、真剣な目で、至極丁寧な字で相手の名前を書く。
  懐から給料袋を取り出し、現金を封筒の中にそっと入れる。
ゆうちゃん「七年かぁ・・・もう・・・」
  封筒の相手の名前を見つめて、つぶやく。

3 回想 道路(深夜)
  
  道路にはあまり街灯が無く、雨も降っている。
  人はおらず、車はゆうちゃんが運転する車しかない。
  ゆうちゃんは欠伸をしている。
ゆうちゃん「今日の配達は堪えたなあ・・・はあ〜ぁ・・・」
  一瞬、瞼を閉じる。
  開けた目には、目の前の車のライトに照らされた横断歩道を一人のサラリーマンが驚きと恐怖に満ちた顔で立ちすくんでいる。
  車のライトがサラリーマンの顔も照らす。
ゆうちゃん「あ・・・!わ・・・!」
  すばやくブレーキを思いっ切り踏む。
  ブレーキをかける音と何かに衝突した鈍い音が、夜の道路に響く。
  パサッと傘が落ちる音。
  ゆうちゃんはカッと目を見開いている。
  慌てて車から降り、サラリーマンの所に駆け寄る。
ゆうちゃん「だ、大丈夫ですか!?」
  ゆうちゃんはサラリーマンを少し起こし上げる。
  サラリーマンから返事が返ってこない。
  サラリーマンの頭と起こし上げたゆうちゃんの手がテラテラと血に濡れている。
  ゆうちゃんは走り、近くにあった公衆電話で救急車を呼んだ。

4 回想 病院内(深夜)
  
  サラリーマンの妻が俯いて、手術室近くの長椅子に座っている。
  ゆうちゃんは少し離れたところで壁にもたれ掛かっている。
  ゆうちゃんは奥歯を噛み締めながら、床を見続けている。
  手術中のライトが消える。
  扉からマスクを外した医者が出てくる。
  サラリーマンの妻が駆け寄る。
  ゆうちゃんはそのまま顔を医者に向けた。
妻「あの・・・!しゅ、主人は・・・?」
  医者は首を横に振った。
医者「最善を尽くしましたが、打ち所が悪かったようで・・・申し訳ありませんが・・・」
  サラリーマンの妻は顔を覆いながら泣き崩れる。
  振り向き、立ち尽くしているゆうちゃんを睨みつける。
妻「こ・・・この人殺し・・・!!」
  サラリーマンの妻は立ち上がり、ずかずかとゆうちゃんに迫っていく。
  ゆうちゃんは泣きながら土下座をする。
ゆうちゃん「も、も、申し訳ありません・・・私はこんな・・・」
妻「うるさいうるさい!!言い訳なんて聞きたくないのよ!!」
  ゆうちゃんの目にもサラリーマンの妻の目にも大粒の涙が溢れ、こぼれている。
妻「この人殺し!!絶対に・・・!絶対にあんたを許さないんだから!!!」
  ゆうちゃんはうずくまる様に土下座をし、呪文の様に、すいません、申し訳ありませんを言い続けている。

5 回想 下宿の宿のヤツの部屋(夜)
  
  ゆうちゃんとヤツがあぐらをかいて酒を飲んでいる。
ヤツ「そういえばさ、いっつもゆうちゃんは給料もらったら、すぐ郵便局にいくよね、なんで?」
ゆうちゃん「親への仕送りだよ・・・」
ヤツ「嘘だね。」
ゆうちゃん「え?」
ヤツ「前に聞いた時と答えが違う」
ゆうちゃん「・・・」
ヤツ「教えてよ」
ゆうちゃん「他のやつらに・・・誰にも言うなよ・・・」
ヤツ「うん」
  ゆうちゃんは眉間に皺をよせ、畳をじっと見つめている。
ゆうちゃん「・・・俺さ・・・ここに越してくる前に、車で人、撥ねたんだ。」
  ヤツは黙ってゆうちゃんの顔を見つめている。
  ゆうちゃんは俯いている。
ゆうちゃん「ほぼ即死。サラリーマンの人でさ、俺せめてもって思って給料全額、奥さんに送ってんだ・・・許してくれなんて思ってないけどさ・・・でもこれ位しか、こんな事しか思いつかなくて・・・」
  ゆうちゃんの声は震えている。
ヤツ「うん・・・いいよ、もう・・・ごめん」
ゆうちゃん「ん・・・」
  二人は黙る。
  外の風が窓に当たる音がする。
  下の階で他の下宿人達が騒いでいる音がする。

6 給料を仕送ってから数日後 下宿の宿(夜)
  
  ゆうちゃんは自分の郵便受けをチェックしている。
  郵便受けの中には白い封筒が入っている。
  封筒にはサラリーマンの妻の名前が小さく書かれている。
ゆうちゃん「え・・・?」

7 ヤツの部屋(夜)
  
  廊下から誰かが走っている音が聞こえる。
  乱暴に扉を開けて、ゆうちゃんが入る。
  ゆうちゃんはボロボロと涙も鼻水も分からない位、泣いている。
ヤツ「な、何!どうした!?」
  ゆうちゃんは何も言わず、しゃっくりをあげながら白い封筒に入った一通の手紙を渡す。
手紙の内容「ありがとう あなたの優しい気持ちはとてもよくわかりました だからどうぞ送金はやめて下さい あなたの文字を見る度に主人を思い出して辛いのです あなたの気持ちはわかるけど それよりどうかもうあなたご自身の人生をもとに戻してあげて欲しい」
ヤツ「これ・・・」
ゆうちゃん「お、俺・・・俺・・・あ、あの人が・・・」
ヤツ「ああ、ああ!」
  ヤツはゆうちゃんの肩を抱き、ウンウンと頷いている。
  ヤツは泣いている。
  二人は大声をあげながら泣いている。
  ゆうちゃんの廊下を走る音と二人の泣き声に心配した下宿人達がヤツの部屋を覗き込む。
  下宿人達は不思議な顔をしている。
  ゆうちゃんとヤツは変わらず、大声をあげて泣いている。
  ゆうちゃんの右手には涙が落ち、握りしめられてくしゃくしゃな手紙がある。

シナリオの書き方になっている =53
映像が見えるようだ =51
感動した =46
イチオシ=30
得点合計=180
四槓子
本物の映画の台本を読んでいるようだった。
情景がリアルに想像でき、心に深く響く作品になっていた。
ばりー
歌詞にないところまで鮮明に描かれており
映像が浮かんでくるし感情が入りやすかった。
ちゅん
セリフから登場人物の性格や心情がよくわかる良いシナリオだと思いました。

シナリオ『ジャコビニ彗星の日』  生春巻

1 女の部屋 (夜)
  照明を消して暗くなった部屋   
  窓辺に置いた椅子から外を眺める女
女「結局、待ちぼうけなん・・・?」
  タイトル  ジャコビニ彗星の日

2 回想 川原(夜)
  花火大会が終わった川原。
  たくさん集まった見物客は帰路につき始める。
  その中でまだ煙でかげる星空を見上げる男女。
女「ふう・・・」
男「どうしたん?」
女「帰りたくないわあ・・・」
男「お、待ってましたの展開」
女「意味ちゃうわ」
男「あ、そうなん」
  少しの間沈黙
女「花火きれいやったな」
男「せやな」
女「見てる間思ってててん。いつまでも続けばいいのにって。いつか終わるってわかってんのに」
男「お前、花火好きやもんな」
女「うん・・・。終わってもうたのはわかんねんけど、なんか帰りたくないというか」
男「ふうん」
女「もう今年、花火ないやん?なんか夏も終わるんやって思えて寂しいねん」
男「わかるわ、それ」
  2人のまわりをにぎやかな集団が通り過ぎる。
男「なあ、流星群って知ってる?」
女「え、流れ星がいっぱい降るやつやろ。それがどうかしたん?」
男「今年の秋、流星群が日本で見られるらしいねん。しかも、かなりすげえのが」
女「へえ」
男「それを、オレと見てほしい」
女「え?」
男「花火とちゃういけど、きっと綺麗やし」
女「うん・・・ええよ」
男「ほんま?」
女「うん」
男「絶対やで絶対」
女「わかったって」
男「よしよし、よおし頑張りますかあ」
女「何をよ?」
男「いや別にぃ」

3 女の部屋 (夜)
女「約束したのになあ・・・」
  椅子に座り空を見上げるが、空は暗いまま。
  テーブルの上の新聞。
記事「今夜、ジャコビニ流星群」
女「みんな嘘つき」
  ふと道路を見下ろす女
  道路に男がいる、
  女に手を振る。
  驚く女、走って部屋を出る。

4 家の前の道路 (夜)
  男に走り寄ろうとした女は途中で足を止める。
  少し間を置き、向き合う男と女。
女「忘れられたのかと思った」
男「忘れるも何もニュースでもやってたやん」
女「流星群ちゃうし」
男「はぁ?」
  沈黙。
  男は女に近づく。
男「流星待ってたんか」
女「うん」
男「見えた?」
女「ううん、ひとつも」
男「ふふ。ですが、僕は見ました」
女「え?」
男「じゃじゃーん」
  男は握った手を突き出す。
女「なんなん?」
男「その流れ星を拾ってきた」
女「え?」
  男は手を広げる。
  手には指輪。
  驚く女。
男「お前に似合うと思ったから」
女「これ・・・」
男「綺麗やろ?」
女「高そう」
男「アホ、雰囲気ぶちこわしやん」
女「ご、ごめん」
  はっとした女の顔
女「そっか、これのために仕事・・・」
男「いやいや、だからこれ流れ星やって。拾ったんやって」
女「・・・ありがとう」
  女がほほ笑む
男「お、おう」
  黙ってしまう男。
女「願い事は?」
男「え?」
女「これ流れ星なんやろ、なにか願い事しいや」
男「願い事・・・せやな」
  男が女の耳もとに小声で何かつぶやく。
  驚く女の顔。
  夜空にきれいな月。

4 女の家 ダイニング (翌朝)
  女とその弟が朝食を食べている。
弟「なんやねん、ニュースでも絶対流星見られる言うてたのに。日本国民だまされたなあ」
女「ふふ、ほんまやな」
弟「え、姉ちゃんなんで嬉しそうなん?」
女「うん、そう?」
弟「もしかして、見れたん?」
女「うん・・・見れたで。きれいな流れ星」
  驚いた表情で姉を見る弟。
  それを見てほほ笑む女。

シナリオの書き方になっている =60
映像が見えるようだ =58
感動した =51
イチオシ=10
得点合計=179
おさんぽゴンタ

とにかくなんかすべてが良かった!!
登場人物が関西弁なのも
すごく親近感がわきました。
そして、
説明の部分が少ないのに
台詞で何か伝わってくるものがあるというか・・・。
感動しました☆


シナリオ『秋桜』  おさんぽゴンタ

1、喫茶店(正午)
喫茶店の一角、2人掛けのテーブルで親しげに話す女性とその友人。
友人「とうとう明日か、あんたが嫁いで行っちゃうのも。早いものね」
女性「ええ、本当に。でも、準備とかでずっと忙しかったから実感湧かないかな」
女性が言葉とは裏腹に幸せそうな笑顔を見せる。
それを見た友人が、女性の頬を指で軽くつついた。
友人「何、その幸せそうな顔〜?? 私にもちょっとは分けろっての」
女性「ふふ、そんなこと言って。貴女ももうすぐ2人目の赤ちゃんが生まれるでしょう?」
友人「・・・まぁそーだけど。私のことはいいのよ。――というか、明日お嫁に行くって人が私なんかと会ってていいわけ? ほら、おばさんとも話があるでしょ」
女性「お母さんとは夜ゆっくり話すから・・・。それにすみれに会うって言ったら、お母さんもぜひ行ってきなさいって。小さい時からずっと一緒で、仲良くしてくれた子なんだから、積もる話もあるでしょう、って」
友人「そうなの? ・・・おばさんはお元気??」
女性「うん。でも、お父さんが死んでから、ちょっと涙もろくなったかな。年のせいっていうのもあると思うんだけど・・・」
女性はコーヒーを一口飲んでから話を続ける。
女性「最近ね、お母さん、一人で泣いている時があるの。一人で寂しいんだと思う。・・・・・やっぱり私、お嫁に行かないほうがいいのかな・・・・」
友人「何言ってるの!! 大丈夫、おばさんは強い人よ。そしてあんたの幸せを誰よりも願ってる。だから、そんなこと言っちゃだめ」
友人の勢いにしばらく黙りこくっていた女性。はっと我に返る。
女性「・・・うん、ありがとう。ねぇ、すみれ」
友人「私たち、ずっと友だちだよね・・・」
一瞬の沈黙。友人は驚いたように目を丸くする。
女性は真剣な顔で答えを待つ。
友人、ふっと笑って、口を開く。
友人「当り前でしょ。いまさらそんなこと言うから、びっくりしちゃった。あんたがどこへ行こうが、何をしていようが、ずっと親友よ」

2、喫茶店の外(午後3時)
女性「すみれ、会えてよかった。もうしばらくは会えないかもしれないけど、ちょっと落ち着いたら、向こうから手紙書くから」
友人「うん、待ってる。旦那さんとうまくやんな」
手を振って別れる二人。二つの影が逆方向に去っていく。
突然足を止めて、振り返る女性。
女性「すみれ!! ありがとう!!」
友人「・・・うん」
手を振りながら涙目で頷く友人。

3、女の実家の縁側付近(午後4時)
女性「ただいま。お母さん、帰ったよ?」
家の中を歩き回る女性。縁側に座る母の姿を見つける。
女性「おかあさん。またここで私のアルバム見てたの??」
母「まぁ、お帰り。ええ、そうなのよ。なんだか懐かしくって」
いとおしむようにアルバムを見つめる母。
母「このときなんかほら、あなた泥だらけよ。確か、田んぼにはまったのよね」
女性「え、そうなの? 私それ知らないわ。3つのときぐらいかしら」
母の思い出話に付き合う女性。
2人とも笑顔で楽しそうに会話している。

4、卓袱台のある部屋(午後6時)
2人で卓袱台を囲み、夕食を食べる親子。
女性「お母さんと食べるご飯も今日で最後だね」
母「そうねえ。でもあちらでは、もっと大人数で、しかもいい物を食べさせてもらえるわよ」
女性「・・・・なんだか、向こうでちゃんとやっていけるか不安だな」
母「大丈夫よ。どれだけ苦労しても、時間が全部、笑い話にしてくれるから。心配しなくても大丈夫。貴女は私の子だもの。どこでもうまくやっていけるわ」
そう言って、女性の頭を母親が優しくなでる。
女性「おかあさん・・・」

5、女性の部屋(夜)
部屋で女性と母親が次の日の荷造りをしている。
母「衣類は全部この箱の中に入れたからね」
女性「ありがとう」
女性が部屋全体を見回す。
小物などがなくなって、どこかさびしげで、がらんとした部屋。
娘は母を振り返りながら。
「ねぇ、お母さん。もう忘れ物とか・・・・・お母さん!?」
涙をこぼし、うつむいている母に気付いて驚く娘。
娘「・・・どうしたの? 急に・・・・」
母「・・・がらんとした部屋を見たら急に寂しくなって・・・。
あなたが幸せになるのは嬉しいことのはずなのに・・・・。・・・・ねぇ、あきな」
名を呼ばれ、涙をぬぐう娘。
娘「うん」
母「元気でね、本当に。・・幸せになりなさい」
娘「うん。・・・おかあさん」
母「うん??」
娘「今までありがとう。生んでくれて、育ててくれて、一緒にいてくれて、・・・・愛してくれて、ありがとう」

シナリオの書き方になっている =49
映像が見えるようだ =49
感動した =56
イチオシ=20
得点合計=174
GUCCI
とても伝わってきた
ガチャピン
子が親を思う気持ちが
とてもストレートに伝わってきました!

シナリオ『シンデレラ・エクスプレス』  空の中

1 駅(夜)
 駅の構内で電車を待つ一組の若いカップル。
 立って、手をつないでいる。
 二人の会話はポツリポツリとあるだけ。二人とも少し表情が暗い。
 もう少しで別れの時。
女「もうちょっとで電車来るね…。」
男「そうだね…。」
女「久しぶりに会えてうれしかったな。」
男「俺も。」
 しばらく無言になり、向かいのホームを見つめる。
女「…でも、会えない時は、淋しいよ…。」
 つないだ手を少し揺らしながら、女が下を向いてポツリと言う。
男「…俺だって淋しいよ。」
 男は、女の手をしっかりと握る。
女「…そっか。そうだよね。二人とも同じだね。うれしいな。」
 そう言って男を見上げる。女に少し笑顔が戻る。
男「うん。同じだよ。何も違わないんだ。」
 女の笑顔を見て、男も笑顔になる。
 女は、少し泣きそうな笑顔で空を見上げて言う。
女「あーあぁ。電車、来てほしくないな…。」
 暗くなった空からは、ポツリポツリと雨が降り出していた。

2 電車の中(夜)
 女は到着した電車に乗り込む。見送る男。
女「じゃあ、またね。」
 女、淋しそうな笑顔。
男「うん、また。電話もメールもするから。」
女「待ってる。」
 発車を知らせる音。
 男、女の手を取り、しっかりと握る。
男「好きだよ。君だけだから。どんなに遠く離れてても、君だけを思っているから。」
 男、女から目をそらさず早口に言う。
女「私も…。あなただけだから。」
 二人は一瞬見つめ合う。 
 ドアが閉まり、電車が動き出す。
 二人とも、見えなくなるまで手を振る。
女「ハァー。」
 ため息をつく。
女「次に会うまで、また一人か…。」
 心の中でつぶやく。
 夜の街の風景が次々と後ろへ流れていく。
 雨が窓を濡らし、ネオンの光をゆがめる。
女「傘、持ってないな…。私の駅の方まで雨がきそう。ついてない。ハァー。」
 もう一度、ため息をつく。
 電車はどんどん彼の街を離れ、自分の街が近づく。

3 女の駅(夜)
 最寄駅に着き、電車を降りる。 
 人の流れに押し出されるようにして改札を出る。
 女、空を見上げる。その表情は浮かない。
女「やっぱり、雨降ってきてる。」
 心の中でつぶやく。
女「コンビニで傘買っていこうかな。でも、この前も買ったしな。また買うのもなー。もったいないし。」
 少しの間、考える。
女「よし。買わずに帰ろう。小降りだし、大丈夫だよね。」
 走り出そうとしたその時に、携帯電話が震える。
女「あ、メール。…彼からだ!」
 慌ててメールを読む。
男からのメール「もう着いた?そっち雨降ってない?こっちは結構降ってきてさ。傘持ってなかったよなと思って。」
 女、小さく笑い、男に返信する。
女のメール「もう着いたよ。こっちはまだ小降り。だからもう傘買わずに走って帰っちゃおうと思って。走ろうとしてるとこにあなたからメールが来たの。」
 すぐに男から返信が来る。
男のメール「それは失礼致しました。笑 別に無理に傘買えとは言わないけど、気をつけろよ。ちゃんと左右の確認。飛び出ししないこと。あと、変な人にはついていかないこと。帰ったら、帰ったよってメールして。心配。」
 女もまたメールを返す。
女のメール「うん。気をつけて帰るから。子どもじゃないよ。笑 帰ったらメールするね。心配してくれてありがとう。」
 携帯電話を閉じて、鞄にしまう。
 その顔は電車を降りてきた時とは違い、晴れやか。
女「どんなに離れてても、何も変わらないし、違わない。想いは同じだ。同じ想いを持っているから、いつでもつながってる。彼のくれる電話やメールで、彼の笑顔が見える。何も淋しいことなんてない。次に逢える時まで頑張れる。今日逢えたことに感謝して、また逢えることを祈ろう。」
 家へと向かう女の軽やかな靴音が、夜の闇に明るく響いている。
 女の胸には、男の笑顔がある。
 

 

シナリオの書き方になっている =49
映像が見えるようだ =50
感動した =51
イチオシ=20
得点合計=170
泉水
身近な出来事として胸の中にスゥーっと入ってきた内容でした。
シナリオとしても、上手く成り立っているのではないでしょうか?
とても、素敵な内容だと思います。
TYoBI
今回の作品の中で一番ト書きの部分が有効的に活かされていて一番シナリオっぽいと感じました。

内容もきれいで、あたたかい雰囲気となっていて、心あったまる作品なところも好印象を受けました。



シナリオ『あの日にかえりたい』  泉水

1 現在 女の部屋 (夕方)
夕日が差し込む小さな部屋。机の上には、無造作に置かれた携帯電話と読みかけの恋愛小説がある。
その部屋の小さなベッドの上に、女(22歳)は横たわっている。白いTシャツに、ジーパンを履いている。右手で両目を覆い、石のように動かない。外ではカラスが鳴き、家路を急ぐ子どもたちの声が聞こえている。女は、しばらくすると思い出したかのように起き上がり、窓の外へ目をやる。次第に夕日は、沈んでいく。部屋の中も女の顔も、何もかもが夕日の色に染まっていく。

2 回想 4年前 学校の教室 (放課後)
教室には男(当時18歳)しかいない。窓の外からは、部活動の掛け声などが聞こえている。男は、教室の窓側の一番後ろで本を読んでいる。白いポロシャツに学生ズボンを履いている。
不意に教室の前方の扉が開く。
女(当時18歳)「松村君。まだいたの?」
男「……うん。」
女「本読んでいるの?」
男「……もうちょっとで読み終わるんだ。」
女は、男に近づき、男の前の席に腰をおろす。スクールバッグを机の上に置き、男のほうに体を向ける。セーラー服を身につけている。
女「私、読み終わるまで待っているから。一緒に帰ろうよ。」
男「えっ……。」
女「いいでしょ?」
男「……うん。」
男はしばらく本を読んでいたが、しばらくするとしおりを挟み、本を閉じ鞄にしまう。
女「どうしたの?」
男「待たしているって思うと、落ち着いて読めないから。……帰ろう?」
男の言葉に女は微笑む。
女「うん。」
鞄を持ち、二人で並んで教室をあとにする。

3 回想 4年前 並木道 (夕方)
葉桜になってしまった並木道を男と女は歩いている。少し蒸し暑い風が吹いている。言葉を交わすことなく、ただ黙々と歩いている。今日は、人通りがなく誰も彼らの存在を目にすることはない。
女「……松村君は、どんな本を読むのが好きなの?」
男「……恋愛小説を読むのが好きかな。」
女「恋愛小説……」
二人を夕日が照らしている。女は、男の横顔を見ながら話をしている。
男「僕、本当の恋愛ってしたことなくて。恋愛小説を読んでいるとね、こんな恋愛したいなぁってすごく幸せな気分になるんだ。」
女「……そうなの。」
また会話が途切れる。時々、風に吹かれて葉が辺りに落ちる。二人はまた黙々と歩き続ける。

4 現在 女の部屋 (夜)
女は、机に向かい恋愛小説を読んでいる。辺りはすっかり日が落ち夜になっている。しかし、自転車やスクーターの音がやむことはない。遠くからは電車の音も聞こえる。
不意に携帯電話が鳴る。
女の母「亜希。今、大丈夫だった?」
女「うん。どうしたの?」
女の母「実はね…おじいちゃんが倒れたの。」
女「おじいちゃんが?」
女は、恋愛小説にしおりを挟むのも忘れて閉じる。窓の外からは踏切の音が聞こえる。
女の母「……亜希はおじいちゃん子だったものね。おじいちゃんも、亜希に会いたいんじゃないかと思って。」
女は、壁にかかったカレンダーを見る。
女「……明日、帰るよ。」
女の母「そう?大丈夫?」
女「うん。じゃあね。」
電話からは、虚しい電子音が聞こえている。踏切の音はいつの間にか止んでいる。

5 回想 4年前 学校の屋上 (夕方)
涼しい風が吹き抜けている。美しい夕焼けがよく見えている。屋上には男と女がいる。運動場から部活動の掛け声が聞こえている。
女「……好き。」
小さな声だ。風にかき消されそうな声だ。あるいは、幻だったのかもしれないと思うような声だ。
男「……うん。」
女「……うんじゃ分からないよ。」
男は、頭を掻き困ったような表情で女を見つめる。
男「……僕も、亜希のことが好き。」
強い風が二人の間を駆け抜ける。男は、風が通り抜けるのを待ち、女を抱きしめる。
女「……大好き。」
風に交じり、男の香水の匂いが女の元へ届いていく。二人は、夕焼けに染まりながら、しばらくそのままでいる。

男「ねぇ、写真撮ろうよ。」
女「写真?」
男は、ズボンのポケットからデジタルカメラを取り出す。
男「僕、写真を撮るのも好きで、持ち歩くことが多いから……両想いになれた記念に。」
夕日のせいなのか、男の頬が赤く染まる。
女「……うん。」
二人は満面の笑みで写真に写る。そんな彼らを見ていたのは、夕日と数匹のカラスだけだ。

6 現在 電車の中 (朝)
朝早くの電車。人はあまり乗っていない。車窓からは海が見える。
車掌「切符を拝見いたします。」
女は、バッグから切符を出し車掌に見せる。
車掌「結構です。」
女は、再びバッグに切符をしまう。
しばらくすると女は鞄の中から恋愛小説を出し、徐に読みだす。電車は着実に女の故郷へ近づいていく。

7 回想 4年前 男の部屋 (夕方)
男の部屋は、夕焼けに染まっている。机の上には、写真が広げられたまま置かれている。女は絨毯の上に、男はその向かいに座っている。
男「……なんだって?」
女「……大阪の大学に行こうと思っているの。」
女は、俯いて小さな声で言う。しばらくの沈黙。
男「……どうして僕に相談してくれなかったの?」
女「言いづらくて……」
男「……どうして。」
女「そうやって俊くんの悲しそうな顔、見たくなかったから。」
再び、沈黙。
男「……無理だよ。遠すぎる。」
女「……そんなこと言わないで。」
男「僕は、亜希の重荷になりたくない。大阪に行って、亜希はやりたいことを思いっきりやればいい。そこに僕はいなくてもいい。」
女「……やだ。」
女は泣きだす。男は、女の頭を撫でる。
男「人は、寂しさに弱くなる。こうやって近くにいるから、今は分からないけど。離れれば、お互い弱くなる。」
女は、ただ涙を流している。外からは、夕日がさし、子どもたちの声が聞こえる。
男「……別れよう。亜希。大好きだから、別れよう。」
ただ、女の泣き声だけが際立って聞こえている。

8 現在 病院 (昼)
病院は妙に静かだ。外科病棟には、看護師の姿さえまばらだ。
女の母「亜希。」
女「お母さん……」
待合室にいた母は女を見つけるや否や声をかける。
女の母「こっち……」
女の母は、女の前を歩き、女はその後をついていく。206号室の前で止まり、扉をあける。
女の母「おじいちゃん。亜希が来てくれましたよ。」
女の祖父「おぉ……亜希。」
女「おじいちゃん。」
女の祖父は4年経ち、老いている。そして痩せてしまっている。
女の祖父「すまない。わしがこんな体で……大阪でやることがあるんだろ?」
女「いいの。今日は。おじいちゃんに会いたかったし。」
女の祖父は、にっこり笑うと女の手を握る。
女の祖父「わしは、もう永くない。これだけ生きたんだ。もう悔いはない。だけどな、亜希の花嫁姿を見られないのが唯一の心残りだ。」
女の祖父は、女の手をより強く握り涙をこぼしながら言う。
女「おじいちゃん……」
そのまま、しばらく時が流れる。

9 現在 病院の食堂 (午後)
女の母と女の前にコーヒーが置かれている。
女の母「ガンがね、転移していてもう手術できないらしいんだよ。」
女「……そうなの。」
どちらもコーヒーには手をつけない。
女の母「……寿命なのかもしれないね。」
女「……うん。」
沈黙が続く。コーヒーにはやはり手をつけず、二人とも俯いている。
 
10 回想 4年前 駅のホーム (昼)
女は、旅行鞄を持ち駅のホームに立っている。女以外に人はいない。女の手のひらには、あの写真と男が読んでいた恋愛小説がある。しばらく、見つめる。
しばらくすると恋愛小説を鞄にしまい、写真だけを見つめる。
女は、徐に写真をビリビリ破きだす。目からは涙が流れている。
遠くで電車の汽笛が聞こえる。1時間に1本の電車がやってきた。
女は、破いた写真を小箱に入れ鞄にしまい、涙を手で拭った。

11 現在 女の実家 (夜)
実家には女の父と母と女がいる。カレーライスのいいにおいがする。夕焼けが大阪とは異なり、心に染みる美しさである。
女の母「亜希。」
女「どうしたの?」
女の母「松村君のこと覚えている?」
女は、目を見開く。
女の母「松村君、今度結婚をするらしいの。」
女「……そう。」
女の母「小さな田舎町だからね。そういう話はすぐに広まるんだよ。特に松村君はカメラマンとして有名になってきているから。私の口から言ったほうがショックも少ないかと思って。」
女「……ショックなんて受けるはずないよ。もう過去のことだから。」
女の目にはうっすら涙がうかんでいた。

12 現在 男の実家 (夕方)
カラスの鳴き声が聞こえる。女以外に歩いている人はいない。男の実家は、別れを宣告されたあの日のままだ。電気が点いていない。男はまだかえってきていない。
女は、今来た道を引き返そうとする。
男(22歳)「……亜希?」
女はハッとし、声のしたほうを見る。少し大人びた男が立っている。
女「……久しぶり。」
男「……久しぶり。どうしたの?」
女「おじいちゃんが倒れて、連絡もらったから会いに来たの。」
男「そっか……大変だね。」
男の左手の薬指には婚約指輪が光っている。
女「……結婚するんだってね。おめでとう。」
男「あ……あぁ。ありがとう。」
男は、頭を掻き俯く。しばらく沈黙。
男「……亜希は?」
男は顔を不意にあげる。
女「……私?さぁね。」
しばらく沈黙。
女「じゃあね。忙しいのに、ごめん。」
逃げるようにその場を立ち去る。

13 現在 女の実家 (夕方)
今は、家に女一人。抜け殻のごとくベッドに横たわる。夕焼けは、辺りをオレンジ色に染める。

女は、しばらくすると立ち上がり鞄の中から恋愛小説とメモ用紙とボールペンを出す。
『結婚おめでとう。これからは友達として、時々飲みにいったりしようね。』
そう書き、連絡先を添えたメモ用紙をしばらく手の中で持ち、眺めていると涙がポツポツとメモ用紙に落ちて文字がにじむ。
女は、そのメモ用紙を恋愛小説に挟み、さらにもう一枚メモ用紙をとる。
『松村君に渡してください。』
そう書いたメモ用紙を恋愛小説の上に乗せる。
そして鞄から小箱を出す。手のひらにビリビリに破れた写真を手のひらに乗せ、並べてみる。少し、色褪せた二人の笑顔が見える。
女は、写真を並べ終わると窓を開け、風に乗せて写真を吹き飛ばす。しばらく外を眺める。涙はいつしか乾いている。
そのまま鞄を持ちゆっくり部屋を後にする。全てが夕焼けに染まっている。

シナリオの書き方になっている =47
映像が見えるようだ =53
感動した =49
イチオシ=20
得点合計=169
みかん
細かい描写と場面設定で構成されていて
映像がリアルに見えてきました。
個人的に2人の学生時代のシーンがとても好きです。
NIR
情景が目に浮かぶ。
よく書けていた。
構成もよかった。

シナリオ『恋人がサンタクロース』  じゃがびーの女

1、遊歩道 夜 
  クリスマスイブだけあって、街は華やかなムード
  いつもより寄り添って歩くカップルたちを横目に女は早歩き  で家に向かう 
女の子「ねぇねぇお母さん!わたしの家にもサンタさん来るかな〜」 
母親「良い子の家には必ず来るのよ」
   女はふと少女の頃を思い出す 

2、回想 20年前のクリスマスイブ 
  隣の家に住むおねえちゃんは無邪気な私に教えてくれた 
おねえちゃん「クリスマスイブにはね、サンタクロースが来てくれるの。だから私は待ってるの。」 
少女「サンタさんなんていないもん!うちには来たことないもん!」
  口をとがらせてうつむく少女におねえちゃんは言った
おねえちゃん「ふふ!大人になったらね、きっと来てくれるよ。あなただけを愛する、あなただけのサンタさんが最高のプレゼントを持ってね!」
少女「わたし…だけの?」 

3、女の部屋 夜 
  街のにぎやかさとは対照的な静かな部屋。 
  時計の音だけが鳴り響く 
  女はマフラーをとり、しゃがみ込んで、バックの中から携帯  を取り出し、画面の文字をぼんやりと見つめる 
  「ごめん!仕事が入った。今日は会えない…」 

女「はぁ…私だけひとりぼっちだよ…」 
  時間は全然進んでくれない 
女「もう寝よ。することないし」 
  部屋の明かりを消す

  突然ドアをノックする音が聞こえる 
  女は恐る恐るドアに近寄る

女「誰…ですか?」

男「メリークリスマス!!」 
  女は驚きと喜びで一瞬にして表情が明るくなる
女「祐次でしょ!もう仕事は終わったの?」
男「まさか。祐次くんじゃないよ。頼まれて来たんだ。君にさみしい思いをさせないようにね!プレゼントと一緒にね」
  女は微笑みながら言う 
女「ってことは…サンタクロース?」
男「そう!君だけのサンタクロース。」

  女は最高の笑顔でサンタクロースを迎えた
女「祐次…ありがと」
男「だから!俺はサンタクロースだってば!」
  男は笑いながら女の頭を、くしゃくしゃとなでた

  女は小さくつぶやく 
女「おねえちゃん、私の家にもサンタクロースが来たよ!最高のプレゼントをくれたよ。やっと会えたんだ…」

  外を見てみると、白色に輝く粉雪がちらつき始めていた

シナリオの書き方になっている =51
映像が見えるようだ =53
感動した =45
イチオシ=20
得点合計=169
ひのまる
映像が見えるくらいの分かりやすさが良かった。
ムツゴロウ
今年のクリスマスは
この計画で完璧ですね

シナリオ『海を見ていた午後』  だいふく

1 三年前 レストラン (夕方)
  遠くの岬を見つめながら重い口を開く女。
女「もう、一緒にはいられないの?」
  ソーダ水の入ったグラスは水滴におおわれている。
男「ごめん」
  目をそらす男。
女「どうしても…?」
男「ごめん…ほんとにごめんな」
  男はようやく女の方を見る。
女「わかった」
  涙をこらえるような顔で笑う女。
女「今までありがとね。私は大丈夫」
男「ごめん…でもそうだよな、お前なら俺がいなくても生きていけるもんな」
  レストランの中の二人とは反対に晴れ渡る空。

2 今 レストラン (昼)
  窓際に目を閉じて座る女。
  手元にはソーダ水。
  小さな泡が浮かんでは消えてゆく。
女「あれから、もう何年かな…」
  つぶやく女。

3 五年前 レストラン (夕方)
  海上を飛ぶウミドリをじっとみつめる男。
  しばらくその様子を見ていた女が噴き出す。
女「子どもみたいね」
男「馬鹿にするなよな! 青い海に白い鳥とかすげえ綺麗だろ? 見たくもなるって!」
女「綺麗だけど…ねぇ」
  男の様子思い出しながらクスッと笑う女。
  対称的に仏頂面の男。  
女「ごめんなさいってば! そんな顔しないで? 私は子どもみたいに目をキラキラさせられるあなたが好きなんだから」
  少し焦りながら、照れながら言葉を紡ぐ女。
  破顔する男。
男「お前ここにくるとやけに素直だな」
女「そう…かしら…」

4 三年前 レストラン (夕方)
男「…お前なら俺がいなくても生きていけるもんな」
  男の言葉に目を伏せる女。
女「そうね…でも」
  そう言いながらおもむろにペンを取る女。
  紙ナプキンの上には”忘れないで”の一言。
  涙で滲んだ様な文字。
  男は微かに頷いてレストランを出ていく。
女「大丈夫なわけないじゃない」
  女の目からは涙が溢れだしとまらない。
  机の上には涙の粒が次々に落ちてゆく。

5 三年前 女の部屋 (夜)
  泣き続ける女。
  嗚咽が少しずつ止んでゆく。
女「あの人の前では泣けなかったのに」
  自嘲気味に笑う女。
女「あのレストランでは素直になれてたのにな…」
  そうつぶやいて、また静かに涙をこぼし始める女。

6 今 レストラン (夕方)
  少し温くなったソーダ水を飲む女。
  気が抜けて味の変わったそれに、眉をしかめる。
  半分以上ソーダ水を残し、女は立ち上がる。
  もう一度海に目をやり、何かに気づく女。
女「あーあ」
  そう再び呟いて、女はレストランを後にする。
  

シナリオの書き方になっている =59
映像が見えるようだ =48
感動した =41
イチオシ=20
得点合計=168
ミッシェル
背景の明るさとストーリーの哀しさのようなものがあって、なんとなく切なさを感じます
ニャゴロワ
場面の切り替えがうまいと思った。

シナリオ『海を見ていた午後』  ゆの

1 レストラン
海の見える静かなレストラン。
今日は今年一番の暑さ。太陽がまぶしい。
一人の女が窓際の席に座り、メロンソーダを注文する。

2 女の回想 〜高校二年の夏〜
授業終わりの放課後
男「今日部活休みなんだ。どっか寄ってかない?」
女「ほんと?嬉しい!」
男「どっか行きたいとこある?」
女「海!!!」
学校から二人乗で海に向かった二人。
砂浜で水遊びや砂遊びをしてすごす。
女「また来年の夏も来ようね。」

3 レストラン
女の注文したメロンソーダがくる。
女は窓の外を見つめながらスプーンでアイスクリームをつつく。
かばんから封筒を取り出し、中の手紙を開く。

4 女の回想 〜高校三年の夏〜
男と女は放課後受験勉強を
海の見えるレストランで一緒にするのが日課になっていた。 
女「すみません、メロンソーダ二つ。
  ...ねえ、志望校もう決めた?」
男「だいたい決めたよ。」
女「えっ、どこどこ?」
男「...秘密」
女「え〜教えてよ!」
男「また今度な」
女「あ〜あ、何で勉強なんてしなきゃなんないんだろうね。
  また海行きたいね。受験終わったらまた一緒に行こうね。」
男「うん。」

5 レストラン
メロンソーダを三分の一ほど飲んだ頃、
急に静かだった店内が騒がしくなった。
女子高生が4〜5人で来店したのである。
女は持っていた手紙を封筒にしまい、
小さくため息をついて目を瞑った。

6 女の回想 〜高三の冬、卒業〜
最近受験も間近になり、連絡を取り合っていなかった二人。
男が女をいつものレストランに呼び出す。
男「悪い、こんなときに呼び出して。」
女「ううん。何、話って。」
男「実はさ...俺、東京の大学に進もうと思うんだ。」
女「......とうきょう?」
男「今まで黙っててごめん。
  東京にはどうしてもやりたいことがあるんだ。
  地元の大学を受けるつもりはない。」
女「...私達離れ離れになるの?」
男「ごめん、寂しいよな。俺も寂しいよ、すごく。
  でも、四年、四年だけ待っていてほしいんだ。
  大学に受かって、卒業したら必ずまた帰ってくる。
  約束するよ。」
女「...分かった。応援する。
  その前にお互い後ちょっと勉強頑張らなくっちゃね。
  絶対第一志望受かろうね。」
男「ありがとう」

二人は無事第一志望の大学に合格。
高校を卒業し男は東京へと旅立った。
女は笑顔で見送った。

半年後、突然男から手紙が送られてきた。
別れを告げるあっさりとした内容の手紙であった。

7 レストラン
目を開けると女の目からは涙があふれ、
紙ナプキンに涙がにじんでいた。
「あの時素直に寂しいって泣けばよかったのかな」

シナリオの書き方になっている =51
映像が見えるようだ =56
感動した =48
イチオシ=10
得点合計=165
このは
会話している様子が見えるようでした。

シナリオ『幸せになるために』  ミッシェル

1 家の近くの小道(日没少し前)
  仕事が終わり、帰路につく若い女。
  薔薇の花の色のような鮮やかな夕焼けをぼんやりと眺めながら、
  ゆっくりと歩を進めている。
女「あー…長い一週間だった…
  この土日は久々に暇だし、何しようかな…」
  女が呟いた数秒後、女の住むアパートの門が見えてくる。

2 回想 駅(一週間前、日没前)
  人の少ない駅のホームに向かい合っている男女。
  空は夕焼けで綺麗な色に染まっている。
女「なんでよ、ただでさえ遠いのに…」
  男を見つめる目に淋しさの涙を溜める女。
男「仕事なんだから仕方ないじゃないか」
  男が困ったような顔で女から目をそらす。
  静かなホームに電車がゆっくりと滑り込んでくる。
  ドアが開くのと同時に、男が口を開く。
男「いつでも連絡はとれるからさ。
  何ならこっちに会いにきてもいい。
  じゃ…もう行くから。またな。」
  女の目を見た後男は背を向け、振り返ることなく電車に乗る。
女「そんな簡単に言わないでよ…」
  再び静かに電車が去った後、唇を噛んでいた女の目から一粒の涙が落ちる。

3 女の部屋(日没直前)
  一人暮らしには少し大きいと感じる、白を基調とした部屋。
  物も少なくそれなりに整理されているが、
  部屋の真ん中のガラステーブルの上には朝飲んだコーヒーのカップがそのまま置き去りにしてある。
女「ただいまー…」
  向きをそろえることもせず黒のパンプスを脱ぎ捨て、部屋に入る女。
  テーブルの上のカップに気付く。
  バッグをベッドの上に放り、ため息をつきながら
  テーブルの横に足を伸ばして座る女。
  窓から見える、薔薇色に染まった雲を見ている。
  遠くには山の稜線も見えている。
女「あっちの空も今こんな色なのかな…
  …今どうしてるだろ。
  もう仕事終わって、あそこの川のとこ歩いてるかな…」
  女の目に淋しさの涙が浮かぶ。

4 男の家の近くの川沿い(日没少し前)
  空は綺麗に晴れて、オレンジ色の薔薇のような夕焼けが広がっている。
  一人で帰路につく男。川沿いをゆっくり歩いている。
男「あー、長い一週間だった…」
  夕陽を受けてキラキラ光る川面を見た後、空を見上げる。
男「…あいつ今何してるかな」
  男は立ち止まり、景色を眺める。
  遠くからは、家路へ向かう小学生の声が聞こえている。

5 女の部屋(日没直前)
  しばらくテーブルの横に座っていた女が、急にベッドの上に転がっているバッグを漁りだす。
  数秒後、女の手には携帯電話。
  少し迷った後、何やら操作をし、あと一回ボタンを押せば通話できる状態にして動きを止める。
  大きく息を吐き、ソファに座って呟く。
女「変な意地張っちゃってたなー私。
  …あそこの川沿いの道、一緒に歩きたいな。
    ……よしっ」
  女は立ち上がり、バッグを拾い上げると勢いよく玄関へ向かう。
  靴を履きながら通話ボタンを押し、携帯電話を耳にあてながらドアを閉める。
  女は呼び出し音を聞きながら一人呟く。
女「幸せを迎えにいこう」

シナリオの書き方になっている =56
映像が見えるようだ =50
感動した =43
イチオシ=10
得点合計=159
つーち
最後の台詞がとても魅力的でした。女の可愛らしさの中にも強さが感じられ、読んだ後、なんだか心がほっこりしました。

シナリオ『秋桜』  たろ吉

1、家の庭(正午)

 秋がもうすぐ終わり告げる11月
 庭の秋桜に少し色がつき始め
 淡い紅色の花が、陽だまりの中で揺れている

2、家の中〜縁側に座る母を見る〜 (正午)

母「…ごほっ」
 母は一枚一枚アルバムを丁寧にめくっている
母「まこは生まれた時は、すっごく小さくてね。
 お母さん心配で心配で、ずっとまこのこと見てたわ。」
 母は小さく咳をした。
母「…でもね。小学校にあがる頃には生まれた時のような
 心配は吹き飛んじゃったわ。
 元気で活発で…男の子みたいに育って…。」
 今にも消えてしまいそうな声で母は何度も何度も
 同じ話を繰り返す
 母の頬には陽にあたり光る粒がひとつ…
まこ「…お母さん…。」
 私は母の声を消さないように
 聞こえないぐらいの声でそっとつぶやく

3、縁側〜母の隣に座る私〜 (正午)

 小春日和の穏やかな陽ざしの中、縁側に座る母と私
 私の目に熱いものがぐっとこみあげる
まこ「……。」
母「……とうとう明日ね。嫁ぎ先ではちゃんとするのよ。
 あなた昔からそそっかしいから。」
まこ「…お母さん!私!」
 私の声をさえぎるように母は続けた
母「母さんは大丈夫よ。今は大変でもね、
 時間が経てば笑って話せるときがくるわ。
 心配なんかしなくて大丈夫よ。」
 そう言って母は笑った

4、回想→心の中

まこ『お母さん!今度の日曜日の授業参観来てくれるよね?』
母『ごめんね。仕事でいけなくなったの』
まこ『えーなんでー?
 この前は来てくれるって言ったじゃない!』
母『本当にごめんなさいね。今度は行くから』
まこ『今度今度って!いつもそればっか!
 結局来たことなんてないじゃない!
 みんなはお母さん来てくれてるよ?』
母『うちはお母さんしかいないでしょ?
 お母さん、いっぱい働かなくちゃいけないの
 分かるでしょ?』
まこ『…わかんない!』
母『まこ!!』
まこ『…お父さんがいないから悪いんだ!
 …それも全部お母さんが悪いんだ!!
 お母さんなんか大嫌い!!』

まこ「あの時、私、なんてこと言ったんだろう。
 なにかあればいつもお母さんのせいにして…
 わがままばっかり言って困らせて…
 お母さん、ごめん…

 あんなことばっかり言ってたけど
 心からの言葉なんかじゃないよ。

 
 友達とけんかした日も、怪我して泣いた日も
 100点取ってほめられた日も
 遠足前のうきうきしてた日も
 いつもお母さんと一緒だったよね。
 ひとりなんかじゃなかったよ。お母さん。」

5、まこの部屋(午後)

まこ「お母さーん。荷造り手伝ってー」
母「えー?もう、しょうがないわねこの子は。」
 文句を言いつつも、嬉しそうに手伝う母。
 2人で思い出話に花を咲かせ、笑い合っていた
まこ「でさ、あの時お母さ…」
 ふと見ると母の頬にこぼれる涙
母「元気でね。元気でいるのよ。…元気で」
 何度も何度も繰り返す
まこ「……ありがとう……」
 まこの頬にも涙がこぼれる
まこ「ちゃんとするよ。まこなりにね。」
母「まこ」
まこ「お母さん」
 陽が傾き窓から日差しが差し込む中
 母は強くまこを抱きしめた
まこ「まこ、お母さんの子供でよかった。幸せだった。
 お母さん大好き。
 明日まで…明日になるまでは
 お母さんの子供でいさせて。」
 消えそうな声でまこは母の耳元でそっとささやいた

 

シナリオの書き方になっている =49
映像が見えるようだ =54
感動した =56
イチオシ=0
得点合計=159

シナリオ『償い』  NIR

1 横町 郵便局前 (夕方)

ゆうちゃん「じゃ、ちょっと行ってくるよ」
同僚たちに一言告げて郵便局に入っていくゆうちゃん。
手には革製のカバン。使い込んでボロボロになっている。
鞄の中には薄い給料袋が入っている。
同僚1「おう、行ってきな」
ゆうちゃんの同僚はそれを見送る。
談笑する同僚たち。
しばらくしてゆうちゃんが出てくる。
ゆうちゃん「お待たせ、それじゃあ行きますか」

2 居酒屋 (夜)

「こちら枝豆になりまーす!」
店員の威勢のいい声。料理が運ばれてくる。
飲み会もたけなわ。座敷の隅に寝転がる人もいる。
同僚2「そういや、ゆうちゃん。今月も郵便局行ってたけど、また貯金かい?」
ゆうちゃん「ま、そんなとこ」
同僚3「旅行でもするのか?」
ゆうちゃん「いや、そんなんじゃないよ」
同僚4「貯金が趣味たぁ、まったく、しみったれた奴だなぁ」
笑う同僚たち。
ゆうちゃんはジョッキを片手にニコニコ笑っている。

3 回想 7年前

小さな交差点。男が横断歩道を渡っている。
その時、交差点に突っ込んでくる一台のトラック。
ブレーキがタイヤをかんで、路面をこすり甲高い音をたてる。
しかし間に合わず、男の体はトラックとぶつかり、軽々と吹き飛ばされた。
トラックがようやく止まる。
トラックから運転手が降りてくる。運転手の男は呆然としていた。

4 回想 場面が変わり、病院

男の妻「人殺し!」
女が運転手の男に向かってさけんでいる。
女は泣きながら運転手を罵り続ける。
男の妻「絶対にあんたを許さない!」
運転手はただ頭を床にこすりつけ、大声で泣いている。

5 居酒屋 回想から戻る

うなされているゆうちゃん。それに気付いた同僚1が近づく。
同僚1「大丈夫か?」
ゆうちゃん「はい、大丈夫です。すみません、寝てしまっていたようで」
同僚1「気にするな。それより、……まだ仕送り続けているんだな」
ゆうちゃん「はい、償いきれるはずもないんですけど、せめて、と思いまして」
同僚1「……」
同僚1はゆうちゃんの背中を優しくなでる。

6 同僚1の家 飲み会の3日後(夜)

ゆうちゃんが同僚1の家に駆け込んでくる。
ゆうちゃん「これを…」
泣きながら一通の手紙を渡してきた。
手紙にはこう書かれていた。

「ありがとう、あなたの優しい気持ちはとてもよくわかりました。
だから、どうぞ送金はやめて下さい。
あなたの文字を見る度に主人を思い出して辛いのです。
あなたの気持ちはわかるけど、それよりどうか、もうあなたご自身の人生をもとに戻してあげて欲しい」

同僚1「おまえは許されたって事なんだな」
ゆうちゃん「いえ、手紙の中身なんてどうでもいいんです」
同僚1「どういうことだ?」
ゆうちゃん「償いきれるはずもないあの人から返事が来たんですよ。それがありがたくて、ありがたくて…」
泣き崩れるゆうちゃん。それを支える同僚1。
同僚1「ああっ、神様!」
思わず叫んでしまった同僚1。そして同僚1の目にも涙が浮かぶ。
ゆうちゃんと同僚1はお互いに抱き合って泣いていた。

シナリオの書き方になっている =51
映像が見えるようだ =48
感動した =40
イチオシ=20
得点合計=159
東野圭吾の「手紙」を思い出しました。
ゆうちゃん=運転手だと確信を持つまで少し時間がかかりましたが終わり方がとても好きです!
ハァイ

シナリオ『シンデレラ・エクスプレス』  にゃんちゅう

1 ワンルームマンションのベランダ AM0:00
  女(大学生)が洗濯物を干し終え、空を見上げていた。
女「あっ。雨降ってきた。」
  女はあわててさっき干した洗濯物を
  ハンガーごと中にしまう。
女「家事さぼんな!ってあの人が言ってるみたいやなぁ。
  …間違った!言ってるみたいだがよぉ。」
  女は微笑し、カーテンを閉めてベッドに横たわる。
  テーブルの上にあるのは、彼の部屋の鍵。
  女はそれを見つめて電気を消す。
  誰もいない部屋にぽつりつぶやく。
女「おやすみなさい。」

―タイトル  シンデレラ・エクスプレス―

2 回想 彼の家 PM3:00ごろ
  女は連休を利用して、男のところに遊びにきていた。
  外はどんより暗く、雨が降っている。
男「雨降ってるし、早めにでようか。」
女「…いやだ!」
男「間に合わなくなるぞぉ〜」
  女は座り込み丸くなる。
女「必殺座り込み!たたせてみろ〜」
  女は男を茶化すように言う。
男「ふっ!!!…ごめん、リアルに重くて、
  起こせないがよ…。」
  女はすっくと立ち上がる。
女「うっさいわぁ!」
男「あっ、立った(笑)よし行こうか。」
  二人は笑いながら家をあとにする。

3 新幹線のホーム PM4:00ごろ
男「遊びきてくれてありがとう。
  今度は俺が大阪行くわぁ。」
  女はこくりとうなずく。
女「どこでもドアほしい!」
男「どこでもドアはあげれないけど、
  これならあげてもよかよ!」
  男がドラえもん風に言う。
男「トゥルトゥルっ!俺んちドア〜!」
  男の右手には、男の部屋の合鍵が握られている。
男「これがあればいつでも俺んち来れるよぉ〜」
  男はそれを女に渡す。
  女は笑いながらも、いきなりのプレゼントにびっくりし、
  うまく言葉を出せずにいる。
  ちょうど、新幹線の到着がアナウンスで知らされる。
男「自由席なんだから、座れるように、空いてる席
  探さんならね!いってらっしゃい!」
  女は乗り込むとくるっと振り返る。
女「ありがとぉ…ありがとぉ…」
  電車の扉が閉まり、発車の合図を告げる。
  さっきまで近くにいた彼が
  どんどん小さくなっていく。
  女はため息をつく。そしてわっと溢れるように泣く。

4 最寄の駅 PM10:00
  一人そっと夜のまちを帰る女。
  雨は降っていないが、湿度が高く、
  もうすぐ降りそうな感じ。
  女は傘を見る。
女「…」
  傘は、ささない。
  なぜか足取りは軽い。寄り道せずに帰る。

5 女の家 PM11:00
  まだ雨はふっていない。
  女は帰ってきて風呂などすませ
  連休前にためていた
  洗濯物を干している。干し終えると
  携帯電話がなる。
男「もしもし、帰り着いた?」
女「うん。さっき帰り着いたで。いまなぁ…」
  そこまで言って、女は口をつぐむ。
男「なにぃ?」
女「うんう、なんでもないや。それより、
  かぎ、ありがとうなぁ。めっちゃうれしかった。」
男「よかった。それよりさ、」
女「なんかあるん?」
男「関西弁、寂しいよ」
  女は少し黙ってしまう。無意識に関西弁を
  喋っていたことに気づきあわてる。
男「うちらの言葉でいこうがぁ!そしたらさぁ、
  離れてる気しないでしょ?」
  女は涙を流す。泣いてることが聞こえてしまわないよう
  そぉっと、そぉっと。
男「ってか、長旅で疲れたっしょ?
  今日はゆっくりして、明日遅刻したら許さんばいっ!」
女「遅刻はリアルだから(笑)うん。そんならね。」
  女は電話をきる。涙を拭いたあとで、女は
  小腹が空いていることに気づく。
女「なんか食べよっけぇ」
  冷蔵庫をあけようと手をのばした。しかしその手を
  引っ込める。
女「重たい…か…。よし、次会うときはきっと…!」
  そしてまたベランダに戻り、
  天体観測でもしようかと空を覗く。
  雲に覆われ、星は見えない。
女「あっ、雨降ってきた。」
  女はあわててさっき干した洗濯物を
  ハンガーごと中にしまう。
女「家事さぼんな!ってあの人が言ってるみたいやなぁ。
  …間違った!言ってるみたいだがよぉ。」
  女は微笑し、カーテンを閉めてベッドに横たわる。
  テーブルの上にあるのは、彼の部屋の鍵。
  女はそれを見つめて電気を消す。
  誰もいない部屋にぽつりつぶやく。
女「おやすみなさい。」
  女はそっとまぶたを閉じて、今日を振り返り、
  そしてその続きを予想する。

6 女の頭の中
  スリムな体で、何も言わずに行った彼の部屋
  合鍵で鍵を開け、中にいる驚いた様子の彼に言う。
女「来ちゃったがよ!」
  女は眠りについた。
  

シナリオの書き方になっている =51
映像が見えるようだ =52
感動した =45
イチオシ=10
得点合計=158
はなお
日常の何気ない風景の描写を入れることで、場面が想像しやすかったです。

シナリオ『シンデレラ・エクスプレス』  このは

1 雨の降る夜 女の部屋
  窓の外を見つめる女
  女の手は無意識にテーブルの上にある携帯電話の
  ストラップをいじっている

  タイトル シンデレラ・エクスプレス

2 駅のホーム 最終の新幹線の出発前
男「雨も降りそうだし、気をつけて帰るんだぞ?」
女「うん…」
 目をあわさずに答える女
男「なんだよ〜またすぐ会えるって!な?」
女「…」
 困ったように小さくため息をつく男
男「言っとくけど、俺も寂しいんだぞ!
できるなら俺だって…」
女「…なに?」
男「…俺だってずっと一緒にいたいよ。」
  照れるように言う男を見て女は笑顔になる
女「うん。わがまま言ってごめんね?」
男「ちゃんと電話するから」
  男がポケットから取り出して見せた携帯には
  女と同じ携帯ストラップ
  発車のベルが鳴る
男「それじゃ…」
 新幹線に男が乗ると同時にドアが閉まる
 笑顔で手を振る女
 優しく微笑む男
 新幹線が発車する

3 帰り道 
  女の横を仲の良さそうなカップルがすれ違う
  女は一瞬切なそうな顔をするが
  すぐに笑顔になりさっきより少し早足で帰る
 

4 女の部屋
  窓の外を見ながら小さく呟く女
女「雨、やまないかな…」
  窓を流れるどしゃぶりの雨
  急に鳴り出す携帯
  ディスプレイには男の名前
  女は急いで携帯電話を取る
女「もしもし!!!」
男「お!?びっくりした〜!」
男は笑いながら電話越しに言う
女「あ!ごめんね!!」
  焦って謝る女はとても幸せそうな笑顔

5 女の部屋 一週間後の晴れたお昼
  カレンダーの日付には赤く丸がしてある
  揺れるカーテン
  玄関のチャイムが鳴る
  女はパタパタとスリッパの音を立てて走りながら
  玄関へ向かう
  ドアを開けると優しく微笑む男がいる
男「よ!…会いたかった」
女「うん!」
  笑顔で女は答える
  テーブルの上には女の携帯電話が置いてある

シナリオの書き方になっている =61
映像が見えるようだ =52
感動した =39
イチオシ=0
得点合計=152

シナリオ『秋桜』  みなみかぜ

1.娘の部屋(秋の午後)
  結婚式を明日に控えた娘が部屋の片付けをしている
 
 娘の部屋から各々の部屋を映しながら家の様子を見せる

2.縁側
 庭に咲いている秋桜が、やさしい秋の陽をうけて風に吹かれて いる
 縁側に腰掛けている母の背中
 小さな咳をする

3.娘の部屋
 咳を耳にする
 不審な顔で部屋を出る娘
 茶の間を覘く
 娘「あれっ?」
 茶の間にいると思っていた母を捜す

4.縁側
 母の後ろ姿を見つけ安堵する
 娘「どうしたの! こんなところで」
 母「片付いた?」
 娘「うん、あと少しかな」
 母「少し休んだら?」
 娘「うん、あれ? それアルバムじゃない」
 見慣れぬアルバムを目にしながら、母の横に坐る
 母「これ…?あなたがお嫁に行くときに渡そうって、お父さん とね…」
 いたずらっ子のように笑う母
 娘「へぇ〜、こんなのあったんだ」
 アルバムを手にする
 娘「やだ!こんな顔まで」
 母「この時ね、お父さんに叱られて拗ねていたのよね」
 娘「…」
 黙ってページをめくる
 母、1枚の写真を指さし
 母「この時は自転車で転んで大泣き、慌ててお父さんが抱き上 げたけど、全然泣き止まなくて、困ったお父さんが駄菓子やさ んに連れて行ったら、お店に入るなり“ケロッ”として籠一杯 にお菓子入れて…」
 思い出しながら笑う母
 娘、ちょっと拗ねた顔
 娘「イヤ〜ね」
 母の肩をやさしく押す
 
 アルバムに目を落とし再びページをめくりながら
 取りとめもない話をする母娘
 ふと、1枚の写真でお互いに目を合わせ、優しく微笑み合う
 
 母「成人式の着物姿を見て、お父さん泣き出すし…」
 娘「あ〜ぁ! あれにはビックリした。卒業式でも泣いてたよ ね!恥ずかしかったけど、嬉しかったなぁ〜」
 母「…」 やさしくうなづく

 やさしい秋の風が庭の秋桜を揺らしている
 ページをめくろうとする娘

 母「後もう少しでしょ? 手伝おうか?」
 娘「うん…ありがとう」
 
 縁側にアルバムを置き 娘の部屋に向かう

5.娘の部屋
 いつものように部屋に入る娘
 入り口付近で立ち止まり部屋を確かめるように立ち尽くし、見 渡す母
 振り向いた娘の微笑み
 気を取り直したように部屋に足を踏み入れる母
 アイドルのCDや押入れの荷物を迷いながら分けている娘
 着なくなった服をひとつひとつ丁寧にたたみ箱に入れる母
 時折交わす会話以外何も聞こえない静かな時間 

 娘「あれ?これ入らない…どうしよう」
 困ったようにつぶやく娘
 母「貸してごらん。これはね、こうして、こうして…ほらね」
 手際よく箱に詰めながら、ちょっと誇らしげにしまい方を教え る母
 娘「やっぱり、お母さんはすごい!!」
 ため息混じりに笑う
 娘「私…大丈夫かな?」
 ふと、不安が娘の中によぎる
 そんな娘を見つめる母
  
 娘の手を取り優しく手の甲をたたく母
 母「あなたなら大丈夫!! お父さんとお母さんの娘だもの!
 どんな事があっても、いつか笑い話になるものよ…今みたいに ね」
 母の手のぬくもりを感じる
 黙って母を見つめ返す
 母「体だけ大事にして元気でいてね…元気で…」
 涙が母の頬をつたう
 母を見つめる娘

6.回想
 娘の生まれたとき
 母に叱られたとき
 父母とけんかしたとき(反抗期)

7.娘の部屋
 母の手を握り返す娘
 心の会話
 心のつぶやき
 娘「ありがとう。お母さんお父さんの愛は忘れず、私は私なり に生きて行きます」
 あと、少しだけ娘としての時間を大切にしたいと願う娘

8.縁側
 秋桜が風に揺れている
 縁側の開いたアルバムに結婚式の家族写真

シナリオの書き方になっている =44
映像が見えるようだ =49
感動した =49
イチオシ=10
得点合計=152
サリチル酸
親子のほほえましさを感じられる良い作品だと思いました。

シナリオ『精霊流し』  国士無双

1 まさしの部屋 夕暮れ時

 まさしは自分の部屋のソファに座って、テープレコーダーで音楽を聴きながら、うっすら見える月を眺めている。すると、思い出の音楽が流れてくる。
まさし「えり………。」

2 夏祭りが開かれている神社(回想) 夕方

 まさし「遅いなあ、えり。5時半に神社の鳥居んとこって言ったのに。もう6時やで。」
 えり「ごめーん。浴衣着るん時間かかっちゃって。」
 まさし「全然ええよ。よう似合ってるし。」
 えり「まさしも。」 二人でほほ笑みあう。
 まさし「んじゃ、いこっか。」
二人で夏祭りの夜店を手をつないで回る。

3 まさしの部屋 夜

 まさしは何かを思いついたように家の中を物色して、木材と紙とペンを見つけ出す。そして、舟を作り上げた。
まさし弟「舟を作って、どこへいくの?」
まさし「いっしょに行くか?」
まさし弟「うん。」 部屋にはまだ思い出の音楽が流れ続けている。
まさし「えり……いまから行くね。」

4 神社の横の公園 夜の10時前

 えり「今日は楽しかった。誘ってくれてありがとう。」
 まさし「うん。オレも楽しかった。まだ時間あるから、いまから花火しやん?」
 えり「ええなあ。やろっか。」 二人でコンビニに花火を買いに行く。そして公園に戻ってくる。打ち上げ花火から始め、花火も後は線香花火だけに。
 えり「最後、線香花火やろっ。」
 まさし「そやな。」
 えり「どっちが長く続けられるか、勝負しやん?」
 まさし「ええなあ。やろっか。」 二人で同時に線香花火に火をつけるが、えりの線香花火がすぐに落ちてしまう。
 えり「わっ。もう落ちちゃった。」
 まさし「えりへたくそやな。もう花火なくなったし、かえろっか?」
 えり「そやな。あんまり遅なってもお母さん心配するし。」
 まさし「んじゃ、送って帰るわ。」

5 帰り道(国道線沿い) 夜の12時前
 まさしはえりを自転車の後ろに乗せて、えりの家まで急ぐ。
 まさし「なあ えり。」
 えり「どないしたん?」
 まさし「今まであんま言われへんかったけど、これからもずっといっしょにおってや。」
 えり「当たり前やん。けど、急にどないしたん?」
 まさし「いや〜、なんとなくえりおらんようなったらどないしよか思って。」
 えり「急に引っ越したりして。」 二人が笑いあう。
 しかし、これが二人で交わした最後の会話になった。
 その直後信号無視で飛び出してきた、バイクにひかれて二人は投げ出される。まさしが気がついた時には病院にいた。

6 川 夜7時
 まさしと弟は舟を持って川につく。弟ははしゃぎながら、そこらを走り回っている。まさしは目を閉じて、心で唱えた。
 まさし(えり………元気にやってるか。えりの好きなりんごもいっしょに流すから食べてや。) そう言って、まさしは川に浮かべた、ふねを流した。それから、持ってきたギターであの思い出の曲を弾き語りで歌う。えりが歌ってくれたあの曲を今度はえりに……。途中で錆びついた弦で指を切っても、涙がこみあげてきても我慢して最後まで歌いあげた。
 まさし「また来年会いにくるね。」

7 病院 深夜1時
 目が覚めると、両親がそばにおり事態をようやく把握する。
 まさし「えりはいまどこおるん?」
 母「こんなん言いたくないけど、即死やって。」
 まさしはわけがわからず、しばらく一人にしてもらった。時間がたつにつれ、えりがいなくなったことを理解し自然と涙がこみあげてくる。そのあと行われた葬式にも出ず、しばらくなんのやる気もおきなかった。しかし、えりの言葉を思い出した。
 えり「私はまさしのがんばってる姿が好きやねん。だから、何があってもあきらめんと全力で頑張ってや。」
 まさし「このままやったらあかんな。えり……オレこれからがんばるから、しっかり見とってや。」

8 家への帰り道 夜8時
 ギターを持ちながら、祭りでにぎわう道を抜けて家に帰る。
 人混みを抜けるとひっそりとした小道でまさしはたたずむ。目を閉じて周りの空気を感じる。えりと過ごしたあの日々を思い出しながら、こうつぶやく。
 まさし「えり……また一年後に会いに来るわ。それまでお元気で。」
 夏の夜の少し涼しい風が川に向けて向けて吹きぬけていった。まるでえりが返事をしてくれたみたいに…………。

シナリオの書き方になっている =48
映像が見えるようだ =46
感動した =45
イチオシ=10
得点合計=149
ずっち
恋愛小説にありそうな話だと思った。
幸せそうな雰囲気と切ない雰囲気の両方があって
歌詞にも合ってる気がします。

シナリオ『秋桜』  ペリー

1、昭和中期 晩秋 縁側(夕方)
秋桜が咲く庭が見える縁側。着物を仕立てる母親と、
その背中をアルバムをめくりながら眺める娘。
娘「ついに明日だね。」
母「そうねえ。あなたがまだ子供だった頃がつい最近に感じるわ。」
娘がアルバムのページから一枚写真が抜けていることに気づく。
娘(・・・あれ、ここなんだっけ?)
母「ねえ。あなたが小さい頃に2人で夏祭り行ったこと、覚えてる?」
娘「え?」アルバムを閉じる。
母「私が仕立てた浴衣を着て一緒に花火を見たわね。」
娘「そうだった・・け。」
母「お父さんがいなくて2人きりだったけど、とても楽しかったわ。」
娘「そうね・・でもほんとはお父さんも一緒に3人で見たかったんだ。」
針を持つ手を止め、少しさびしそうに縁側を眺める母親。

2、回想 1年前 台所(夕方)
娘が仕事から帰り、台所に入る。
2人分の食事を用意する母親の背中にむかって言う。
娘「お母さん、私結婚することになったの。」
母「・・・そう。お母さんね、最近少し気がついていたのよ。良かったわね。」
しばらく沈黙。包丁のリズムの良い音だけが響く。
娘「お母さん、一人になっちゃうね・・・」つぶやく娘。
包丁の手を止めて振り返る母親
母「そんなことないわ。幸せになるのよ?」微笑む母親。

3、晩秋 縁側(夕方)
娘「ごめんね・・・でもお母さんがいてくれて、本当に幸せだった。」
母「ありがとう。その言葉が何より嬉しいわ。」
娘「明日までお母さんの娘でいさせてね。」
振り返り、笑ってうなずく母親

4、翌日 結婚式後 駅のホーム
秋桜が咲くホーム。列車の出発を告げるベルが鳴る。
娘「いってきます。」
母「いってらっしゃい。ほら、これ。」
娘に何かを手渡す。それを確認する娘。
母親が仕立てた浴衣を着た娘と母親が写ったセピア色の写真。
母「これで寂しくないわね。元気でね。あなたはいつまでも私の娘よ。」
はじめて涙をこぼす母親。
涙をにじませ微笑んでうなずく娘。
列車が走り出し、秋桜がゆれる。

シナリオの書き方になっている =52
映像が見えるようだ =46
感動した =49
イチオシ=0
得点合計=147

シナリオ『あの日にかえりたい』  サリチル酸

1自宅の部屋 11月28日 22:15
  
  自宅の部屋で一人ベッドに腰掛け、ため息をつく女
  バラバラになった写真の欠片をもう一度組み合わせている
女「はぁ…、どうしてこんなことになったんだろう。」
  
  手のひらの上で出来上がった写真の中の笑顔の自分を見つめながら、再度深いため息をつく
女「この間まではこんなに幸せだったのに。」

2彼氏の部屋 (回想)
  
  クッションを抱えて今にも泣き出しそうな女
  頭をかきながらばつが悪そうな男
女「3年記念日に仕事ってどうゆうこと!?」
男「急に上司に頼まれたんだからしょうがねぇだろ。」
女「しょうがないって… この日は前からデートの約束してたじゃない。もう映画のチケットもディナーも予約してるのに…。」
男「また今度埋め合わせするからさ、本当ごめんって。」
女「あたしと仕事どっちが大切なのよ!」
  
  はっと我にかえる女
  微妙な雰囲気が二人の間に流れる
女「ごめん、言い過ぎた。」
男「いや、俺も悪かった。でも今は仕事が大切なんだ。お前のワガママに付き合う時間もないし、一人になりたい…。」
女「え…どうゆう…こ・と・・・?」
男「悪いけど別れてくれ。」

  泣きながら部屋を飛び出す女
  男は追わずにじっとしている

3 自宅の部屋 (回想)

  携帯を取り出す女
  新着メールを問い合わせる
  −受信0件−
女「メールもなしか…」

  3年かけて作り上げてきた二人の思い出コーナーの前に立ち写真を手にする
女「もうこれもいらないや。」
  
  涙を静かに流す女
  写真を破り、おそろいで買ったストラップやネックレスもゴミ箱に投げ捨てる

4 帰宅途中 12月21日 18:27

  仕事終わりでつかれきった女
  とぼとぼ歩いている所に急に懐かしい香りがして、思わず顔を上げる
女「え…この匂い」

  急いであたりを見渡すが彼の姿は見えない
  代わりにオレンジ色に染まる美しい夕焼け空が見える
  彼と二人で見た夕焼けを思い出し涙目になる女
女「私、毎日下ばっか向いて何してたんだろう。」

  いきなり走り出す女
  向かう先は懐かしい彼の元

5 彼の家の前 12月21日 19:05

  久し振りに訪れる彼の家
  あの時にはなかったクリスマスの飾りつけに季節の流れを感じる

  走って乱れた息を整える
  チャイムを鳴らす女
  −ピンポーン−
 
  呼び鈴の音だけがして留守の様子
女「やっぱり仕事かぁ。じゃあこれだけでも…」

  欠片を貼り合わせた写真を玄関の扉にはさむ女
  しっかりとした足取りでその場を去っていく

6 彼の家 12月21日 19:37

  帰宅した男
  扉に挟まる何かを取り出す
  一時はボロボロになった写真
  その後ろには
  「今でもあなたを愛しています」のメッセージが書かれている

  走り出す男
  交差点で彼の家から帰宅途中の女を見つける

  後ろから名前を呼び、女を抱きしめる
男「俺が悪かった。お前がいなきゃ無理だよ。勝手なこと言ってるって分かってるけどもう一度やり直して欲しい。」

  抱きしめあう二人をまばゆいイルミネーションの光が包む

シナリオの書き方になっている =51
映像が見えるようだ =50
感動した =43
イチオシ=0
得点合計=144

シナリオ『ジャコビニ彗星の日』  すえ

1973年9月22日
夜 自分の部屋でちひろが椅子に座って外を眺めている。
FMラジオから東京オリンピックについての情報がながれている。

ちひろ「もしかしたら流星群見えるかな・・・」
ちひろは部屋の明かりを消して窓の外をじっと見た
しかし柿の木がゆれているだけだった

1972年10月9日14時
ちひろ「今日もさくちゃんからの電話がないや」
のぶこ「ちひろはさくちゃんとそんな感じで良いの?」
ちひろ「うん・・・ずーっとこんな感じだからもう慣れたよ」
のぶこ「ほんとさくちゃんって何考えてるのかしら」

21時 自分の部屋でひとり
ちひろ「ほんとさくちゃん何考えてるんだろう、もう二週間も連絡ないや」

1971年8月12日
さくちゃん「ちひろ、花火見にいこうぜ」
ちひろ「えっ、急にそんな・・・」
気づいた時にはちひろはさくちゃんに手を握られ川原に来ていた。
そして花火が何発もあがっている
ちひろ「わぁきれい。もっと近くでみたいなぁ。雲にのれたらなぁ」
さくちゃん「おれがいつか連れて行ってやるよ。なんてな」
ちひろ「もう、さくちゃんったらぁ」

1972年10月9日22時
淋しさに苦しみながらちひろがふと外を見ると彗星がながれていた。
ちひろ「わぁきれい。もっと近くでみたいなぁ。雲にのれたらなぁ」
数分の沈黙
ちひろ「去年の夏は夢のようだったわ」

1973年9月23日の朝
ちひろの弟「ねーちゃん、僕の仮面サイダー飲んだでしょ」
ちひろ「ウルトラコーラなら飲んだけど仮面サイダーはしらないわ」
弟「ならいいや」

弟が新聞を読みだす
ちひろは昨日飲んだ仮面サイダーを隠していた

弟「シベリアでも彗星見えなかったんだぁ」

ちひろ「・・・」

ちひろは急に淋しくなった

シナリオの書き方になっている =43
映像が見えるようだ =44
感動した =37
イチオシ=20
得点合計=144
V3
なぜだかわからないが、親近感がわいた。
やんも
シナリオ構成がしっかりしていて、まるで現実のようだった。

シナリオ『翳りゆく部屋』  ゆり

1.冬 夕暮れ 灯りのない2人の住む部屋
窓辺の椅子に座り、煙草を吸いながら外を眺める男
部屋の奥に立ちうつむいたままの女
男は紫煙を吐きながら立ち上がり、女の目を見ずにつぶやく
 男「・・・別れようか。」
 女はハッとしたように顔をあげる
 女「もう・・・駄目なのかな。」
 男「あぁ」
 女「出会った頃はあんなに・・・あんなに好きだって、離れないって、言ってくれたのに。」
 男「・・・すまない。」
男は黙りこみ、煙草の火を消して荷物をまとめ始める。
 女「あの人のところへ行くの?」
 男「・・・」
 女「答えてよ。あの人を・・・愛してるの?」
 男「・・・あぁそうだよ。君のことはもう・・・すまない。」
うつむく2人 女は悔しげに手を握り締めて静かに涙をながす。
女のみつめる先にはテーブルに置かれたナイフ

2.部屋の玄関
少ない荷物をまとめ、女の部屋を出て行こうとする男と静かに見送る女
男が靴をはこうと背を向けた時、女がつぶやく 女はナイフを隠し持っている
 女「どうすれば、」
 男「・・・え?」
 女「どうすれば、あなたは私のところへもどってきてくれる?」
 男「もう、僕らは駄目なんだ。わかってくれ・・・」
 女「・・・私には貴方しかいなかった。貴方まで失ってしまったら私・・・」
 男「おい、」
 女「私、もう生きてる意味なんてないわ!!」
女は突然ナイフを取り出し、自分の首元に刃をあてる
男はあわてて女を止めようとする
 男「おい、はやまるな、思いとどまるんだ!」
 女「離してよ!!私には貴方しかいなかったのに!1人になるくらいならいっそ、あなたの目の前で死んでやるわ!!」
 男「おい!やめろ・・・やめるんだ!」
男が女からナイフを奪い取り、女は泣き崩れる
 女「ねぇ、どうして私じゃ駄目なの?どうしてあの人を選ぶの?私は、私は、こんなに・・・あなたを愛してるのに!ねぇ、もう一度愛してるって言ってよ!好きっていってよ!・・・行かないでよ・・・」
 男「・・・ごめん。」
男は部屋を出ていき、女は泣き崩れる

3.冬 深夜 2人のものだった部屋
女は冷えた壁にもたれ、床に座り込んでいる
そばにはまだナイフが落ちているが、泣きはらした目は何もうつさず光を失っている
 女「・・・灯り・・・つけなきゃ」
間接照明をつけ、再び元の位置に戻る女
灯りのせいで彼の残していった物が目にうつり、女は再び泣きだす
その時、窓の外から靴音が聞こえてくる
 女「あぁ、きっと彼が戻ってきてくれたんだ・・・」
女は目を閉じ、誰も訪れないだろう部屋の中で1人、彼を待ち続けるのだった

シナリオの書き方になっている =47
映像が見えるようだ =52
感動した =35
イチオシ=10
得点合計=144
ちさと
歌詞の内容をそのまま、純粋にシナリオにすることができていてすごいと思いました。

シナリオ『指定券』  ガチャピン

二人で暮らしていた部屋
整理された机の上に置手紙が。

〜明日、故郷へ帰ります。搭乗時間は書かないわ。
そしたら勇輔、最後に私に会いたくなっちゃうでしょ?
今まで長い時間過ごしたね。
嬉しいときも辛いときも全部一緒。
月並みな言葉になってしまうけど、愛しています。
でも愛しているからこそ別れるのです。
あなたはこの場所で、もっと良い人と巡り会えるはずです。
私が認めた人だもの。
そろそろ時間です。
さよならは言いません。ありがとう。〜

勇輔の目から涙が溢れ出す
拭おうともせず、置手紙をつかんで走り出した

1.羽田空港 搭乗口 16:40

アナウンス「309便に搭乗なさる方は7番ゲートまでお越しください」
空港の搭乗ゲート前のソファーに座る一人の女
名前は美樹。
足元には大きなボストンバックが。

美樹「来るはずないよね…何期待してんだろ
   そろそろ行かなきゃ乗り遅れちゃうわ。」
ボストンバックを片手に立ち上がる美樹。
そこへ、

勇輔「美樹!ちょっと待って…」
ぜいぜいと息を切らして勇輔が駆けてきた
美樹「勇輔!…どうして来たの?!」
勇輔「どうしても何も…」
美樹「私もう行かなきゃ。さよなら。」
勇輔「美樹!『さよなら』は言わないって言ったよな!
   また会えるだろ?なぁ!」

勇輔は美樹の肩に手をかけ、力をこめて自分の方に向かせる
二人を沈黙が包む
美樹「もう…これまでね」
うつむく美樹

寂しげに微笑む横顔。辛いときも悲しいときも
いつも美樹はその顔だ。
どんなときも笑顔を絶やさない、
泣きたいのを必死にこらえている美樹。

美樹は涙も見せず、ゲートを通り抜ける
僕が好きだった後ろ姿

勇輔「最後の最後まで強がりやがって…」
心の中でそっと呟く。
すると届くはずのない声に気付いたかのように、美樹が振り向く。
口を開く。

美樹「あ・り・が…」

そこへ修学旅行帰りだろうと思われる集団が
僕と美樹の間をぷっつりと分けた。
もう戻れない、そう思った瞬間だった。
美樹はまた微笑むと背を向けて去っていった。

2.羽田空港 ゲート前 17:00

美樹はずっとずっと前から別れを告げようとしてたんだね。
でも優しい美樹は最後までそれをしなかった。
強がりだけど誰より温かい。
そんな美樹はもう旅立ってしまったから
僕に届けられる言葉はもうないけれど…

だから精一杯、手を振ろう。
これで最後、一度だけ
君に届きますように…

シナリオの書き方になっている =33
映像が見えるようだ =50
感動した =50
イチオシ=10
得点合計=143
わらびー
場面の切り替えがあまりなかったが、内容がせつなくて、うるっときてしまいました。
実際のドラマなどでも、出てきそうだなぁと思いました。

シナリオ『秋桜』  ビギン

1 実家 夕方
縁側で小さく咳をする母
家事をしながらその母に目をやる娘
空は秋の日の穏やかな夕焼けに包まれている
2 回想 実家 昼間
母が娘の隣でアルバムを開いている
母はアルバムに微笑みながら娘に幼かったころの思い出を語りかける
母「あのころは・・・」
何度も聞いたことがある話だが、娘は昔話を嬉しそうに話す母の顔を嬉しそうに見ている
母「あの時のおまえは本当にみていられなかった。本当に心配だったんだよ。」
娘は母に対する申し訳ない気持ちと改めて母の優しさを感じている。
3 実家 夜
明日の荷造りもひと段落し居間で二人でくつろいでいる。
突然母の目から涙がこぼれおちた
娘は少し驚いたような表情で母を見ている
娘「どうしたの?急に」
母「もうお前がいなくなるかと思うとね・・・」
涙をぬぐいながら母は言う。
娘はそれを見て自分も泣きそうになったがグッとこらえた。
母「元気でね・・・」
娘「・・・うん。」
母「・・・元気でね。」
娘「うん。・・・大丈夫だから、ね。」
娘はめったに見ない母の様子に戸惑いながらも母の優しさを強く感じている。
心の中で何度も「ありがとう。」と言いながら母を見つめる
母「苦労は絶えないかもしれないけど、時がたてばそんなこともあったねって笑える時が来るから、心配しないでいってらっしゃい」
そう言って笑った母を見た娘はこらえきれず涙を流す。
娘「・・・ありがとう。」
声にならない声で何度も言う。
娘「お母さん・・・ありがとう・・・。」
シナリオの書き方になっている =48
映像が見えるようだ =48
感動した =47
イチオシ=0
得点合計=143

シナリオ『潮風にちぎれて』  はなお

1 海岸
半袖ではまだ少し肌寒い5月の海。
太陽がゆっくりと水平線の向こう側へと沈んでいく。
海岸に佇む一人の女。
足元には少し古びたサンダル。
女は、口をきつく閉じて足元をしばらく見つめた。
少し冷たい潮風が吹いてくると、顔を上げ、瞼を閉じた。

3年前
女「5月の海って気持ちいいねー。世界中に私たちしかいないみたい。」
男「うん・・・そうだな。あのな、ちょっと、大事な話があるんだ。」
女「えっ、なになに?結婚しようとか?」
男「・・・。」
女「うそ。わかってる。でもあなたの口から聞きたい。」
男「ごめん、俺・・・」
女は立ち上がり、波打ち際へと歩いていく。
男「好きな人ができた。」
男は女の背中に向かって言葉を投げた。
女「うん、そっか。」
振り向かず言った女の声は少しだけ震えていた。
男「だから、別れてほしい。ほんと、ごめん。」
女「馬鹿だなー。気づいてないとでも思ってた?ほんとは今日で全部終わりにするつもりで来たの。」
女はサンダルを脱いで、爪先で波をすくった。
女「幸せに、なってね。幸せに、してあげてね。私よりももっと、世界で一番幸せにしてあげてね。じゃないと私、許さないから。・・・行っていいよ。待ってるんでしょ?」
男「好きだったよ。本当に、大すきだった。嘘じゃないよ。ありがとな。」
男は、女が脱いだサンダルの脇に、リボンのかかった小さな箱を置くと、海に背を向けて歩き出した。
「少し早いけど、誕生日おめでとう。」

現在
女は目を開けると、裸足になり、あの日と同じように波をすくった。
「知ってたってば。」
小さく呟くと、女は夕焼けに背を向けて歩き出した。
女が去った後には、古びたサンダルと、リボンのかかったままの小さな箱。

シナリオの書き方になっている =50
映像が見えるようだ =52
感動した =40
イチオシ=0
得点合計=142

シナリオ『幸せになるために』  ニャゴロワ

1 帰路(現在・夕方)
 仕事を終え河原沿いを家に向け、一人歩く男。
 街は夕日に染まり、川面はオレンジ色に輝く。

2 回想(2年前・夕方・河原)
 仕事帰りの男と女が河原を二人歩く。

女「夕方の河原って素敵だね。」
男「うん?」
女「ほら川面がきらきらしてる。それに仕事終わりのリラックスし た感じと相俟ってさ…まあとにかくロマンチックだよ。」
男「それもそうかもなあ〜。ところでさ、今日の晩飯何?」
女「何それっ!?恋人同士がこんな綺麗なとこ歩いてるって言うの に…考えてるのはメシのことかっ」
男「えー?だっていっつもここ歩いてんじゃん…。」
女「はいはい、もういいですよー!」

二人は男の家に向け歩き続ける。

3 帰路(現在・夕方)
 犬の散歩をする男女を横目で見つつ歩く男。
 ふと立ち止まり川面をながめる。

4 回想(1年前・夕方・河原)
 河原の横を歩く男と女。
 女は歩みをとめる。
女「大事な話があるの。」
 男は振り返る。
男「なに。あらたまっちゃて。」
女「…転勤するの。」
男「え!」
女「どうしても行かなくちゃならないの。離れ離れになるんだ   よ。」
男「……。」
 しばらく無言になる二人。
 男が歩きだす。
男「待っててくれないか。」
女「え…?」
男「俺は今そっちに行くことはできない。仕事がんばって、必ずそ っちの本社に行くからそれまで待っててほしい。」
女「…わかった。待てばいいんでしょ!!いつまででも待つよ。」
 女は歩きだす。
 二人は並んで歩く。
男「また二人で河原あるこうな。」

5 男の家(現在・夕方)
 男は玄関のドアを開ける。
 部屋は少し散らかっている。
 棚にかざってある女の写真を見ながら、男は受話器を手に取  る。
 

シナリオの書き方になっている =58
映像が見えるようだ =48
感動した =34
イチオシ=0
得点合計=140

シナリオ『秋桜』  ばりー

1.庭先
娘「お母さん、何してるの?」
コスモスが満開をむかえている庭の縁側で
母が何か見ている。
母「昔のアルバム。また見たくなっちゃって。」
コホン、とひとつ咳をして
母はまた娘の幼いころの思い出を話し始めた。
ひとりごとみたいに、小さな声で...
娘は静かに耳を傾けていた。

2.娘の部屋
母「もう全部終わったの?」
娘「うん、あとちょっと。」
母「心の準備の方は?」
娘「………。不安。
  2人でちゃんとやっていけるかもわかんないし
  家事も自信ない。」
母「大丈夫よ。そんなの慣れ慣れ!
  そのうち失敗も笑い話になるんだから。」
そう言って笑う母の顔には
優しさが満ち溢れていた。

3.結婚式当日
進行役「続きまして、新郎新婦の挨拶です。」
〜新郎新婦の挨拶〜
娘「最後に、お母さん。
  今までたくさん迷惑かけました。
  この前お母さんが見ていたアルバム、私も見ました。
  あれこれと思い出をたどったらいつの日もひとりではなかったと
  今更乍らわがままな私に唇かんでいます。
  これからも不安なことはいっぱいあるけれど
  私なりに生きてみようと思います。
  本当に本当にありがとう。」
荷造りの時は楽しそうにしていた母だけど
突然涙をこぼし娘に抱きつき
耳元で何度も、何度も、元気で、と
繰り返しささやいた

小春日和の穏やかな日
もう少しあなたの子供でいさせてください
ありがとう、おかあさん

娘はそっと胸の中でつぶやいた

シナリオの書き方になっている =44
映像が見えるようだ =44
感動した =50
イチオシ=0
得点合計=138

シナリオ『翳りゆく部屋』  姐

自宅(17:00)
電気を消したほの暗い部屋に夕日が射しこんでいる。
部屋にはひと組のカップルが距離をあけて座っている。
男の眉間にはしわが寄っており、これから話すことが女にとってとても残酷なことだということを物語っている。

自宅(17:05)
とうとう男の口が開く。
その言葉は女への思いやりが感じられない。
男「別れてくれないか」
女「…なぜ?」
男「もう君とはやっていけない。」
女「他に女でもできた?」
男「…」
男はそれっきりしゃべらなくなる。
女は自分が言ったことが男にとって図星だったと理解する。
女「そう…、他に女が…。」
ふと、女は振り向き、ドアが開いていることに気づく。
そのドアを閉めようと立ち上がった時、近くのテーブルに果物ナイフがあることに気付いた。
女はドアを閉め、彼との距離を狭めようと先ほどより近くに座る。
その手には果物ナイフがにぎられている。

自宅(18:00)
真っ赤な部屋にはひと組のカップルがいる。
男は体から夕日のように真っ赤な水をながし、女の側で転がっている。
女の目は感情を捨ててしまったかのように真っ暗だ。
女「…あんなに愛していたのに。あなたが私を裏切るからいけないのよ」
女は自分の首に真っ赤になった包丁をあてる。
女「待っていて。今すぐあなたの側に私もいくから」
しかし女の手はふるえ、そのまま包丁を足元に落としてしまう。
そして女はそのまま床に泣き崩れてしまった。

自宅(20:00)
涙が尽きた女は部屋が暗くなっていることに気付く。
女「灯りをつけなきゃ…」
女はそういうとテーブルの上に置いてあったランプに火を灯す
窓から外を眺めれば、すっかり夜になっていた。
女「もうこんな時間。これからどうしようかしら…」
女は真っ赤になった部屋を見渡すと、そのまま壁にもたれかかる。
女(この死体を誰にも見つからずに処分しなくちゃ…)
そんなことを考えていると隣人が外に出ていく音が聞こえる。
女は壁に耳をあてその靴音が遠くに消えていくのを待った。
女「ああ、今しかないわ」
靴音が消えると女は男をバスルームまで運び、男の体に何度も何度もナイフを突き立てた。

シナリオの書き方になっている =50
映像が見えるようだ =45
感動した =32
イチオシ=10
得点合計=137
とも
よかったです

シナリオ『潮風にちぎれて』  篠田推し

T 夕方 海岸
海岸線ギリギリ、足に波がかかるぐらいの所に、寂しそうに立つ女

U 回想 昼間 デパート

女「ねえ、どっちがいい?」
しあわせそうに微笑んで、赤い花柄とピンクのハート柄のサンダルを男に見せる
店内を見渡して、男がニコッと笑って言う
男「どっちも似合うと思うけど…俺はこの売り場の中でその花柄が一番好きだな。」
照れくさそうに女は言う
女「ありがとう。じゃあ花柄にする。」

V 夕方 海岸

女の足元には、赤い花柄のサンダル。
サンダルをパタパタ脱いだり履いたりして、女はやりきれないような顔でため息。
足元落ちていた木切れを広い、
女「なんでよっ…」
と力なく呟きながら沖の方に木切れを投げる
そしてつまらなそうに足元に来る波を蹴り返すかのように水を蹴散らす。
女「なんで…泣けないんだろ…」
ぼんやり遠くを見ながら小さくつぶやく

X 回想 夜 車どおりの少ない国道沿い

スーパーの袋いっぱいの食材をもって軽やかに歩く女
信号を渡ろうとしてふと右を見ると彼の車。
車の中には彼と知らない女。
車の方を見ていると、男が目線に気づき、
男「やべっ・・・」
といったように見えた。
男が車から出てくる

Y 回想 夜 国道沿い

男「ごめん…こういうことなんだ…」
女「そっか…うん…こっちもつまんない彼女でごめん…もう連絡しないでいいから…」
そして引き返す女。
女の目に涙はなかった。

Z 夕方 海

女「ふふっ・・・」
笑う女
女「あ…彼といなくても笑えるんだ」

シナリオの書き方になっている =47
映像が見えるようだ =44
感動した =35
イチオシ=10
得点合計=136
すえ
映像が見えました。
歌詞ともよくマッチしていました。

シナリオ『シンデレラ・エクスプレス』  ちゅん

1.夜の街
雨が降っている。
人通りの少ない道を女が一人、傘をささずに歩いている。
雨に濡れているにも関わらず、女は急ごうともせず、
ゆっくり、ゆっくり、真っ白のハイヒールで
地面を踏みしめるように歩く。
その表情は、穏やかな微笑みであった。

2.駅のホーム(回想)
男「今日も楽しかったね」
女「うん」
男「じゃあ…またね」
男は電車に乗り込む。
男「ばいばい」
女「…ばいばい」
プシューっと音を立てながら電車のドアが閉まる。
その音に紛れて、女は小さくため息をついた。
走り出した電車を見送りながら、女はそっとつぶやく。
女「…今度はいつ、会えるのかな」

3.駅前(回想)
駅から自宅までの道を女は一人で歩く。
今日のために新しく買った真っ白のハイヒールが
カツン…カツン…と乾いた音を鳴らす。

突然、女のケータイが鳴った。
男からのメールだった。
メールの内容「あっち、雨が降っているんだってさ。着く頃には止んでたらいいんだけど。そっちは雨、大丈夫?」
女は空を見上げる。
真っ黒で今にも泣きだしそうな雲が、空一面に広がっていた。

4.女の自宅
玄関に入ると、女はケータイを取り出し、
さっきのメールに返信した。
メールの内容「雨、大丈夫だったよ。風邪をひかないように、気をつけてね。」
真っ白のハイヒールには、いくつもの水滴がついていた。
女はうなづきながら、つぶやく。
女「大丈夫。大丈夫。」

シナリオの書き方になっている =49
映像が見えるようだ =48
感動した =39
イチオシ=0
得点合計=136

シナリオ『潮風にちぎれて』  つーち

1砂浜
夕暮れ前、誰もいない砂浜をゆっくりと歩く女。
白いワンピースにターコイズのついたサンダルをはいている。
波が女の足をぬらす。
足元をみて苦笑いする女。
「あの人が似合うって言っていたサンダルなんて・・・なんではいてきちゃったのかしら」
目元には涙。
こぼれないように上を向く。

2.回想
運転席にはハンドルを見つめる男。
助手席には海を見つめる女。
沈黙が続く。
男「ごめんな…」
外を見て、男から顔を背ける女。
男からは女の表情が読み取れない。
女「もう、わかってたわよ。」
いつも通りの口調で明るく話す女。
女「大丈夫よ、実は私も、一人じゃないから。」
男「そうか…なんだ、よかった」
安心する男。
女「私を捨てるほど魅力があるなんて、よっぽどの人なんでしょ。大事にしなさいよ。」
ドアを開ける女。
女「さようなら」
女は車から出る。一度も振り返らない。

3.砂浜
空は夕焼け空。
女「あーあ、なんでこんなに強がりなんだろ、私って。ばかみたい」
目には涙。
こぼれないように上を向き、目をつむる。
ワンピースは夕焼けで赤色に染まる。
女「やっぱり、私には赤色のほうが似合うわ」
目を開き、サンダルを脱ぐ女。
女「次にこの海に来るときは、もっと素敵な誰かをつれて来るから」
女は、微笑みながら涙を流す。

シナリオの書き方になっている =48
映像が見えるようだ =50
感動した =36
イチオシ=0
得点合計=134

シナリオ『ルージュの伝言』  やんも

1.某マンションの一室(8:00)
 「ただいま〜。」
 恭子からの返事はない。
 (はあ、やっぱりか)
 恭平は冷蔵庫から適当につまみになりそうなものを手に取り、
 缶ビールをけっこうな勢いでぐいっと飲み始めた。

2.昨晩
 「あなた、カッターに口紅ついてるわよ」
 変な汗が出てくる。仕事の疲れなど既に忘れ、全神経を
 言い訳モードに切り替える。スイッチ、オン。
 「ああ、電車に乗ったときについたのかな」
 我ながらなかなかうまく言えたと思った。
 恭子は「そう・・」とだけ言いその場は
 収まったように感じていた。

3.お風呂場(10:34)
 「え、ええ!?なんじゃこりゃ!?」
 タイルに恭子の口紅であろう、
 風呂場にはあまり合わない真っ赤な
 ルージュでこう書かれてあった。

 おいどん、実家に帰るでごわす
 探さないでほしいでごわす

 西郷隆盛をこの上なく尊敬している彼女は
 たまにこんな感じで話す。
 恭平と結婚したのも、恭平が他でもない
 西郷隆盛似のイケメン?だったからである。
 (これは大変でごわす・・)
 恭平はすぐに彼女に電話をかける。

4.翌朝
 昨夜はあまり眠れなかった。
 恭平はもう焦りに焦っていた。
 結局、彼女が電話に出る事はなかった。
 切腹も考えたが、そもそも西郷隆盛は 
 それほど好きではないのでやめた。
 すると固定電話が鳴りだした。
 恭平は急いで受話器に手を伸ばす。
 「もしもし・・」
 「あんた、誰の子でごわす?」
 ・・・母だ。声でわかる。
 「おいどんはあんたをそんな子に育てた
  覚えはないでごわす」
 「俺だって西郷隆盛に育ててもらった
  覚えはないよ。恭子に変わってくれ」
 どうやら恭子の影響を受けたらしい
 母は少し残念そうに受話器から離れた。
 「反省したでごわすか?」
 いかにも真剣そうに恭子は話す。
 「ああ、本当にすまなかった」
 「まあ今回だけは許すでごわす」
 恭子はすっかり上機嫌だ。
 「西郷隆盛が西南戦争で追い込まれたとき、
  俺とおんなじ気持ちだったろうな」
 うまいこと言えたかなと恭平は反応を待つ。
 「・・あんたに彼の何がわかるの?』
 惨敗だ。こういうときだけ恭子は絶対に
 『〜ごわす』とは言わない。めんどくさい。

 なにはともあれ一件落着なようだ。
 それにしても、あんなに西郷隆盛が好きなのに
 恭子の希望する子どもの名前は「隆盛」ではなく
 あえての博文なのだろうか。

 恭子についてなにもわからない恭平なのであった。

 

シナリオの書き方になっている =38
映像が見えるようだ =49
感動した =37
イチオシ=10
得点合計=134
ビギン
面白かった。

シナリオ『シンデレラ・エクスプレス』  GUCCI

1 駅 23:57
駅に無言でたたずむ男(19歳)と女(18歳)。
駅には2人以外誰もいない。
女のため息が空気に溶けていく。

2 回想 女の家 数時間前
2人で遅い夕飯を食べる。
女「どう・・・おいしい?」
男「・・・。」
女「久しぶりに会うから、結構がんばったんだけどな。」
男「・・・。」
女「あれ。あんまり美味しくなかった?おかしいな、ちゃんと本見ながら作ったのにな・・・。」
男「・・・無理しなくていいから。」
女「えっ・・・。」
男「無理して話さなくていいから。」
無言の時間が続く。

3 回想 女の家の寝室 数時間前
肩を震わせる女の涙が枕に落ちる。
男が入ってくる。
女「何で?もうすぐお別れなんだよ?また会えなくなるんだよ?
何で何にも言ってくれないの!?」
男「・・・。」
女「しばらく会わないうちに好きな人でもできちゃった?向こうの学校で好きな人でもできちゃっ―――」
男「違う!!!」
女「!!?」
男「何言っていいかわかなくて・・・。ごめん。」
お互いをしっかりと見つめ合う目。
そして、お互いの目がゆっくりと閉じていった。

4 駅 23:58
まだ2人とも一言もしゃべらない。
女が時計を見る。
最後の電車が来る。
電車が濡れている。
男は何も言わず電車に乗り込む。

5 駅 23:59
女「やっぱり何にも言ってくれないんだね。」
男「・・・ごめん。」
女「いいよ、別に。」
発車のベルが鳴る。
女「またね。」
男「・・・・・お前のこと好きだから!!」
電車のドアが閉まる。

6 駅 0:00
電車が行ってしまう。
女は改札を出ようとする。
切符を入れると改札の扉が開く。
女は笑顔で改札を出て行く。

シナリオの書き方になっている =45
映像が見えるようだ =49
感動した =40
イチオシ=0
得点合計=134

シナリオ『精霊流し』  四槓子

シーン1 Kの家(夕方)

S「今日で一年か…。」
Sがそう言うと皆は顔を伏せた。
K「皆、顔を上げようぜ。あいつこうゆう雰囲気嫌いだったじゃん。」
Kは立ち上がりながらそう言った。
N「そうだね。あの子は太陽みたいな子だったしね。」
K「そうそう。さ、もうそろそろ時間だし行こうか。」
Kはそう言うと出発の準備を始めた。
流れていたテープレコーダーは返事をするかのように、ちょうどA面が終わり、止まった。

シーン2 川への道(夕方)

M「そういえば、K君がその浴衣着てるの久しぶりに見た。」
K「あぁ。これは一昨年あいつとお揃いで買ったやつなんだ。」
K「あいつ、その時は金魚を飼い始めてて『金魚柄じゃないと嫌だ〜』とか言ってさ。あんまり好きじゃなかったけど買ったんだよ。」
Kは話しながら、どんどん明るい表情になっていく。
D「そういえば、初めて二人で祭に着てきた時は、あんまりにも派手で目立ちまくりだったもんな。」
H「そういうあんたも凄い服着てきてたじゃない。」
D「え?あんなの普通やろ〜。」
その雰囲気が空気に溶けたかのように、周りも明るくなっていく。
Kはふと空を見上げてつぶやいた。
K「これで良いんだよな。楓。」

シーン3 川上流(夜)

K弟「うわ〜。人がいっぱいだぁ〜。」
川には精霊流しのために集まった人でいっぱいだった。
K「人が多いからはぐれないように手をしっかり握っとくんだぞ。」
K弟「うん!わかった!」
そう言いながらも、K弟は今にもどこかへ行ってしまいそうなくらいキョロキョロしていた。
K「よし、ならここでせんこう花火をやろうか。」
K弟「本当!?」
K「あぁ、本当だ。皆もやろう。花火は全員分あるから。」
K達は川の上流で花火を始めた。
花火の光はとても暖かかった。
それを見てKはまた空を見上げてつぶやいた。
「お前にも見えてるか?楓。」

シーン4 川上流(夜)

K弟「あ!なんか綺麗なのが流れてる!」
K「お、始まったな。さぁ、皆行こうか。」
K達は川の方へと向かって行き、精霊流しを始めた。
Kはカバンの中からレコードを取り出した。
K「全く、見舞いに行ったらいきなり真剣な顔をしだして、何を言うかと思ったら『あたしが死んだらこれも一緒に流して』とか言いやがって。」
K「もっとマシなことがあっただろうに、なんでこんなものを流そうなんか。」
そう言いながらも、Kはレコードを沈まないようにゆっくりと水に浮かべた。
そして、流した船と一緒にゆっくりと歩き出した。
K母「この着物、楓ちゃん凄く気に入ってたわよね。ちゃんと見てくれてるかしら?」
横からふと聞こえたK母のつぶやきに、Kは一週間前の事を思い出す。

シーン5 Kの家(一週間前の回想:昼)

K母「もうすぐで精霊流しね。」
そう言いながら押し入れを漁ってるK母の横でKはテープレコーダーを聞いていた。
K母「あら、これは…。」
ふと、横から聞こえた声の方を見ると、そこには楓ギターがあった。
K「懐かしいなぁ。あいつが『これからはギターの時代ね』とか言って練習してたっけ。」
K「一週間ももたないと思ってたのに、頑張って弾いてたよな。入院するまではずっと弾いてたっけ。」
Kは懐かしくて、少し弾いてみた。
5分ぐらい弾いていると、ふと指に痛みが走った。
K「あ、切れてる。」
K母「あらあら、絆創膏はどこかしら。」
Kの薬指にはじっとりと血が滲んでいた。
しかし、Kは痛そうな顔どころか、どこか傷を愛しむような表情をしていた。

シーン6 川中流(夜)

Kは思い出して、ふと右の薬指の絆創膏を外して、指を川に浸けた。
Kはまた愛しそうな顔をした。
K「全く、今日はいろいろと痛いなぁ。」
そう微笑みながら、船にそって川を歩いていった。
人混みの中を歩いていくのは大変であったが、Kはずっと微笑んでいた。
そしてどれくらいの時間が経っただろう。
Kが流したレコードがついに沈み始めた。
Kはひどく寂しそうな顔になったが、涙は見せなかった。
その時、Kの目にレコードの名前が止まった。
『見上げてごらん夜の星を』
K「タイトルなんか全く気にしてなかったけど」
するとKは空を見上げた。
そこに、一筋の流れ星が流れた。
そして、消えた流れ星とKを包むかのような満天の星空が空には広がっていた。
K「こうゆうことだったのか。全く、楓にはかなわないなぁ。」
Kは必死に溢れ出てこようとする涙を抑えた。
なぜならそれが彼女との約束だから。
そして、この空の上から彼女が見てるのだから。
だからKは涙を見せず、ずっと船に寄り添って川を下っていった。

シナリオの書き方になっている =44
映像が見えるようだ =46
感動した =43
イチオシ=0
得点合計=133

シナリオ『秋桜』  ハッチ

1.秋の日の縁側 16:00
  母と娘二人でアルバムを開く
 母「この写真覚えてる?」
 娘「覚えてるよ。家族みんなで旅行に行った時の写真でしょう。」
 母「そう。あの時あなた迷子になって泣いてたよね。」
 娘「えーそんなことあったっけ?」
 母「あったわよ。みんなで必死に探したんだから。こんなこともあったわよね……」
  写真より歳をとった母のことを娘は眺める

2.台所 18:00
  二人は夕飯の支度をしながら話をする
 母「とうとう明日ね?」
 娘「そうだね。」
 母「心配?」
 娘「うん、ちょっとね。」
 母「たくさん苦労することがあるだろうけど、あの人と二人で手を取り合って乗り越えていったら、いつか笑える日が来るからね。」
  そう言い母は娘に微笑みかけた

3.娘の部屋 22:00
  明日のための荷造りを二人でする
 母「これはここに入れるわね。」
 娘「うん。」
 母「あっちに行っても元気でね、元気でね。」
  と泣きながら言う母
 娘「ありがとう、ありがとう。」
 母「あなたはどこに行っても私の子供だからね。いつでも帰ってきていいんだからね。」
 娘「ありがとう、ありがとう。」
  二人は泣きながら抱き合う  

シナリオの書き方になっている =54
映像が見えるようだ =38
感動した =41
イチオシ=0
得点合計=133

シナリオ『潮風にちぎれて』  mogu

1.海岸沿いの国道 夜
  海岸沿いの国道を裸足で歩く女
  手には赤色の可愛いサンダル
  女の横を次々と車が通りすぎてゆく

2.回想 海岸 夕方
  美しい夕焼けが2人の男女を照らす
男「別れて欲しいんだ・・・」
女「えっ?」
男「聞こえなかった?それとも、ただ真実を受け入れたくなかっ  ただけ?
  もう一度言うよ。別れて欲しい」
女「そっか・・・でもちょうど良かった!!
ほら、あそこの車見えるでしょう」
  そう言って、一台の車を指差す女
女「私も同じこと言おうと思ってたの。
  中に新しい彼氏が乗っているわ。
  今までありがとう。新しい彼女を大切にね。
  そして、さようなら」
  女は男の方を見ることもせずに男の元を去ってゆく

3.女の部屋 深夜
  サンダルを部屋の良く目につく所に置き、男との思い出の写真を一枚一枚手に取る女
  その目には、拭っても拭っても涙があふれてくる

4.ゴミステーション前 翌朝
  大きなゴミ袋に赤いサンダルだけを入れ、ゴミステーションの前に立つ女
女「これで、良いんだよね・・・」
  女がゴミ袋を捨てようとした時、遠くから女を呼ぶ声が
女「どうしたのよ、今さら」
男「やりなおしたいんだ
  俺から振っといて虫の良い話だって思われても仕方ないけ   ど
  やっぱり俺、お前じゃないとダメだって気付いたんだ」
女「本当、勝手な人だね
  でも、そういうとこ嫌いじゃないよ
  改めて、これからもよろしくお願いします」

5.女の部屋の玄関 お昼前
  女の部屋の玄関には、女の赤いサンダルとお揃いの男の青いサンダルが仲良く隣同士に並べられていた・・・
   

   

シナリオの書き方になっている =51
映像が見えるようだ =45
感動した =33
イチオシ=0
得点合計=129

シナリオ『公園 別れとはじまり』  かやな

1.18歳 出発前日の夜 公園

 公園のブランコに座りながら話をしている。
 男「俺たち今日で付き合って二年になるんだな。」
 女「そうだね。明日からいよいよ大阪に行っちゃうんだね。」
 女が悲しそうに上を見上げる。男はうつむいて考え込んでいる。
 女「あんまり会えなくなるけど毎日連絡するし、これからもがんばろうね。」
 男は黙ったまま何か思いつめている。
 女「どうしたの?」
 男「いろいろ今までいっぱい考えたんだけど、やっぱり遠距離なんか絶対無理だから別れよう。」
 女「どうして!?あれだけ一緒にいようってゆったじゃない!」
 男「ごめん。明日の出発の時に会うのを最後にしよう。」
 女「こんなに好きなのに・・・。」
 その場から立ち去る男。泣き崩れる女。

2、18歳 出発当日
 女「いろいろ今までありがとう。ほんとに楽しかった。」
 男「・・・こちらこそ楽しかった。ありがとう。」
 女「こんな形で別れちゃうのは残念だけどお互い幸せになろうね。」
 男「うん。絶対幸せになろうな。」
 涙ぐむ女。うつむく男。

3、27歳 女
 あれから11年がたった。
 一通のはがきがポストに入っている。
 女「あれ?なんだろう。」
 見ると、同窓会の案内。
 女「どうしよう。あの人も来るのかな・・・」
 
4、27歳 同窓会会場
 旧友と楽しそうに話す女。
 ふと視線を前にむけると男がこっちを見ていた。
 男「・・・久しぶり。」
 女「・・・元気にしてた?」
 男「それなりにな。お前は?」
 女「仕事ばっかで毎日疲れるよ。」
 男「そっか。このあと少し話せる?」

5、27歳 あの日の公園
 男「あの別れの日、俺が間違ってたんだ。」
 唐突に話し出す男。驚く女。
 女「え・・・? いまさらどうしたの。」
 男「あれからいろいろあったけどお前のことがどうしても忘れられないんだ。」
 女「・・・わたしもだよ。忘れたことなんか決してない。」
 男「ずっと一緒にいてくれないか?」
 女「あたりまえだよ。ずっと一緒にいたい。」
 抱き合う二人。

シナリオの書き方になっている =44
映像が見えるようだ =46
感動した =38
イチオシ=0
得点合計=128

シナリオ『償い』  てむじん

1,仲間同士での飲み会 夜
居酒屋での飲み会も、中盤に差しかかってきた頃。
みんなお酒も飲んで、程よくできあがってきていた。
仲間1「そういや、ゆうちゃんって毎月給料が入ったらすぐに、郵便局に貯金しに行くよなあ。」
仲間2「うんうん、ゆうちゃんって実は貯金大好きな、『貯金オタク』なんかあ?」
仲間3「『貯金オタク』はひどすぎるやろー。せめて『貯金マニア』にしといたれやー。」
そんなことを言いながら、みんな笑い合っている。
当の本人であるゆうちゃんも、同じようにニコニコ笑うばかりである。
しかし、そんな中で1人だけ、複雑そうな顔つきをしている男(=僕)がいた。

2,配達 七年前の雨の日の夜 (回想)
ゆうちゃんはいつものように配達に出かけていた。
ゆうちゃん「はぁ、今日は疲れたなぁ。」
こう呟きながら、ゆうちゃんが運転していると、
急に横断歩道に出てきた男性が目に入った。
ゆうちゃん「危ないっ!」
ゆうちゃんは必死でブレーキを踏みしめる。
数秒後、ゆうちゃんが恐る恐る目を開ける。
ゆうちゃんの目の前には、先ほどの男性が血を流して倒れていた。

3,交通事故の数分後 (回想)
まだ雨は降り続いている
パトカーや救急車が事故現場の周りにとまっている。
被害者の妻「あの人を返して!!人殺し!!なんであんたなんかに、あの人の命を奪われなあかんのよ!!」
こう罵られたゆうちゃんは、ひたすら大声で泣きながら、ただただ被害者の妻に向かって土下座をするばかりである。

4,僕の部屋 夕方
ゆうちゃんが僕の部屋へ泣きながら走り込んでいく。
僕「ゆうちゃん、どうしたんや?」
ゆうちゃん「あ…んな…、ヒック…、こ…れが…、ポストに…。」
僕はゆうちゃんが抱きしめていた手紙を受け取って読む。
《手紙の文面》
「ありがとう、あなたの優しい気持ちはとてもよくわかりました。
だからどうぞ送金はやめて下さい。
あなたの文字を見る度に主人を思い出して辛いのです。
あなたの気持ちはわかるけど
それよりどうかもうあなたご自身の人生を
もとに戻してあげてほしい。」
僕はその手紙を読むと、
何も言わずにゆうちゃんを抱きしめ、
二人で一緒に泣き続けた。

シナリオの書き方になっている =44
映像が見えるようだ =44
感動した =38
イチオシ=0
得点合計=126

シナリオ『潮風にちぎれて』  ムツゴロウ

1、家
  携帯電話をじっとみつめなかなか寝付けない女
  玄関には彼からもらったサンダル1足

2、海岸
  天気予報じゃ晴れマークだったのに
  うす暗く雲がはっている

 女「会うのほんと久しぶりだね」
 男「うん・・・そうだね」
 女「何してたの?」
 男「うーん・・・いろいろ・・・かな」
  会話が成り立たないのと対照的に
  彼の歩く速さはどんどんはやくなっていく
  彼の背中がいつもと違った風に見える
  彼が振り返ったとき
 男・女「あっあの・・・」
 女「先に言っていいよ」
 男「・・・別れよ」
 女「えっ」
 男「別れよ。すきなやつがいるんだ」
 女「実はねわたしもさっき言おうとしてたんだ。
   なかなか連絡くれないから浮気しちゃった。
   ちょうど良いじゃん。ばいばい」 
  彼に背を向け一台の誰も乗っていない車のもとに
  行きながら言った。

  雲が黒さを増し風が強くなっていた。
  
3、車内
  一人だけしか乗っていない車で
  ラジオだけがながれている。
  強風のせいで海の波が荒れている

  窓にコツンという音が・・・
  正体は・・・雨だった
 女「バカバカバカ
   バカヤローーーーーーーーーーーーーー!!」

  見えたのは海と雨と涙だけだった

シナリオの書き方になっている =48
映像が見えるようだ =42
感動した =36
イチオシ=0
得点合計=126

シナリオ『潮風にちぎれて』  ずっち

1 春 夕方の海岸

誰もいない夕方の海岸。目の前には穏やかな海が広がっている。
春らしいワンピースを身にまとい、サンダルをはいた女が一人
波打ち際に立ち、どこか遠くのほうを眺めていた。
2年間付き合っていた彼との思い出の場所に女は立っていた。

2 回想 

順調だったころの二人。砂浜に座って笑いあう。そして夕暮れ時。
男「きれいな夕日だなぁ・・・」
女「そうだね。でも、夕日ってちょっと切ないよね。バイバイする時間がどんどん近づいてくるみたい。」
男「・・・そんなさみしいこと言うなよ。会おうと思ったら、いつだって会えるんだから。」
女「だよねっ。ごめんごめん。」

夕闇の迫る砂浜に二人のシルエットが浮かび上がる。

3 現在

女が思い出に浸っていると、足元に木切れが流れ着いた。
それを拾い上げ、
女「えいっ!」
沖へ向かって、思い切り放り投げる。
女「はぁ・・・なんで来ちゃったんだろう・・・」
一言つぶやき、くるっと海に背を向け帰ろうとする。

4 再会

すると、驚いた顔をした彼が立っていた。息をのむ女。
二人の間に沈黙が流れる。夕焼けが二人を照らす。
男「あのさ、・・・女「ごめん、待たせてるの。」
女は彼の言葉を遮り、少し離れた道端に止めてある自分の車を指さす。
女「彼女のこと幸せにしてあげなよ。」
精いっぱいの強がりを一言残し、女は男に背を向け歩き出す。
溢れだす涙ががばれないように。

5 車内

女は車内に戻ると、こぼれた涙をぬぐう。
女「忘れるって決めたはずなのになぁ・・・」
車は静かに走り出した。

  

シナリオの書き方になっている =45
映像が見えるようだ =41
感動した =38
イチオシ=0
得点合計=124

シナリオ『シンデレラ・エクスプレス』  V3

1、にぎわう大通り 夕方
  にぎやかな通りを、ならんでゆっくりと歩いていく二人の男女
男「今日は楽しかったな」
女「うん」
男「そろそろ時間だから帰らないと」
女「うん・・・」

2、駅までの暗い夜道 夜
  雨が降り出す
  傘をさして静かにならんで歩く二人
女「次はいつ会えるかな」
男「いつかなあ
  いろいろと忙しいし」
女「だよね・・・」

3、駅 夜 
  駅で列車を待つ二人
  二人とも無言で線路を見つめている

4、到着した列車に乗り込む男 夜
 男が動き出した列車の窓から顔を出す
男「なかなか会えなくても、いつも一緒だからな」
女「うん
  向こうでも頑張ってね」
男「じゃあな」
  おおきく手を振る男
  遠ざかっていく列車をじっと見つめる女

5、帰り道 夜
  泣きたい気持ちを必死にこらえながら、傘をささず力なくとぼとぼと家に帰っていく女

シナリオの書き方になっている =47
映像が見えるようだ =42
感動した =33
イチオシ=0
得点合計=122

シナリオ『あの日にかえりたい』  ちさと

1 男の部屋 昼
  破れた写真がカーペットの上に散らばっている。
  写真には幸せそうな、二人の男女。
  目を腫らした女が、ぼんやりと写真を眺めている。

2 回想 男の部屋 夜
男「なんで、お前はそんなに自分勝手なんだよ。」
  男の大きな声が部屋中に響き渡る。
  テーブルの上に、夜ご飯が準備されているが、まだ手はつけられていない。
女「だから、私は思ったことを言っていただけよ?」
  女は椅子に座ったまま、男に話し続ける。
女「あなたはいつも、私の話を聞いてくれない。仕事の話ばかりじゃない。私はもう、そんなの疲れちゃったのよ。」
  男も椅子に座ったまま、声を荒げて言う。
男「お前は昔言ってたよな?俺の話を聞くのが好きだって。もう忘れたのか?」
  女は男から目をそらす。
女「もうあなたなんて知らない。」
  テーブルに飾ってある写真に目を落とした女。
  女は少しの間、その写真を見つめる。
  そして、勢いよく写真をちぎり、カーペットに投げ捨てた。
男「おい、お前…」
女「ごちそうさま。」
  全く食事に手をつけないまま、女は立ち上がる。
  今にも溢れそうなほどの涙を浮かべ、女は寝室へと歩いていった。

3 男の部屋 夕方
  暫くぼんやりとしていた女。
  窓から差し込む夕陽が、自分を照らしていたことに気付く。
  昨夜自分がちぎった写真を、手のひらの上でつなげ、呟く。
女「そういえば、昔は本当に話を聞くのが好きだったな。なんでも知りたかった。」
  女はまた、視線を落とす。
  そして、セロハンテープで写真をつなぎ合わせ、元の場所に戻す。
女「昨日は悪いことを言っちゃったな。」
  女はテーブルで、男への手紙を書き始める。
  しかし、途中でペンを止める女。
  手紙を破り捨てて、小さなメモを残す。
  女は大粒の涙を流す。
  メモには近くの、ビジネスホテルの住所。
  涙でインクがにじんだそのメモを扉に挟み、女は家を出ていく。
  ゴミ箱には破れた手紙が捨てられている。
  手紙には、私と一緒にいても幸せにはなれない。あなたは誰か他の人と幸せになってほしい、と記されていた。
  誰もいない部屋。

4 ビジネスホテル 夜
  女の目はまだ赤く、腫れもひいていない。
  男が家に帰り、メモに気付くのは、早くても深夜のこと。
女「お願い。」
  女は静かな部屋、窓際の椅子に座っている。
女「また昔みたいに、戻れるかな。」
  窓から見える満月が、女を照らしている。

シナリオの書き方になっている =52
映像が見えるようだ =39
感動した =28
イチオシ=0
得点合計=119

シナリオ『まちぶせ』  わらびー

1 現在 学校の帰り道(夕方)

陽もすっかりと落ちた冬の帰り道。
朝倉ユキは右手には携帯を、左手には一通の手紙を持ちたたずむ。
ユキはマフラーも手袋もしていない。
手紙と携帯だけを握りしめる。
その手紙はジュンから貰ったラブレターである。
しかしユキには別に想いをはせる男がいる。
その男はカズである。
彼女は彼のことを待っているのだ。
ユキは白いため息をつく。
もう何分待っているのだろう・・・。
一時間は経っただろうか・・・。

2 回想 一か月前の帰り道

一か月前のことだった。
ユキはいつも通りの道で帰っていた。
通りがかりの喫茶店を除いたとき、アンナとカズが一緒にいた。
彼女は一瞬で、なぜアンナが最近、キレイになったのか理解した。

3 回想 学校での昼休み

ユキはある噂を耳にする。
それはアンナがカズに振られたということだった。
彼女は内心ほっとした。
しかし自分から言い寄るつもりはない。
ただ自分の机の模様をじっと見つめて座るユキ。

4 現在 学校(夜)

カズ「おつかれ〜明日も部活来いよ!」
部員「おう!バイバイ」
カズは校門を駆け抜ける。
今日もユキと会えるのではないかと、気持ちがはやまる。

5 現在 学校の帰り道(夜)

カズ「朝倉!今日も待っていてくれたのか。雪がふってるのに・・・。ごめんな!」
ユキ「全然まってないよ。たまたま!!偶然っ!!あ!!そうだ・・・見せたいものがあるの」
カズ「何?」
ユキ「これ・・・ジュンから昨日貰ったの。」
カズ「ラブレター?」
ユキ「そう。ジュンが今時、こんなことするなんて・・・笑ちゃった。でも返事は断ったの。」
カズ「なんで?」
ユキ「教えない!」
カズ「なんだよ。それ。」
雪が肌に触れ、指先が赤くなるユキ。
ユキは両手をこすりあわせる。
カズが手を握ってくれたらどんなに幸せだろうか考える。
二人はそのまま話すことなく、別れる。

6 現在 ユキの部屋(夜)

ユキは窓の外を眺める。
さっき降っていた雪は、積もることもなく、すっかり止んでいた。
ユキは心の中でつぶやく・・・「あの雪はなんだったんだろう」
ユキは、ただただじっと窓の外を見つめるのである。

シナリオの書き方になっている =36
映像が見えるようだ =44
感動した =37
イチオシ=0
得点合計=117

シナリオ『ルージュの伝言』  TYoBI

1 新大阪駅 のぞみ115号広島行 車内 (18:25) 

悪戯をしてきたあとの子どものような
わくわくしている感じの女性が
出張帰りのサラリーマンに混じって
普通車自由席の窓越しに座っている。
年齢は20代に見える 名前はユナ
どこにでもいそうな普通のOL
結婚二年目でケンスケとは
仲の良い夫婦だそうだ。
そんな、幸せ絶頂の彼女が
なぜ一人新幹線に乗ってるかというと…

2 自宅 (8:00)

ユナ「昨日、隣の柏木さんが、ケンスケがデパートにいたのを見たって言うの」
ケンスケ「違うんだ。その女性は会社の同僚で…」
ユナ「最低。ケンスケなんて大嫌い。」
ケンスケ「待ってくれ。彼女には…」
ユナ「聞きたくない。仕事いってくる。」
ケンスケが何かを言おうとしたが
すでに扉の閉まるバタンという音が響いていた。

3 のぞみ車内 (19:00)

そんな話をやたらと楽しそうなうに話しているのが
今、私の目の前にいる女性。ユナである。
隣に座っただけの見知らぬ私に
今日の出来事を事細かに説明してくるのである。
外の流れる街並みや車に目をやりながら話を続ける。
ユナ「そしてね、その後に電話があってね…」

4 会社前 電話 (17:00)

着信音が鳴り響く。
名前を見てわずかに期待が高まった。
ユナ「謝る気になった?」
ケンスケ「すまない。今日も遅くなる。」
ユナ「どういうこと。説明してよ。」
ケンスケ「もうすぐユナ…」
女性「ケンスケさん。昨日は…」
ユナ「もういい。きるね」

5 しおかぜ25号 松山行車内 (20:00)

そういうわけで、家を飛び出してきたらしい。
そのわりには怒っているそぶりもなく
どちらかというと、遠足に向かう子どものような
楽しんでいる雰囲気が感じ取れる。 
ユナ「ケンスケは浮気なんかできる人じゃないからね」
そこまで言い切れる彼女にこんな行動をとった理由を聞いてみると
ユナ「いじわるしたくなっちゃった。」
そんな言葉を満面の笑顔で言われて
こんな奥さんがいるなんてうらやましいとも思ったが
ケンスケの気持ちを考えると
すこし気の毒にも思えるのだった。
ユナ「今頃きずいているころかな。」

6 自宅 (20:30)

そこには、バスルームで呆然と立ち尽くす
赤の他人にまで不憫と思われる
男性が立ち尽くしていたのである。
ケンスケ「どこにいったんだ」

7 自宅 (17:30)

ユナ「この機会を利用して、主従関係はっきりさしときたいなぁ」
そんな恐ろしいことをぼやきながら
部屋を歩き回っていた。
ふと足が止まると
いったいなにを思いついたのか
自分の部屋に入っていき
何かを手に取り、今度はバスルームに入っていった。
しばらくしたのち
何かをやり遂げた満足そうな顔してユナは部屋を出て行ったのである。

8 しおかぜ車内 (21:15)

ユナ「前にね、ケンスケからもらった口紅つかっちゃった。」
自分が渡したプレゼントが
“浮気な恋をはやくあきらめないかぎり家には帰らない”
と書かれるためにつかわれるなん
誰が想像するだろうか。
きっと、かなりへこんでるころだろう
かわいそうにおもえてきてしまった。
ユナ「はやく義母さんに会いたいなぁ」
というのも、どうやら義母さんまで巻き込んで
ケンスケいじりをしようという魂胆らしい。
その証拠に、ユナの目は先ほどからずっとキラキラしている。

9 自宅 (22:00)

目は真っ赤。鼻はぐずぐず。
しかし、そこには必死にユナの友達に
電話をかけているケンスケの姿があった。
ケンスケ「いったいどこに行ったんだよ」
ケンスケ「帰ってきてくれよ」
とまた涙を流し初めながら
ケンスケ「ママに電話かけてアドバイスしてもらおう。」
といつもの調子のケンスケだった。

10 宇和海25号 宇和島行 車内 (23:00)

松山でお別れとなったゆなは
最後に
ユナ「そんなうじうじしている姿も好きなんだよね」
ユナ「きっと私へのプレゼントを選ぶのを手伝ってもらってたんだよね。」
そこまでわかっているなら
こんなことしなくてもいいじゃないかと思っていると
ユナ「結局ケンスケをいじるの大好きなんだよね。」
きっと、ケンスケは
明日の朝にはママからの電話で起こされ
さんざんいじられたあと
やっと釈明が許され
安堵のためいきをつくことができるだろう。

11 宇和島駅前 (0:00)

一人の乗客が住所を告げ車に乗ってきた。
どうやら妻の実家に行く途中らしい。
そして彼は、今日会った面白い女性の話を聞かせてくれた。
男性「だから、ケンスケさんのことはひとごととはおもえなくて」
そんなことをいいながらその男性は頭をかいていた。
男性「ただ一つ違うのは、ユナさんはかわいらしかったですけど…」
その先は何も言わず、ただ苦笑いをしているだけだった。
はたして、この男性にも明日の朝には
安堵のため息をつくことが許されるのだろうか
タクシーは男性を乗せて
それがわかるとこへとむかっていくのであった。

シナリオの書き方になっている =32
映像が見えるようだ =45
感動した =39
イチオシ=0
得点合計=116

シナリオ『海を見ていた午後』  しんこ

1、坂道 真夏の午後
女が1人うつむきながら長い坂道を上がっていく。
女はふと立ち止まり坂の上を見据え額の汗をぬぐい、また歩き出す。
阪の頂上につくと女は海に臨むように建てられた白塗りのレストランに入る。
マスター「いらっしゃい」
レストラン・ドルフィンの店主が女に声をかける。
女「ソーダ」
マスター「はいよ」
女は出てきたソーダ水を一口飲むと、ストローで氷をくるくると回し始める。
窓の下に広がる海を通る貨物船をソーダ水の入ったグラス越しに見る女。

2、回想 1年前のドルフィン
男「別れてほしい...」
女「いいよ。さようなら」
しばらくの沈黙の後、席を立ち店から出て行く女。
女の背を見つめながらも男は動かない。
レストランの外に出た女はせきを切ったように泣き出す。
女はいつの間にか手に握り締めていた紙ナプキンに「わすれないで」
と書いて、ドアの横にある木にくくりつける。

3、 1の続き
女の後ろには別の客で男女2人組みが顔を寄せ合い笑顔で話している。
窓を見つめていた女の目にはその二人と空とぶかもめが映る。
そこから目をそらそうとして女がテーブルに視線を移すと、ぽたりと小さなしずくが落ちた。

シナリオの書き方になっている =42
映像が見えるようだ =41
感動した =32
イチオシ=0
得点合計=115

シナリオ『翳りゆく部屋』  よっしー

1海岸に近い小屋
周りに誰もいない中で
視線をあわさない二人
私が見つめる彼は
夕日を見つめ続けている
女「ねえ、何か話しましょう」
男「・・・ああ、そうだな」

2過去に向く会話
女「二人で行った遊園地のこと覚えてる」
男「ああ、あのころは楽しかったな」
女「そうね、何もかもが美しくみえたわ」
男「本当にそうだったな」
女「あのときも」
    ・
    ・ 
    ・ 
二人の言葉は過去のことばかり
降り注いでいた光も
今では闇ばかり広がる

3女の独白
あんなにも輝いてみえた未来
たどりついたいまは、寂しいばかり
どうしたらあのころにもどれるのだろう
それとも私が死なないと
戻れないのだろうか

4現実
男「じゃあな、さようなら」
そういって去ったあの人
女「うっ、うっ」
私は一人小屋の中
ランプの灯を消せば、
街から私は忘れ去られるのだろうか
暗闇のせいで去り行く彼の姿は見えない
彼が去ったほうに耳を傾け
去り行く靴音を追うことしかできない

シナリオの書き方になっている =40
映像が見えるようだ =38
感動した =34
イチオシ=0
得点合計=112

シナリオ『卒業写真』  カレーライス師匠

1 女性の部屋(夜)
  真っ暗な部屋で女性が泣いている。
  何かを思い出したように本棚を見上げる。
  卒業写真を手に取り、優しくも複雑な表情を浮かべる。

2 回想 繁華街(夜)
  女性が人ごみを歩いている。
  ふと見覚えのある男性を発見する。
  思わず下を向き、そのまま彼とすれ違う。
 女性「…変わってない。」
  そうつぶやくと、とぼとぼ歩き始める。
  
 タイトル

3 電車(昼)
  ドアの前に立ち、外を眺める女性。
  数年前毎日通った道が遠くに見える。

4 回想 通学路(朝)
  真冬の通学路。
  少し距離を空けながら歩く少女と少年。
  いつも無口な彼が口を開く。
 少年「もうすぐこの制服ともさよならだな。」
 少女「そうだね。」
  驚きながら彼女は答える。
 少年「卒業しても変わらずにいような!」
  彼の無邪気な笑顔を見て彼女も笑顔になる。

5 3と同じ
  女性はドアに頭をつけ、遠くを見ながらため息をつく。
  写真の中の少女が映し出され、彼女の顔のアップ。
  少女の面影はない。
  
  

シナリオの書き方になっている =47
映像が見えるようだ =36
感動した =26
イチオシ=0
得点合計=109

シナリオ『海を見ていた午後』  かつ

1、真夏の午後
女が、一人で坂道をのぼっている。
太陽が照りつける中坂道をのぼっている。
そして入った海の近くのレストランドルフィン。
女「ソーダ水」
そのソーダ水をとうして窓から見える景色
を見て女が思い出す。

2、回想
男「別れよう」
女「もうかってにして!」
喧嘩をしたように出ていく女本当は辛いのに
男の前では強がって泣かない。
女はこっそり「忘れないで」とナプキンに書き
渡そうとしたがレストランの前で泣いてしまい
ナプキンの文字のインクが涙でにじんでしまった。
女は男に本当は辛いということを言えずに別れてしまう。

3、現在
今女はそのレストランにいる。
今のレストランはあの時のテーブルあの時のイスの
ままだ。
ソーダ水を飲みながら女は静かに目をとじこみあげてくる
涙をがまんしている。

シナリオの書き方になっている =39
映像が見えるようだ =34
感動した =33
イチオシ=0
得点合計=106

シナリオ『ジャコビニ彗星の日』  ふくちゃん

1.72年10月8日22時 部屋の窓辺
  「今夜から明日にかけてジャコビニ彗星が現れます。
  数千個もの星が夜空に降り注ぐでしょう。」
  ラジオを聞きながら空を見上げるも
  ただぼんやりした月とその上をすべる雲、
  さみしげな柿の木が見えるだけだ。

2.翌日0時
  「向こうの空には見えてるのかなあ。」
  もう1カ月以上も連絡のない、
  遠い遠いシベリアにいるあの人を思い浮かべる。
  「場所は違うけど同じ星を見れたらすてきだよね、
  なんて言ったこと覚えてるかなあ…。」
  そんなことを考えながら夜空を見上げ続ける。
  
3.7時 リビング
  今回の流星群は日本とシベリア以外においては
  よく観測できたとニュースは伝えていた。
  彼女のちいさな希望が消えようとしていた。
  

シナリオの書き方になっている =32
映像が見えるようだ =31
感動した =30
イチオシ=0
得点合計=93

シナリオ『潮風にちぎれて』  妄想男

1、海岸
季節は初夏。時刻は夕暮れ時。女が一人波打ち際を歩いている。
大きな麦わら帽子をかぶり、足には少し古びたサンダルみをはいている。
女はそのサンダルを悲しそうな目で見つめ、少し考えてから近くにあった流木を力いっぱい海へとほり投げた。

2、数年前
潮風が強く吹いている海岸線。女と男がいる。男は神妙な面持ちで女と向き合い、そして別れ話をくりだした。女はこの事態を少し予測していたのだろう。少々の動揺はあるがそれを押し隠し、「新しい彼女のこと幸せにしてあげなさいよ」と言い放つ。それから男に背を向け国道に止まっている小さな車を指さすと「じゃあ待ってる人がいるから」と言い足早にその場を去ろうとする。男はその言葉が嘘であることに気付いているが、女の背中を見つめることしかできない。女は振り返りたい気持ちでいっぱいだが強がって振り返ることをしない。ただ目の前の一点を見つめてどんどん歩いて行った。

3、現在
あの日と同じように潮風が強い海岸。女が一人、海のほうを向き目をつむったまま立っている。その表情はどこか明るく凛としている。女は目を開け大きく背伸びをするとまたどこかへ歩き出した。

シナリオの書き方になっている =25
映像が見えるようだ =37
感動した =28
イチオシ=0
得点合計=90
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