カフェインの結晶を取り出そう
−茶葉からカフェインの抽出、分離、精製−
はじめに
有機化学は、生命現象を営んでいる生物体から得られる化合物の分離により始まり、
分離された化合物を精製し、構造野決定を行い、さらにその化合物を合成するという
歴史的過程をたどって発達してきました。そして現在では、膨大な数にのぼる天然に
存在しない化合物の合成と、その性質についての研究がなされています。一方においては、
生命現象と深いつながりのある天然物化合物の有効利用が、特に医薬品関係を中心に見直
されてきています。
今回は、アルカロイド1)の一種であるカフェイン2)を題材として、植物体から
純粋な天然物化合物の分離、精製を行い、有機化学の一端にふれていただきます。
カフェインは緑茶、紅茶、コーヒーはじめとする嗜好飲料や風邪薬、健康ドリンク、
さらには眠気覚し用の飲料、チュウインガム等、日常の生活の中で見近に出会う有機化合物です。
しかし、そのもの自体を見ることはほとんどないでしょう。
黄緑色の液体から無色のきれいな結晶を取り出すことが出来たときの喜びを味わってください。
2) 1,3,7-トリメチルキサンチン(1,3,7-trimethylxanthine)、アルカロイドの
一種であり、骨格をプリン骨格と云う。 中枢神経興奮剤で、感覚受能及び精神機能
を活発化し、眠気を除く、心筋の収縮能力を増強させ冠動脈を拡張させるので、強心剤
としても用いられる。また利尿剤としても利用されている。
茶葉には1〜5%、コーヒー豆には0.8〜1.8%含まれている。

実験
茶葉約 40g を500 mL のビーカーに入れ、400
mLの熱湯を加えて5分間ほど、時々
かき混ぜながら放置する。この熱い抽出液を茶葉ごと全てステンレスのキャッシュボールに
敷いた木綿布上に注ぎ込み、ゴム手袋を用いて抽出液をしぼり取る。抽出液を再び
500 mLの
ビーカーに移し、20
gの酸化マグネシウム3) を加え、三脚上でときどき攪拌しながら
ガスバーナーで加熱を続ける(10分後、加熱を止めるときには液温が 80 ℃
以上になって
いるように加熱する。)加熱を止めて、シリカゲル4)30 g
を加えてよく攪拌し、この混合物
を熱いうちにブフナー濾斗(ヌッチェ)、1Lの吸引ビンを用いて吸引ろ過する。*1
沈殿は約 50 mL の熱湯で洗浄する。
濾液に 5 mL の3M-H2SO4
を加え、溶液が酸性になっていることを確かめる。
(酸性でない場合はさらに硫酸を加え酸性にする。)この酸性水溶液にエタノール(C2H5OH)5)
100 mL
を加えた後、1Lナス形フラスコを用いて、ロータリーエバポレーターで全量が
100〜150 mL 程度になるまで連続減圧濃縮する。*2
この濃縮液を300 mL
の分液濾斗に移し、(ジエチルエーテル(C2H5OC2H5)100
mL で
1回抽出後)、5 M-NaOH水溶液を加え、溶液のpHを6〜7ぐらいに調節し、各約
80 mLの
酢酸エチル(CH3COOC2H5)で3回(合計
240 mL)抽出する。
今回の抽出では余り激しく振らないこと。*3
抽出液をなすフラスコを用いて減圧濃縮により酢酸エチルを留去するとカフェインの粗結晶が
得られる。こうして得られた粗結晶を少量(10〜15
mL)のエタノールで再結晶すると、
絹糸状のカフェインの結晶が析出するので、吸引濾過により濾取する。*4 融点238℃。
通常0.3〜0.6 g のカフェインが得られる。
4) カラムクロマトグラフィ用のシリカゲルを加えることにより、不要で濾過に際して
不都合な微粒子をシリカゲルに吸着させて濾過を容易にする。
5) この水溶液が発泡し易く濃縮が困難であるため、エタノールを加え、発泡を抑えて濃縮を
容易にする。エタノールと水は、エタノールが無くなるまで常に一定の割合で留出する。
(これを共沸と云う。)
