ミクロの世界 −電子顕微鏡による観察−
<はじめに>
人の目はすばらしい光学器械であるが、分解能は約0.1mmである。図1は物質の大きさと顕微鏡の分解能との関係を
示している。今回は走査型電子顕微鏡を用いて、昆虫、花粉、紙、毛髪などの表面を観察してみよう。
<走査型電子顕微鏡 (SEM : Scanning Electron Microscope)とは?>
SEMの原理を簡単に説明しておこう。コインや木の葉の上に薄い紙をのせて、その上を鉛筆で左右に擦りながら、
上から下へ少しずつ移動させると、紙にコインや木の葉の形や柄が浮き出ることは誰でも知っているだろう。
SEMの原理もこれに似ている。ただ、鉛筆に相当するのが電子ビーム(電子線)であり、この電子ビームで試料の
表面を左右に振りながら上から下へ走査(Scan)して、その表面の凹凸をブラウン管上に像としてとらえるのである。

固体の表面に電子ビームを衝突させると、その表面から電子が放出されてくる。この電子を広い意味での二次電子と
言い、これは持っているエネルギーの量によって三種類に区別することができる。エネルギーの高い順に、弾性散乱
電子、非弾性散乱電子、狭い意味での二次電子である。この狭い意味の二次電子がSEMにとって重要であり、これは
固体表面の形状によって放出される量が変化するので、この情報を用いて表面の形態を忠実に知ることができる。
図2に模式図が示してある。V字型のフィラメント(陰極)とドーナツ型の陽極の間に加速電圧をかけると電子が
出ていく。この電子ビームを電子レンズ(コンデンサーレンズ)で細く絞り、対物レンズによって試料の上に焦点を
結び、偏光コイルによって左右に振りながら少しずつ上から下へ移動させていくのである。
<実験>
1)試料台を金属みがきでみがき、アセトンでよく拭く。
2)ピンセットや薬さじを使って試料を試料台にのせる。
*今回は試料として、小さな昆虫、花粉、紙(コピー用紙、ロ紙)、タマネギの皮、
ヒドロキシアパタイト(歯の主成分)の粒子などを用意してある。この他、君の
毛髪が健康かどうか(キューティクルがそろっているか)見てみよう。
*試料を台に固定する方法として、今回はカーボンテープと紙製両面テープを用意
した。他にボンドでつけて乾燥させたり、水に分散させた後乾燥する方法がある。
*SEMは試料室を真空にして観察するので、試料が取れないようしっかりつける。
3)試料表面に金蒸着する。
*試料に導電性を与えるために表面に薄く金属をメッキする。なぜなら、導電性の
ない物質に電子線をあてると試料が帯電してしまい、観察ができないからである。
4)SEMの中へ試料台を入れる。
5)倍率、ピント、コントラスト、明るさを合わせる。
6)写真を撮影する。

ゆりの花粉 毛髪
図3 走査型電顕写真
参考文献:「電子顕微鏡でわかったこと ー細胞の微細構造から原子の姿まで」
永野俊雄、牛木辰男、堀内繁雄 著、講談社、1994年発行
担当:教員養成課程理科教育講座化学専修 安川あけみ
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