よう素と遊ぼう −昆布からよう素を取り出そう−

 よう素は黒紫色の金属光沢を持った固体で,容易に昇華して紫色の気体となる数少ない
有色の元素の一つです。天然には遊離して存在せず,海草や海棲動物中では,有機化合物と
結びついて存在しています。日本では,よう素の工業的生産方法として,よう化物を多く含む
戯水(かんすい)から,塩素による酸化やイオン交換法を利用しています。原材料としては,
数少ない輸出品として,重要な役割を果たしてきました。よう素は,また人体にとっても
微量ではあるが必須の元素で,人体中のよう素の約5分の3が甲状腺に集まっており,甲状腺の
活動にはなくてはならないものです。チェルノブイリ原子力発電所の爆発の際には,悪性腫瘍
などの原因となる,よう素の放射性同位体が体内に入らないよう,前もってよう素を摂取しよう
としたことが話題になったこともありました。今回は,このよう素の持っているいろんな性質に
ついて実験すると共に,実際に昆布の中からよう素の結晶を取り出してもらいます。ここに
示した方法は,かなり古くから,日本でよう素を得る時に用いた方法を少しばかり改良した
ものです。



実験

○よう素は液体にならずにすぐに気体になる。(昇華)
 ごく小さいよう素の結晶一かけらを試験管に入れ,脱脂綿で軽く栓をし,
熱湯に浸けてみる。

○よう素は溶かす溶媒により色が異なる。
 よう素をベンゼン,ヘキサン,エチルアルコール(エタノール)に溶かして,
色の変化を見てみる。

○よう素は澱粉さがしの名人。(よう素澱粉反応)
 よう素の結晶を水にいれる。溶けないが,そこへよう化カリウムの結晶を
入れると溶けてゆく。1) 可溶性でんぷんの水溶液に,上で作ったよう素溶液を
極く少量加えるときれいな紫色になる。この溶液をバーナーで加熱すると,この紫色は
退色する。この退色した溶液を冷やすと再び紫色が発色する。2)
 この紫もでんぷんの種類により赤色から青色まで変化する。3)

○昆布の中にはよう素がいっぱい。(昆布からよう素の結晶を取り出そう。)
 昆布約25gを2 cm角に切り,磁製カセロールに入れ上からアルミホイルで軽く蓋をして,
ガスバーナーの強い火で約10分間蒸し焼きにする。*1 その後,さらに直接ガス
バーナーの火を当て,煙の出なくなるまで焼き完全に灰とする。少し冷やした,得られた
灰に熱湯100mLを加え,よくかき混ぜながら加熱する。この混合物を熱いうちにブフナー
濾斗(ヌッチェ),と吸引ビンを用いて吸引ろ過する。*2
沈殿は約20mLの熱湯で洗浄する。
濾液を200mLなす形フラスコに移し,エバポレータを用いて減圧乾固する。*3
 固体の残ったフラスコををよく冷やし,希硫酸2 mLを加えて酸性とする。さらに過酷化
水素水2 mLを加え,4) すぐに前以て水を入れた細い試験管を図のようにコルク栓で
取付ける。*4 この試験管をバーナーの火で穏やかに加熱する。しばらくすると,
試験管の中で紫色の気体が発生し,この気体が水の入った試験管(冷却管)で冷やされ,試験管の
周りに黒紫色のよう素の結晶が析出する。5)ルーべで観察するときれいな結晶であることが
よく分かる。


  1. I2 + KI → KI3 の化学反応により,水に溶け易い形となる。
  2. でんぷんはブドウ糖(グルコース)が長くつながった高分子化合物であるが,直線ではなく
    左巻きのコイルのようになっており,所々枝分かれしている。このらせんの中によう素
    分子が入り込み,紫色を呈する。しかしこのような状態はけっしてグルコース同志を
    結びつけたり,原子と原子を結び付けている化学結合ほど強い力でないので,少しの
    エネルギーを与えると(加熱することにより),よう素とでんぷんがばらばらになる。
    そのため紫色は消える。しかし,冷やすと再び元のようにでんぷんのら旋の中によう素
    分子が入り込み発色する。このように,ある種の分子や原子,あるいはイオンを取り込む
    ことの出来る化合物をホスト(Host),またよう素のように,ホスト分子の中へ入ってゆく
    ものをゲスト(Guest)とよぶ。


      

  3. でんぷんの種類により,構成成分であるグルコースのつながり方が異なるため,
    よう素とでんぷんとの相互作用も少しずつ異なり,色にも変化があらわれる。
  4. よう化物イオン(I)をよう素(I2)に酸化する。
  5. 固体から気体,気体から固体に,液体を通らず直接変化することを昇華と言う。




担当:教員養成課程理科教育講座化学専修 有賀正裕

実験に関するご質問・ご意見は、実験名を明記の上
こちら(nishi@cc.osaka-kyoiku.ac.jp) までお願いいたします。



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