ナイロン66を合成したカロザース


アジピン酸とヘキサメチレンジアミンからナイロン66を合成
・・・合成面から高分子化合物の存在を実証した最初の人・・・

 ハーバード大学講師であったカロザースは,デュポン社の基礎研究部門の拡
充にあたり,部長職として請われた(32才,1928年)。彼が選んだ研究テーマは,
当時明らかになりつつあった化学結合理論を有機化学合成に応用した高分子化
合物の合成であった。
 彼は,まず軍需品として需要の高かったゴムの合成に着手し,まもなくアセ チレンと塩酸から容易に得られるクロロプレンを使ったゴム(ネオプレンゴム) の合成に成功した(1929年)。つぎに,エステル類をモデルに酸とアルコールの 縮合を行って人造繊維の開発を試みたが,どうしても繊維化できる生成物を得 ることができなかった。そこで,戦争相手国(日本)の輸出品である絹の合成に テーマを切り替えた。絹はカイコがつくるフィブロインというタンパク質から できているが,直接アミノ酸をつながなくても,ジアミン H2N-○-NH2 とジカ ルボン酸 HOOC-△-COOH を長くつなぎ合わせてできる,-CONH-結合をもった高 分子 -[-CONH-○-CONH-△-]n- からでも,絹に近いものができると彼は考えた。
 多数の研究者とともに,彼は片っ端から工業的に手に入れやすい,さまざま なジアミンとジカルボン酸とを組み合わせた縮合重合を行った。そして,彼は, アジピン酸 HOOC-(CH2)4-COOH とヘキサメチレンジアミン H2N-(CH2)6-NH2 と を加熱,脱水結合による縮合重合から,

・・・CONH-(CH2)6-NHCO-(CH2)4-CONH・・・

という-CONH-結合の繰り返しをもつ,絹のフィブロイン・タンパク質に似た分 子構造をもつ高分子化合物の合成にはじめて成功した(1934年)。
 1938年,デュポン社は,この本格的なはじめての人造繊維の工業化に成功し, ナイロンと名付けて商品化した。同社は,石炭と水と空気からつくられる「ク モの糸よりも細くて鋼より強い」繊維であると,大々的に宣伝し,たくさんの 利益をあげた。一方,発明者のカロザースは,営利追求のための研究を求める 企業と化学者として自主性のある研究を望む本心との板挟みに悩み,商品化の 前年に41才の若さで自殺した

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