夢の新素材


プラスチック透過膜で人工腎臓をつくる

 高分子とは,炭素などを骨格にした分子がずらーとつながってできた物資で,
もとの分子にない特有の性質を持つ。エチレンをたくさんつなげると,ポリエ
チレンという透明で柔らかいプラスチックになる。つなぐ分子の種類や数,つ
なげ方を変えれば,性質は変幻自在。「反応時の温度や圧力を工夫し,特殊な
触媒を使えば,ほぼ狙い通りの高分子が作れます。」(今西幸夫談[奈良県立
先端科学大学院大学教授])
 合成化学の研究成果を,生命科学に応用するのも面白い。濾紙のような透過 膜には,穴のサイズをpHなどで変えられるものがある。酸性になると穴の縁 に植えた高分子が縮こまった形になり,穴が広がる。
 この透過膜でインシュリンを包んだカプセルを作ってみた。インシュリンは 血中のブドウ糖濃度を下げる働きがあるホルモンで,糖尿病の治療に使われる。 ブドウ糖が高まると酵素が糖を酸に分解し,酸性度が上がる。すると膜の穴が 広がり,インシュリンが出る。インシュリン放出量は二割増まで調整できると いう。
 「感度を上げ,血糖値がすごく高い時だけ放出できると立派な『人工すい臓』 になるのですが,なかなか難しいですね」
 学問の縦割りを見直すと夢はどんどんふくらむ。

朝日新聞 学研都市探検隊 50 「夢の新素材」(1998.1.25) より参照


「プラスチックの歴史」に戻る