大西洋隔てたグッドイヤーとハンコックの競争から
生まれたエボナイト
コロンブスが東インド諸島を発見してから,ヨーロッパに持ち込まれた天然
ゴムは,19世紀前半にはゴムのもつ弾力や防水性などから,ゴムひもや防水布
として市民生活に広く取り込まれるようになった。しかし,その品質は劣悪な
ものであった。寒い日には固くなってひび割れ,逆に暖かい日にがつづくと柔
らかくなりベトベトしてしまうのである。このゴムの劣化と軟化を防ぐための
試みがいろいろとなされたが,グッドイヤーの偶然のできごとがきっかけに問
題が解決したのである。
グッドイヤー[米]は,ゴムにイオウと顔料の鉛白(塩基性炭酸鉛)を混ぜてス
トーブの近くに一夜吊しておいたところ,ゴムが硬くなっていたのである。こ
のゴムを入手したハンコック[英]は,イオウを溶かした液に生ゴムをつけて処
理する方法をあみだし,「加硫ゴム」と名付けて商品化した。
加硫ゴムではイオウ含有率が約3%であるが,ゴム中にもっと多量に,30%
までイオウを加えて加熱すると,伸びが3%程度と弾性の少ない,黒く硬い固
まりとなる。これを適当な温度(約80℃で軟化する)に熱し,強い力で変形させ
て,いろいろな形にすることができる。表面を削りだし,磨くと美しいつやを
示す特徴がある。色合いやつやが,当時イギリスの植民地であったマレーや東
インドの特産品である黒檀(エボニー,ebony)に似ていることから,エボナイ
トと名付けられた。このエボナイトは,当時新しいエネルギーとして登場した
電気に対して,すぐれた絶縁性を示すため,絶縁材料として利用されるように
なった。エボナイトを用いたいろいろな実験装置のスケッチが電磁気学の基礎
を築いたファラデーの実験ノートに残されているという。
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