ゴミとプラスチック


 日本における需要部門別のプラスチック消費比率は,下表のようになってい
る。プラスチック生産量や消費量が増加するにつれて,使用後の廃棄が問題と
なってきた。

需要部門別の消費比率(%) 1994年実績

包装30.2家庭用品8.1家具1.7
電気・電子12.3機械部品4.1クロス・履き物0.8
建築10.1農業2.2医療機器0.1
輸送8.5玩具・レジャー1.7その他20.2

プラスチックリサイクル研究会 編著
「プラスチックのリサイクル 100の知識」(東京書籍刊) より参照



 1960年代の日本は,実質経済成長率が年10%を越す高度成長期にあった。盛
んな商工業に支えられ,人口が急激に大都市に集中し,スーパーストアなどの
大型小売店がつぎつぎと出店し,消費量の増加と使い捨て生活へと生活様式が
変わりつつにあった。さらに,エネルギーが石炭から石油へと切り替えられ,
隆盛となった石油化学工業からはポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレ
ンなどの多くの種類のプラスチックが生産され,プラスチック製の容器や包装
品が急激に普及した。このような状況の中で,大都市ではゴミの排出量とゴミ
中のプラスチック類の割合が急増した。

  

都市ゴミ量とプラスチック類の割合の比較

 1人1日あたりの
ゴミ排出量
1日あたりの
自治体処理量
ゴミ中のプラスチック類
の割合[大阪市]
1960年514g2.9万トン1.9%
1970年910g7.7万トン12.1%

プラスチックリサイクル研究会 編著
「プラスチックのリサイクル 100の知識」(東京書籍刊) より参照


 ゴミの処理方法には,埋め立て,焼却と再生利用などがある。1994年におけ
るプラスチック類のゴミ処理は,埋め立てが41%,焼却が49%,再生利用が
10%(プラスチック処理促進協会の推定)のような割合になっている。ゴミ中の
プラスチック含有量が10%を越すと,埋め立てや焼却などにいろいろと障害が
出てくるといわれている。

 重量比(%)容量比(%)
一般ゴミ中の容器・包装ゴミの比率25.960.6
プラスチック製の容器・包装ゴミの比率9.337.6

プラスチックリサイクル研究会 編著
「プラスチックのリサイクル 100の知識」(東京書籍刊) より参照



 まず,プラスチックは,木や紙などの天然高分子からなるものと異なり,微
生物によって分解されず,空気中や水中などでも安定で分解したり溶解したり
せず,長期間原形のままで存在する。したがって,容器や包装材のようにかさ
高く,分解しにくいプラスチックゴミは,非常に埋め立てには非効率的なゴミ
である。
 一方,大半のプラスチックが炭素と水素を構成原子とする化合物であるため, 焼却においても,プラスチックを燃焼させると一般に発熱量が大きく,高熱を 出すものが多い。また,燃焼時に多量の空気を必要としたり,有毒ガスやスス (黒煙)などを出すものやコークス化したり,溶融して完全に燃えないものなど, 燃え方が多様である。

主なプラスチックと他の物質の燃焼熱
の比較(kcal/kg)

ポリエチレン11000 
ポリプロピレン10050 
ポリスチレン9620黒煙を出す
フェノール樹脂8020 
石炭5000〜7500 
木材4500 
ポリ塩化ビニル4480有毒ガスの塩素を出す

プラスチック構成原子別の燃焼生成物

2
CO2,CO
ClHCl,COCl2(ホスゲン)
HCN,NO,NO2,NH3
 他に,HCHO(ホルムアルデヒド)が分解生成物として 含まれる場合もある。
 H2O,CO2以外は,いずれも有毒ガスである。
 さらに,プラスチックには,ポリ塩化ビニルの安定剤 (ステアリン酸鉛,カドミウム化合物)のように,有毒な 金属塩(鉛,カドミウムなど)が灰分中に残ったり,飛散 する危険のある添加剤を含むものがある。


 ゴミの焼却に関して,近年大きな問題となっているのが,ダイオキシンであ
る。ダイオキシンとは,人類がつくり出した最強の毒物といわれ,都市ゴミ焼
却炉,製鋼所・金属製錬工程,パルプの漂白工程,自動車の排気ガスおよび農
薬・クロロフェノールなどの化学薬品などがダイオキシンの発生源である。一
般ゴミを焼却した際に,焼却炉の中でポリ塩化ビニルなどのプラスチック類か
ら供給される塩素とゴミ中の有機物とが反応して,ダイオキシンが発生する。
その焼却炉からの発生量がダイオキシンの約8割を占めていると推定されてい
る。
 焼却炉の中が300〜400℃になるとダイオキシンが発生しやすくなるため, 「850℃(新設炉では900℃)以上の高温で燃焼させること。」,「24時間連続運 転ができる大型炉に転換すること。」などの対策をとることが望ましいと厚生 省のダイオキシン削減対策検討会は発表しているが,「市民1人1人がゴミを もっと分別して,リサイクルに回し,焼却されるゴミの総量を減らせば,ダイ オキシンの発生を減らすことができる。」というのが,専門家の一致した意見 である。
 プラスチックのリサイクルには,
 ◎物質としての再利用   ・再生加工原料として  ペレット,顆粒,破砕品など
  ・再生加工品として   棒,杭,板,擬木,各種資材など
  ・化学原料として    モノマー,その他化学原料    (ケミカルリサイクルという)
 ◎熱源としての再利用    ○再生燃料として     ・固形燃料として  冷暖房,発電,セメントや高炉などの産業用
       ・燃料用      A重油,軽油,灯油,ガソリン相当油
    ・燃料ガス     ボイラー燃料など
   ○熱回収として     ・ゴミ発電      都市ゴミ焼却炉
などの方法がある。
 このリサイクルの事業化には,つぎのような考慮しなければならない条件が ある。
  ○ 廃棄物の品質と収集確保できる量
  ○ 再生品の市場性やコストと採算性
  ○ 再資源化の技術
  ○ 支持・規制を行うための法的制度
 リサイクル事業の成否には,コスト・採算性や市場性などの経済的な要素が 大きく左右する。しかし,プラスチックは,種類が多くかつ廃棄物としての状 態が多様であるため,鉄,アルミ,ガラス,紙などのリサイクルに比べて,リ サイクルを困難にしている。
 このプラスチックのリサイクルを促進するため,自治体がペットボトルやガ ラスびんなどの容器・包装材を分別収集し,その洗浄・圧縮などの中間処理ま でを行い,容器・飲料メーカーに再商品化するように義務づけた「容器・包装 リサイクル法」が,1997年4月に施行された。
 今後は,一人一人の市民が協力して,いかにプラスチックを正確に分別し, 安価に回収できるかが,このプラスチックのリサイクルを成功させるカギであ る。
リサイクルの成功例  リサイクルの問題点

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