プラスチックの性質


 プラスチックは,一般に下表のように,金属やセラミックスに比べて,
  (1)軽量かつ丈夫で,   (2)電気絶縁性が大きく,   (3)腐食性がなく,   (4)光沢に富み,自由に着色ができる,   (5)成形や加工がしやすい
という特徴をもち,多量生産ができ,各種製品を安価につくることが可能であ る反面,熱膨張率が大きく,耐熱性などが悪く,使用できる用途が限定される という欠点もある。ただし,製品化に際しては,さまざまな物質を混ぜ合わせ るなどして,材質の改良(プラスチックの改質)がなされ,使用できる範囲も 拡大しつつある。
 プラスチックの性質は,プラスチックの種類(熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂) によって大幅に異なる。また。同種のプラスチックであっても,樹脂を構成す るポリマーの分子構造,すなわち分子内に含まれる原子団の種類によっても, 性質が大きく変わる。さらに,同一のプラスチックにおいても,ポリマーの (a)分子量(重合度)や分子量分布の仕方,(b)分子内に枝分かれ構造があるか 否かにより,性質が大きく影響を受ける点が,金属やセラミックスなどの他の 物質と異なる特徴である。
     
主なプラスチックの性質の比較
機械的な性質電気的性質化学的な性質


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プラスチック,金属,セラミックス
の性質の定性的な比較

性質プラスチック 金属セラミックス
比重小さい大きい中ぐらい
硬さ軟らかい 硬い硬い
傷つきやすい中くらい 傷つきにくい
強度 引っ張り弱い強い中くらい
伸び大きい大きい小さい
圧縮弱い中くらい強い
衝撃中くらい強い弱い
弾性率小さい大きい大きい
電気伝導性絶縁体導体絶縁体
熱伝導性不良導体良導体不良導体
耐熱性融点低い中くらい高い
分解熱分解  
耐炎性燃焼融解,酸化不変
熱衝撃性中くらい強い一般に弱い
耐環境性劣化不変不変
湿気不変一般に腐食する不変
酸・塩基一般に不変腐食不変
加工性不良

瓜生敏之,堀江一之,白石振作共著 「ポリマー材料(材料テクノロジー16)」(東京大学出版会刊) より抜粋


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 ポリマーの分子量(重合度)は,合成条件を変えることで調整できる。エポ
キシ樹脂は,ビスフェノールAにNaOHを加えてアルカリ塩とした後,エピ
クロルヒドリンを滴下しつつ加熱して合成する。ビスフェノールAに対するエ
ピクロルヒドリンの割合を変えると,粘りのある黄色液体(多いとき)からもろ
い黄色の固体樹脂と,異なる形態のものが得られる。
エポキシ樹脂

                          

ビスフェノールA型市販エポキシ樹脂の性質

平均分子量軟化点(℃)エポキシ価*ヒドロキシル価**エステル化当量
***
350〜420液体0.500.14〜0.2885
450〜580液体0.380.32〜0.84105
600〜70040〜450.310.9〜1.4115
900〜105064〜760.202.0〜2.5145
1740〜205095〜1050.115.0〜6.0175
3300〜4100125〜1320.059.7〜13.0200
4800〜8000145〜1550.0316〜27220

 * エポキシ価は,エポキシ樹脂100g中のエポキシ基のモル数を表す。
  エポキシ価が 0.55ならば n=0,0.31ならば n=1である。
 ** ヒドロキシル価は,エポキシ樹脂100g中のOH基のモル数を表す。
  ヒドロキシル価が 0ならば n=0,0.15ならば n=1である。
*** エステル化当量は,有機酸RCOOH 1モルのエステル化に要するエポキシ樹脂
  のモル数で,樹脂中のエポキシ基とOH基の合計個数を表す。

 エポキシ樹脂の硬化は,エポキシ樹脂の各分子が三次元的な架橋を形成する
ことで行われる。この架橋形成には,エポキシ基が重要な役割を果たすが,
OH基も副次的な役割を担っている。エポキシ基は分子の両端に各1個ずつ含
まれるが,OH基は分子鎖の途中に位置し,分子鎖の長さに応じて変わる。

藤井光雄,垣内 弘共著 「プラスチックの実際知識 第4版」(東洋経済新報社刊) より参照


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 ポリマーに添加剤を加えて,プラスチックの硬さ・柔軟性・引っ張り強さ・
伸び・耐衝撃性・可塑性・耐熱性や軟化温度などの調節(可塑剤,強化剤など
),光や熱による分解の抑制(安定剤)および着色化(顔料)など行われてい
る。たとえば,ポリ塩化ビニル樹脂では,
  ポリマー 100    可塑剤 0〜50   安定剤 3〜5   滑剤   0.2〜1.5  顔料  <5   充填剤 3〜5
のような添加剤が加えられている。可塑剤の多いものは軟質ポリ塩化ビニルと 呼ばれ,フィルムやシートに加工され,紫外線の良い透過性を活用して農業用 ビニールシートなどに利用されている。一方,可塑剤をほとんど含まないもの は硬質ポリ塩化ビニルと呼ばれ,各種の硬質配管や波板などの建築材料や食品 用の薄物容器などに使われている。
 プラスチックの改質には,添加剤による方法の他に,種類の違う単量体(モ ノマー)を共重合して行う方法がある。たとえば,ポリ塩化ビニル樹脂では, 酢酸ビニルと共重合したコポリマーなどがある。

                       

各種ポリ塩化ビニルの性質

性質硬質ポリ
塩化ビニル
硬質塩化ビニル
と酢酸ビニルの
コポリマー
軟質塩化ビニル
と酢酸ビニルの
コポリマー*
軟質ポリ
塩化ビニル*
比重1.4081.351.221.31
屈折率1.541.52〜1.53
引張り強さ
(psi)
>90004500〜9000
曲げ強さ
(psi)
150007500〜14000
伸び(%)5〜25150〜275340
* 可塑剤として,30%のジオクチルフタレート(DOP)が含まれている。

藤井光雄,垣内 弘共著 「プラスチックの実際知識 第4版」(東洋経済新報社刊) より参照


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☆熱可塑性樹脂
  線状あるいは分枝状のポリマーの集合体であり,加熱すると柔らかくなり,
 粘りのある液体に変化する。これを型の中に入れて冷却すれば,自由な形に
 成形することができる(可塑性があるという)。さらに,粘りのある液体を
 強く加熱すれば熱分解を起こす。耐熱性は熱硬化性樹脂よりも悪い。また,
 線状のポリマーであるため,適当な溶剤を加えると溶解しやすく,耐溶剤性
 も熱硬化性樹脂に劣る。
☆熱硬化性樹脂   低分子の単量体(モノマーという)の混合物で,適当な粘り気をもつ液体  が原料で,これを加熱すると三次元的な網目状構造を形成し,三次元状のポ  リマー(架橋ポリマー)となって硬化する。硬化物は,三次元立体構造がで  きているため,加熱しても熱可塑性樹脂のように液体とならないが,さらに  強く加熱すれば熱分解が起こる点は共通している。また,三次元にポリマー  が架橋されているため,どのような溶媒にも溶けないが,ある種の溶媒に対  しては膨潤することがある。一般に耐熱性や耐溶剤性にすぐれ,添加剤を加  えることで強靱な成形品に加工することできる。

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プラスチックの性質に対する原子団の影響

 耐熱性耐油性耐水性耐摩耗性電気的性質
低下増加低下増加低下増加低下増加低下増加
原子団
の種類
-CH3-OH-OH-OH-OH-CH3-CH3-OH-OH-CH3
-C6H5-CONH--OCH3-CH2--NH2-C6H5-COOR-NH2-NH2-C6H5
-OCH3-COOH-COOR-O--HSO3-COOR  -COOH 
-COOR  -CN-COOH   -CN 

藤井光雄,垣内 弘共著 「プラスチックの実際知識 第4版」(東洋経済新報社刊) より参照


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 ポリマー分子中の枝分かれの程度は,合成法を変えることで調節できる。エ
チレンを重合してつくるポリエチレンには,反応中の圧力の違いにより,高圧
法・中圧法・低圧法の3つの方法がある。高圧法では,長い鎖状分子中にたく
さんの短い枝がついたポリマーが,一方,中圧や低圧法では枝がほとんどない
長い鎖状分子が,それぞれ生成する。各合成法により得られるポリマー集合体
の性質は表のとおりである。

 高圧法     中圧法 低圧法
密度0.92─────────0.95
軟化温度(℃)100─────────130
硬さ相対値1(軟)─────────4(硬)
強度(kg/cm2)140─────────400
伸び(%)500─────────20
結晶化度(%)65─────────95
引張り強さ(kg/cm2)140─────────400
熱変形温度(℃)45〜50─────────〜80
-CH2-結合
1000当りのCH3
34〜40─────────1〜1.5

藤井光雄,垣内 弘共著 「プラスチックの実際知識 第4版」(東洋経済新報社刊) より参照


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◎ 化学的な性質
  耐薬品性は,ポリマーの種類や構造により非常に異なっている。「ポリマ  ーが溶剤に溶ける」とは,ポリマー分子間に溶媒分子が入り,ポリマー分子  間の引力を弱めて,溶媒分子間にポリマー分子を分散させることである。
     各種プラスチックの溶解性一覧
  架橋された三次元構造のポリマーでは,溶媒分子がポリマー分子を溶媒分  子間に分散させることはできず,単にポリマー分子間の距離を広げるだけし  かできない。したがって,架橋ポリマーは,一部の溶媒に対して膨潤するこ  とはあるが,一般に溶媒に溶けない。
  鎖状のポリマーでは,分子鎖が長いほどポリマー分子間の引力が大きく,  溶媒分子による分子鎖の絡まりを解きほぐして分散させ難くなる。また,ポ  リマー分子間の引力は,ポリマー分子が互いに接する面が大きいほど,すな  わちポリマー分子配向が秩序正しいほど大きくなる。したがって,鎖状ポリ  マーでは,(1)分子量(重合度)が大きいほど,(2)結晶性の割合が大きいほ  ど,溶媒に溶けにくくなる。
  ポリマーの溶解性を決めるもう一つの因子が,溶媒分子との親和性である。  極性をもつポリマーでは,極性溶媒に溶けやすく,非極性溶媒には溶けにく  い傾向があり,一方,非極性のポリマーは逆の傾向になる。この親和性の強  さを判断する因子に溶解度パラメーター(SP値)δがある。
      ΔE   δ2= ────        V   ただし,ΔE は蒸発エネルギー,V はモル体積
  このδ値は,上式で表され,ポリマーと溶媒分子のδ値が近いほど,原則  的に溶解性が高くなる。
  ポリマーの溶媒分子との親和性は,ポリマー分子内の官能基の種類によっ  ても判断することができる。すなわち,
 ◇親水基(OH, NH2, SO3Hなど)をもつと,    水に溶けるか,親水性が強くなる。    例:ポリビニルアルコールは水に溶ける。
 ◇疎水性非極性基(CH3, CH3CH2, ベンゼン環など)をもつと,    撥水性をもち,吸水性が低下する。    例:ポリプロピレン,ポリスチレン
 ◇ハロゲン基(Cl, Fなど)や疎水性非極性基がつくと,    耐酸,耐アルカリ性が強くなる。    例:ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデンやポリエチレン,      ポリプロピレン
 ◇フェノール基,-COOH,-SO3H,-NH2をもつと,    アルカリに弱く,加水分解されやすくなる。    例:ユリア樹脂(尿素とホルマリンの重合体)
 ◇-NH2,-Naなどをもつと,    酸に弱くなる。例:ユリア樹脂    例:Na塩(アイオノマー,サーリンA)は酸,アルカリに弱く,      加水分解されやすい。

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ポリエチレンの溶解性と融点

 分子量溶解性融点(℃)
C20H42282易溶38
C30H62422可溶66
C60H122842難溶100
C100H2021402きわめて難溶約106
C2000H400228002不溶約110

藤井光雄,垣内 弘共著 「プラスチックの実際知識 第4版」(東洋経済新報社刊) より参照


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ポリマーと溶媒分子のSP値

ポリマー溶媒
ポリマー名SP値溶媒名乾燥速度SP値
ポリ四フッ化エチレン6.2エーテル速い7.4
ポリエチレン7.9アミルベンゼン遅い8.5
ポリイソブチレン8.1キシレン8.8
天然ゴム8.3トルエン8.9
SBR
(ブタジエン:スチレン)
[85:15]
8.5酢酸エチル速い9.1
SBR
[75:25]
8.6メチルエチルケトン9.3
SBR
[60:40]
8.7トリクレン9.3
ポリスチレン9.1塩化メチル速い9.4
NBR9.4酢酸メチル速い9.6
塩化ゴム9.3〜9.5塩化メチレン速い9.7
酢酸ビニル樹脂9.4塩化エチレン速い9.8
メタクリル酸メチル9.5ジオキサン9.8
塩化ビニル樹脂9.7シクロヘキサン9.9
マイラー10.7セロソルプ9.9
エポキシ樹脂10.9アセトン速い10.0
アセチルセルロース10.9イソプロピルアルコール11.5
ニトロセルロース10.6〜11.5ジメチルホルムアミド12.1
フェノール樹脂11.5ニトロメタン速い12.7
ナイロン13.6エチルアルコール速い12.7
ポリアクリルニトリル15.4遅い23.4

桜内雄二郎著「高分子化学教室 第2版」(三共出版刊) より参照


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