スポーツをともに練習するということ
―体操競技練習場面の会話分析―

The Meaning of Practicing a Sport Together
-Conversation Analysis of the Practice Situation of Gymnastics-

氏名 藤井 剛

キーワード  スポーツ(Sports) 体操競技(Gymnastics)
         会話分析(Conversation Analysis)


 本論文は、スポーツ練習中のやりとりを会話分析という手法で分析することにより、スポーツ練習場面が社会的場面としてどのように組織されているかを考察したものである。その具体的事例として、大学の課外活動における体操競技の練習場面の分析を行っている。
 第1章では、分析の方法論である会話分析について整理するとともに、分析対象である体操競技について論じた。
 第2章では、練習場面における身体運動と発話行為が織りなす基本的なやりとりの構造を明らかにした。また、その構造が「ともに練習する」という成員たちの協同的活動への志向によって生み出されていることを明らかにした。
 第3章では、発話行為の様相を詳細に分析することで、練習に対する評価を共有していこうとする志向が終始維持されていること、そしてまた、評価の際には社会的立場の相違が発話の中に現れること、そしてさらに、プラス評価の場合とマイナス評価の場合とでは発話のシークエンス構造が異なることを明らかにした。
 結論として、体操競技のような個人競技であっても、スポーツ練習場面は技能の向上といった道具的志向のみによってではなく、成員たちが互いに交換しあわんとする表出的志向によっても組織されていると論じた。そしてまたここにおいて、スポーツ練習場面における会話は、必ずしも「私語」として制限されるべきものではなく、積極的で重要な機能を果たしうるものであると論じた。