有機化学研究室(種田研究室)

☆分子軌道計算を行うための設備


○Winmostar  GAMESS  Firefly

 どう見てもパソコンやん。・・・と思ってがっかりされた方。ただのパソコンではありません。なんと型式も古いのです!という自虐はさておいて、この中に入っているソフトウェアを使って、分子軌道のシミュレーションを行っています。「GAUSSIAN」という単語が浮かんだ方も多いと思いますが、当研究室にはそんなお高いものを購入できるお金はありません
 ということで、フリーウェアで頑張っております。MOPACというソフトを使用して、半経験的分子軌道法という簡易的なシミュレーションを行っています。このソフトを使用するためのインターフェースとして、Winmostarというソフトを使用していますが、学生であればかなり簡単に使用することができるのでお勧めです(ライセンス登録をすれば無償で使用できます。ただし、「教育機関のメールアドレス」が必要なので気をつけましょう)。学生以外に対する無償版でも、十分に便利なソフトです。
 また、必要に応じてDFT(密度反関数法)計算も行っており、GAMESSFireflyというフリーウェアを使用しています。こちらも、学生版Winmostarであれば簡単に使用することが可能です。学生でない場合は、使用方法に少し癖があります。
 肝心の「何ができるのか」ですが、分子軌道のシミュレーションを行うことができます。実験結果と照らし合わせることで、何が起こっているのかを考察することが可能となったり、あるいはどういう分子を合成すれば目的の物性を発現することができるのかを検証することで、分子設計を行うこともできます。
 以下、4-アセチルフェノールについてMOPACによる軌道計算を行った例です。まず、構造の最適化というものを行います。そして、その構造のときに形成されている、分子軌道を算出します。ここでは、電子が入っている中で最もエネルギー準位が高い分子軌道であるHOMOと、電子が入っていない中で最もエネルギー準位が低い分子軌道であるLUMOを示します。

 赤のあみあみと青のあみあみは、それぞれ分子軌道を示していますが、「赤のところを電子が飛び回っているときは青のところには絶対に飛び回っていない」と考えてください。例えば、HOMOを見たときに分子中央で赤の軌道と青の軌道が向き合っていますので、ここでは連続して電子が飛び回ることができない、いわゆる「節(ふし)」であると見るのです。HOMOとLUMOを見比べて、LUMOの方が節の数が増えていることが見て取れます。また、芳香族の置換反応の最初のステップである「求電子攻撃」を考えると、最もエネルギー準位が高くて反応しやすいHOMOの電子はフェノール性OH基のオルト位に広がっている様子が分かります。このことから、置換反応を受ける位置の予測も可能となるのです。このような予測だけではなく、実験事実の裏付けとして使用されることも多いです。

 フリーウェアを使用することで、PCさえあればいろいろなことができます。高校教員の方で興味を持たれた方は、化学部などで是非とも取り組んでみてください