SlideBar

ウェーブレット解析

- 誕生・発展・応用 -

芦野 隆一・山本 鎭男 著

共立出版
ISBN4-320-01537-1
定価(本体 3,200 円+税)

SlideBar

本書は理工学部の学生や大学院生およびエンジニアを対象にしたウェーブレット解析の入門書である.

ウェーブレット(wavelet),何と不思議な響きをもつ言葉であろう. "wave" は波であり,"let" は接尾語で小さいことを意味したり, 身につける飾りを意味する. 現在,科学や工学のいろいろな分野で注目を集めているウェーブレットとは, 長く続かないひとつの波をうまく選び, 形を変えずに拡大縮小したり平行移動したりして得られる波の集まりのことである. そんな波がいったいなぜ面白いのか,あるいは何の役にたつのか, そしてどのように研究されているのかといった疑問に答えることが本書の目的である.

ウェーブレット理論は 1980 年代初頭から始まったとされているが, そのもとになる概念や方法は数学,物理,信号理論,画像処理などのいろいろな分野で既に知られていた. 特に信号理論や画像処理などの工学の分野の人にとってはウェーブレット理論で いったい何が新しいのかわからないといった感想が聞けるほど身近な手法だったのである. ウェーブレット理論が広まるにつれてわかったことは, 自分達の分野だけで研究されていると思っていたことが他の多くの分野でも同じように研究されていたということであった. これは大きな驚きであり,これらの多くの分野でなされてきたことを統一して説明する共通の概念をつくり,他の多くの分野の研究を理解し,そして新しい結果を産み出そうという目的で非常に多くの分野で共同研究が行われ,このことはそれぞれの分野に深い影響を与えている. また,ウェーブレットの研究はコンピュータサイエンスと密接に行われてきたので, インターネットを使って本格的に情報交換が行われていることも特筆に値する.

我々著者もひとりは応用数学ひとりは工学(機械,建築)を専門とし, それぞれの分野で研究してきたのであるが, ウェーブレットを研究するにあたり,他の分野の人達と共同で研究する必要性を感じ, 互いに活発に議論するようになった. もちろん数学の目的は主として理論そのものであり, 工学の目的は主として理論を応用して現実の問題を解決することにあるので, 互いの立場や意見が異なることはしばしばあるが, 数学は応用上何が求められているかを知る必要があり, 工学は応用するための数学的道具を必要としているのである. ウェーブレットの理解には他の分野のことを知ることが必要不可欠なのである. 我々はこのことを知っていただきたいので,この本を共同で執筆することにした.

本書の大きな特徴はウェーブレット解析を理解するためにインターネット編, 数学的基礎編,そして工学的応用編という 3 つのアプローチを用意したことにある. どのアプローチからでもウェーブレット解析を理解できるが, それはウェーブレット解析のひとつの側面を理解したにすぎない. これらのアプローチが三位一体となって初めてウェーブレット解析を一望することができよう.

SlideBar

Hits COUNTER (Since Jan. 4, 2001)