研究分野

発生生物学

研究課題

研究の概要

モザイク的な発生をする動物胚では、卵割 によって生じた細胞(割球)は等しくゲノム(個体のすべての遺伝情報)を持っているはずなのに、将来 それぞれ筋肉細胞とか表皮細胞といった特定の細胞型にしか分化しないことが知られています。さら に、たとえば二細胞期に割球を分離すると、左右の割球からそれぞれ胚の右側だけ、左側だけが生じ ます。調節的な発生をする動物の胚のように、足りない組織や部分を調節によって補うことは ありません。

その原因は、卵割の際にそれぞれの娘細胞が受け継ぐ細胞質に含まれている“もの”に違いがあり、 それが遺伝子発現や細胞分化に何らかの影響を及ぼすので、特定の“もの”を受け継いだ娘細胞の子 孫は特定の細胞型にしか分化できないからだと考えられています。

私は、そのような細胞分化を決定するような“もの”(細胞質デターミナントと呼ばれている) とは何か、そしてどのように働いているのかということを明らかにしたいと思っています。

研究対象としている軟体動物には、初期卵割時に極葉と呼ばれる細胞質のコブを卵や割球の植物 極に作るものがあります。この極葉の中に中胚葉分化の決定に関与する細胞質デターミナントが 含まれていると考えられていますので、それを取り出して性質を調べたいと考えています。そして、そ のような極葉がどのようにしてその部分に作られるのかを調べようとしています。

また、極葉を作らない軟体動物では、どのようにして細胞質デターミナントの分配を行っているのかも調 べたいと考えています。

キーワード

細胞質デターミナント、細胞分化、極葉、モザイク的発 生、モノクローナル抗体、顕微注入法


研究対象生物

軟体動物門腹足綱  アラムシロガイ Reticunassa festiva (Powys)
軟体動物門二枚貝綱 ムラサキイガイ Mytilus edulis (L.)
軟体動物門二枚貝綱 マガキ Crassostrea gigas (Thunberg)
軟体動物門二枚貝綱 バカガイ Mactra chinensis (Philippi)


生物教材開発

研究課題

研究の概要

実践学校教育講座に移籍したことを機に、生物教材の開発 をはじめようと考えています。本学デジタル教材プロジェクトに協力して、小・中・高の現場の先生が活用で きそうな画像教材の開発を目指します。

まずは微速度撮影法によって時間軸を縮めて生物の活動を観察する教材を作成したいと考えています。発生生 物学では以前から微速度撮影による発生の観察が行われてきましたが、一般の学校現場で自前の教材を作るの は困難だと思います。私たちが作った映像教材を活用してもらえればと考えております。

また、本年度第二部環境科学実験室に小型の走査電子顕微鏡Tiny-SEM Mighty-8が導入されました。これは大変 小さくて、しかも4つのユニットに分解可能です。使用環境もAC100V電源のみです。これを活用して画像教材 を作るとともに、小・中・高の教室に持ち込み、授業に活用したいと考えています。

専門分野である発生生物学関係の教材開発も進めたいと考えています。手始めに、長年実習で使ってきたイト マキヒトデの教材開発を行いたいと考えています。


キーワード

微速度撮影、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、発生学教材


研究対象生物

軟体動物門腹足綱  アラムシロガイ Reticunassa festiva (Powys)
棘皮動物門海星綱  イトマキヒトデ Asterina pectinifera (Müller et Troschel)

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