(問題) 複素数体 C 上の多項式環 R = C[X] において、 X を含むような R のイデアルを全て求めよ。

(考察) 単位イデアル R と 単項イデアル XR = { Xg(X) | g(X) ∈ R } は X を含むような R のイデアルです。
また、X を含むような R のイデアル I は XR を含みます。 これを用いて、R と XR しかないことを示しましょう。
XR は 定数項が 0 であるような多項式全体です。
(解答) X を含むような R のイデアル I は イデアルの定義 (I2) によって XR を元を全て含みます。
XR は 定数項が 0 であるような多項式全体です。
もし I が XR でなければ、I は定数項が 0 でない多項式
f(X) = a0 + a1X + a2X2 +...
を含みます。(a0 ≠ 0) このとき、 
g(X) = a1 + a2X + a3X2 + ...
とおけば f(X) = a0 + X g(X) であり、
0 ≠ a0 = f(X) - Xg(X) ∈ I となります。
0 でない複素数 ao は R の正則元であり、 正則元を含むイデアルは単位イデアルなので、I = R となります。

したがって、R の X を含むイデアルは XR と R の2つです。
(発展) 一般に可換環 R の単位イデアルではないイデアル M に対して、 M を含むイデアルが R と M 以外に存在しないとき  M を極大イデアルといいます。
M が 極大イデアルである必要十分条件は剰余環 R/M が体になることです。

上の問題は R = C[X] において、 単項イデアル XR は極大イデアルであることを示せています。
剰余環 R/RX は定数項が同じ多項式を同値と見なした環であり、 定数項のだけの和、積を考えることと同じなので、 複素数体 C と同型な環(体)です。
このことからも、XR が極大イデアルであることが示せます。