上三角化基底の存在
線形変換の話に戻ります。
与えられた線形変換 f に対して、対角化基底が存在すれば、
その基底に関する表現行列は対角行列になりました。
しかし、対角化基底はいつでも存在するわけではありませんでした。
そこで、表現行列が対角行列に近くなるような
基底の存在を考えましょう。
(上三角化基底の存在)
f を n 次元ベクトル空間 V 上の線形変換とします。
この時、基底 B に関する表現行列 が 上三角行列となるような、
V の 基底 B が存在する。
n = dim V に関する帰納法を用いて示します。
f の固有値 α に属する固有ベクトルのひとつを u とします。
u を含む V の基底を { u1=u,u2...,un }
とします。
u2...,un
が生成する n-1 次元のベクトル空間を W としましょう。
x ∈ W に対して、
f(w) =k1u1+
k2u2...+knun
と一意的に表せます。
この時、k2u2+...+knun
を 対応させる写像 f' は W 上の線形変換になります。
(確認)
帰納法の仮定より、W の基底
B'={ u'2,...,u'n }であり、
f' の B' に関する表現行列が上三角行列 A' となるようなものが存在します。
{ u, u2, ... ,un } が 基底ならば、
B = { u, u'2, ... ,u'n }も基底になります。
(確認)
f の B に関する表現行列が上三角行列になることを
(確認)しましょう。
さて、対角成分が全て α その上の成分が 1 である
n 次正方行列を J(n,α) と表します。
J(2,α) = |
| , |
J(3,β) = |
| | , |
J(4,λ) = |
| | , ... |
これらを Jordan block (ジョルダン細胞)といいます。
いくつかのJordan block を対角 Block に並べた行列をJordan 行列といいます。
次が示されます。
(Jordan化基底の存在)
f を n 次元ベクトル空間 V 上の線形変換とします。
この時、
基底 B に関する表現行列が Jordan 行列となるような、V の基底 B が存在する。
証明は簡単ではありませんが事実として知っておきましょう。
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