相似な行列 とは 同じ線形変換 の 表現行列 だ。
C は複素数体、V は C 上の(n 次元)ベクトル空間とします。
f : V → V を線形変換(一次変換)とします。
V の基底 B に関する f の表現行列を F とし、
基底 B' に関する f の表現行列を F' とすれば、
「 F と F' は相似になります。」
逆に2つの行列 F と G が相似なら、
「 F と G は同じ線形変換の表現行列になっています。」
今回は「このこと」を確認します。
このことが確認できれば、相似な行列の固有値が一致するのは当然ですね。
n 次元ベクトル空間 V の
基底 B={b1,...,bn} と
別の基底、B'={z1,...,zn} を考えます。
この時、各 bj は B' の線形結合で表せます。
bj =
s1jz1 + ... + snjzn
この係数を並べて得られる行列 S= (sij) を
基底変換 B → B' の行列といいます。
(本によって定義が違うことがあるので注意)
これは、[b1,...,bn] = [z1,...,zn]S
を満たすただひとつの行列です。
また、v ∈ V の基底 B,B' に関する成分ベクトル を
それぞれ、x,y とすれば、Sx = y が成り立ちます。
(確認)
逆に 各 zj は B の線形結合で
zj =
t1jb1 + ... + tnjbn
と表せば、
基底変換 B' → B の行列 T= (tij) が得られます。
この時、
[b1,...,bn] = [z1,...,zn]S =
[b1,...,bn] TS
となり、TS は単位行列です。( B が基底だから)
したがって、S,T は互いに逆行列となる正則行列であることがわかります。
| | | F
| | |
基底 B に関して |
| U | → | U | |
| | | | | |
| T | ↑ |
V → V
| ↓ | S |
| | | | | |
基底 B' に関して |
| U | → | U | |
| | | F'
| | |
線形変換 f の 基底 B,B' に関する表現行列を F,F' とすれば,
F は [ f(b1),...,f(bn) ] = [ b1,...,bn ]F
を満たすただひとつの行列、
F' は [ f(z1),...,f(zn) ] = [ z1,...,zn ]F'
を満たすただひとつの行列です。
[z1,...,zn] = [b1,...,bn]T
の両辺を f で移せば、
[ f(z1),...,f(zn) ] =
[ f(b1),...,f(bn) ] T =
[ b1,...,bn ]FT =[ z1,...,zn ]SFT
したがって、
F' = SFT が成り立ちます。
T = S-1 ですから、F と F' は相似です。
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