対角化可能な行列

一般には、n 次正方行列 を 与えられた時、 それが対角化可能であるか? 対角化可能ではないのか?
を行列をみただけで判断するのは簡単ではありません。
代数学概論では必要十分条件として、 「 A は対角化可能 ⇔ 各固有値に対し、固有空間の次元と重複度が一致する。」 と習ったことだと思います。
ここでは、この必要十分条件を線形変換の言葉で解釈してみましょう。
n 次元ベクトル空間 V 上の線形変換 g を考えます。
もしも、V の基底 Y = {y1,...,yn} で、 各 yi が g の(固有値 ki に属する) 固有ベクトルであるようなものが存在していたとしましょう。 この時、g の基底 Y に関する表現行列は対角成分が (k1,...,kn) となる対角行列です。
逆に、g の基底 Y' に関する表現行列 が 対角行列ならば、 基底の属するベクトルは対応する対角成分を固有値に持つ固有ベクトルとなります。 (確認)
g の固有値 k の重複度 m とは固有多項式 det(xE-G) において、 k が m 重解であることでした。
したがって,各固有値の重複度の和は n になります。
また、「相異なる固有値に属する固有ベクトルの集合は 一次独立である」ことを思い出しましょう。 (確認)
V の基底 Y に関する g の表現行列 G が対角行列ならば、 g の固有値 k は G の対角成分に m 回重複してあらわれます。 このとき、対応する Y の m 個のベクトルは 固有値 k に属する固有ベクトルであり、 V の基底 Y の部分集合なので 一次独立です。
したがって、g の固有値 ki に属する固有空間 Wi の次元は mi 以上となります。
各固有空間の基底を並べて得られるベクトルの集合は 一次独立であり

n = m1 + ... + ms ≦ dim W1 + ...+ dim Ws ≦ n

なので、各固有空間 の次元は重複度と一致します。

逆に「 各固有値に対し、固有空間の次元と重複度が一致する 」ならば、 各固有空間の基底を並べて得られる n 個のベクトルの集合 Y' は 一次独立なので、V の基底となります。
Y' のベクトルは固有ベクトルなので、基底 Y' に関する g の 表現行列は対角行列となります。
必要十分条件の確認ができました。
g の固有ベクトル からなる V の基底 Y を (g に関する) 対角化基底 ということにします。
g に関する対角化基底が存在する時 g は対角化可能といい、 存在しない時、g は対角化不可能といいます。
そうすれば、「 g が対角化可能 ⇔ 表現行列 G が対角化可能 」ですね。
また、対角化可能の時、 各固有空間の基底を並べて得られる V の基底が対角化基底であり、
対角化基底に関する g の表現行列が「対角行列」になります。
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