「 HOTEL 10 」の解説。

集合論の授業で出てくる「 全射 」と「 単射 」という言葉を思い出しましょう。
集合 A から集合 B への写像が f : A → B に対して、
写像 f が「 全射 」 であるとは、 「 For ∀ b ∈ B, ∃ a ∈ A such that f(a) = b 」
任意の B の元 b に対して、写像 f で移ってくるような A の元 a が存在すること をいいます。(上への写像ともいいます。)
写像が f が「 単射 」 であるとは 「 For ∀a,a' ∈ A (a ≠ a), f(a) ≠ f(a') 」
A の元 a と a' が異なれば 写像 f で移った先 f(a) と f(a') も異なることでした。 (1対1ともいいます。)
全射かつ単射である写像を「 全単射 」といいます。 これは A の元と B の元が 1対1にもれなく対応している状態です。
「 HOTEL 10 」における、「 宿泊 」とは「 客の集合 」から「 部屋の集合 」への 「 写像 」を考えることを意味しています。
客 a に対して、宿泊する部屋 f(a) を対応させるのです。
「 ホテルの部屋は全てシングルルームであり、 一部屋に一人しか宿泊できません。 」 という設定は、
「 客 a と a' が異なれば泊まる部屋 f(a) と f(a') は異なる 」ことですから、 写像が「 単射 」であることを意味しています。
4人客が泊まる状態は部屋が余っています。
10人客が泊まる状態は部屋は余りません。 この余らない状態が「 全射 」に対応しています。
したがって、「 満室 」になっている状態は 「 客の集合 」から「 部屋の集合 」への写像「 宿泊 」が 「 全単射 」になることを意味しています。
このとき、当たり前のように、客の数と部屋の数は一致します。
最後の「 泊まれません 」はどういう意味でしょうか?
『 これは「 11人の集合 」から「 10部屋の集合 」への 「 単射 」は存在しない。』 ことを意味しています。
「 泊まれる 」とは「 客の集合 」から「 部屋の集合 」への 「 単射 」の存在だと思うことにします。