08ko-119 第119章 二糖類
 この章では,二糖類について学びましょう。二糖類とは,単糖類分子2個が脱水縮合したかたちの化合物です。
思えているかな?
1.縮合とはどのような反応ですか?
2つの分子から水のような簡単な分子がとれて1つの分子ができる反応をいう。
2.エステル化は代表的な縮合です。エステルとはどのような化合物ですか?
酸とアルコールから水分子がとれてエステル結合-COO-をもつ化合物をいう。
 代表的な二糖類に,マルトースmaltose(麦芽糖),スクロースsucrose(ショ糖),セロビオースcellobiose,ラクトースlactose(乳糖)などがあります。このうち,スクロース以外は還元性を示します。しかし,スクロースを加水分解して転化糖にすると,還元性を示すようになります。。
思えているかな?
1.加水分解とはそのような反応ですか?
酸無水物や酸塩化物,エステル,アミドなどが水の作用によって酸やアルコール,アルデヒド,ケトンなどを生じる反応のことをいう。
 マルトースはα-グルコース分子が2個縮合したかたちをとっており,片方のα-グルコース分子の1番炭素と,他方のα-グルコースの4番炭素が,α-グルコシド結合しています。これを1−4結合とよんでいます。分子モデルをみると,2個のグルコース分子がねじれて結合しているようにみえませんか。多糖類のアミロースがらせん構造をしているのですが,そのらせんのもとはこの構造にあると思います。
 右側のα-グルコースの1番炭素と,1番炭素と5番炭素の間の酸素原子との間の共有結合が切れると,開環構造になります。そのとき,1番炭素はアルデヒド基になりますから,還元性を示します。 
 この章の学習内容は,次の通りです。
(1)マルトース
(2)スクロース
(3)セロビオース
 それでは,マルトースからはじめましょう。
  

第119章 二糖類
(1)マルトース
 maltose(麦芽糖) C122211 malt=麦芽
 α-グルコース分子が2個縮合(
1−4結合
 右側のα-グルコースの単位が開環→1番炭素がアルデヒド基→還元性



 次はスクロースです。私たちに最もなじみ深い糖ですね。スクロース=ショ糖ですが,砂糖はスクロースの製品のことを示しているようです。最も純度の高いものは,結晶状になった氷砂糖です。
    
 スクロースはα-グルコース分子とβ-フルクトフラノース分子が,1−2結合した構造をしています。α-グルコースが還元性を示すのは,開環構造のときに1番炭素がアルデヒド基になるのでしたね。また,β-フルクトースが還元性を示すのは,開環構造のときに2番炭素のケトン基(>C=O)がヒドロキシ基(-OH)に変わり,1番炭素のヒドロキシ基がケトン基になって,結局1番炭素はアルデヒド基(-CHO)になったのでしたね。ところが,スクロース分子では,α-グルコースの1番炭素と,β-フルクトースの2番炭素が酸素原子を挟んで結合しているため,開環構造をとれないのです。その結果,還元性を示さないことになります。
 ところが,スクロースを加水分解すると,グルコースとフルクトースの等量混合物になります。この混合物を転化糖といい,転化糖は還元性を示すようになります。転化糖はハチミツの主成分です。
     
 スクロースは右旋性です。加水分解して生じるグルコースは右旋性,フルクトースは強い左旋性です。したがって,この混合物は偏光を左に旋回するのです。そこで,この加水分解の過程を転化といい,分解によって生じる混合物を転化糖というのです。  
 旋光性については,アミノ酸の学習の前に扱います。

(2)スクロース
 sucrose(ショ糖) C122211
 
α-グルコース分子β-フルクトフラノース(五員環)分子が縮合(1−2結合
 還元性を示す構造をつくるα-グルコースの1番炭素が結合→還元性を示さない


 セロビオースはあまりなじみがありませんね。しかし,セルロースはよく知っていると思います。実は,セロビオースとセルロースは関係があるのです。詳しくは,多糖類のところで説明しましょう。
 セロビオースは,β-グルコース分子2個が,1−4結合しています。頭の中で想像するのは難しいのですが,β-グルコース分子の1番炭素に結合しているヒドロキシ基(-OH)は上向きですね。また,4番炭素に結合しているヒドロキシ基は下向きです。ちなみに,マルトースでは,2個のα-グルコース分子が1−4結合しています。1番炭素に結合しているヒドロキシ基は下向き,4番炭素に結合しているヒドロキシ基も下向きです。
 分子モデルをみて下さい。右側のβ-グルコース分子が裏返っているのがわかりますか。その結果,下の分子モデルでわかるように,平面的な分子になっているのです。実は,この構造がセルロースのかたちに大きく影響するのです。
   

(3)セロビオース
 cellobiose C122211
 
β-グルコース分子2個が縮合(1−4結合

 右側のβ−グルコースの単位が開環→1番炭素がアルデヒド基→
還元性
 マツ葉やトウモロコシの茎に微量検出
 
セルロースの構成単位   

 二糖類には,他にラクトースがあります。ラクトースは乳糖ともよばれており,β−ガラクトース分子とα−グルコース分子が1−4結合した構造をしています。α−グルコース分子の1番炭素は結合に関与していませんから,還元性を示します。
  
 それでは,この章の学習内容の確認を行いましょう。
確認しよう
1.マルトースは何分子が2個縮合してできていますか?
2.スクロースは何分子が2個縮合してできていますか?
3.セロビオースは子が2個縮合してできていますか?
4.マルトース,スクロース,セロビオースのうちで,還元性がないのはどれですか?
5.4で答えた二糖類が還元性を示さない理由を説明しなさい。


1.α-グルコース
2.α-グルコースとβ-フルクトース
3.β-グルコース
4.スクロース
5.還元性を示す構造をつくるα-グルコースの1番炭素原子とβ-フルクトースの2番炭素原子が酸素原子をはさんで結合しているため。