超分子とは「個々の分子を配位結合や水素結合等の相互作用でネットワーク化し、これによって形成される分子の集合体」をいいます。
1つ目のテーマは,水素結合などの超分子相互作を利用して焦電性結晶を創製するものです。焦電性結晶とは「温度変化によって電気が流れるようになる」性質を持つ結晶で,これらは赤外線センサーなどに利用されています。焦電性の出現は結晶の対称性で決まり,対称心(ある点を中心に全ての位置が対称の関係にある)が無い場合に起こり得ますが,自然界には対称心を持たないものは非常に少なく,この性質が発現する確率は非常に低いです。最近ではX 線構造解析の結果から、図1に示した錯体が焦電性結晶となることを見出しました。
図1.焦電性結晶のネットワーク構造
2つ目のテーマは、超分子相互作用が可能な配位サイトに、特定の分子やイオンを配位結合させることで、分子・イオン認識を行うものです。図2は金属錯体にアルコールを配位させ、且つ水素結合でネットワーク化させた結晶の写真です。アルコールの種類によって色が少し異なり[(a) メタノール、(b) エタノール、(c)2- プロパノールをそれぞれ含む]、特にメタノールとエタノールでは顕著な違いが見られました。現在は、酢酸イオンを取り込む多核金属錯体の生成や、蛍光性配位子によるリン酸イオンなどの検出と微量定量法への応用に関する研究も行っております。
エレクトロニクス,センサー
准教授
超分子化学・結晶化学(錯体分子のエレクトロニクスへの応用)
分子・イオンセンサーの開発ならびに環境分析への応用