主にHilbert 空間上の有界線形作用素について、作用素不等式や作用素平均について、純粋数学的な側面とともに、以下の分野との関連をつけながら研究している。
一般的な関数や行列の無限次元版として、Hilbert 空間上の作用素は位置づけられる。量子物理学的には、電子などのようなフェルミ・ディラック粒子でなく、光のようにボーズ・アインシュタイン粒子では、本質的に無限次元の作用素が必要となってくる。特に光通信では、量子情報理論的な評価式は、基本的に作用素不等式が核となるような様々な不等式が有用になる。その意味でノルムやトレースも含めた数値的な評価の不等式も研究している。
一方では作用素エントロピーの発端となった作用素平均の理論も最近様々な様相を見せ始めている。最近Hiai-Petz の研究により、日合- 幸崎作用素平均に基づく測地線が導入された。古くはCorach-Porta-Recht らが作用素の集合をファイバー束的な微分幾何学的に考察し、特に正可逆作用素が作る微分可能多様体の測地線は、作用素幾何平均が作るpath であることがわかっていたが、それらを含め、より一般的なファイバー束的な考察ができることがわかった。今後、作用素論において、幾何学的な考察が広がりを見せると思われる。
また、隣接行列が作用素になる無限有向グラフのエントロピー論を研究する中で、Ziv 圧縮型の符号化定理について定式化することもできた。
基本的な分野なので、まだまだ応用範囲は広いと思われるが、今後量子暗号等への応用も期待される。
符号理論・暗号理論や光通信理論等
教授
Hilbert 空間上の作用素の不等式と平均とその応用具体的な応用面としては、量子情報理論や符号理論、グラフ理論さらには暗号などもある