沸とうするってどういうことか?


 水が100℃以下で沸とうすることは前の実験を見て知ったことと思います。では、沸とうするとはどういうことで、どういう時に沸とうが起こるのかを勉強しましょう。

沸とうするとは?
 「沸とう」という言葉を辞書で引くと、「液体がその内部で気化する現象」と書いてある。沸点(沸とうが起こるときの温度)に達することで、液体の表面だけでなく(表面で気化するのを蒸発という。)、内部でも液体から気体に変わろうとする現象が起こるのを沸とうというのです。

どういう時に沸とうは起こるのか?
 一言で言えば、外気圧=蒸気圧になった時に沸とうは始まります。
 これでは何のことだか分からないのでもう少し詳しく説明します。
 まず、蒸気圧についてですが、蒸気圧とは同じ物質の気体と液体(または固体)が共存しているときの気体が押す圧力のことです。温度が高くなるにつれて、気体に変わろうとする分子が増えるので蒸気圧は大きくなります。
 そこで水について考えてみましょう。水の蒸気圧と温度の関係は下の表のとおりです。
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 水は1気圧(760.0mmHg)の状況下において100℃以下では蒸気圧が外気圧よりも小さいために沸とうすることができません。水が内部から気化しようとするのを外気圧がおさえているのです。しかし、100℃に達すると外気圧と蒸気圧が等しくなって、内部でも蒸発が起こるのです。これが沸とうという現象なのです。
 では、実験で起こった現象はどういうことなのでしょう?

フラスコ内部で何が起こったのか?
 フラスコに水を入れ、しばらくすると沸とうが始まる。沸とうを続けるとフラスコ内にあった空気が水蒸気によって押し出され、フラスコ内のお湯以外の空間は水蒸気で満たされる。

 栓をして水をかけてやると、フラスコ内は冷やされて、水蒸気は水に変わってしまう。

 すると、水蒸気があった場所には何もなくなってしまい、気圧が下がる。

 フラスコ内のお湯は100℃以下(ちなみに、実験のときに測ると96℃でした。)になっているので蒸気圧も760mmHgより小さくなっているが、外気圧も小さくなったので、外気圧=蒸気圧となったときに沸とうがまた始まったのである。
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ちょこっとメモ
 高い山の上で地上で炊くのと同じようにご飯を炊くとうまく炊けません。なぜかというと、山の上では地上よりも気圧が低いので、上で説明したように水の沸点が100℃以下になってしまいます。そのために沸とうしていてもお米にうまく火が入らないのです。
 それとは逆に圧力鍋を使って調理をすると、鍋の中の圧力が上がることで、沸点が100℃よりも高くなり、短時間で調理ができるのです。短時間で肉とかも柔らかくなるので、煮込み料理などに圧力鍋をよく使います。



 《参考文献》
 吉田卯三郎 武居文助 橘芳實 武居文雄 著 『六訂 物理学実験』 【三省堂】
 物理学辞典編集委員会編 『物理学辞典 改訂版』 【培風館】

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