ドレミのヒミツ



音楽史からみると,「ドレミファソラシド」という呼び方は実は音階が決まってからずっとあとになって考えられたものです.西洋の音階は,古代ギリシャで研究された理論に基づいています. 哲学者・数学者として知られるピタゴラスは,音楽の理論も研究をしていました.そのピタゴラスによって,1オクターブを7つに分割する理論が確立され,それがグレゴリオ聖歌の音階として伝承されました. さらに中世,視唱に関心が持たれ,グイード・ダレッツォ(アレッツォのグイード)によって音の呼び方が考案されました.「貴方の僕たちが」というよく知られた賛歌の6つの句が音階のうちの一つで始まり, しかも1句ごとに上昇するようになっていたため,これらの6つの句の最初の音節をとって呼び方としたのです.それは,ut, re, mi ,fa, sol, la でしたが,後に ut は do に変えられ, si が加えられて,今日のような「ドレミ」の呼び方になっていったのでした. その後,ピタゴラスの考えた音高の決め方(音律)では満足できなくなってきます. そこで,いろいろな音律が考案されました.純正律や平均律もその音律の一つです. 音階の各音の呼び方は音律によって変わるわけではありませんが,それぞれの音律によって各音の音高が微妙に違ういろいろな音階が生まれることになります.
階名である「ドレミ」は、グイード・ダレッツォ(イタリア:990年頃生まれ)が「聖ヨハネの夕べの祈り」の賛歌(Hymunus)の曲の各節の頭の音が1音ずつ順に上がっていくことを利用して、その最初の言葉を音を示す名前に利用したものとされています。 元は「Ut、Re、Mi、Fa、Sol、La」と言っていましたが、次第に最初のUt(ウト)が、Dominus(支配者、主)の「ド」と変わったと言われています。 この階名は、6音から成るため「6」という意味の「ヘクサ」から「ヘクサコード」と言われていました。 最初、元の歌の都合で「シ」の音がなく、「ウト、レ、ミ、ファ、ソル、ラ」までしか使えませんでした。 それ以上の音を歌いたいときは、「ミ-ファ」の半音をちょうど「シ-ド」の半音に充(あ)てることを利用して、 「ソ」を「ウト」に読み替えて、ソの音からまた「ウト、レ、ミ、ファ、ソル、ラ」と歌ったのでした。この読み替えは「変換(mutatio)」と言います。 その後、誰かが「シ」に相当する音を名付ければ、いちいち読み替えなくても良いことに気づき、この音に賛歌(Hymunus)の最後の歌詞の 「Sancti Iohanes(サンクティ ヨハネス=聖なるヨハネ)」のSとIを組み合わせた「Si(シ)」と名付け、今の「ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド」という1オクターブにわたる呼び方が成立したそうです。 こうした「ウト,レ,ミ…」は、要するにソルミゼーション(階名唱法)のためのものですから,全音-全音-半音-全音-全音という音程関係(すなわち先に述べた「ヘクサコード」)にすぎないわけです。 従って、「Ut(ウト)」はハ音(C)だけでなく、ヘ音(F)、ト音(G)にもなるわけですから、この点が、各音の固有の音名「C,D,E…」(鍵盤と結びついた絶対音高)との違いで、両者は直接は関係ないということになるわけです。