研究テーマ
本研究室は、光、有機分子と情報の三つのキーワードで、物理、化学、材料、バイオなどの広い分野にまたがる融合領域で、光と有機物質、金属原子の相互作用の解明や、エレクトロニクス・フォトニクス分野への応用を目指した新原理の情報処理デバイスの研究を行っています。
特に最近は、当研究室で発見された「フォトクロミック・ジアリールエテン膜表面における金属蒸着選択性」の拡張性と応用の研究に注力しています。
1.ジアリールエテンの示す金属蒸着選択性とは
光(UV)を部分的に照射して着色部と消色部を形成したアモルファスジアリールエテン膜に対して、真空蒸着法でMgを蒸着した際に、着色部にはMg膜が形成されるのに対して消色部には膜形成されないという現象です。
J. Am. Chem. Soc., 130 (2008) 10740
この現象を利用すれば、任意の光異性化パターンを形成するだけで、対応する金属パターンがマスクレス蒸着で簡単に得ることが出来ますります。
2.金属蒸着選択性の原因と、他金属種・他有機材料への拡張性
光異性化に伴う大きなガラス転移点(Tg)の変化に基づき、低Tgの消色表面で金属原子拡散時に核形成が抑制され、脱離するの原因です。
J. Am. Chem. Soc., 130 (2008) 10740
J. Am. Chem. Soc., 130 (2008) 10740
表面からの金属脱離はジアリールエテンでは固有蒸気圧の高いMgやPbでは可能でしたが、低い金属種(Ag,Cuなど)では起こりにくく、エレクトロニクス分野の電極パターン応用が限られることが課題でした。
J.Mater.Chem. C, 6 (2018) 9786.
最近フッ素系の特定種の材料表面が多種の金属種に対して高い脱離性を示すkとを見出し、様々な金属種に対するメタルパターンのマスクレス形成が可能になりました。
金属蒸着選択性はメタルパターンのマスクレス蒸着形成以外にも、希少金属の3D集積蒸着などにも応用できます。
研究室所有の主な実験装置
- 真空蒸着装置(高真空用、2台)
- 各種レーザー
- 走査型プローブ顕微鏡(島津製作所:SPM9600)
- 卓上型走査型電子顕微鏡&EDXS
- 紫外・可視分光光度計MultiSpec-1500(数ミリ範囲の反射型薄膜状態サンプルも測定可能)
- FT-IR ATR(赤外顕微鏡)
- 干渉・位相差顕微鏡
- DSC(示差走査型熱量計)
- ピコアンメーター(nA〜pAレベルの微弱電流測定)
- その他色々・・・