横山研究室

確率論とは

消滅の確率 (2)

非常に単純な数学的モデルで、集団の盛衰を考える。
一部証明を交えながら、大学の授業風に書き進めていくので、皆さんも授業に参加している気分で考えてほしい。

次のような系列を考える。
最初の集団を第0世代とし、第0世代から生まれた子全体が第1世代、第1世代から生まれた子全体が第2世代を形成する。以下同様に、第(n-1)世代から生まれた子全体が第n世代を形成し、第n世代の個体数を Xn で表す。
一般に、このような時間の経過とともに状態が変化していく系列 {Xn} を確率過程とよぶ。ここでの例は分枝過程とよばれる。
なお、あるnで Xn = 0 となれば、その集団(家系)は断絶し、以降 Xn+1 = Xn+2 = ... = 0 とする。

【条件】
(1) X0 = 1 とする、すなわち集団の歴史は1個の個体(あなた!)から始まる
(2) 各個体は、他の個体とは独立に、同じ確率分布で子を生む
(3) 生む子の数 Z は次の確率分布に従う

P(Z = k) = Pk, k = 0,1,2,...

(確率 Pk で k 人の子を生むということ)


●第n世代の個体数の期待値(平均または平均値ともいう)

すこし難しくなるが、Z の確率母関数を

G(s) = ΣPks^{k}, (|s|≦1)

(係数が Pk のベキ級数で和は0から∞まで、なお s^{k} は s の k 乗を表す)

と定義すると、Z の期待値(1個の個体が産む子の数の期待値)は

m = EZ = ΣkPk = G'(1).

(等式の意味は、EZ = ΣkPk は Z の期待値の定義、m = EZ は今後 EZ を m で表現するということ、ΣkPk = G'(1) は G'(s) → ΣkPk (s → 1-0)、これらを同時に表している)

このように非負整数値確率変数の期待値は、その確率母関数を微分して、s=1 を代入することにより得られる。

Xn (n = 0,1,2,...) の確率母関数は

Gn(s) = ΣP{Xn = k}s^{k}

と書けるが、条件(1),(3)より

G0(s) = s, G1(s) = G(s).

さらに、(条件付き確率や、独立な確率変数の和の確率母関数が確率母関数の積になることなどを使うと、少し飛躍するが)

(4)  Gn+1(s) = Gn(G(s))
(5)  Gn+1(s) = G(Gn(s))

が成り立つ。(4)の両辺を微分して s = 1 を代入する。この操作を繰り返すと、

(6)  EXn = G'n(1) = [G'(1)]^{n} = m^{n}

を得る。

問 (4)、(5)、(6)を証明せよ。

すなわち、「第n世代の個体数の期待値は、1個の個体が生む子の数の期待値 m の n 乗」となる。

m < 1 ⇒ EXn = m^{n} → 0
m = 1 ⇒ EXn = m^{n} ≡ 1
m > 1 ⇒ EXn = m^{n} → ∞

なので、m < 1 のとき集団は絶滅し、m > 1 のとき集団は際限なく増大することが容易に推察できる。
それでは、バランスがとれていると考えられる m = 1 の場合はどのような結末となるのであろうか。

合計特殊出生率はおおよそ 2m と考えてよいので、今の出生率が続けばどのような結末が待ち受けているかは明らかであろう。



[続く]

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