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[資料]について

 

*原 典:

『バーデン・ヴュルテムベルク州文部省1994年度官報』/「文化事業と教育」 文書番号C:【学習指導要領】巻4「ギムナジウム学習指導要領」

(“Kultus und Unterricht”; Amtsblatt des Minisiteriums fuer Kultus und Sport Baden-Wuerttemberg, Ausgabe C: Lehrplanheft; 4/1994 Bildungsplan fuer das Gymnasium)

 

*凡 例:

1.本[資料]は,前掲の原典から,ギムナジウム国語科カリキュラムに該当する個所を抽出・再編成したものである。 

2.各学年のカリキュラム提示の仕方は,その各学習領域に対して次のようになっている。

 

目 標

学習活動内容

指導上の留意点

 

3.本[資料]中で用いられている記号とその内容は,以下の通りである。

< > =年間配当時間

教科交差的テーマとの関わりを指示

=他教科との直接的な関わりを指示


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*国語科の課題と目標(ギムナジウム)

 国語科教育は青年の言語的陶冶と文学的陶冶の課題を有し,そこにその固有の教育任務を有する。この教科は生徒たちを母語との意識的で自立的な交わり,美的な交わり,そして規範に適合した交わりへと誘い,その際生徒たちは自身の個性を発揮し,共同体の中で他者とともに生活することを学ぶのである。

 文学作品に携わることによって,生徒たちの表象力が促進され,人間的経験の基本的雛形および様々な世界解釈や価値観が彼らに仲介される。文学と交わることは,社会的前提や美的現象形式,哲学―理論的構想を考慮に入れながら,我々の文化の言語的次元を解明するものであり,その際,それぞれの時代に典型的な刻印および歴史的展開が顧慮されるべきである。それゆえ,生徒たちが様々な種類の―外国のものも含めて―現実表出,現実解釈,現実構想に携わり,それらと格闘することが期待される。それによって自己同定および自己画定の可能性が彼らに差し出され,独自の世界像および価値意識の発展に対する重要な前提が創り出されるのである。あらゆる世界解釈および生活維持の歴史的制約を認識することは,寛容さを修練し,イデオロギー的簡略化と批判的に出会う能力を彼らに身につけさせるはずである。

 彼らの母語の構造や機能に対する洞察に基づいて,生徒たちは自身の言語表現力を展開し,意識的で分化的な言語使用に到達する。

 言語と思考は互いに不可分に結びついているので,国語科教育は省察や論証,抽象化の能力を仲介し,精神的活動の方法を手ほどきする。けれどもこの教科は,感受性や情意的発達を促進する課題も有している。それゆえ,感情と理性を,想像力と分析的思考を,感情移入力と批判力を,生活の意味や価値に対する問いの省察と自己責任的な行為に対する覚悟を等しく活性化し,そうして人間間の意志疎通と自己確認に寄与するのである。

 

 以上のことから,次のようなギムナジウムの国語科教育の特別な陶冶―教育任務が生じる。:

規範や状況に合わせて書くこと,

― 標準語の習得,

― 口頭および文字による表出形式と意志疎通形式の認識・習得,

― 言語およびテクストとの創造的な交わり,

― 有意義な自由時間形成も考慮に入れた文学への興味・関心,

― 文学の地域的・歴史的多様性を顧慮した文学的形式と構造の手ほどき,

― ドイツ文学の範例的作品に関する知識,

― 言語の機能と体系に対する理解,

― 事態と問題を整理しながら把握し,説明し,評価する能力,

― 価値観の指針。

 

 これらの国語科教育の目標が達成されるように,適切な授業法法によって,生徒の自立性と協力関係をもって行動する能力が促進されなければならない。そのためには,話し合いやディスカッション,パートナー学習,グループ学習,そして授業の範囲外での親や教師との共同による催し物(例えば学校祭,劇場訪問)が必要である。

 授業の言語としては,原則的に標準語が使用され,生徒たちはそれを正確かつ適切に使用することを学ぶ。方言を話す生徒たちは,標準語を使用するように手ほどきを受けるが,その際方言は,その固有性の点で承認され続けられる。

 国語科教育は特別な仕方で,他の授業教科の対象をそれ自体の学習へ組み入れ,調和のとれた授業ないしはプロジェクトの中で他の教科と協同するに適している。

 国語科教育においてそれ自体では引き合いに出すことができない今日の生活の重要な問題は,適切な授業対象を用いて,場合によっては国語科独自のテーマの重点として取り扱われるべきである。ここでは特に次のものが挙げられる。

― 性役割と男女同権の問題,

― 世代間の関係と我々の社会における年齢構造の問題範囲,

― ドイツで生活する外国人統合の問題,

― 幾つかの文化の出会い,

― 暴力の問題,紛争克服と平和保障の問題,

― 統一ヨーロッパと“ひとつの世界”に対する責任,

― 環境と未来保障の問題。

 

 レールプランは様々な学習領域へ分節されている。統合的国語科教育の意味で,様々な重点を持つ様々な学習領域からの内容と目標を含んでいるような主題単元を展開することが教師の課題である。

学習領域「話すことと書くこと」:

 国語科教育においては,口頭による言語使用と文字を用いた言語使用は同等に扱われる。また,聞くことと読むことの教育は,話すことおよび書くことの教育と同様に重要である。それらによって,状況や相手に関連づけた行動が促進されるのである。

 正書法および句読法の基本的知識は必要不可欠である。それゆえ,規範に合わせて書くことの教育が,固有の授業単元の対象でもあり,全般的な授業原理でもある。文字を用いて表出する際には,外面の形式も顧慮される必要がある。

 

学習領域「文学,他のテクストとメディア」:

 この学習領域では,文学作品に明確な重点が置かれる。その際,生徒たちはその内容,構造と形式,意味と意図を把握し,次第しだいにテクストと自立的に格闘し,自身の認識を言葉で表現しなければならない。文学について話し合う中で,生徒たちは彼らそれぞれのテクスト理解を仲介し合うが,その際に,個別的な美的経験を適切な概念で捉え,可能な限り納得がゆくように理由づけることを学ぶ。また,解釈可能性の自由空間は開かれるべきであり,一面性は避けられる必要がある。それゆえ,創造的な試みも含む様々に異なる方法的アプローチが可能とされる必要があり,つまり読者志向的なアプローチに特別な意味が認められるのである。

 就学期が経過する中で,個々の生徒たちは相当数の詩に出会い,形成的な朗読を練習し,暗唱して発表しなければならない。

 

 文学作品と並んで,全ての学年にわたって,他のテクスト種やメディアが授業の中に組み入れられる。その際生徒たちは,メディアが提供するものと自立的かつ批判的に交わることを可能にする知識や能力を獲得する。

 基礎コースは,文学史への洞察を生徒たちに仲介し,詩的芸術作品に対する興味・関心を覚醒し,また,文学作品の諸問題や構造を適切に表出する能力を身につけさせ,深められた文学理解へと誘う。

 発展コースは,それを超えて,文学解釈の様々な方法に精通させ,内容および詩学上の問題設定を分化していく。また,文学史上の問題連関についての知識を深め,文学的価値づけのための前提を作り出す。

 作家およびテクストの選択は,「読み物リスト」の中に含まれている。本学習領域に用いられる任意の授業時間の少なくとも半分は,「読み物リスト」に揚げられているテクストのために費やされる。また,テクストを選択・加工する場合には,あらゆる一面的な世界観の影響および政治的影響が生徒に起こらないように配慮されるべきである。

 

学習領域「言語考察と文法」:

 言語考察と文法は,口頭および文字による言語使用,そして,文学との交わりと密接な連関の中にある。この学習領域は決まってテクストから出発し,言語の合法則性と可能性に対する洞察を仲介するものである。その際,体系性を無視することはできないが,文法的現象の機能を考察することが前面に位置する。そして,このことが,意識的な言語使用の前提なのである。

 生徒たちは基礎コースにおいて,言語表現を研究・説明・評価するための能力を拡張し,言語の本質,言語の発達,人間社会に対する言語の意味への洞察を獲得する。

 発展コースは,追加的な言語哲学および言語理論上の問題設定をともに組み入れる。


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*教科交差的テーマ一覧(ギムナジウム)

学 年

教 科 交 差 的 テ ー マ

第5学年

テーマ1:互いに生活し−互いに祝い合う(*)

テーマ2:自然に対する責任(*)

テーマ3:テクスト,音楽,絵画・写真の中の主題の形成(*)

テーマ4:地域の発見(*)                

テーマ5:新しい場所でのオリエンテーション(*)

第6学年

テーマ1:理解と生き生きとした連帯感(*)

テーマ2:対称

テーマ3:音楽と動き

テーマ4:自由時間の形成(*)

テーマ5:越冬と鳥の渡り

第7学年

テーマ1:近隣地域とヨーロッパにおけるローマ人の足跡

テーマ2:薬物による健康の危機(*)

テーマ3:ギリシャ世界の旅行と旅行経験(*)

テーマ4:情報を集め,活用し,次の人に渡す(*)

テーマ5:譲歩することと,自分を押し通すこと(*)

第8学年

テーマ1:イスラムの世界

テーマ2:生態系としての森

テーマ3:振動から響きへ

テーマ4:北アメリカの開拓

テーマ5:オペラと劇(*)

第9学年

テーマ1:カルミナ・ブラーナ(ラテン語とドイツ語で書かれた中世の放浪詩人たちの詩集)

テーマ2:青年文化(*)

テーマ3:自然科学,工業技術と社会的変化

テーマ4:見ることと具象的な表出

テーマ5:ミュージカル

第10学年

テーマ1:ドイツの中のユダヤ人(*)

テーマ2:家庭教育と性教育(*)

テーマ3:ダイナミックな事象のシミュレーション

テーマ4:一つの世界における生活と分け合い(*)

テーマ5:新聞(*)

第11学年

テーマ1:変化するヨーロッパ(*)

テーマ2:大気の保護

テーマ3:倫理的行為の基礎づけ(*)

テーマ4:フランス革命期の文化とプロパガンダ(*)

テーマ5:人権−理念と実現

第12・13学年

設定なし

表中の(*)は,国語科の参加を意味する。