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[資料]について

 

*原 典:

『バーデン・ヴュルテムベルク州文部省1994年度官報』/「文化事業と教育」 文書番号C:【学習指導要領】巻3「レアルシューレ学習指導要領」

(“Kultus und Unterricht”; Amtsblatt des Minisiteriums fuer Kultus und Sport Baden-Wuerttemberg, Ausgabe C: Lehrplanheft; 3/1994 Bildungsplan fuer die Realschule)

 

*凡 例:

1.本[資料]は,前掲の原典から,レアルシューレ国語科カリキュラムに該当する個所を抽出・再編成したものである。 

2.各学年のカリキュラム提示の仕方は,その各学習領域に対して次のようになっている。

 

目 標

学習活動内容

指導上の留意点

 

3.本[資料]中で用いられている記号とその内容は,以下の通りである。

< > =年間配当時間

教科交差的テーマとの関わりを指示

=他教科との直接的な関わりを指示

 


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*国語科の課題と目標(レアルシューレ)

 国語科教育の中心には,授業対象および授業原理としての国語が位置し,それは次の3つの観点の下で考察される。

― 世界理解および現実仲介の最重要手段としての言語,

― 人間間の意志疎通の最も重要かつ最も分化された手段としての言語,

― 世界を具体的に思い描き,新しい世界を表象するための最も包括的な手段としての言語。

 言語現実の中で互いに不可分のこれら3つの観点を生徒たちが統合的に経験するように,レアルシューレにおいては結合的国語科教育(verbundener Deutschunterricht)が必要不可欠である。レールプランに並立的に挙げられている3つの学習領域“話すことと書くこと”,“文学,他のテクストとメディア”,“言語考察と文法”は,授業の中で絶対的に互いに関係づけられる必要がある。国語科においては,ありとあらゆる内容が主題化され得るが,このことはとりわけ,「教育―陶冶任務の基盤」の中で挙げられているような,特別に社会や教育に関連するテーマに対して有効である。また,そのような内容との格闘は,国語と適切に交わることなくしては不可能である。

 国語科教育は,基礎学校で獲得した知識や能力,技能,そして行為形式や学習形式の基盤に基づくものである。

 言語のあらゆるアスペクトに対する洞察(力)を獲得し,言語との交わりを促進するという目標は,生徒相応の年齢段階に向けられた有機的な歩みの中でのみ達成可能である。それゆえ,学習内容の連関が学年段階を越えて明確に確認可能となるように,レールプランが設計されている。書くことの教育は,現実と客観的に格闘する能力,すなわちその現実を説明し,報告し,論証し,解説する能力を生徒に身につけさせるものであり,それに加えて,言語の助けを借りて現実を想像力豊かに加工すること,あるいは,虚構世界を創造すること,すなわち虚構世界を語ったり,言語と創造的に交わることが彼らに可能となる。その際,口頭での言語使用は単にその前段階としてではなく,文字を用いた言語使用と同等の重要度をもっているものと見なされる必要がある。また,就学期が経過する中で,生徒たちは幾つかの詩と出会い,それらの詩を表現豊かに朗読し,暗唱しなければならない。

 授業の言葉としては,原則的に標準語が用いられ,生徒たちはその正確でよどみない使用の点で漸進的に促進される必要があるが,その際,注意深い措置がなされなければならない。口頭表現における自発性を備えるようになるためにも,方言はその固有の価値を有するからである。

 “他者との交わり”の中で,生徒たちは,言語を常に社会的連関の中で観察する必要性を学ぶ。言語は単に意志疎通に用いられるのみならず,人間間の共生にも用いられる。それゆえ授業の中では,相手や事実に即した話し合いの展開が練習され,促進されなければならないし,またそれは,話し合い自体を省察することなくしては不可能である。

 絶えず増大する大量の情報を処理することが人間に強いられ,情報工学と交わることを放棄し得ない世界にあって,学習・作業技術の正しい応用がますます意味をもつようになる。

 正確な正書法は,他者との摩擦のない文字交流を容易にし,書くことにおける確かさを与える。

 総じて国語科教育において,そしてとりわけ学習領域“文学,他のテクストとメディア”の範囲内で,テクストと交わる喜びが生徒に仲介されるべきである。文学に携わることは,彼らが自身の世界理解を拡張し,経験地平を拡大し,美意識を発展させることを支援する。それゆえ,分析手段の習得および創造的にテクストに反応する能力から構成される方法上の能力が促進されなければならない。文化的生活において増大するそのような能力の意味に基づいて,現代メディアの手段および作用との格闘が必要となる。また,言語を規定する能力の促進は,言語手段の中心的な諸機能や文法,語彙に省察的に携わることなくしては不可能であり,このことは個人的な文体を育成するために必要不可欠である。そこでは,とりわけ結合的国語科教育と体系的国語科教育の意味ある連結が重要となる。

 国語科が多様な仕方で他の教科に関係づけられることが明らかとなるが,またそのような認識は授業原理にもなっていく。すなわち,事物や意図に即した表現の仕方を練習・習得することによって,それぞれに専門用語を伴うあらゆる教科における言語能力を促進するのである。

 年齢に応じた学習技術,特にあらゆる種類のテクストの作成・理解,そして情報の収集と加工を仲介することによって,国語科は全ての教科において利用可能となる重要な基盤を創造する。同様のことが,話し合いの規則の意識化や話し合い―論証形式の練習,学習技術の練習にも当てはまる。最終的には,正書法は国語科教育において絶えず練習され,改善されるが,他の全ての教科の中でも点検されるべきであろう。それに加えて,国語科教育では,外国語に対する文法的基盤が創造され,母語の授業と外国語の授業の調和に特別な意味が認められるのである。

 

 以上の理由で,国語科は他の教科に対する交差を放棄することができるが,その逆に,他の教科の国語科に対する交差は可能である。

 他の教科との数多くの接点から,教科交差的テーマと教科交差的学習の内部で,国語科教育に特別な意味が生じてくる。教科交差的テーマにおいて他教科とのテーマ的関係が存在しないところでさえ,国語科カリキュラムの中で“他者との交わり”や“学習の技術”の項目の下で設定されているような社会的観点や方法的観点が,教科交差的学習にとって必要不可欠となるのである。


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*教科交差的テーマ一覧(レアルシューレ)

学 年

教 科 交 差 的 テ ー マ

第5学年

テーマ1:新しい場所でのオリエンテーション(*)

テーマ2:我々は責任感をもってどのように周囲の世界と交わることができるか

テーマ3:自由時間の形成(*)

テーマ4:我々は物語を書き,それを演じる(*)

テーマ5:動物とともに生活する

第6学年

テーマ1:我々は他の人とともに生活する(*)

テーマ2:我々は遊びを考え出す(*)

テーマ3:我々は祭典を組織し,それを祝う(*)

テーマ4:旅行

テーマ5:学校園(*)

第7学年

テーマ1:大人になる(*)

テーマ2:中毒剤の危険

テーマ3:我々は資料を作成する(*)

テーマ4:ポップミュージック

テーマ5:他の文化の人々とともに生きる(*)

第8学年

テーマ1:水―生活の基盤

テーマ2:アメリカ合衆国―多くの対立を抱える国

テーマ3:健康に生活する

テーマ4:キネティック・オブジェの作成

テーマ5:他者を助ける(*)

第9学年

テーマ1:権利と人間の共生(*)

テーマ2:青年―経済生活への参加者

テーマ3:エネルギーとの責任感のある交わり

テーマ4:メディアとの交わり(*)

テーマ5:文化史の一つのエポック(*)

第10学年

テーマ1:民主主義のために学ぶ(*)

テーマ2:ヨーロッパ―チャンスと責任

テーマ3:エコロジーとエコノミー

テーマ4:家族(*)

テーマ5:一つの世界の中で生きる(*)

表中の(*)は,国語科の参加を意味する。