北海道 大雪山旭岳  1998.晩夏 2290m
 
 
大雪山は複数の山の総称である。旭岳は大雪山の主峰で、北海道の最高峰。舞鶴港からフェリーの船旅。深夜に出航、日本海を北上する。船底からの機関の振動が絶え間なく身体をふるわせる。蘇った日輪が海中から生まれ出る。壮大な夜明け。時折すれ違う大型船どうしの汽笛の交換。遠くに雨雲のかたまり。大海原に沈んでいく火の玉のような日没。しだいに暗くなっていく海面に水平線まで続く黄金の光の筋。荘厳という言葉の意味を反芻する。眠り込んで目が覚めれば、上陸準備のアナウンスが聞こえた。目的地の北海道小樽港だ。デッキに立つと、陸地にほのかなオレンジ色のライトが列をなしている。石原裕次郎の歌の一節を口ずさむお馬鹿な自分にはっとする。札幌自動車道、道央自動車道を走って旭川。R237を美瑛へ。早朝の北海道。なんと道がまっすぐで平坦なのか。とうもろこし畑。町並みの雰囲気がおしゃれだ。旭岳の看板を辿って走っていく。空気はあくまで澄み切っている。
 
 
道沿いには、北海道特有の家屋がある。風景そのものが北海道開拓の歴史を語る。異国にいるような錯覚が襲う。大きなサイロと放牧場、てんさい畑。土壁の家を見つける。天人峡との分岐をすぎると、坂が急になってくる。山全体は、空気が透明で、明るい光に満ちている。
 
 
麓でミソラーメンの朝食。エゾマツの林。ちらほらと紅葉する樹林を上って旭岳温泉。山麓の温泉宿ある。駐車場にはすでに登山者が準備をしている。RW駅で握り飯二箇を購入。大雪山旭岳RWに乗る。天女の湯で乗り継ぐ。眼下に広がる樹林が見事だ。鹿の姿が小さく見えた。森林限界を越えて姿見駅に着く。ハイマツ帯で茶けたむき出しの岩肌。硫黄の匂いが風にながれてくる。WCあり。なきうさぎの生息地。緩い上りをしばらく歩くと、姿見の池。紺色の水面に旭岳がさかさに映る。ここからいよいよ急坂になる。先のRWのグループが高い所に見える。ほとんど直登する感覚。荒々しい旭岳の山容。
 
 
地獄谷を左手に見ながら、ひたすら上る。火山岩の道で、上手に足を運ばないと、ずるっと滑る。ちっとも先に進まない。10m歩いて一息入れる。ビニール袋を下げたアベックがあきらめて下山する。とにかくのどが渇く。汗が流れ落ちる。高度が上がるにつれて、北海道の山々が顔を出してくる。山名を同定することは知識がないからできないけれども、重なり合う山々は神秘的である。ただ、十勝岳は分かった。熊の出没注意との標識。でもこんなに疲れていたらどうにもならない。姿見の池から休み休み登ること2時間。金庫岩で一休み。ここから一のぼりして頂上。風が強い。そして冷たい。ビニールシートを身体に巻いた人たちがいた。握り飯の昼食。火山灰が飯についてじゃりっとする。でも充実感でとてもうまい。大雪山系の山々が顔を出している。帰りは転げ落ちるように下る。膝ががくがくする。吹き上げる向かい風にあらがいながら降りていく。砂礫が目に入る。1時間あまりで姿見の池まで下りた。
 
 
 
RW姿見駅のあたりにはリンドウのお花畑が点在する。紫色の高貴さを感じる。
 
 
天人峡への道にあった標識。なまなましい。天人峡の羽衣の滝を見る。
 
 
 
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