本プロジェクトは、2011年4月に発足し、半年の準備期間の後、10月から本格的な作業に入った。プロジェクト参加者は、ドイツ語に特別に関心のある学生たち、留学生、教員である。
作業は、参加者がそれぞれドイツ語のテクストを作ってきて、それを土台に議論するというスタイルで進められた。準備期間中に集められた写真をテーマにして、ドイツ語の授業で使うことができるようなテクストを書く、というのが当初のおおよその方針だったが、結果的には、それぞれ好きなことを好きなように書いていた(のではないかと思う)。
第一回の「談話会 (?)」が10月27日。以後、2月9日の「研究会 (!)」にいたるまで、全部で6回議論することになった。テクストB の解説は、その記録である。本文に稠密に付された注をご覧になれば、白熱ライブの雰囲気を、ある程度は推測できるかもしれない。
しかし、これらのテクストはいずれも、なかば行き当たりばったりで作り出されたものである。この資料集は、本当に、学習の道具といえるのだろうか。こうした疑問は、プロジェクトを立案した私ですら、なかなか拭い去ることができなかった。この作業が、プロジェクト参加者以外のドイツ学習者にも寄与しうるのではないかと思うようになったのは、作業の最終段階、録音に入ってからだった。ミキサーを通して流れてくるハイクオリティーの再生音を聴いたとき、ようやく、なにか手応えのようなものを感じることができたのだった。
容赦ないスピードで読み上げられているドイツ語を何度も聴いてほしい。このスピードで理解する(日本語通訳する / ドイツ語で反復する)ことができれば、ドイツ語で困ることはあまりないと思う。
最後に、個人的なことを少し記しておきたい。今回のプロジェクトがとにかく一定の成果を挙げることができたのは、私の研究室に出入りしていた学生たち(そのほとんどは、私の指導生ではない)の熱意と能力によるところが大きく、彼(女)たちには心から感謝している。
けれども、このようなプロジェクトを立ち上げるまでには、ここに名前の挙がっていない学生や留学生たちとの様々な試行錯誤があった。大阪教育大学に赴任して以来10年以上になるが、ある時期から、たんにドイツ語を教えるだけではなく、ドイツ語を使って学生たちと何かをしてみたいと思うようになった。特にここ数年は、インタヴューをしたり、エアランゲン大学とビデオ会議をしたりして、それなりの経験を蓄積してきたのだった。その意味でも、このプロジェクトは、私にとって、ささやかながらも記念すべき一里塚なのである。
録音については、大阪教育大学情報処理センターの佐藤隆士先生、音楽教育講座の寺尾正先生にお世話になりました。また、大雑把な行動計画が書かれただけの企画書を承認し、プロジェクト立ち上げの直接のきっかけを与えてくださった大学法人にも心から感謝します。