本年度より新学習指導要領が一部先行実施されています。新学習指導要領の改訂の基本的な考え方について文部科学省は幾つかの点を挙げています。中でも次の内容については国語科教育において特に注目すべき点ではないかと考えました。
- 「生きる力」という理念の共有
- 思考力、判断力、表現力の育成
今回の改訂では前回の学習指導要領から引き続き、「生きる力」が理念として掲げられています。「生きる力」は、「基礎・基本を確実に身に付け、いかに社会が変化しようと、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力」であると定義されます。ここからは、知識・技能の定着に加え、思考力や判断力、表現力の育成が求められていることがわかります。それら求められる力の育成を実現するための具体的な手立てを確立するという観点を強く持ち、今回の指導要領は作成されています。
中でも、理念である「生きる力」の育成のための地盤を支える活動として、重点を置かれているのが言語活動です。言語は論理や思考などの知的活動や感性や情緒、コミュニケーションなどの能力の基盤となります。以上のことを考えると、国語科教育の役割は決して小さくありません。
文章や資料等のテクストを読み解く力だけではなくそれを受けて自分自身の思考を深め、評価し、発信する言語活動のための力が求められている今、国語科における「読解」と「表現」の関連とはいかなるものであるか、再考する必要があるのではないでしょうか。この関連性に注目し「読解」と「表現」を別々のものと考えるのではなく、一連の学習活動と考えてみます。
「読解」と「表現」が一連の学習活動であるならば、その指導とはどのようなものでしょうか。説明的文章や文学的文章を読み、内容だけでなく、文章構成やレトリックを学び自らの文章表現に生かすといった読みと書きを関連づけた指導がそうだといえます。ただ、書くことのような表現活動は、そこで終わるのではなくて、次の読みの深化に繋がるという面を持っています。そして、そのような読みが表現の豊かさをもたらすとも考えられます。以上のように、読解と表現は双方向的に関連し合っているものです。また、「表現力」とは「書くこと」だけでなく、文章を読んだ上での討論、討議などといった「話す」活動によっても培われるべきではないでしょうか。討論・討議などの活動でなくとも授業内における発問に対する発言も「話す」活動と言えます。これらの活動と読むことの関連、いうなれば読みと話しを関連づけた指導も「読解」と「表現」の双方向性を持つ指導といえるでしょう。
そのような双方向性を持った指導はどのように行われるべきであるのか。まずは「生きる力」の定義の中にあった「自ら課題を見つけ、主体的に判断」できる児童・生徒の育成が求められているといえます。主体的に表現できない児童・生徒をいかにして主体的に活動させるか、そして「読解」と「表現」の双方向性を持った指導が国語科学習の中でどのように実践され、どのような可能性を持っているのかを探っていきたいと考えております。
また、今大会で研究発表していただける方を募集しております。「課題研究」では、大会テーマに沿った研究発表、「自由研究」では、大会テーマとは直接関係ない、自由なテーマでの研究発表をしていただきたいと考えております。皆様の、日頃の研究成果をぜひともこの機会に発表していただければ幸いです。
皆様、奮ってご参加ください。