第38回大阪教育大学国語教育学会
2002年11月30日
於大阪教育大学柏原キャンパス

「中学校教科書掲載詩の分析」

国語表現ゼミナール
三回生李智恵 臼田曜子 辰巳陽子 
橋本崇 山内良子 吉村沙千
院 生尾崎恵美
教 官野浪正隆

1、はじめに

 共同研究を始めるに当たって、去年の共同研究に引き続き中学校の教科書に関して分析することにした。詩という学習材はある程度幅広く自由な解釈ができると考えられるので、想像力を豊かにする「学習材」としての役割を果たすことができると考えた。そこで、中学校教科書の中で「詩」という学習材に的を絞って、分析していくことにした。
 詩という学習材を読むうちに学習者は、話者の心理に共感し、同化していく。自分の状態と重ね合わせたり、話者に入り込んだりすることで、詩は学習者のものとなっていくと予想される。主に、心理を見ていくことで学習者、特に中学生に影響を与えるであろう教科書はどのような構成になっているかを調べていこうと考えた。

2、作品・作者・割合表

 わたしたちが中学生のとき学んだ教科書を挙げると、東京書籍・光村図書・三省堂の三社が出てきた。そこで、今回の研究に当たっては東京書籍・光村図書・三省堂の三社に絞り、分析していくことにした。
 下の表には会社・学年・作品名・作者・全教材数に占める詩教材の割合を載せている。
 その横には、教科書掲載の詩とそれ以外の学習材の割合を棒グラフで示した。詩以外の学習材には、物語文・説明文・古文・漢文・短歌や俳句が含まれている。三社の中でも光村図書では詩の割合がわずかに多いことがわかる。

学年作品名作者全教材数に占める
詩教材の割合
東京書籍1年春に谷川俊太郎2/21
風景山村暮鳥
2年椰子の実島崎藤村2/25
わたしが一番きれいだったとき茨木のり子
3年永久欠番中島みゆき4/27
レモン哀歌高村光太郎
月夜の浜辺中原中也
生命は吉野弘
光村図書1年描きたい折原みと3/16
たんぽぽ川崎洋
ある日ある時黒田三郎
2年春よ、来い松任谷由美2/19
春に谷川俊太郎
3年あけがたには藤井貞和4/19
お辞儀するひと安西均
世界は一冊の本長田弘
私を束ねないで新川和江
三省堂1年朝のリレー谷川俊太郎2/16
ウソ川崎洋
2年未知へ木村信子3/34
わたしが一番きれいだったとき茨木のり子
ジーンズ高橋順子
3年真壁仁4/47
仮繃帯所にて峠三吉
初恋島崎藤村
たんぽぽ星野富弘

3、研究方法

 表現技法・内容・心理・その他に分けて分析した。その他には、「視点」「要求」「呼びかけ(要求以外)」が含まれている。
 表現技法では詩を構成する上で、使われている形式や技法に着目し、分析した。
 形式は
  ア.口語詩・文語詩
  イ.自由詩・定型詩・散文詩
  ウ.総文字数
  エ.行数
  オ.連数  
の五種類を、表現技法は
  カ.反復(表現)
  キ.反復(形式)
  ク.倒置法
  ケ.体言止め
  コ.直喩
  サ.隠喩
  シ.擬人法
  ス.対句
の八種類をあげた。

 内容では次のことに着目した。
  ア.表現対象
  イ.連の分析(連ごとの内容と構成)
  ウ.内容表現の分類
  エ.主題 
  オ.主題の分類

 その次に、詩の中にある心理に着目し、

という分析をした。
 心理は主題に大きく関わっており、最も学習者に影響を与えるところでもあるために、ここでも主題を載せることにした。

 これらの項目の詳しい分析方法を例を出して説明する。
 東京書籍1年・光村図書2年の教科書に掲載されている、谷川俊太郎の「春に」の分析を例示する。

表現技法・内容・心理の分析例

「春に」谷川俊太郎  東京書籍(1年) 光村図書(2年)掲載

春に           谷川俊太郎
 
この気もちはなんだろう
目に見えないエネルギーの流れが
大地からあしのうらを伝わって
ぼくの腹へ胸へそうしてのどへ
声にならないさけびとなってこみあげる
この気もちはなんだろう
枝の先のふくらんだ新芽が心をつつく
よろこびだ しかしかなしみでもある
いらだちだ しかもやすらぎがある
あこがれだ そしていかりがかくれている
心のダムにせきとめられ
よどみ渦まきせめぎあい
いまあふれようとする
この気もちはなんだろう
あの空のあの青に手をひたしたい
まだ会ったことのないすべての人と
会ってみたい話してみたい
あしたとあさってが一度にくるといい
ぼくはもどかしい
地平線のかなたヘと歩きつづけたい
そのくせこの草の上でじっとしていたい
大声でだれかを呼びたい
そのくせひとりで黙っていたい
この気もちはなんだろう

表現技法の分析

題名会社名作者学年

学習時期
形式総文字数行数連数視点時間経過反復(表現)反復(形式)倒置法体言止め直喩隠喩擬人法対句要求呼びかけ(要求以外)
春に東京書籍谷川俊太郎1年

p8
口語自由詩330241一人称限定視点××××××××
学年・掲載ページ
ページは学習時期とも関連するので初めのページの頁数を入れた。
時間経過
詩の中で、時間が流れているかどうか。「春に」は常に春のことを言っているので、時間経過はない。時間経過があるものとしては茨木のり子の「わたしが一番きれいだったとき」(東京書籍2年・三省堂2年)などがあげられる。
反復(表現)
ある言葉を行で全く同じように反復しているかどうか。「春に」の場合は、「この気持ちはなんだろう」という行が4回繰り返されている。
反復(形式)
連(またはそれに近いもの、形式)の反復。「春に」の場合はない。谷川俊太郎の「朝のリレー」(三省堂1年)では最初に「……が/……しているとき/……は/……する」という4行が2回繰り返されているので、上の反復(表現)とは区別し、反復(形式)があるとした。
倒置法
詩の中に倒置法があるかないか。「春に」にはない。
体言止め
詩の中に体言止めがあるかないか。「春に」にはない。
直喩
詩の中に直喩があるかないか。「春に」にはない。
隠喩
詩の中に隠喩があるかないか。「春に」では、7行目「枝の先のふくらんだ新芽」が「春」を表現している隠喩、11行目「心のダム」も隠喩表現にあたる。
擬人法
詩の中に擬人法があるかないか。「春に」にはない。
対句
詩の中に対句があるかどうか。「春に」では、8〜11行目
よろこびだ しかしかなしみでもある
いらだちだ しかもやすらぎがある
あこがれだ そしていかりがかくれている
の3行が対句。
要求
「〜するな」など、読者に対して直接的に要求しているもの。「春に」はそのような表現はしていない。新川和江の「わたしを束ねないで」での
わたしを束ねないで
……
わたしを止めないで
……
などを要求と判断した。
呼びかけ(要求以外)
先の要求以外で、読者に対して呼びかけているもの。「春に」は「この気持ちはなんだろう」というように疑問形で書いているものの、話者の内言だと考えられるので呼びかけの表現はない。

内容の分析

題名学年表現対象連の分析内容表現の分類主題主題の分類
連の内容連の構成
春に1年話者(ぼく)の気持ち春になり、話者は大地や空や自分を取り囲んでいる自然からいきいきとした生命力を感じ、また話者自身も強い活力で満たされている。連が終わりに向かうに連れて、話者が感じているエネルギーがどのようなものかがより具体的になっている。独り言型さまざまな気持ちが心の中で激しく動いたこととその時の心の様子
 
直接的
自己心情型
表現対象
詩の中で何を対象として表現したか。「春に」では「この気持ちはなんだろう」というように、自分の気持ちに対する疑問が主なので、話者の気持ちとした。
連の分析
各連について分析した。1連ずつ内容を「連の内容」として、連がどういう流れにあるかをわかりやすいよう矢印で「連の構成」としてまとめた。「春に」の場合は1連しかないので、その場合は全体の内容をまとめたものを内容、全体的にある流れを構成とした。
内容表現の分類
詩の内容表現の仕方を、 と4つの型に分類した。
「ストーリー型」
「レモン哀歌」のように、物語文のような出来事が連鎖する構成が含まれているものを「ストーリー型」と分類した。
例)レモン哀歌
  • 智恵子がレモンを待っている
  • 智恵子がレモンを噛んだ
  • 智恵子の機関が止まる
  • 「私」が智恵子の写真の前にレモンをおく
「情景描写型」
「風景」のように読者に対する呼びかけが無く、詩自体にストーリー性が無くて、情景を言葉で描写しているだけのものを「情景描写型」とした。
例)風景
純銀もざいく
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
いちめんのなのはな
「メッセージ型」
「世界は一冊の本」のように「本を読もう」と読者に呼びかけているものや、「朝のリレー」のように「僕らは朝をリレーするのだ」といった読者に語りかけている表現のあるものを「メッセージ型」とした。
「独り言型」
「春に」のように読者に対する疑問の投げかけや呼びかけ、語りかけが無く、自己への問いかけや自分の心情を中心に書いているものを「独り言型」と分類した。
主題
詩の主題とそれが詩の中で直接的・間接的に表されているかを考えた。
主題の分類
主題の内容から、 の8つに分類した。

心理の分析

題名学年心理心理状態の分析心理状態心理変化の契機主題
心理を読み取れる表現読み取れる心理状態
春に1年
 
(直接・間接)
L1.6.14.24この気持ちはなんだろう(直接) いろいろな感情が混ざり合っている状態。

× さまざまな気持ちが心の中で激しく動いたこととその時の心の様子
直接的
L7.枝の先のふくらんだ新芽が心をつつく(間接) 周りのものから刺激を受けている状態。
L8.よろこびだ しかしかなしみでもある(直接)
L9.いらだちだ しかもやすらぎがある(直接)
L10.あこがれだ そしていかりがかくれている(直接)
心が良い状態と悪い状態が混ざり合っている。
L15.あの空のあの青に手をひたしたい(直接)
L16.17.まだ会ったことのないすべての人と会ってみたい話してみたい(直接)
L18.あしたとあさってが一度にくるといい(直接)
「〜したい」という話者の積極的な欲求なので、前向きな気持ちを感じるとともに、できない事を求める気持ちが混ざり合っている。
L19.ぼくはもどかしい(直接)
L20.地平線のかなたへと歩きつづけたい(直接)
L21.そのくせこの草の上でじっとしていたい(直接)
L22.大声でだれかを呼びたい(直接)
L23.そのくせ一人で黙っていたい(直接)
積極的な欲求と消極的な欲求が描かれているが、全体的には前向きな印象を受ける。
心理
詩の中に登場人物の心理があるかどうか。
ある場合には、その心理を詩の中で言い表しているような表現があれば直接、なければ間接とした。「春に」では「この気持ちはなんだろう」と言っているところから、心理の表現があり、また、それは直接的に表現されている。
心理状態の分析
詩の表現の中で心理が読み取れるものを取り出し、そこから読み取れる心理状態を分析した。
心理状態
詩全体で話者の心理がいい状態なら+、悪い状態なら−、どちらでもない場合は0に分類した。詩の中で状態が変わっている場合は矢印でそれを示した。「春に」ではいい状態も悪い状態も混ざっているとして、両方とした。
心理変化
詩の中に話者の心理が変化したとわかる表現があるかどうか。「春に」では+と−の心理が初めから混ざった状態で最後まで変わらないので、心理変化は無い。

4、全作品分類表

 以下に全作品分析表を載せた。
T、形式・表現技法分析一覧表
会社名作者学年・学習時期形式総文字数行数連数視点時間経過反復(表現)反復(形式)倒置法体言止め直喩隠喩擬人法対句要求呼びかけ(要求以外)
春に東京書籍谷川俊太郎1年・p8口語自由詩33024 1(3)一人称限定視点××××××××
風景東京書籍山村暮鳥1年・p206口語自由詩244273客観視点××××××××
椰子の実東京書籍島崎藤村2年・p8文語定型詩129147一人称限定視点×××××××
わたしが一番きれいだったとき東京書籍茨木のり子2年・p196口語自由詩454328一人称限定視点××
永久欠番東京書籍中島みゆき3年・p8口語自由詩345274一人称限定視点××××××
レモン哀歌東京書籍高村光太郎3年・p196口語自由詩263181(4)一人称限定視点×××××××
月夜の浜辺東京書籍中原中也3年・p198口語自由詩210176一人称限定視点××××××
生命は東京書籍吉野弘3年・p200口語自由詩284335一人称限定視点×××××××
描きたい光村図書折原みと1年・p18口語自由詩6962一人称限定視点×××××××
たんぽぽ光村図書川崎洋1年・p19口語自由詩6491一人称限定視点××××××
ある日ある時光村図書黒田三郎1年・p198口語自由詩11091一人称限定視点××××××××
春よ、来い光村図書松任谷由美2年・p18口語自由詩292237一人称限定視点××××××
春に光村図書谷川俊太郎2年・p22口語自由詩330191(3)一人称限定視点×××××××
あけがたには光村図書藤井貞和3年・p14口語自由詩279201一人称限定視点××××××××
お辞儀するひと光村図書安西均3年・p179口語自由詩349222一人称限定視点××××××
世界は一冊の本光村図書長田弘3年・p248口語自由詩4543310一人称限定視点×××××
私を束ねないで光村図書新川和江3年・p252口語自由詩400345一人称限定視点×××××
朝のリレー三省堂谷川俊太郎1年・p1口語自由詩211172一人称限定視点×××××××
ウソ三省堂川崎洋1年・p148口語自由詩207225一人称限定視点××××××××
未知へ三省堂木村信子2年・p1口語自由詩134123一人称限定視点××××××××
わたしが一番きれいだったとき三省堂茨木のり子2年・p58口語自由詩453328一人称限定視点×××
ジーンズ三省堂高橋順子2年・p134口語自由詩169141一人称限定視点×××××××××
三省堂真壁仁3年・p1口語自由詩316241客観視点×××××××
仮繃帯所にて三省堂峠三吉3年・p48口語自由詩520377一人称限定視点×××
初恋三省堂島崎藤村3年・p134文語定型詩161164一人称限定視点×××××××××
たんぽぽ三省堂星野富弘3年・資料編p62口語自由詩102101(4)一人称限定視点×××××××××


U、会社別の内容の分析
東京書籍

題名
学年表現対象連の分析内容表現の分類主題主題の分類
連の内容連の構成
春に1年話者(ぼく)の気持ち1連:春になり、話者は大地や空や自分を取り囲んでいる自然からいきいきとした生命力を感じ、また話者自身も強い活力で満たされている。連が終わりに向かうに連れて、話者が感じているエネルギーがどのようなものかがより具体的になっている。独り言型・さまざまな気持ちが心の中で激しく動いたこととその時の心の様子
【直接的】
自己心情型
風景1年菜の花1連:菜の花と麦笛の音
2連:菜の花とひばりの鳴き声
3連:菜の花と昼の月
なし情景描写型・「いちめんのなのはな」の風景とその中に溶け込んでいるもの
【直接的】
情景型
椰子の実2年椰子の実、浮寝の旅をする自分の境遇1連:椰子の実が流れてきたこと
2連:流れてきた椰子の実を見て感じたこと
3連:流れてきた椰子の実がついていた旧の木について
4連:独り身の旅をしている自分
5連:流れてきた椰子の実を見て感じたあてもなくさすらうことへの不安、悲しみ
6連:日が沈むのを見て涙する自分
7連:いつかは故郷に帰りたいという主人公の想い
1連:椰子の実が流れてきたという出来事

2連:椰子の実への問いかけ

3連:椰子の実から想像したこと

4連:自分への転換

5・6連:一人身の旅に対する不安と故郷への想いを並列し、強調している

7連:自分の意思の確認と決意
独り言型・椰子の実に自分を重ねて感じた旅への不安と故郷を懐かしむ気持ち
【直接的】
自己心情型
わたしが一番きれいだったとき2年戦中・戦後の街や人の様子と自分の心境1連:戦争によって街が壊されたこと 
2連:戦争によって沢山の人が死んだこと 
3連:男の人たちは贈り物を捧げるどころではなかったこと 
4連:働いてばかりいたこと 
5連:日本が戦争で負けたこと 
6連:外国の文化に触れられるようになったこと 
7連:さびしかったこと 
8連:さびしい想いをした分長生きすることに決めたこと
1〜6連:私が一番きれいだった時の私の状況と行動

7連:過去における心理

8連:当時の未来への希望
独り言型・人生で一番輝く時期に敗戦前後の最悪の状況を経験しながらも、生きていこうとする女性の決意
【直接的】
戦争型
永久欠番3年人間の死1連:人はみな必ず死ぬものであり、誰かが死んだ後も時間は止まることなく流れていること
2連:死ぬと生きていていたことが帳消しになるようで悲しい
3連:人の存在や思い出のはかなさ
4連:忘れられてしまっても人は宇宙の中では代わりのいない存在であること
1連:世の中の決まり、あり方

2連:作者の気持ちが入っている

3連:具体的な出来事が入っている

4連:作者の思い

1連から3連はだんだん具体的になっている。
メッセージ型時間が経つにつれて人に忘れ去られてしまっても、人はかけがえのない存在であること
【直接的】
人生再認識型
レモン哀歌3年智恵子1連:レモンが死ぬ間際の智恵子の意識を正常にした事と、智恵子を弔いながら生きる私智恵子の死に行く様子

今の私の姿

1連の中にも時間の経過が見られる。
ストーリー型・智恵子の死に際と彼女への愛
【間接的】
恋愛型
月夜の浜辺3年1つのボタン1連:ボタンが落ちていたこと 
2連:何気なくボタンを拾ったこと 
3連:ボタンが落ちていたこと 
4連:ボタンを拾ったこと 
5連:ボタンが指先と心に沁みたこと 
6連:ボタンが捨てられないこと
1連:ボタンが落ちていた事実

2連:それに対して感じたこと(自分に対する疑問も含む)

3連:ボタンが落ちていた事実

4連:ボタンに対する自分の行動

5連:ボタンへの共感

6連:ボタンに対する気持ちの表れ
独り言型・月夜の浜辺を歩いていた僕が感じた、落ちていたボタンへの共感
【直接的】
自己心情型
生命は3年生命という視点から見た世界の構成1連:生命を繋ぐためには他者が必要なこと 
2連:重要な存在である他者との間柄がゆるやかなことへの疑問 
3連:目の前の光景 
4連:自分自身も欠如を満たす他者だったであろうこと 
5連:私たちも欠如を満たす存在かもしれないこと
1連:欠如のある生命

2連:欠如を満たすことに気づかなくても許される世界

3連:欠如を満たしあう様子

4連:欠如を満たす自分

5連:欠如を満たす他者
メッセージ型・私たちを含めた生命は、お互いに気づかなくても支えあいながら生きていること
【直接的】
人生再認識型
光村図書
題名学年表現対象連の分析内容表現の分類主題主題の分類
連の内容連の構成
描きたい1年自分の気持ち1連:自分の感情を絵で表したがっている
2連:自分の気持ちを人に伝えるために絵で表したがっている
1連:話者の具体的な気持ち

2連:気持ちを伝えたいという思い
独り言型・人と自分のよい気持ちを分かち合いたい
【直接的】
自己心情型
たんぽぽ1年たんぽぽ1連:たんぽぽが飛んでいくのを見てたんぽぽにいろんな名前をつけて呼んでいるなし独り言型・一人一人の個性を認め、大切にしよう
【間接的】
人生指針型
ある日ある時1年喜びのひと時1連:秋の空や空高く噴き上げる噴水をみることで喜ぶ日がないだろうか
―そういうものに感動するくらいの心の余裕があなたにあるかを問いかけている
キレイな情景と物悲しい情景を見たときの気持ちの並列
メッセージ型・ものごとを良く見られるような気持ちの余裕を持とう
【直接的】
人生指針型
春よ、来い2年1連:沈丁花を見ている(昔を思い出し始める)
2連:春(思い出)が迎えにくる
3連:現在、君はいないけれど、目を閉じれば君を思い出すことができる
4連:好きだった人を今も待っている
5連:私が待っていることはいつか相手にも伝わるでしょう
6連:迷う時には君との思い出が私をささえてくれる
7連:君を思いながら一人で歩き出す
8連:現在、君はいないけれど、目を閉じれば君を思い出すことができる
9連:迷う時には君との思い出が私をささえてくれる
君と別れた悲しみを乗り越えて一人で生きていこうという気持ちの変化ストーリー型・君との思い出を胸に春のように暖かく幸せに満ちた時に向かって進んでいく
【間接的】
恋愛型
春に2年1連:春になり、話者は大地や空や自分を取り囲んでいる自然からいきいきとした生命力を感じ、また話者自身も強い活力で満たされている連が終わりに向かうに連れて、話者が感じているエネルギーがどのようなものかがより具体的になっている独り言型さまざまな気持ちが心の中で激しく動いたこととその時の心の様子
【直接的】
自己心情型
あけがたには3年日本語1連:夜汽車の中で助詞を変えた車内放送を聞いた作者の想い状況

車内放送

作者の想い
独り言型・適切な日本語を使うのは難しい
【直接的】
言語考察型
お辞儀する人3年お辞儀にこめられた思い1連:中国残留孤児の劉桂琴さんが、中国へ戻る時の様子
2連:祖国日本にお辞儀せずにはいられないという劉桂琴さんの気持ちを感じた時の、作者の想い
1連:劉さんがお辞儀している写真と日本での様子を載せた新聞記事→
2連:それに対する作者の想い
ストーリー型・劉さんのお辞儀する姿から祖国日本への想いが伝わり、やりきれない
・劉さんの行動に対する敬意
【直接的】
戦争・人生型
世界は一冊の本3年世界1連:本を読もうという呼びかけ
2連:本の例(自然)
3連:本の例(植物)
4連:本の例(世界)
5連:本の例(外国)
6連:本の例(街)
7連:本の例(外国にあるもの)
8連:本の例(人間)
9連:本の例(権威をもたない尊厳)
10連:生きることは考えることである
11連:本を読もうという呼びかけ
1連:本を読もうという呼びかけ

2〜9連:書かれた文字以外の「本」の例

10連:様々な事象に目をむけ考えることが生きるということである

11連:本を読もうという呼びかけ
メッセージ型・世の中のすべては本のようなものであるので、世界の様々な事象に目をむけ、自分でよくものを考え、よりよく生きよう
【直接的】
人生指針型
わたしを束ねないで3年わたし1連:わたしを束ねないでほしい
2連:わたしを止めないでほしい
3連:わたしを注がないでほしい
4連:わたしを名付けないでほしい
5連:わたしを区切らないでほしい
1〜5連:自由に生きたいという願いメッセージ型・世間が決める枠組みに束縛されずに、主体的に、ありのままに、自由に生きたい
【直接的】
自己心情型
三省堂
題名学年表現対象連の分析内容表現の分類主題主題の分類
連の内容連の構成
朝のリレー1年1連:地球上の様々な地点での
時と朝の様子
2連:朝をリレーする事で人と人つながっている
1連:具体的な様子

2連:抽象的
メッセージ型・地球上に住んでいる人と人はみんなつながっているのだということ
【間接的】
人生再認識型
ウソ1年ウソとホント1連:詩に引き込ませるための導入部分
2.3連:逆説的な言葉遊び
4連:ウソとホントが混沌としている状態
5連:本当に信じられるものは非常に少ないということ
1〜3連:断定

4連:混沌

5連:混沌とした状態の中で最低限信じられる事
独り言型・信じられるものが少ないことへの淋しさと信じられるものへの安心感
【間接的】
自己心情型
未知へ2年わたし自身1連:ありったけわたしが響いている
2連:あふれるほど響いている
3連:おもてへこだまして響いている
1連→2連→3連と少しずつ表現を変え、響いている規模を大きくすることで、未知へ向かっている様子が強くなっている独り言型・新しい世界への期待とこれから成長していこうとするわたし
【間接的】
自己心情型
わたしが一番きれい
だったとき
2年戦争と私1連:戦争によって街が壊されたこと
2連:戦争によって沢山の人が死んだこと
3連:男の人たちは贈り物を捧げるどころではなかったこと
4連:働いてばかりいたこと
5連:日本が戦争で負けたこと
6連:外国の文化に触れられるようになったこと
7連:さびしかったこと
8連:さびしい想いをした分長生きすることに決めたこと
1〜6連:私が一番きれいだった時の私の状況と行動

7連:過去における心理

8連:当時の未来への希望
独り言型・人生で一番輝く時期に敗戦前後の最悪の状況を経験しながらも、生きていこうとする女性の決意
【直接的】
戦争型
ジーンズ2年ジーンズ1連:洗って干されたジーンズの様子やそれに詰まった思い出によって、少しずつ元気になっていく主人公の様子ジーンズを干したこと

ジーンズに詰まった思い出

だんだん元気になっていく主人公の気持ち
独り言型・小さなきっかけによる心境の変化、愛用品に詰まった思い出
【間接的】
自己心情型
3年1連:人生の決別のときを峠に上りついたときに例えている峠に上り詰めた人々が置かれる状況

峠に立ったときの気持ち

決別という宿命

その宿命を受け入れるための準備
メッセージ型・峠と人生を重ね合わせ、人生で決定を下す時は悲しいものであるが、未来へ進む明るいものでもある。あせらず、過去を振り返ったりして落ち着いて決めるのがよいということ
 
【間接的】
人生指針型
仮繃帯所にて3年原爆1.2.3連:原爆の被害にあった女学生たちの様子
4連:原爆への怒り
5.6連:女学生たちの思いを想像して感じる原爆の悲惨さ
1.2.3連を並列させて書くことによって原爆の悲惨さをより印象付けている

4.5.6連が作者の気持ち
メッセージ型・原爆の悲惨さ
【直接的】
戦争型
初恋3年初恋1連:まだ少女だった初恋相手の女との出会い
2連:女に対して恋をしたとき
3連:女との恋愛を楽しんでいる情景
4連:女と一緒にいて二人の恋愛時代を思い出している。もしくは女と別れて悲しんでる情景
1連:出会い

2連:恋愛

3連:結婚

4連:その後

時間経過がある
ストーリー型・初恋の楽しさ(と、その別れの悲しさ)
【間接的】
恋愛型
たんぽぽ3年たんぽぽたんぽぽが飛んでいく様子を見て人間であろうとたんぽぽであろうと必要なものはただひとつであるという思いたんぽぽが飛ぶ様子

人間との共通性の発見
独り言型・生きるものにとって本当に必要なもには一つ(命)である
【間接的】
人生再認識型


V、会社別の心理の分析
東京書籍
題名学年心理心理状態の分析心理状態心理変化主題
心理を読み取れる表現読み取れる心理状態
春に 1年
(直接・間接)
L1.6.14.24この気持ちはなんだろう (直接)
 ↓
L7.枝の先のふくらんだ新芽が心をつつく (間接)
L8.よろこびだ しかしかなしみでもある
 ↓
L9.いらだちだ しかもやすらぎがある (直接) 
L10.あこがれだ そしていかりがかくれている (直接)
 ↓
L15.あの空のあの青に手をひたしたい (直接)
L16.17.まだ会ったことのないすべての人と 
会ってみたい話してみたい (直接)
L18.あしたとあさってが一度にくるといい (直接)
 ↓
L19.ぼくはもどかしい (直接)
L20.地平線のかなたへと歩きつづけたい (直接)
L21.そのくせこの草の上でじっとしていたい (直接)
L22.大声でだれかを呼びたい (直接)
L23.そのくせ一人で黙っていたい (直接)
いろいろな感情が混ざり合っている状態
 ↓
周りのものから刺激を受けている状態
 ↓
心が良い状態と悪い状態が混ざり合っている
 ↓
「〜したい」という話者の積極的な欲求なので、前向きな気持ちを感じるとともに、できない事を求める気持ちが混ざり合っている
 ↓
積極的な欲求と消極的な欲求が描かれているが、全体的には前向きな印象を受ける
+・−× ・さまざまな気持ちが心の中で激しく動いたこととその時の心の様子
【直接的】
風景1年×なしなし×× ・「いちめんのなのはな」の風景とその中に溶け込んでいるもの
【直接的】
椰子の実2年
(直接・間接)
L4.汝はそも波に幾月 (間接)
L8.ぞ (間接)
 ↓
L10.新たなり流離の憂 (直接)
 ↓
L12.激り落つ異郷の涙 (間接)
 ↓
L13.思ひやる八重の潮々 (間接)
L14.いづれの日にか国に帰らん (直接)
椰子の実に対する親近感
 ↓
もの悲しさ、不安
 ↓
故郷への恋しさ
 ↓
故郷への恋しさ、故郷に帰りたいという意思
×・椰子の実に自分を重ねて感じた旅への不安と故郷を懐かしむ気持ち
【直接的】
わたしが一番きれいだったとき2年
(直接・間接)
L3.とんでもないところから (間接)
L4.〜なんかが (間接) 
 ↓
L8.〜してしまった (間接)
L10.捧げてはくれなかった (間接)
 ↓
L14.からっぽで (直接)
L15.かたくなで (直接)
 ↓
L19.そんな馬鹿なことってあるものか (直接)
 ↓
L20.まくり、卑屈な、のし歩いた (間接)
 ↓
L23.くらくらしながら (間接) 
L24.甘い、むさぼった (間接)
 ↓
L26.ふしあわせ (直接)
L27.とんちんかん (直接)
L28.めっぽうさびしかった (直接)
 ↓
L29.だから決めた (直接)
 ↓
 
L32.ね (間接)
驚き、信じられない気持ち
 ↓
がっかりするような気持ち
 ↓
放心状態
 ↓
怒り、憎しみ、失望
 ↓
怒り、憎しみ
 ↓
解放感
 ↓
いろいろな感情が混ざり合っていた状態、さびしい
 ↓
前向き、過去の自分がした決意、はいあがっていこうとする思い
 ↓
明るさ
−→+・人生で一番輝く時期に敗戦前後の最悪の状況を経験しながらも、生きていこうとする女性の決意
【直接的】
永久欠番3年
(直接・間接)
L10.生きていたことが帳消しになるかと思えば淋しい (直接)
 ↓
L13.かけがえのないものなどいないと (間接)
 ↓
L20.21.だれか思い出すだろうか
ここに生きてた私を (間接)
 ↓
L25.27.人は永久欠番 (間接)
淋しさ
 ↓
世の中の無情さ
 ↓
あきらめ、淋しさ
 ↓
希望や安心感を持とうとする気持ち
−→0×・時間が経つにつれて人に忘れ去られてしまっても、人はかけがえのない存在であること
【直接的】
レモン哀歌3年
(直接・間接)
L2.かなしく白くあかるい (間接)
 ↓
L8.青く澄んだ眼 (間接)
 ↓
L9.私の手を握るあなたの力の健康さよ (間接)
 ↓
L16.あなたの機関は (間接)
 ↓
L18.すずしく光るレモンを今日も置こう (直接)
死に対する複雑な気持ち
 ↓
智恵子に対する愛情
 ↓
驚き、喜び
 ↓
死を受け入れる気持ち
 ↓
智恵子への愛情、智恵子を弔う気持ち
-→0・智恵子の死に際と彼女への愛
【間接的】
月夜の浜辺3年
(直接)
L5.なぜだかそれを捨てるには忍びず (直接)
 ↓
L11.L12月に向つてそれは抛れず
浪に向つてそれは抛れず (直接)
 ↓
L14. L15.月夜の晩に、拾つたボタンは
指先に沁み、心に沁みた。 (直接)
 ↓
L16 .L17.月夜の晩に、拾ったボタンは
どうしてそれが捨てられようか? (直接)
自分の気持ちに対する疑問
 ↓
より強くなった捨てられないという意思
 ↓
孤独なボタンの境遇への共感
 ↓
いや、捨てることは出来ないという自分の行動への納得
-×・月夜の浜辺を歩いていた僕が感じた、落ちていたボタンへの共感
【直接的】
生命は3年
(直接)
L23. L24. L25.そのように
世界が緩やかに構成されているのは
なぜ? (直接)
ゆるやかな世界のしくみへの感嘆
+×・私たちを含めた生命は、お互いに気づかなくても支えあいながら生きていること
【直接的】
光村図書
題名学年心理心理状態の分析心理状態心理変化主題
心理を読み取れる表現読み取れる心理状態
描きたい1年
(直接)
L1.2.3.4描きたい (直接)
 ↓
L5.伝えたい (直接)
 ↓
L6.描きたい (直接)
描きたいという強い思い

2連→共有して分かち合おうという気持ち
×・人と自分のよい気持ちを分かち合いたい
【直接的】
たんぽぽ1年
(直接・間接)
L4.ひとつひとみんな名前があるんだ。 (間接)
L9.川に落ちるな (直接)
一人一人を大切にしたいという気持ち×・一人一人の個性を認め、大切にしよう
【間接的】
ある日ある時1年
(直接・間接)
L1.美しい (間接)
L2.3.何かしらいいことがありそうな気のする (直接)
 ↓
L6.むなしく (間接)
L7.わびしく (間接)
L7.8.一枚の落ち葉さえ何かしら喜びに踊っているように見える (間接)
日常の中にあるありふれた美しい情景を見て嬉しくなる気持ち
 ↓
むなしくわびしいものをみてでさえ気分が高まる
×・ものごとを良く見られるような気持ちの余裕を持とう
【直接的】
春よ、来い2年
(直接・間接)
L7.遠き春 (間接)
 ↓
L7.瞼閉じればそこに (間接)
L8.なつかしき声 (直接)
 ↓
L10.待っています (間接)
L12.ずっとずっと待っています (間接)
 ↓
L14.きっと (直接)
 ↓
L15.まだ見ぬ春 (間接)
昔の幸せだったときと今の状況の心理的な距離
 ↓
昔を思い出している
 ↓
ずっと君を思っている
 ↓
不安の中での希望
 ↓
未来への希望
×・君との思い出を胸に春のように暖かく幸せに満ちた時に向かって進んでいく
【間接的】
春に2年
(直接・間接)
L1.6.14.24この気持ちはなんだろう (直接)
 ↓
L6.枝の先のふくらんだ新芽が心をつつく (間接)
 ↓
L7.よろこびだ しかしかなしみでもある (直接)
L8.いらだちだ しかもやすらぎがある (直接)
L9.あこがれだ そしていかりがかくれている (直接)
 ↓
L15.あの空のあの青に手をひたしたい (直接)
L16.17.まだ会ったことのないすべての人と
会ってみたい話してみたい (直接)
L18.あしたとあさってが一度にくるといい (直接)
 ↓
L19.ぼくはもどかしい (直接)
L20.地平線のかなたへと歩きつづけたい (直接)
L21.そのくせこの草の上でじっとしていたい (直接)
L22.大声でだれかを呼びたい (直接)
L23.そのくせ一人で黙っていたい (直接)
いろいろな感情が混ざり合っている状態
 ↓
周りのものから刺激を受けている状態
 ↓
心が良い状態と悪い状態が混ざり合っている
 ↓
「〜したい」という話者の積極的な欲求なので、前向きな気持ちを感じるとともに、できない事を求める気持ちが混ざり合っている
 ↓
積極的な欲求と消極的な欲求が描かれているが、全体的には前向きな印象を受ける
+・−×・さまざまな気持ちが心の中で激しく動いたこととその時の心の様子
【直接的】
あけがたには3年
(直接)
L16.日本語を苦しんでいる (直接)
L17.日本語で苦しんでいる (直接) 
L18.日本語が、苦しんでいる (直接)
助詞を変えることで作者も読者も日本語に苦しむ事になる0× ・適切な日本語を使うのは難しい
【直接的】
お辞儀する人3年
(直接・間接)
L7.推定(なんと悲しい文字だらう)四十四歳 (直接)
 ↓
L16.美しく、哀しいお辞儀の姿 (間接)
L18.思はず胸のうちで、この姿に会釈を返す (間接)
L19.このひとが戻っていく国の言葉で〈再見〉と言ひたい気がする (直接)
自分の出生についてよくわからない劉さんの悲しい身の上
 ↓
劉さんの行動に対する敬意と劉さんの境遇へのやりきれなさ
-×・劉さんのお辞儀する姿から祖国日本への想いが伝わり、やりきれない
・劉さんの行動に対する敬意
【直接的】
世界は一冊の本3年
(直接)
L29.生きるというとは、考えることができるということだ (直接)考えることが大切だという主張× ・世の中のすべては本のようなものであるので、世界の様々な事象に目をむけ、自分でよくものを考え、よりよく生きよう
【直接的】
わたしを束ねないで3年
(直接)
L1.わたしを束ねないで (直接)
L4.束ねないでください (直接)
 ↓
L7.わたしを止めないで (直接)
L11.止めないでください (直接)
 ↓
L13.わたしを注がないで (直接)
L17.注がないでください (直接)
 ↓
L19.わたしを名付けないで (直接)
 ↓
L25.わたしを区切らないで (直接)
あらせいとうや葱のように1つに束ねられず、金の稲穂のように広大な大地に自由にいたいという気持ち
 ↓
標本箱の昆虫や絵葉書のように1か所に止められず、大きな空を羽ばたいていたいという気持ち
 ↓
牛乳や酒のようにそとからの影響を受けやすい小さな存在ではなく、海のように限りなく満ち溢れる力を持つ大きな存在でいたいという気持ち
 ↓
「娘」「妻」「母」と名付けられたり、その役目を押し付けられたりせず、風のように自由にいきたいという気持ち
 ↓
,や.や段落、手紙のように区切られず、川のようにはてしなく進んで行きたいという気持ち
0×・世間が決める枠組みに束縛されずに、主体的に、ありのままに、自由に生きたい
【直接的】
三省堂
題名学年心理心理状態の分析心理状態心理変化主題
心理を読み取れる表現読み取れる心理状態
朝のリレー1年
(間接)
〈登場人物の心理を表す表現〉
L6.ほほえみながら (間接)
L8.ウインクする (間接)
 ↓
〈作者の心理を表す表現〉
L11.L17〜のだ (間接)
L13.守る (間接)

明るさ、陽気
 ↓
断定、強い意志、すがすがしさ、前向き
+× ・地球上に住んでいる人と人はみんなつながっているのだということ
【間接的】
ウソ1年
(間接)
L19.そっと (間接)
 ↓
L20.このあたたかさだけは
L21.ウソではない と
L22.自分でうなずくために (間接)
大切に思う気持ち
 ↓
安心感、信じられるものが少ないことへの淋しさ
+× ・信じられるものが少ないことへの淋しさと信じられるものへの安心感
【間接的】
未知へ2年
(直接)
L3.ありったけ (直接)
 ↓
L6.痛いほど (直接)
L7.あふれるほど (直接)
 ↓
L11.胸をときめかせて (直接)
自分の中での最大限の気持ち
 ↓
自分の中の最大限を越えるような強い気持ち
 ↓
未知のものへの期待とわくわくする気持ち
+×・新しい世界への期待とこれから成長していこうとするわたし
【間接的】
わたしが一番きれい
だったとき
2年
(直接・間接)
L3.とんでもないところから (間接)
L4.〜なんかが (間接)
 ↓
L8.〜してしまった (間接)
L10.捧げてはくれなかった (間接)
 ↓
L14.からっぽで (直接)
L15.かたくなで (直接)
 ↓
L19.そんな馬鹿なことってあるものか (直接)
 ↓
L20.まくり、卑屈な、のし歩いた  (間接)
 ↓
L23.くらくらしながら (間接)
L24.甘い、むさぼった (間接)
 ↓
L26.ふしあわせ (直接)
L27.とんちんかん (直接)
L28.めっぽうさびしかった (直接)
 ↓
L29.だから決めた (直接)
 ↓
L32.ね (間接)
驚き、信じられない気持ち
 ↓
がっかりするような気持ち
 ↓
放心状態
 ↓
怒り、憎しみ、失望
 ↓
怒り、憎しみ
 ↓
解放感
 ↓
いろいろな感情が混ざり合っていた状態、さびしい
 ↓
前向き、過去の自分がした決意、はいあがっていこうとする思い
 ↓
明るさ
-→+ ・人生で一番輝く時期に敗戦前後の最悪の状況を経験しながらも、生きていこうとする女性の決意
【直接的】
ジーンズ2年
(直接・間接)
L2.いいな (直接)
 ↓
L3.歩いていってしまいそう (直接)
L10.12.〜さ (間接)
 ↓
L14.きっと (直接)
楽しい、わくわくするような気持ち
 ↓
明るい、前向き
 ↓
期待、希望
+× ・小さなきっかけによる心境の変化、愛用品に詰まった思い出 
【間接的】
3年
(直接・間接)
L2.明るい憂愁 (間接)
 ↓
L12.なつかしく (直接)
 ↓
L13.たのしい (直接)
L16.あまい (間接)
未来に対する期待と過去との別れの淋しさ
 ↓
過去を懐かしむ気持ち
 ↓
未来への期待
+×・峠と人生を重ね合わせ、人生で決定を下す時は悲しいものであるが、未来へ進む明るいものでもある。あせらず、過去を振り返ったりして落ち着いて決めるのがよいということ
【間接的】
仮繃帯所にて3年
(直接・間接)
〈登場人物の心理状態を表す表現〉
L3.わめいても (間接)
L4.もがこうにも (間接)
 ↓
L28.L33.L35.おもっている (間接)
 ↓
〈作者の心理状態を表す表現〉
L10.ああ、愛らしい (直接)
L12.思えよう (直接)
 ↓
L19.何故こんな目に遭わねばならぬのか (直接)
L20.なぜこんなめにあわねばならぬのか (直接)
L21.何の為に (直接)
L22.なんのために (直接)
 ↓
L30.いま逢ったってたれがあなたとしりえよう (間接)
L32.一瞬に垣根の花はちぎれいまは灰の跡さえわからない (間接)

苦しみ、怒り
 ↓
行き場のない気持ち
 ↓
信じられない気持ち、なげき
 ↓
行き所のない怒りや憎しみ、憤り
 ↓
行き場のない気持ち
-×・原爆の悲惨さ
【直接的】
初恋3年
(直接・間接)
L4.花ある (間接)
L5.やさしく白い  (間接)
 ↓
L11.たのしき (直接)
 ↓
L16.こひしけれ (直接)

君に対する好意
 ↓
恋愛の絶頂期にあるときの楽しさ
 ↓
君に対する愛情
+→? ・初恋の楽しさ(と、その別れの悲しさ)
【間接的】
たんぽぽ3年
(直接)
L6.うれしくてならなかったよ (直接)
 ↓
L10.とべるような気がしたよ (直接)
うれしくてならない
 ↓
未来への希望が開けたこと
+×・生きるものにとって本当に必要なもには一つ(命)である
【間接的】

5.分析・考察

T、技法について

 1年では、倒置法・隠喩・擬人法・対句などを使わない詩が多い。2年では、反復・隠喩・対句が極めて多く使われている。3年は、1、2年に比べ、詩の数・総文字数・行数が増えているのが特徴的である。特に隠喩は、直喩よりも解釈しにくいため、低学年では表れにくいが学年が上がるにつれて、その率が高くなっている。しかし、全体的には技法を段階的に学んでいるという傾向は見られなかった。

 時間経過反復(表現)反復(形式)倒置法体言止め直喩隠喩擬人法対句要求呼びかけ(要求以外)
1年29%43%57%29%43%43%29%29%29%0%29%
2年43%71%57%43%43%43%71%29%71%0%29%
3年33%33%50%42%67%33%75%42%25%8%11%

U、内容について

内容表現の分類 全体のグラフ 内容表現の分類 会社別のグラフ 内容表現の分類 学年別のグラフ

内容表現の分類…会社別では特に差はない。
 学年別では、3年生はメッセージ型が多くなっている。メッセージ型の詩を主題の分類とともにあげる。

<人生再認識型>
「永久欠番」「生命は」
<人生指針型>
「世界は一冊の本」「峠」
<自己心情型>
「わたしを束ねないで」
<戦争型>
「仮繃帯所にて」
 上のの4作品(「永久欠番」「生命は」「世界は一冊の本」「峠」)は、人生に関わることを主題にしている。下の2作品(「わたしを束ねないで」「仮繃帯所にて」)も生き方をテーマにしているという点で、人生に関わっているのは共通している。人生とは、というメッセージを直接訴えかけることはもうすぐ進学や就職などの転機を迎える中学3年生にとってよい題材であると考えられる。


V、心理について

心理状態 全体のグラフ 心理状態 会社別グラフ 心理状態 学年別グラフ

心理状態

 三社の詩を総合してみると、+→+の詩が45%を占めている。次は−→−の詩が15%となっており、心理状態が変化しない詩が多いことがわかる。
会社別の心理変化について

 光村図書と三省堂は、+→+の状態になっている詩が大部分を占める。これは三社すべての詩の割合を見てもそれほど不思議なことではない。それに対して東京書籍は他の二社とは異なり、偏りなく分布している。また、東京書籍は「風景」のように心理的な表現が見られない詩が採られているなど、この三社の中では特徴的な分布になっているといえるだろう。特に−から始まる詩が多い。そのような詩は、学習者が詩の語り手の感情へと入り込みにくいために、学習者の興味をわきおこしにくい。

学年別の心理状態

 どの学年も+→+の状態になっている詩が多い。しかし3年では、様々な心理状態が幅広く分布しており、多様性が見られるようになる。その中でも1年と2年には全く見られなかった−→−の詩や−→0が目立つようになっている。これは、+の心理状態のみに終始するのではなく、あえて−の心理状態を学ぶことでより深く考えさせるような詩が中学校の最終学年である3年に多く採られているのではないかと考える。

W、主題の考察

 三社ともに共通して見られる型として、

が挙げられる。
 自己心情型は、三社すべての詩の主題において最も多い型である。三社に共通して見られるのは当然である。
 恋愛型については、思春期における中学生にとって興味の持てる題材であるという理由によって三社とも採用していると推測できる。
 戦争型は、戦争の悲劇を伝え、戦争を二度と繰り返さないという戦争について学ぶ目的があることから採用されていると推測できる。そして、詩の表現では、戦争に対する人々の感情が中心に述べられているので、戦争の悲惨さを直接的に伝えることができるためである。三社ともに主題が戦争型の詩が採用されているのだろう。

 光村図書の場合は他の2社と違いがあって、人生指針型や自己心情型の主題の詩が全体の詩の60%以上を占めているが、三省堂や東京書籍の場合は自己心情型以外の詩は主題が均等にわかれている。

 次に学年別では戦争型や恋愛型は1年では出てこないで、2年以降で登場する。3年になると様々な型の主題が取り上げられている。学年が上がるにつれて主題の内容が深く広くなっているのは、精神の成熟にあわせているからだと考えた。

主題の分析と考察

主題の分類 全体のグラフ 主題の分類 会社別グラフ 主題の分類 学年別グラフ

 まず、会社別に見てみる。東京書籍、光村図書では、共に直接的な主題を持つ詩が多い。しかし三省堂では、直接的な主題を持つ詩が2作品掲載されているのに対して、間接的な主題を持つ詩は7作品もある。三省堂掲載の、間接的な主題を持つ詩を挙げる。

「間接的な主題」というと、学習者にとって困難な読みになると予想されるため、ある程度読解力がついているであろう3年生の詩教材としては納得がいく。しかし、あえて1、2年の教材にもってきているのは何故だろうか。

 ここで1、2年のそれぞれの詩教材の扱われ方について述べる。「朝のリレー」「未知へ」「峠」は、表表紙から数えて5、6頁にカラーで掲載されていて、導入の役割を果たしている。「ウソ」は、言葉遊び的な面を持っているユーモアあふれる詩で、学習者の興味を引きやすいといえる。「ジーンズ」は、現代的な詩で、題材や設定が学習者にとって身近なもので読みやすい。
 特に1、2年の間接的な主題の詩は、「詩から学ぶ」要素よりも、むしろ「詩のおもしろさや作者の世界観に触れる」要素により重点を置いていると考えられる。
 次に、学年別に見てみる。1、2年共に直接的、間接的な主題を持つ詩がほぼ同数あり、特徴は見られない。3年に着目すると、直接的な主題の方が多い。これらの詩を、先に示した「主題の分類」と共に挙げる。

<人生再認識型>
「永久欠番」「生命は」(東京書籍)
<人生指針型>
「世界は一冊の本」(光村図書)
<戦争型>
「仮繃帯所にて」(三省堂)
<言語考察型>
「あけがたには」(光村図書)
<自己心情型>
「月夜の浜辺」(東京書籍)
「わたしを束ねないで」(光村図書)
 1、2年より3年に直接的な主題の詩が多いのは何故か。分類を見ると、「人生型」「戦争型」という、テーマの重く、深い作品が多い。また、「自己心情型」に分類される詩でも、「月夜の浜辺」は人間の孤独を、「わたしを束ねないで」はわたしの理想の生き方をテーマにした、考えさせられるものである。直接的な詩であるから簡単であるとはいえない。このことから、3年の直接的な主題の詩は、内容が人生に関わる重要なものであるからこそ、学習者に理解しやすいように書かれているといえる。

X、各考察のまとめ

 1年から3年までのすべての詩を分析すると、学年が上がるごとに少しずつ詩の表現技法が増えていっているように見える。しかし、そのことを重点において詩教材を掲載しているようには思えない。
 1年、2年では「詩から学ぶ」ことよりも「詩のおもしろさや作者の世界観に触れる」ことを重点に置いた詩を掲載していることや、3年になると詩の主題の分類が多様化していたり、主題の内容が深くなったりしていることから、精神的成熟度に応じた詩の選択を中心に掲載していると考えた。

 今回の研究から、中学校の国語の教科書に採られている詩教材は、学習者の精神的成熟を促す役割を果たしていると考えることができる。

6.おわりに

 今回の研究では、現行の教科書の中で東京書籍、光村図書、三省堂の三社のみを対象に分析をした。
 これからの研究を発展させる方向として、改訂以前の教科書に採られた詩教材と比較し、会社別の詩の傾向やその特徴を時代の流れとともに見ていくという通時的な研究と、小学校と高等学校の教科書に採られた詩教材とを合わせた比較を行って、学習者の言語運用能力を発達論的に見ていく研究とが考えられる。


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Last update: 2002/12/29