5-2.視点

【学年ー視点】

視点



(特)












1382202
2064203
3073120
4062431
5015310
6015300
視点[%]



(特)












118%47%12%12%0%12%
20%40%27%13%0%20%
30%54%23%8%15%0%
40%38%13%25%19%6%
50%10%50%30%10%0%
60%11%56%33%0%0%



・1年生客観や客観(特)といった、どの登場人物の心情も叙述されていない作品が65%を占めている。
・2年生客観が40%を占め、三人称限定は27%とやや増加している。また、全知も20%に増加している。
・3年生客観が54%を占め、ついで三人称限定が23%を占める。また多視点が15%を占め、この学年から多視点がみられる。
・4年生客観が38%を占め、依然として高い割合を示している。一人称限定が25%、多視点が19%を占めており、三人称限定の13%を上回っている。
・5年生客観が10%と極端に減少している。三人称限定が50%で半数を占めるようになり、ついで一人称限定が30%を占めている。
・6年生5年生と同じ傾向であるが、多視点はみられない。

【出版社学年ー視点】

視点






(特)












光村1121201
光村2011002
光村3031000
光村4011110
光村5002110
光村6011100
教出1230001
教出2013100
教出3021020
教出4051110
教出5002100
教出6002100
東書1031000
東書2040101
東書3021100
東書4000211
東書5011100
東書6002100
視点[%]






(特)












光村114%29%14%29%0%14%
光村20%25%25%0%0%50%
光村30%75%25%0%0%0%
光村40%25%25%25%25%0%
光村50%0%50%25%25%0%
光村60%33%33%33%0%0%
教出133%50%0%0%0%17%
教出20%20%60%20%0%0%
教出30%40%20%0%40%0%
教出40%63%13%13%13%0%
教出50%0%67%33%0%0%
教出60%0%67%33%0%0%
東書10%75%25%0%0%0%
東書20%67%0%17%0%17%
東書30%50%25%25%0%0%
東書40%0%0%50%25%25%
東書50%33%33%33%0%0%
東書60%0%67%33%0%0%



●光村図書客観が42%と最も多い。ついで一人称限定が26%を占めている。全知が16%を占め、3社中最も高い割合を示している。
・低学年1年生では客観・一人称がそれぞれ29%を占めている。他に三人称・全知・客観(特)がそれぞれ14%を占めるが、多視点はみられない。
2年生になると、全知が50%になり、他は客観・三人称がそれぞれ25%を占めている。
・中学年3年生で客観の割合が75%と極端に増加し、残りが三人称となる。
4年生になると客観・三人称・一人称・多視点がそれぞれ25%と同じ割合を示している。
・高学年5年生では三人称50%を占め最も多くなり、ついで一人称・多視点がそれぞれ25%を占め高い割合を示している。
6年生では客観・三人称・一人称それぞれ33%と同じ割合を示している。
●教育出版客観が37%と最も高い割合を示している。ついで三人称限定が30%、一人称限定13%を占めている。光村と傾向が似ている。
・低学年1年生では客観・客観(特殊)があわせて83%を占めている。
2年生では三人称限定が60%になり、客観・一人称がそれぞれ20%を占めている。
・中学年3年生では三人称・多視点が40%ずつを占め、残りを三人称が20%を占めている。
4年生では客観が63%を占め、三人称・一人称・多視点が13%ずつを占めている。
・高学年5・6年生ともに三人称が67%、一人称が33%を占めている。
●東京書籍客観が42%と最も高い割合を示している。一人称限定の25%が三人称限定の21%を上回っている。客観(特)は3社中唯一みられない。
・低学年1年生では客観が75%、三人称が25%を占めている。
2年生では客観が67%を占めている。他に一人称・多視点がそれぞれ17%を占めている。
・中学年3年生でも客観が50%と半数を占め、ついで三人称・一人称が25%ずつを占めている。
4年生では一人称の割合が50%と最も高い割合を示し、多視点・全知といった作品が残りを占めている。
・高学年5年生では客観・三人称・一人称が33%ずつを占めている。
6年生では三人称が67%に増加し、残りは一人称が占めている。

【考察】


 視点は学年別の分析より、低学年で客観、客観特殊の割合が高いと言える。
 1年生では64%、2年生では40%、3、4年生ではそれぞれ54%、37%を占めている。それが、5年生になると10%に激減し、6年生でも11%しかみられなくなる。これは、全知でも同じような傾向があらわれている。
 この二つの視点が低学年で高い割合を示しているのは、学習指導要領の低学年の目標として「書かれている事柄の順序や場面の様子などに気づきながら読むことが出来るようにするとともに、楽しんで読書しようとする態度を育てる」とあることが関係していると考えた。
 客観はどの人物の心理も描かず、物語世界を全体から眺めて描くことが出来る視点である。つまり、事柄の順序や場面の様子が読みとりやすい視点だと言える。また、全知は複数の人物の心理を描くことが出来、登場人物の心理が読みとりやすい視点であると言える。
 これらのことから、書かれている事柄をそのまま読みとることが目標となっている低学年で、客観や全知が多くみられるのではないかと考えた。
 学年別分析から、高学年では三人称限定が高い割合を占めていることがわかる。5年生で50%、6年生で56%と半数を占めている。
 これは、学習指導要領の「登場人物の心情や場面についての描写など、優れた叙述を味わいながら読むこと」が関係していると考えた。
 高学年では話の展開のみでなく、叙述や表現を手がかりに登場人物の心情を読みとることや、自分と相手の考え方を比較しながら自分の考えを深めていくことが求められていると言える。
 三人称限定は、特定の視点人物の心理を描くことによってその人物が見た物語世界を描く視点である。この視点から描かれたことによって、叙述から心情を読みとったり、登場人物と自分を切り離したりして考え、自分自身の考え方をみつめ、そして深めていくことが出来るため、高学年では三人称限定の作品が多く取りあげられていると考えた。


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